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“4K相当”は“プレミアムフルHD”。シャープの新提案「AQUOS XL10」が30日から発売

AQUOS クアトロン プロ XL10シリーズ

 シャープは、フルHDパネルながら、“4K相当”の高解像度表現を可能にする液晶テレビ「AQUOS クアトロン プロ XL10シリーズ」を11月30日より順次発売する。発売に先駆けて29日に報道関係者向けの説明会を開催した。

 AQUOS XL10は、フルHD AQUOSの最上位シリーズで、46型の「LC-46XL10」、52型「LC-52XL10」、60型「LC-60XL10」、70型「LC-70XL10」、80型「LC-80XL10」の5モデルで展開する。

 4Kテレビが人気を集める中、シャープは「4Kテレビよりも安く、それでいて4K並の高精細感」を得られる点を訴求し、年末商戦に臨む。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は25万円~88万円前後。

型番サイズ発売日店頭予想価格
LC-80XL1080型12月10日88万円前後
LC-70XL1070型68万円前後
LC-60XL1060型11月30日32万円前後
LC-52XL1052型28万円前後
LC-46XL1046型25万円前後
LC-60XL10
LC-52XL10
LC-46XL10

フルHDで4K相当を実現する「クアトロンプロ」

クアトロン プロを採用

 AQUOS クアトロンプロ XL10シリーズの特徴は、フルHDパネルながら、4K相当の高画質表示を可能にする「クアトロン プロ」を搭載すること。液晶パネルは解像度1,920×1,080ドット、UV2A方式のパネルだが、4原色技術「クアトロン」を拡張することで、“4K相当”の高精細化を実現するものだ。

 詳しくは発表会の記事を参照して欲しいが、「クアトロン プロ」は、RGB(赤緑青)とY(黄)4つのサブピクセルというクアトロンの4原色技術を元に、1画素内に縦横それぞれの輝度ピークを2倍にすることで、解像度を高めるもの。

 駆動回路の強化により、4つのサブピクセルの真ん中から上下を、それぞれ個別に駆動できるようにしたことで、垂直方向の解像度が2倍相当になる。さらに、RGBYの4色において、輝度が高く、ピークとなる色が“緑“と“黄”の2色あることに着目。クアトロンの1ピクセルを、上下だけでなく、左右にも分割して考え、緑と黄それぞれに輝度ピーク(1画素内に2つの輝度ピーク)を設け、水平解像度も2倍化する。

 つまり、4原色の画素構成により「垂直方向」を2倍相当に、1画素内の2つの輝度ピークの独立駆動により「水平方向」の解像度を2倍相当とし、フルHDパネルでの4K表示を可能にする。この処理をシャープでは、「超解像分割駆動エンジン」と呼んでいる。

クアトロン プロを採用
超解像分割駆動エンジンを採用
シャープ デジタル情報家電事業本部 AVシステム開発センターの吉田育弘所長

 画素数自体は1,920×1,080ドットのフルHDのため、擬似的な4K表示といえるが、細かな模様や斜め線の滑らかさなどにおいて、4Kに迫る高精細な表示ができることが特徴となる。

 シャープ デジタル情報家電事業本部 AVシステム開発センターの吉田育弘所長は、クアトロンプロの技術説明とともに、「2010年夏に4原色技術クアトロンを商品化したが、この時点からクアトロンプロを想定して、サブピクセルの順番を決めていた」と、当初からクアトロンプロの高精細化を想定して開発が進められていたことを紹介した。

確かに“4Kっぽい”解像感

画質設定担当の小池晃氏がAQUOS XL10の画作りを説明

 説明会では、テレビ放送映像などを使いながら、3原色の通常の60型AQUOSとXL10の違いを紹介。4KマスターのBDビデオでは精細感の違いがしっかりわかるほか、斜め線が段差にならずにまっすぐに見えること、新聞の文字も輪郭にノイズが乗らずにしっかり見えることなどが確認できた。

 4Kテレビとの比較は行なわれなかったが、かなり近接して見ても画素が認識できないので、フルHDテレビよりも明らかに高解像度に見え、「4K相当」という表現もしっくりくる。

 また、通常のフルHDに比べると、ブロック/モスキートノイズの粒度が小さく目立ちにくいというのもクアトロンプロならではの特徴と感じた。海辺を空撮した映像において、普通のフルHD AQUOSでは草木のディテール部分にかなりのノイズが乗ってしまうが、AQUOS XL10ではノイズは見えるものの、その粒がかなり小さく、目立ちにくい。それゆえ、すっきりと解像感ある映像に見えるのだ。

