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シャープ、フルHDパネルで“4K相当”表示するAQUOS XL10

46型は26万円で4K相当。46~80型のクアトロン プロ

AQUOS XL10シリーズ

 シャープは、フルHDパネルながら、4原色クアトロン技術と超解像分割駆動エンジンなどにより、“4K相当”の高解像度表現を可能にする液晶テレビ「AQUOS クアトロン プロ XL10シリーズ」を11月30日より順次発売する。46型から80型までの5モデルを用意し、価格はオープンプライス。店頭予想価格は26万円~88万円前後。

 フルHD AQUOSの最上位シリーズとなり、46型の「LC-46XL10」、52型「LC-52XL10」、60型「LC-60XL10」、70型「LC-70XL10」、80型「LC-80XL10」の5モデルで展開。フルHDパネルながら4K相当の高画質表示が行なえる「クアトロン プロ」に加え、従来のAQUOS XL9シリーズなどで採用した外光反射を抑える「モスアイパネル」などで高画質化を図った。

型番サイズ発売日店頭予想価格
LC-80XL1080型12月10日88万円前後
LC-70XL1070型68万円前後
LC-60XL1060型11月30日35万円前後
LC-52XL1052型30万円前後
LC-46XL1046型26万円前後

 55型以上の大型テレビでは4K化が進んでいるが、XL10シリーズでは46型も用意し、40型台でも“4K相当”の高精細を得られることなどを訴求。「プレミアム ハイビジョンテレビ」として展開する。

LC-80XL10
LC-70XL10
LC-60XL10
LC-52XL10
LC-46XL10
AQUOS クアトロン プロ XL10シリーズ

水平/垂直解像度をそれぞれ2倍相当に「クアトロン プロ」

 46~80型までの5モデルのいずれも、フルHDパネルながら、4K相当の高画質表示を可能にする「クアトロン プロ」を搭載する。パネル解像度1,920×1,080ドット、UV2A方式のパネルだが、4原色パネル技術「クアトロン(Quattron)」を拡張することで、“4K相当”の高精細化を実現した。

 AQUOS XL9シリーズなどで採用していた「クアトロン」は、RGB(赤緑青)にY(黄)を加え、4つのサブピクセルを1ピクセルとして駆動するが、「クアトロン プロ」では、駆動回路の強化により、4つのサブピクセルの真ん中から上下を、それぞれ個別に駆動できるようにした。これにより、垂直方向の解像度が2倍相当になる。

4つのサブピクセルの上下を別々に駆動して垂直解像度を2倍に
1画素内の輝度ピークの数を2倍にして水平方向解像度を向上

 さらに、RGBYの4色において、輝度が高く、ピークとなる色が“緑“と“黄”の2色あることに着目。クアトロンの1ピクセルを、上下だけでなく、左右にも分割して考え、緑と黄それぞれに輝度ピーク(1画素内に2つの輝度ピーク)を設け、水平解像度も2倍化した。つまり“赤、緑、青(RGB)”、“青、黄、赤(BYR)”、“赤、緑、青(RGB)”、“青、黄、赤(BYR)”という光り方になる。この方式では、Gをピークにした時、Yをピークにした時で色味に違いが出るが、Gの時は隣にあるBが、Yの時は隣のピクセルの端にあるRが色を補う事で、正常な色に補正する。

 これらの4K相当表示技術を総称して、シャープでは「超解像 分割駆動エンジン」と呼んでいる。

 つまり、4原色の画素構成により垂直方向を、1画素内の2つの輝度ピークの独立駆動により水平方向の解像度を、それぞれ2倍相当とし、フルHDパネルでの4K表示を可能とした。ピクセルが4K解像度分あるわけではないため、擬似的な4K表示となるが、細かな模様や斜め線の滑らかさなどにおいて、4Kに迫る高精細な表示ができるとする。

デジタル情報家電事業本部 AVシステム開発センターの吉田育弘所長

 シャープ デジタル情報家電事業本部 AVシステム開発センターの吉田育弘所長は、クアトロン プロについて、「4原色パネルと超解像分割駆動エンジンで、フルHDパネルに画素数以上の映像を表示し、ほぼ4Kの品位で楽しめるもの」と要約。技術的には「液晶パネルの解像度は、画素の数ではなく輝度ピークの数で決まる」という考えを基にしているという。

