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オヤイデ、オーディオケーブル新導体「102 SSC」を自社開発

「普遍的な材料を最高の技術で」。10月17日に製品発売

 オヤイデ電気は、三洲電線と協力し、オーディオケーブル用の精密導体「102 SSC」を開発した。10月17日から、102 SSC導体を使ったケーブルを多数発売する予定。

102 SSCの素線表面写真

 「普遍的な材料を世界最高の技術と品質で生産する」というコンセプトで開発したオーディオケーブル向け導体。オヤイデでは、PCOCC-A導体を使ったケーブルを長年数多く手がけ、製品群の根幹としていたが、2013年冬に導体製造元の古河電工からPCOCC-Aの生産中止が発表された。オーディオ用ケーブル導体は市場規模が小さく、非効率な素材でもあり、PCOCC-Aのように大手電線会社が突然生産を中止することもあり得る。こうしたことから、オヤイデは自らケーブル導体を開発することとしたという。

 自社でのケーブル導体開発のためにオヤイデが決めたコンセプトは「普遍的な材料を世界最高の技術と品質で生産する」というもの。そのため、材料は安定供給される銅母材を採用。銅母材は、国内で精錬され、JIS C1011に準拠し、リサイクル銅を一切含まないバージン銅を指定し、不純物の混入を避けている。

 102 SSCの銅母材は、高い加工技術を有する日本国内の伸銅会社において、伸銅される。その際、一般的な8mmの荒引線に止まることなく、段階的に約1mmの細さの銅線にまで伸銅する。これは後の細線化における伸線工程を減らし、銅線の機械的応力歪みを軽減し、銅の結晶構造の劣化を最小限に抑えるのが目的という。

 また102 SSCでは、μm単位で高精度に制御されたピーリング加工によって銅線の表層を削り取り、銅線の表層に浮き出た不純物を100%除去する。通常の伸銅工程では酸洗浄によって、銅線の表層に浮き出た酸化物などの不純物を除去するが、この方法の場合、洗浄液の残留を生じやすく不純物を完全除去できないため、102 SSCではピーリング加工を選択したという。

ピーリング加工により不純物を除去

 表層の不純物を除去した銅線に対し、伸銅工程による機械的応力歪みを除去するためのアニーリングについても、オーディオ用導体の性能を最大限まで引き出すために、機械的強度、導電率、再結晶化などを考慮。テストを繰り返して得た最適な温度と時間調整のもと、アニーリングを行なう。その結果、アニーリング終了時におけるこの銅線の導電率は102.3%IACSとなる。「102 SSC」という導体の名称の由来もこの導電率から来ている。アニーリングが施された銅線は、酸化防止の梱包を行ない、伸線会社に向けて2日以内に出荷される。

 伸縮工程と撚り加工は、三洲電線と協力。オヤイデは、「非常に高い次元で、常識では考え得ない精度で製品を創り上げる」ため、「PATEK PHILIPPEやVacheron Constantinのような、芸術の域にまで達する精密導体」を目標に掲げる。そのオヤイデの要求に応え、生産可能にしたのが、三洲電線だったという。

 両社は、素線表面の平滑加工と加工精度の向上に取り組み、銅線を細線化する過程のダイスという器具には、一般的な人工ダイヤモンドダイスではなく、天然ダイヤモンドダイスを採用。ワイヤー潤滑性に優れ、均一な減面加工や最小限のダイス引抜力などの特色があるためより高精度な製造が可能という。加工精度は素線の外形寸法許容値を±1μmに設定している。JIS C 3102に規定された電気用軟銅線の外形寸法許容値±8μmを大幅に上回る精度で、表面を平準化した銅(Special Surface Copper)というイニシャルから、「102 SSC」と命名している。

 102 SSCの導体構造は、三洲電線が特許を持つ3E撚り構造を世界で初採用。同心撚り配列構成の一括集合撚り線導体で、3種類の異なる素線径を配置する事によって撚り線配列を緻密化。これにより導体構成の細径化が可能となり、導体特性値の向上が図られるという。また、撚り線外径のダウンサイジングと共に、安定した高精度な外径を保ち、撚り線の断面が真円という導体構造が可能となったという。

 オヤイデでは、この102 SSCを使ったケーブルを10月17日より発売する予定で、「世界最高峰の技術と品質で生産する」としている。

3E導体構造

(臼田勤哉)