 なお、4K相当表示=分割駆動エンジンONでは、サブピクセルの上下を個別に駆動するため、輝度の低下要因になるほか、視野角の若干の低下が発生する。そのため、ユーザーによる4K相当表示のオン/オフ設定が可能で、[分割駆動エンジン設定]で、モード1/2とオフを選択できる。

 モード1は、明るさを重視した4K相当表示。明るい信号入力時には自動で分割駆動処理をキャンセルし、輝度を確保する。また、これにより省電力化が図れるため、出荷時設定はモード1となっている。画質モードの「標準」もモード1。一方、モード2は、常に分割駆動エンジンの処理を行なうモードで、精細感を重視するもの。画質モード「映画」の場合はモード2で駆動する。

分割駆動エンジン「モード1」
分割駆動エンジン「モード2」。明るい映像ではほとんど変わらない
分割駆動エンジン「オフ」

 画質モード「PC」や「THX」モードでは、分割駆動オフとなる。この場合、解像度は通常のフルHD表示となる。各モードでの扱いなどについては、今後「大画面☆マニア」などでも検証予定だ。

 画質面の特徴としては、THXディスプレイ規格の認証も取得しており、映画監督の意図する画質で映像を楽しめることも訴求している。THXディスプレイ認証は、4Kディスプレイとしてではなく、フルHDディスプレイ「ハイビジョン映像(2D)」としての認定となっている。そのため画質モードで「THX」を選択した場合は、分割駆動はオフで、フルHD表示となる。AQUOSの画質設計を担当する小池氏によれば、THX認定を取るために、画面の均一性(ユニフォーミティ)にこだわっていることも、AQUOS XL10の画質面の特徴という。

 気になるのは、4Kテレビではなく、「4K相当」という消費者にとってはわかりにくい、表現が使われているため、AQUOS XL10シリーズがどのように市場に受け入れられるか、という点だ。

商品企画担当の指出氏

 商品企画を担当する指出実氏は、「もちろん、カタログや店頭などでも“4K相当”の意味についてはきちんと説明していく。販売店などからも、『解像感あるテレビだね』という感想は頂いており、ある意味『解像感あるフルHDテレビ』として受け入れられていただけそうだ。フルHDで一番いいもの、プレミアムなフルHDテレビとして4Kに迫る画質があるもの、と思っていただければ」と語る。

 また、シャープでは、4K対応テレビの「AQUOS UD1」も発売しており、4Kとの棲み分けも必要となる。指出氏によれば、「現時点では4Kテレビは55型以上で40型台は存在しない。46型や52型などより小型でも4Kに迫る画質で、そのサイズで一番いいものとしてアピールできる。また、60型ではUD1とXL10の価格差は10万円程度あり、ある程度手頃な価格になり、違う価格帯の選択肢になる」と説明した。

スピーカー強化でBluetoothスピーカーにも。Miracastも改善

スピーカーも強化

 音質面でも、パイオニア製のミッドレンジやパンチングメタルのネットの採用、前向きのユニット配置などで、従来モデルより音質を改善した2.1chフロントサラウンドシステムを搭載。特に高域特性の改善とともに、音場感の向上などが図られている。

 また、細かな機能ではDLNAサーバー機能を搭載し、USB HDD録画した番組をホームネットワーク内で配信できるほか、Miracastで対応スマートフォンとダイレクトに接続し、テレビにスマホ画面などを出力できることなどをアピール。Bluetoothも搭載している。

 Miracastも細かな改善が図られており、2013年夏モデル以降のAQUOS PHONEでは、テレビ側の決定操作無しに、スマホだけでMiracastの映像出力が可能になっているという。

 また、AQUOS XL10シリーズをBluetoothスピーカーとしても活用可能で、バックライトなどディスプレイ側の機能をOFFにしてスマートフォンの音楽再生が楽しめる。AQUOSの「クイック起動」がオンになっている場合は、AQUOSの電源オフ時でも、スマートフォンのBluetoothから出力操作を行なうと、AQUOSが起動(一定時間だけ出画)し、Bluetoothスピーカーとして利用できる(スマートフォンのBluetooth対応状況によっては起動できないものもある)。

Miracastでスマートフォンから映像出力
Hybridcastに対応し、将来的なセカンドスクリーン連携も想定
iPhoneからBluetoothでAQUOSを起動してスピーカー利用
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LC-46XL10

(臼田勤哉)