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JBL、新プレミアムスピーカー「Summit」のブックシェルフ「Ama」上陸。D2+HDIホーンと新開発ユニット
2025年9月3日 07:06
ハーマンインターナショナルは、JBLブランドの新スピーカー「Summit Series」を日本で発売する。最高峰エベレストを囲むヒマラヤ山脈の峰々にインスピレーションを受けて名づけられた「Summit Makalu(サミットマカルー)」、「Summit Pumiri(サミットプモリ)」、「Summit Ama(サミットアマ)」の3モデルをラインナップするが、まずはブックシェルフのSummit Amaが発売となる。予価はスタンド付きで1台1,430,000円。2025年秋の発売を予定している。
ブランド創設初期の1950年代に「D30085 Hartsfield」、「D44000 Paragon」の登場で始まったJBLのフラッグシップスピーカーの系譜。'80年代の「Project EVEREST DD55000」、「ProjectK2 S9500」へと引き継がれ、'00年代以降「Project K2 S9800」から「K2 S9900」、「Project EVEREST DD66000」から「EVEREST DD65000/DD67000」へと進化を続けてきた。
その伝統を受け継ぎ、来年ブランド創立80周年を迎えるJBLのエンジニアリングとサウンドヘの情熱を注ぎこんだ集大成として作られたのがSummit Series。いずれも、JBLの開発拠点である米カリフォルニア州ノースリッジのAcousticCenter of Excellenceで設計、開発されている。
シリーズ共通の特徴として、独自のD2ドライバーとHDIホーンの組み合わせに加え、新開発のユニット郡を採用。純度の高い音楽信号をユニットに届ける、独自のMultiCapクロスオーバーネットワークを搭載する。
筐体は柔らかな輪郭を持ちつつ、綿密なブレーシングも採用した堅牢設計。フロントバッフルはカーボンファイバーと一体化させた強固なものとなっている。
さらに、底面にはJBLl IsoAcousticsアイソレーションフィートを組み込んでいるのも特徴。
Summit Ama
Amaは、エベレストの南西に位置する峰、チベット語で「母の首飾り」を意味する「Ama Dablam(アマ ダブラム)」にちなんで名づけられた。険しくも美しい山容から「ヒマラヤのマッターホルン」とも呼ばれている。
2ウェイのブックシェルフで、200mm径のHC4コーンウーファーと、D2コンプレッションドライバー+HDホーンを搭載する。
D2コンプレッションドライバーは「D2815K」で、1.5インチ/38mm径。強力なネオジウムリングマグネットと、軽量なリング状のTeonex製振動板を採用し、出力を内周部へ集めて放射するリングラジエーター型のコンプレッションドライバーを前後に2基、向かい合わせに合体させている。
これにより、超高域まで伸びる再生能力と、大きな音響エネルギーを両立させた。FEA(有限要素解析)により、各部位の最適化も図り、新設計の、マグネシウム合金ではなく亜鉛ダイキャスト製のフェーズプレートなどを組み合わせることで、より滑らかな音色と伸びやかな高域特性も獲得したという。
組み合わせるHDIホーンは、独自の高硬度高質量音響素材のSonoglassを、高精度インジェクションモールド成型して作られている。サービスエリア全域にわたり、フラットな周波数特性と音圧分布をもたらすとのこと。
ウーファーは200mm径のサンドイッチコーン「JW200SC」。独自のC4カーボンファイバー混入セルロースコーン2枚を、表裏に使い、軽量で強靭なクローズドセルPMI(ポリ・メタクリル・イミド)ファームコアを芯材として挟み込み、ダンピング効果をもたせた特殊な接着剤で接着。
それをプレスして製造した、サンドイッチ構造の「Triple-layer Hybrid Carbon Cellulose Composite Cone」(HC4)ダイヤフラムを新たに開発し、採用した。
ハイブリッド・コーン設計により、シリーズ各モデルのユニットごとに、各層の厚みを最適化させた専用設計のダイヤフラムを用いることで、適切な内部損失がありながら、強靭な振動板を実現。伝統のパルプコーンの持つナチュラルな低音表現を継承しつつ、精確な波形再生能力と高出力、低歪、高いパワーハンドリングを実現している。
サスペンション構造には、アコーディオン・クロスダンパー2枚を向かい合わせに使い、振幅の前後対称性を高めた。これにより、高調波歪を低減し、小信号時から大振幅時まで高いリニアリティーを発揮するインバーテッド・デュアルダンパーを採用。EPDMフォームラバー・ハーフロールエッジとの組み合わせにより、1インチ(25mm)を超える無歪最大振幅を実現た。
フレーム前面には、エッジ周りの音響回折を改善するSummitゴールドに輝くアルミダイキャスト製トリムリングを配置した。
磁気回路は強力な大型フェライトマグネットを用いた外磁型磁気構造で、センターポールピースを延長することで、磁気ギャップ内の動作領域に対称磁界を生み出す低歪SFG磁気回路を搭載。FEAにより最適化した磁気構造で、高調波歪を低減している。
