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IFA 2014は9月5日開幕。家電の次の進化は「接続性」
テレビは引き続き「リビングの主役」
(2014/4/28 00:00)
コンシューマ・エレクトロニクスショー「IFA 2014」の開催に先駆け、報道関係者向けのプレイベント「IFA 2014 Global Press Conference」(IFA GPC)が、トルコのアンタルヤで現地時間の4月26日に開催された。
IFA 2014は、ドイツ・ベルリン国際見本市会場で9月5日~10日(現地時間)に開催。1924年の初開催から、今年で54回目となる。AV/IT機器や、白物家電などの最新製品が展示され、日本からもソニーやパナソニックなどの大手メーカーをはじめ、多数の企業が出展している。
4月26日より行なわれたIFA GPCは、IFAの本イベント出展社らが、開幕に先駆けて新製品の予告や、今後の戦略などについてプレゼンテーションを行なうもの。今回は50カ国以上、300人を超すジャーナリストらが参加している。
記者会見では、今回のIFAの概要のほか、家電業界を取り巻く市場環境などについて、主催社のドイツ民生通信エレクトロニクス協会(gfu)や運営会社のMesse Berlin、調査会社のGfKらがプレゼンテーションを行なった。
新設された“一等地”をSamsungが確保
Messe BerlinのChristian Goke CEOは、2013年のIFAを振り返り、来場者合計は241,100人となったことを紹介、そのうちトレード来場者が58%で、海外からが47%となるなど、トレードショーとして成功していることをアピールした。
インターナショナルジャーナリストの数も、2,360人となり、「IFAを本物のインターナショナルイベントにする、という目標が達成された」と説明。また、2008年からホームアプライアンス(白物家電)のブース展開も行なっているが、その参加メーカーも順調に増えているとした。
IFAは家電全般、コンシューマエレクトロニクス、IT/コミュニケーション、ホームアプライアンスの3つの領域で展開してきたが、今後も全領域での拡大を見込む。特に、大きな成長を見込むのがコミュニケーション領域で、スマートフォンが、家庭向けの家電関連機器で最大の売上規模になると見込んでいる。
そのためにIFA 2014ではブース面積を拡大。新たに「CityCube Berlin」という展示場とミーティングスペースを一体化した設備を導入する。IFA 2014ではブース面積が6,000m2拡大される。
プレスカンファレンスや基調講演などのイベントもこのCityCube Berlinで行なわれる。そのため、20以上の建屋が連なるIFA会場のメッセベルリンのなかでも、中核的な会場となると見込まれる。
そしてこのCityCube Berlinにブース展開するのが韓国Samsung Electronicsだ。従来のHall 20など、分散していたブースを集約し、モバイルやエレクトロニクスなど全てのSamsung関連製品がCityCube Berlinに集約される。また、IFA 2014の基調講演もSamsungのBoo-Keun Yoon社長兼CEOが担当するなど、IFA 2014ではSamsungがかなり力を入れた展示を行なうと予想される。一方、ソニーはSamsungがもともと入っていたHall 20に移動する。
CE 4.0時代の鍵は「接続性」
ドイツ民生通信エレクトロニクス協会(gfu) 監査役会議長のHans-Joachim Kamp氏は、家電業界について、「Consumers Electronics 4.0の時代」と述べて、これからの製品に必要な要素として接続性(Connectivity)を強調した。
FacebookがWhatsappを190億ドルで買収したことなどを紹介し、ソフトウェア企業の潜在的な能力を紹介。テレビやSTBのほか、冷蔵庫や洗濯機、調理家電などでもネットワークや相互の機器の接続性が重要になるとする。
スマートデバイスから、家電の電力消費確認や操作、コンテンツ、ネットワークサービスの利用などを行なうことは、「コンシューマの欲求」とし、ネットワークに繋がれ、相互に制御できる家電の姿を紹介。家電業界の業界地図は毎年のように変わってきたが、「伝統的な西欧企業にも、新興企業にも機会はある」とした。
また、家電業界と同様に、IFAも90年間継続してきたのは「時代にあわせて変化し続けたから」として、隔年開催から毎年開催にしたこと、2008年からは白物家電も扱うように変化したことを紹介。IFA 2014の主題は「デジタル社会」とし、スマートデバイスの利用や、家電のコントロールやデータ取得、省エネ、データ・セキュリティなどについて紹介するという。
デジタルワールドは今後も拡大。テレビは引き続きリビングの主役
GfKの家電部門のグローバルディレクターJurgen Boyny氏は、CE、IT、テレコミュニケーションの3ジャンルを総合し、「デジタルワールド」と定義。デジタルワールドは今後も継続的に拡大していくとの見通しを紹介した。
デジタルワールドは、2010-2012年は、新興国市場の成長やスマートフォン市場の勃興が牽引し、急拡大したが、2013年は新興国市場の成長鈍化などを受けて、約1%の成長にとどまった。しかし、2014年以降は世界経済の改善と、パソコンやテレビの買い換えサイクルなどで、再び成長軌道にのると予測する。成長を牽引するのは、ラテンアメリカや中東、アフリカなどで、北米やアジアの先進国はマイナス成長になる見込み。
一方、大きな成長が期待されるカテゴリは引き続きスマートフォン。家庭向けのデジタルデバイスとして、金額ベースで最大の製品となっているが、引き続き成長の見込みで、2015年にはタブレットとスマホの合計が、デジタルデバイスの金額シェアの約半分を占めると予想する。
2014年にはネット接続デバイスとして約2億台の出荷が見込まれるが、そのうち1.2億台がスマートフォンになる。ネットワーク接続性や通話だけでなく、GPS、カメラ、マイク、ビデオプレーヤーなどを統合したスマートフォンは、多くの既存市場を吸収しながら今後も拡大する見込み。
スマートフォンの登場が、マイナスに作用するカテゴリもある。まずは、コンパクトカメラ、ポータブルメディアプレーヤー、ポータブルナビなどが一例で、コンパクトデジタルカメラは2010年との比較でほぼ半減している。
一方で、GoProに代表されるようなアクションカメラ市場が立ち上がり、2010年の20万台市場が550万台まで拡大しているという。「スマートフォンでは撮影できない厳しい環境の映像を録画し、YouTubeにその体験をアップロードする」という新しい用途を生み出したことがその要因だが、「この成功がどこまで続くかはわからない」とする。未来を予測できないという点では、電子書籍リーダ(e-Reader)の例を挙げ、2011~2012年にヒットしたがその後縮小している。「ヒットのタイムフレームは誰もわからない」とした。
一方、テレビについては、引き続きリビングのコアデバイスになる。と予想。テレビへの接触率は世界的に落ちておらず、また、大型化も伸長し、スマートTV化によるネット接続などもあり、今後も堅調な市場となる見込み。周辺機器となるサウンドバーの市場も拡大しているとする。また、世界的に単身世帯が増えているという事実も、テレビやモバイルデバイスの成長を後押しすると予測した。
次のステップとしては、デバイスが相互につながるコネクティビティ(接続性)が重要になるとして、例としてテレビをタブレットで操作したり、タブレットで番組を見る「セカンドスクリーン」などの事例を紹介。また、白物家電のネットワーク対応により、洗濯機や冷蔵庫、コーヒーマシーンなどをスマートデバイスから操作するといった事例が増えると予想する。
Boyny氏は、「デジタルワールドは2015年まで成長し、特にスマートフォンとタブレットは成長する。スマートフォンが新しいライフスタイルを作っており、次はスマートデバイスが相互にいつでも繋がる世界が来る」とまとめ、「接続性」が今後のキーワードになることを強調した。