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ソニー、バランス対応/70mmユニットで“スピーカーを聴いているよう”な最上位ヘッドフォン

 ソニーは、ヘッドフォンのフラッグシップモデル「MDR-Z7」を10月18日に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は56,000円前後。

最上位ヘッドフォン「MDR-Z7」

 大口径の70mm径HDドライバーユニットを採用した密閉型ヘッドフォン。再生周波数帯域は4Hz~100kHzを実現しており、ハイレゾ再生にも対応している。さらに、バランス駆動にも対応。組み合わせるポータブルアンプとして「PHA-3」も発表されている。アンプについては別記事で紹介する。

大口径70mmユニットと新振動板

 70mmユニットを採用した大きな理由は、ソニーが多くの人の耳型を採取し、イヤフォン/ヘッドフォンを開発する中で、人の耳の縦方向のサイズが約70mmであり、それと同じサイズのユニットから音を出せば、耳元へほぼ平面波で音を届けられ、スピーカーで再生した音が届く時のような自然な響きを体験できるためという。

 また、振動板が大きいと、同じ音の大きさを出すために必要な振幅が小さくて済み、リニアリティ(入力信号に対して正確に音を鳴らす事)に優れ、微小音の再現性が良くなるとしている。

70mmユニットを採用。振動板は「アルミニウムコートLCP振動板」
肉厚のイヤーパッド

 振動板には、MDR-1Rなどで使われている、固有音の少ない液晶ポリマーフィルムを採用。新たに、振動板の表面にアルミニウムの薄膜をコーティングしており、異なる素材を組み合わせる事で共振モードを分散させ、高域における内部損失がさらに向上。超高域まで色付けの少ない音になったという。この振動板は「アルミニウムコートLCP振動板」と名付けられている。

 ハウジングは密閉型。上部に通気孔を設け、低域における通気抵抗をコントロール、振動板の動作を最適化する事で、低域の過渡特性を改善し、リズムを正確に再現するという「ビートレスポンスコントロール」を備えている。

 イヤーパッドには、エルゴノミック立体縫製を採用。頭部の凹凸にフィットする構造になっているほか、立体縫製により、低反撥ウレタンフォームが歪まずに、柔らかさを引き出している。また、イヤーパッドは内側に倒れこむ「エンフォールディングストラクチャー」構造を採用。気密性を高め、音漏れを低減。重低音再生にも寄与している。

 独自のハンガー構造の「インワードアクシスストラクチャー」も採用。ハウジングの回転軸をより内側に向け、装着安定性を高めている。バンド部は本革、ハンガーとハウジングはアルミ製。重量は335g。

バンド部は本革
下部

アンバランスケーブルもグランドをL/R分離

 ケーブルは両出しで、ヘッドフォン接続側はステレオミニ端子(3芯)を採用。バランス接続にも対応可能。アンバランスとバランス、2つのケーブルが標準で付属している。

 バランスケーブルは、グランド部分をLとRで完全に分離する事で、低歪で繊細な音を再現できるのが特徴。この利点に近づくため、付属のアンバランスケーブルにもこだわりがある。

 アンバランスケーブルは、内部がLRのグランドを分けた4芯構造となっており、LとRからのグランドの帰り道を、通常のヘッドフォンではユニットの近くでまとめてしまっているが、付属アンバランスケーブルでは2本のケーブルに分けたままステレオミニの入力端子まで戻している。端子部分では1つにまとまるが、左右の分離が改善され、音の広がりと、引き締まった低音を実現するとしている。入力端子は4芯となっている。

ケーブルは両出し
ヘッドフォン側はステレオミニ端子

 付属のバランスケーブルは、入力端子部はステレオミニ(3芯)×2本を採用。ヘッドフォン接続側もステレオミニ(3芯)×2本となる。なお、AKシリーズなど、他社からは4極2.5mmミニミニのバランス接続を採用した製品が増えている事については、「ソニーでも試作はしてみたが、プラグ内の導体の断面積が小さく、音質上のネックになっているという検証結果があったため」、最終的にはステレオミニ(3芯)×2本になったという。

バランス接続にも対応する。ポータブルアンプ「PHA-3」と組み合わせたところ
標準のバランス接続ケーブル

 なお、Z7に対応したオプションのハイクラスケーブルも単品販売する。KIMBER KABLEが協力しており、ソニーとのダブルブランドで商品化、販売はソニーが担当するもので、2mのバランス接続ケーブル「MUC-B20BL1」(10月18日発売/オープンプライス/実売24,000円前後)、3mの標準プラグアンバランスケーブル「MUC-B30UM1」(同24,000円前後)、1.2mのアンバランスステレオミニケーブル「MUC-B12SM1」(同22,000円前後)を用意する。

 いずれにも、Braid構造(8本)と呼ばれる、KIMBER KABLE独自の編み構造を採用。外部ノイズを遮断し、ワイヤー間の相互作用を防止、ノイズレベルの低減や、ケーブルの持つ電気的特性の最適化を実現したという。

KIMBER KABLEが協力した別売ケーブル。左からバランス接続、アンバランスの1.2mでステレオミニ、アンバランス3mで標準プラグ
Braid構造(8本)と呼ばれる、KIMBER KABLE独自の編み構造を採用

ファーストインプレッション

 70mmの大口径ユニットを採用した密閉型ヘッドフォン。ハウジングも大きいので、室内利用がメインとなるサイズのヘッドフォンだ。見た目ほど重くは無く、装着感やイヤーパッドの密着性も良好だ。

 音を出した瞬間にわかるのが、スケール感のあるサウンドで、広い音場が創成されている事。平面波を耳に届ける事でスピーカーを聴いているような感覚を追求したというモデルだが、確かにヘッドフォンのサウンドというよりも、スピーカーから出た音が、空間を伝わって耳に届いた時のような空間の広さ、自然さを感じる。密閉型ではあるが、開放感のある、ゆったりと自然な音が楽しめるヘッドフォンだ。

 圧巻なのは、音の発生源まで距離を感じる空間の広さがあるにも関わらず、押し寄せて肺に響くような音圧の高さが感じられる事。普通のヘッドフォンは音圧を感じようとボリュームを上げていくと、音が耳に近くなり、ギュウギュウに詰まったような音になるが、Z7の場合はオーディオルームで大型フロアスピーカーを大音量で鳴らし、その前に座っているような感覚。遠いけれど、音圧がビンビン届いてくるという不思議な感覚だ。

 音は極めてワイドレンジで、高域にも固有のキャラクターや固さは一切感じられない。液晶ポリマーフィルムのナチュラルなサウンドが、超高域再生時でもしっかりと維持されている印象だ。低域の分解能も高く、沈み込みも深い。実売5万円台と高価なモデルにはなるが、他社の10万円クラスのハイエンドヘッドフォンとも十分渡り合える実力を備えており、そういった意味ではコストパフォーマンスに優れたモデルとも言えそうだ。

(山崎健太郎)