さらに、ポールピースに巻かれたコッパースリーブが、ボイスコイルの動きに伴い引き起こされる磁気変調を抑え中低域特性を改善。マグネット内周部に挿入されたアルミスタビライザー・シリンダーが磁場を安定させ、低域特性の改善に寄与している。これらにより、歪は1/10以下に低減している。
また、ポールピース中央のクーリングベントが背圧を逃がすと共に、ボイスコイルの発熱による磁気回路の温度上昇を抑制。熱伝導に優れたコッパースリーブとアルミスタビライザーシリンダーも放熱を助けている。
2.5インチ、64mm径のボイスコイルには、軽量なアルミニウムに導電性に優れた銅皮膜を被せたコッパークラッド・アルミワイヤー(CCAW)を採用。断面の縦横比5:1の比率を持つリボン線に加工し、エッジワイズ巻きに巻きあげた軽量高密度ボイスコイルを採用することで、ボイスコイル質量を30%軽減している。
スピーカーターミナルは、シリーズ専用設計のアルミダイキャスト製で、共振を抑えたカーボンファイバー巻きノブと低抵抗で耐腐食性に優れたロジウムメッキも施している。バイワイヤリング対応で、オリジナルデザインの新型ジャンパーバーも同梱する。
内部配線には高品位な銀メッキOFCケーブルを採用。ネットワークは高域用と低域用の各回路基板を分離独立し相互干渉を排除したセパレート型。
JBL独自のMultiCapクロスオーバーネットワーク方式を採用。応答性の鈍い傾向を持つ大容星コンデンサーを、複数の小容量コンデンサーに置き換えることで、ESR(静電抵抗)が低下し、機械的な動作で失われるエネルギーを減少させている。
フロントバッフルは、カーボンファイバー・ボードを高温高圧プレスでMDFパネルと一体化させたサブバッフルで強化。40mmを超える厚さの堅牢なフロントバッフルに固定している。
内部にはブレーシング構造と2種類のマテリアルによる綿密なダンピング処理が施され、キャビネットに起因するカラーレーションを排除した。
リアバスレフで、開口部に向けてフレアーを設け、不要な風切り音とポートによる強調感を解消したスリップストリーム・バスレフポートを採用。
キャビネットは外部に一切ネジの露出が無く、サランネットにもバッフル面にダボやピンなどの突起の無いマグネットキャッチ式を採用。フロントバッフルにSummitゴールドのトリムバーのアクセントを設け、ホーンには山容を模したAmaのトレードマークをあしらっている。外装には堕厚なエボニー天然木突板を採用。ハイグロス仕上げを施している。
スタンドは、内部に乾燥砂を充填しダンビングと質最増加による低重心化を図ったアルミ押出成型の支柱と、上面に本体キャビネットと同じエボニー突板をあしらったアルミダイキャスト製ベースを採用。
底面にはカスタムメイドのJBL IsoAcousticsアイソレーションフィートを装備。高さ調整可能で、スピーカーユニットからの振動を抑制し、スピーカーと設置面を効果的に分離している。
周波数帯域は34Hz~35kHz(-6dB)、クロスオーバー周波数は1,600Hz。感度(2.84V/1m)は84dB。インビーダンス4Ω。推奨アンプ出力は25~200W。外形寸法は、本体が308×476×336mm、スタンドが412×551×412mm。重量は本体が26.8kg、スタンドが20.5kg。
音を聴いてみる
短時間ではあるが、試聴したのでファーストインプレッションをお届けする。
シンプルなピアノで「ラ・カンパネッラ」、さらに「キャノンボール・アダレイ・クインテット/アラバマに星落ちて」などを聴いてみる。
まず、最初にわかるのが現代的で情報量の多いサウンドでありつつ、音像はしっかりと前に出る、現代のJBLらしい音である事。ピアノの右手の動きも微細に描き、実在感がありつつ、鍵盤を押し込んだ時の芯のある音がグッとこちらに向かって押し寄せてくる気持ちよさも兼ね備えている。
「アラバマに星落ちて」では、キャノンボール・アダレイのアルトサックスが非常に生々しく描写され、定位もクリア。サックス音の響きがどこまでも広がる音場の広大さに、ブックシェルフスピーカーらしさも感じさせる。
響きは、左右や前方だけでなく、後方にも本当に深く広がっていくので、まるで部屋の壁が消滅したような感覚だ。
響き自体にも、余計な膨らみは感じられず、筐体の剛性の高さや、カーボンファイバー・ボードで強化したフロントバッフルの効果を実感できる。音場の広さや音像定位のクリアさには、スタンドのIsoAcousticsアイソレーションフィートも効いているのだろう。
ブックシェルフなので、低域がどうなのかも気になるところ。男性の、渋い低音ボイスが楽しめるゴスペルグループ「The Fairfield Four/These Bones」を再生すると、ブックシェルフとは思えないほど、重く、ずっしりとした低音が吹き出してくる。
200mm径のウーファーは盛大に振幅しているが、ストロークがスムーズなためか、歪は少なく、低音の中の細かな音もクリアに聴き取れる。これだけウーファーが激しく動いても、低音の響きがにじまないのは、筐体の剛性の高さや、バッフルの強固さ、ユニット取り付けの工夫などによるものだろう。
JBLのプレミアムなラインでブックシェルフというのは珍しい製品だが、最新JBLの魅力を持ちつつ、ブックシェルフの良さもしっかりと感じられる。部屋のスペースの問題で、あまり大型のフロア型は置けない、重低音もあまり出せないという日本の住宅には、とてもマッチしたスピーカーと感じた。