 人間の目は、黄色や緑を明るく感じる。この輝度の感じやすさを「比視感度」というが、通常のRGBパネルでは緑のみが比視感度が高い色になる。クアトロンプロでは水平方向に黄色と緑の2色があるため、これを輝度ピークとして水平方向の解像度を倍にできる。

 シャープは、2010年夏に4現色技術クアトロンを商品化した。「この時点では、サブピクセルの順番が、赤緑青黄色である理由を説明していなかったが、実はこの順番は今回の超解像分割駆動エンジンと相まって新たな高画質化技術につなげる準備だった。クアトロン プロの技術は、2010年から描いていたもの」という。比視感度の高い黄色と緑を、隣同士でなく、赤、青と組みわせるサブピクセル構成が水平方向の2倍相当解像度のキモ、というわけだ。

黄色と緑の2つの輝度ピーク
サブピクセルの画素の並びは、クアトロンプロを想定して規定

 垂直方向については、各サブピクセルを上下に分けて駆動できるため、縦横それぞれに輝度ピークを2つ作ることができる。「フルHDパネルの縦横それぞれ2倍の輝度ピークをもつ。それがクアトロン プロの特徴」とする。また、フルHDの映像信号入力についても、輝度や色情報を高めて再構成して、4Kにアップコンバート。フルHDよりもより高画質かつ高精細に表示可能になったという。

分割駆動エンジン設定の選択画面

 なお、4K相当表示において、サブピクセルの上下を個別に駆動することで、輝度の低下要因になるほか、視野角の若干の低下が発生する。そのため、ユーザーによる4K相当表示のオン/オフ設定が可能で、[分割駆動エンジン設定]で、モード1/2とオフを選択できる。

 モード1は、明るさを重視した4K相当表示。クアトロンプロの4K相当表示では、4つのサブピクセルの上下を、時間をずらしてそれぞれ個別に駆動することで、垂直方向の解像度が2倍相当とするものだが、上のサブピクセルが点灯している場合は、下のピクセルは黒挿入される。そのため、輝度は通常のフルHDのほぼ半分となるため、やや暗くなる。一方、非常に明るい信号の入力時には、周囲画素との輝度差が無く、精細度の違いがわかりにくくなる。そこでモード1では、明るい信号入力時には自動で分割駆動処理をキャンセルし、輝度を確保する。また、これにより省電力化が図れるという。出荷時設定もモード1となっている。

 モード2は、常に分割駆動エンジンの処理を行なうモードで、精細感を重視したモードとなる。

 実際にオフと、モード1/2を見比べたところ、オフとの精細度の違いは明白であった。

分割駆動エンジン設定(モード1)
分割駆動エンジン設定(モード2)
しない(オフ)
AQUOS XL10(左)と4KモデルAQUOS UD1(右)の比較

 なお、AQUOS XL10シリーズは、THXディスプレイ規格の認証も取得しており、THXが定めた映像品質で、映画監督の意図する画質で映像を楽しめることも訴求している。THXディスプレイ認証は、4Kディスプレイとしてではなく、フルHDディスプレイ「ハイビジョン映像(2D)」としての認定となっている。そのため画質モードで「THX」を選択した場合は、分割駆動はオフで、フルHD表示となる。

モスアイパネルや新エンジンで高画質化。HybridcastやHulu対応

クアトロンで色再現力も拡張

 クアトロン プロだけでなく、映り込みを抑えるとともに、鮮やかな発色を再現し、高コントラストを実現する「モスアイパネル」を採用。

 映像エンジンは、「新・AQUOS高画質マスターエンジンプロ」を搭載。フレームごとの輝度や周波数を解析し、コントラスト制御やノイズ低減などの高画質化処理を行なうほか、LEDバックライトの明滅を高速制御する「240フレッドスピード」を搭載。16倍速相当の動画性能を実現するという。コントラスト1,000万:1を実現する「LEDブライトネス」技術も搭載している。

超解像分割駆動エンジンの概要
AQUOS XL10の高画質化技術

 超解像分割駆動エンジンには、4Kアップコンバート回路を内蔵し、フルHD映像も輝度と色情報を高めて4K変換した後で、パネルに出力。4K信号はそのまま、解像度再構成回路に投入される。アクテイブシャッタータイプの3D表示にも対応するが、3Dメガネ「AN-3DG20-B」は別売となる。

 HDMI入力は4系統で、最高で4K(3,840×2,160ドット 24/25/30Hz)に対応。D5入力なども備えている。

 5スピーカー構成の2.1chフロントサウンドシステムを搭載。最大出力は10W×2ch+15W。パイオニア製の「Xバランサー構造」を採用し、明瞭な音声表現を可能にしたという。

