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スカパー、有料多チャンネル加入者が通期で初の純減

コンテンツ強化、長期契約優遇へ。不正B-CAS摘発は146名

 スカパーJSATは9日、2013年度通期の連結業績について説明会を開催。有料多チャンネル放送の加入者数は、サービス開始以来初めて通期で純減となった。高田真治社長は「2014年度は変革の年」とし、今後のコンテンツ/サービス強化の施策を明らかにした。

 発表会では、6月2日より開始が予定されているテレビの4K試験放送に向けた、同社の具体的な取り組みについても説明。4K放送関連については別記事で掲載している。

コンテンツへの費用配分を強化。長期契約者への優遇/BSスカパー改編も

'13年度通期の損益概要

 8日に発表された'13年度通期の業績は、売上が前年同期比7.6%増の1,221億5,500万円、営業利益が同34.4%増の217億1,300万円、経常利益が同37.1%増の215億2,900万円、当期純利益が同0.2%減の96億5,900万円となった。

 このうち有料多チャンネル事業の売上は、1,716億8,300万円。営業利益は11億8,400万円。売上の主な増減要因は、ハイビジョンサービスの視聴料収入の増加がプラス140億円、スカパー!(旧e2サービス)手数料収入等がプラス8億円、標準画質サービスの終了に係わる手数料収入等がマイナス63億円、送信料収入の減少がマイナス5億円。一方、番組供給料の増加などで営業費用は57億円増えた。

 新規加入件数は年間48万件で、目標としていた64万件や、前年度の62.2万件を大きく下回った。純増数の目標は3.6万件だったが、実績はマイナス11.3万件の純減。通期での純減はサービス開始以来初だという。加入目標は未達に終わったが、HD移行が計画を上回ったことや、ARPU(1契約あたりの売上)が2,004円に向上したことなどにより、事業としては前年度を上回り、黒字を達成した。

スカパーJSATの高田真治社長

 高田社長は'14年度を「変革の年」とするための3つの取り組みを説明。1つは「コストの構造変革」で、コンテンツや顧客サービスへの費用配分を拡大する。2つ目は「ビッグデータの活用によるサービスの向上」で、新たな顧客管理システムの導入や視聴動向調査により、より的確なマーケティングの実現を目指す。3点目は「スカパー!オンデマンドを主要サービスへ持っていく」というもので、新規ユーザー層の獲得を図る。

 総視聴料収入を増加させる取り組みの一つとして、45チャンネルの中から5つを選んで視聴できる新しいチャンネルパック「スカパー! セレクト5」を3月から開始。より高額なパック商品加入者がセレクト5に流れるということも懸念されたが、実際は基本パックやスポーツセットなどの加入者は拡大。単チャンネル契約していた人が、視聴チャンネルを増やすためにセレクト5へ加入する傾向が出てきたという。現在、新規契約者のうち、セレクト5の加入者は1割以上を占めている。

変革に向けた3つの取り組み
コンテンツなどへの費用配分を拡大
幅広い層からの収入増加を目指す

 さらに、既存の長期契約者などに向けた優遇措置も予定。「ARPUの高い/低いに関わらず同じサービスレベルで対応してきたが、今後、期間や金額に応じて何らかの特典があるサービスを新規展開して、少しでも長く楽しんでいただける対策を強化していく」という。

 そのほか、BSスカパーの大幅な改編も秋に実施予定。現在のBSスカパーは、CS放送番組の一部を視聴できるショーケース的な役割を持っているが、「秋の改編を機に、他のプラットフォームと差別化した編成にする」と予告した。

スカパー! オンデマンドを主要サービスへ
海外展開のWAKUWAKU JAPANの現状報告
V-High帯でのチャンネルも認定された
宇宙/防衛市場への取り組み
衛星需要に対する今後の対応

中計目標の'15年度400万件は未達。不正B-CASカードの摘発は146名

 新たに導入する顧客管理システムでは、従来のICカード枚数単位での契約から、加入者単位での管理に移行。これにより、1人(1世帯)で複数台契約している場合も、今後は契約数が「1」とカウントされ、数字上は従来よりも少なくなるが、高田社長は「1人1人、世帯ときちんと向かい合っていく姿勢を明確にする意味合いを込め、契約者数を増やすことにこだわっていく」とした。

 6月からは「スカパー! プレミアムサービス」の放送方式変更に伴い、既存のSD画質(MPEG-2)放送は5月31日に終了。SDからHD(H.264)サービスに移行しない場合は契約が強制解除となる。'14年度に強制解除される件数の見込みは24.4万件(ICカード数では26.5万件)を見込む。

 新顧客管理システムに基づいた、'14年度の加入件数目標は317万9,000件。新規契約は43万1,000件、解約率は21.2%としている。純増数はマイナス14万8,000件で、上記の強制解除を除く純増数はプラス9万6,000件。

'14年度の加入目標
'14年度の連結業績予想
セグメント別業績予想

 '15年度中期経営計画の達成に向けた見通しも説明。連結売上は当初目標の2,000億円に対し、1,900億円程度、連結営業利益は目標の200億円に対し、250億円を目指す。累計加入件数は、当初の400万件超という目標には未達となる見通しで、スカパー!オンデマンドの有料ユーザー(20万件)を含め380万件を見込む。

 B-CASカードの改ざん/不正使用問題に関する現状も報告。全国の警察による取り締まり強化により、摘発件数は146名となった。既に刑事訴訟で有罪判決が言い渡された事例もあり、「いずれも、民事訴訟を含め厳正に対処していきたい」とした。

前年度比での増減要因
中期経営計画と見通し
加入実績と今後の見通し

(中林暁)