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スカパー、日本番組の海外展開を'20年までに22カ国へ

WAKUWAKU JAPANで新会社。JKT48握手券で7契約する人も

 スカパーJSATは4日、海外への配信事業規模拡大に向けて新会社「WAKUWAKU JAPAN 株式会社」を5月1日に設立すると発表した。既にインドネシアやミャンマーで展開している、日本番組を現地語で放送するチャンネル「WAKUWAKU JAPAN」に関連した事業を、新会社により強化。契約数の拡大や、他の国への展開などを進めていく。さらに、7月からはクルージャパン機構からの出資を受けることも決定しており、日本企業の製品や文化、観光といった分野でも日本の魅力を世界に発信し、視聴料以外の収益化も図る。

4日に、新会社発表に関する記者説明会を開催。高田真治社長らが説明した

 スカパーJSATが展開するチャンネル「WAKUWAKU JAPAN」は、'14年2月の立ち上げ以来、インドネシアとミャンマーにおいて現地の放送/CATV事業者らを通じて、日本のコンテンツを現地の言葉で24時間365日放送。サービス開始から約1年を迎えた。

 両国での取り組みにより、経験とノウハウを蓄積すると同時に、日本コンテンツへの強いニーズがあることを改めて実感した」としており、新会社の設立により、編成/コンテンツの強化に加え、人材の確保や、政府、地方自治体、幅広い国内企業などとの連携強化により「強固なオールジャパン体制」の構築を図り、将来的にはスカパーJSATの中核事業として成長させることを目指す。

 現在は2カ国のみだが、早期に他国展開を進め、'20年度までに、他のASEAN諸国や英語圏など22カ国、4,100万世帯での放送開始を目標としている。

WAKUWAKU JAPANは'14年2月に立ち上げた
チャンネルのコンセプトと現状
'20年までに、22カ国への展開と、視聴可能世帯4,100万世帯を目指す

 新会社「WAKUWAKU JAPAN 株式会社」は、5月1日にスカパーJSATの100%子会社として設立し、7月1日には簡易吸収分割方式により、スカパーJSATからWAKUWAKU JAPAN事業を継承。同日付で第三者割当増資を行ない、スカパーJSATと、海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)が共同出資。これにより、出資額はスカパーJSATが66億円、クールジャパン機構が44億円となる予定。チャンネルの運営については、現地の放送事業者と連携し、スカパーが担当する。

ウルトラマン、ホラー、JKT48/AKB48などが人気。“握手券”で7契約の人も

田中晃専務

 スカパーJSATの田中晃専務は、これまでのWAKUWAKU JAPANの取り組みと、新会社の事業内容について説明。最初にスタートしたインドネシアでは、衛星やCATVなど6プラットフォーム/250万世帯が視聴可能世帯で、そのうち約9割がWAKUWAKU JAPANを認知しているという。ミャンマーでは地上波の有料チャンネルサービスでも放送している。

 インドネシアにおけるWAKUWAKU JAPANの視聴者は、100%が富裕層(月額支出が日本円換算で2万円以上)としており、国全体でスマートフォン所有率23%だが、同サービス視聴者は97.7%が持っているという。趣味については88%が「テレビ視聴」だという。

インドネシアにおけるWAKUWAKU JAPANの視聴者

 WAKUWAKU JAPANでは、日本のドラマやアニメ、特撮、スポーツ(Jリーグ)、音楽、ライフスタイルといったジャンルの番組を展開。例えば「お化けの話題が好きなホラー大国」とされるインドネシアで始めた「J HORROR」という番組は反響が大きく、現在は日曜21時に放送しているが、現地では「お化けは金曜の夜に出る」とされることから、4月からは金曜夜に編成するという。

 また、アニメ・特撮ジャンルで開局以来、不動の人気となっているのが「ウルトラマン」。握手会などを行なった現地のイベントでは、5,000円のTシャツ3,000枚が即完売したとのこと。

WAKUWAKU JAPANで放送しているアニメや特撮
ウルトラマンが根強い人気を誇る
総務省のモデル事業として展開している番組「SHIKI-ORIORI」
ドラマ。半沢直樹なども放送した
Jリーグ。ガンバ大阪と現地チームとの試合なども行なっている
ホラー番組の「J HORROR」

 アイドルは、インドネシアで活動するJKT48と、日本のAKB48による合同コンサートも2月にジャカルタで開催し、スカパーJSATも協賛。現地でもイベントには「握手券」が付くとのことで、1人で7契約するファンもいたという。田中専務は「来月に6契約を解除してしまうかもしれないが、(WAKUWAKU JAPANでは)夜にAKBのベルト番組を放送しているので、1件は契約し続けてくれると期待している」と述べた。

AKB48とJKT48の合同コンサートもジャカルタで実施。日本とインドネシアのアイドルがコラボした
放送だけでなく、リアルイベントと連動して日本コンテンツの発信を強化

 WAKUWAKU JAPAN番組は放送のみで、ネット配信は行なっていない。現時点では具体的な開始時期などは明らかにしていないが、「インドネシアやその他の国でも、OTT(Over The Top)サービスを求める声は強くなっている。今後コンテンツを出していく事業者とは、(放送だけでなくOTTでも配信することを)同時にやっていかないと出遅れも生じるかもしれない」(田中専務)との考えを示した。

 なお、同日付でスカパーJSATは、「Jリーグオンデマンド」の海外配信を開始することも発表している。こちらは、WAKUWAKU JAPANとは異なり、海外にいる日本人に向けたサービスとなる。

高田真治社長

 新会社設立までの経緯と今後の展開について高田真治社長は、「昨年春から、事業発展のために、クールジャパン機構と一緒にできることは無いかと検討を進めてきた。WAKUWAKU JAPANの事業をスピードアップして拡大するために、我々だけでは力足らずだが、クールジャパン機構の出資も受けて、単に放送コンテンツビジネスだけでなく、“COOL JAPAN”や“VISIT JAPAN”、“地方再生”といった国の政策推進の一助になると考えた。国の関係機関、地方自治体、国内企業との連携で、名実ともにオールジャパンで事業展開スピードを上げ、早く収益化を実現したい」と述べた。

 新会社の黒字化の時期については、「遅くとも2020年(視聴可能世帯数4,100万世帯)まで」(高田社長)と述べた。また、他国展開については、現在シンガポールと交渉を進めており、開始時期は「早ければ夏」(田中晃専務)としている。収益源は、2020年時点では視聴料収入が65%、広告が35%という構成を見込む。これに、マーチャンダイジングやイベントといった放送以外の収入を上乗せしていくことを目指す。

政府や自治体、企業との連携でオールジャパンの事業展開を図る

(中林暁)