 地上デジタルチューナを3系統、BS/110度CSデジタルチューナを2系統搭載。別売USB HDDへの2番組同時録画に対応し、地デジ2番組録画中でも裏番組の視聴に対応する。ホーム画面は、番組情報とネット情報を同画面上に表示する「ビジュアルモーションガイド」。

2.1chスピーカーを搭載
パイオニア製のXバランサーを搭載

 ネットワーク機能も備えており、DLNAサーバー機能を搭載。録画した番組の家庭内の配信などが行なえる。NHKが9月2日からスタートした放送通信連携サービス「Hybridcast」に対応する。また、新たにビデオ配信サービスの「Hulu」に対応したほか、クラウドゲーム「G-cluster」に対応。別売のゲームパッドやスマートフォンを使ったゲームプレイも楽しめる。

 対応スマートフォンから無線LAN経由で映像出力できる「Miracast」や、Bluetoothなども備えている。

Hybridcastに対応
G-cluster
Huluも対応
型番LC-80XL10LC-70XL10LC-60XL10LC-52XL10LC-46XL10
サイズ80型70型60型52型46型
画素数1,920×1,080ドット
テレビ
コントラスト
1,000万:1
視野角上下/左右176度
バックライトLED(エッジ型)
スピーカー
出力
10W×2ch+15W
入力端子HDMI入力×4、D5入力×1、コンポジット入力×1、
アナログRGB入力(D-Sub15ピン)×1、アナログ音声出力×1、
ヘッドフォン出力×1、光デジタル音声出力×1、USB×3、Ethernet
消費電力約324W約260W約210W約162W約144W
年間消費
電力量
178kWh/年150kWh/年123kWh/年100kWh/年84kWh/年
外形寸法未定未定137.2×38.7
×87.8mm
119.6×31
×77.2mm
105.6×31
×69.2mm
重量未定未定28.5kg25.5kg22kg

フルHD新次元へ

デジタル情報家電事業本部 液晶デジタルシステム第一事業部 戸祭正信事業部長

 シャープ デジタル情報家電事業本部 液晶デジタルシステム第一事業部の戸祭正信事業部長は、国内テレビの'13年9月の前年比出荷台数が26カ月振りにプラス(前年比114.1%)になったことを紹介。エコポイントと地デジ停波特需終了後の大幅な落ち込み期を経て、回復基調に入ったとの認識を示した。

 また、放送インフラについても4K放送が2014年に8K放送が2016年に試験的にスタートし、2020年には4K/8Kの環境が一般家庭でも視聴可能になる見込みであるなど、放送の高度化がテレビの環境を後押しすると語った。

テレビ市場は回復傾向
4K/8K放送もテレビ市場を後押し
クアトロンの進化

 内閣府の調査では、テレビの買い替えサイクルは年々短期間化しており、2010年は約10年(9.7年)だったものが、2013年には約8年(7.9年)になった。買い替えユーザーはインチアップを希望する人が多く、8年前からの買い替えユーザーには設置性や価格面で「2倍」の画面サイズを推奨し、大画面化を加速していく方針。一方画面サイズが大きくなると、画素が見えやすくなることから「映像のリアリティを損なってしまう」。そこで、4K相当の高精細表示を活かして価格面でのメリットと、高画質、フルHD相当の低消費電力などを訴求。「AQUOS XL10は、フルHDを新次元に高めるテレビ」と自信を語った。

8年前の購入者など買い替え需要を狙う
フルHDを新次元に

 なお、フルHDと4Kの棲み分けについては、「AQUOS XL10はフルHDの最上位モデルとして、高画質、高音質を希望する方をターゲットにするが、4Kとの価格差は大きいので、お客様の選択肢を広げるものになる。棲み分けはできると考えている」と説明。

 また、「4K相当」という表示については、「あくまでもフルスペックハイビジョンテレビ商品。誤認されないように4K『相当』とし、『4K液晶パネルではありません』と説明しながら、いかにフルHDを楽しんでいただけるかという製品」とする。

 なお、クアトロン技術のテレビ以外の展開については「技術的にテレビを中心において、開発している」(AVシステム開発センター 吉田所長)と説明。また、4Kパネルでのクアトロン展開は、「商品化は検討していきたいが、今具体的にどうという話はない」とした。

(臼田勤哉)