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ウォークマンなど約30製品でソニーのプロダクトデザイン史を追体験。ソニービルで29日から

 東京・銀座のソニービルは、4月29日~6月14日まで、70年代から現在までのソニー製品約30点を展示し、ソニーのプロダクトデザインの歴史を振り返る「Sony Design : MAKING MODERN ~原型づくりへの挑戦~」を開催する。会場は8階のコミュニケーションゾーンOPUS(オーパス)で、時間は11時~19時。入場は無料で入退場自由。

「Sony Design : MAKING MODERN ~原型づくりへの挑戦~」

 ニューヨークの出版社Rizzoli International Publicationsが、4月28日に出版する書籍「Sony Design : MAKING MODERN」の発売を記念したイベント。国内ではAmazon.co.jpや全国の書店で販売。また、TSUTAYAやソニーストアでも取り扱う予定だという。価格は米75ドルで、Amazon.co.jpでは9,079円(税込)で販売している。

 書籍「Sony Design」では、ソニーが生み出した「時代を象徴する製品やデザイン」を新たに撮りおろした写真とともに収録。展示会では「音楽を連れて歩く」というライフスタイルを生み出したウォークマンや、テレビの新概念を生み出したプロフィール、最新のプレイステーションなど、約30点のソニー製品を展示。「ソニーのデザインの進化や深化の軌跡を体験できる」としている。

会場の様子

 会場でのアンケートや、OPUS公式Twitterアカウント(@opus_event)を使って、スマートフォン・タブレット用のオリジナル壁紙がもらえるプレゼント企画も実施する。

CDプレーヤー「D-50」
Street Styleヘッドフォン「MDR-G61」
スポーツ向けウォークマン「WM-F5」
プロフィール1号機「KX-20HF1」
CineAlta 4Kカメラ「PMW-F55」
ペット型ロボット「AIBO」

トークショーで各々の「マイ・ベストソニープロダクト」を紹介

ソニー クリエイティブセンター シニアプロデューサーの市川和男氏

 28日にプレス向け内覧会・トークショーが開催された。ソニー クリエイティブセンター シニアプロデューサーの市川和男氏は「大賀典雄がはじめてデザイナーを各設計部署から集めて社内にデザイナーチームを1961年に創立してから、2011年で50周年を迎えた。自らのデザインを客観的に見つめ直していくプロジェクトのひとつとして、この書籍の出版を企画した」とコメント。

 ソニーの製品やブランドを紹介する書籍としては、これまでにも「Sony Chronicle」(ソニー・マガジンズ)などが出版されているが、そうした書籍とは異なり、ひとつひとつのプロダクトデザインにフォーカスしつつ、全体を俯瞰して見せるようにしたのが特徴だとした。

1961年に創立されたソニー社内のデザイナーチーム
「Sony Design : MAKING MODERN」制作作業の1コマ
本書編集者のイアン・ルナ氏

 制作には編集者のイアン・ルナ氏らが加わって「現代を生きる20代の若者たちにソニーが作ってきたデザインや文化を伝える」という目的で編集され、若者のカルチャーにソニーが与えたものを振り返れる構成になっている。そうした目的を実現する手段の一つとして、またイアン・ルナの意向もあり、ソニーの創業者の一人である盛田昭夫の原作を元に漫画家・さいとう たかをがコミック化した「劇画MADE IN JAPAN」の一部を抜粋するなど、さまざまな工夫が為されている。

表紙には、本書の最後に登場するPS4を横置きにした写真を使うことで、ソニーデザインの回帰性と次世代に向かう矢のようなイメージを持たせた

 実際の紙面制作では、取り上げる製品を選び、アマナのスタジオを借りて写真家・安永ケンタウロス氏に物撮りを依頼。古い写真は使わず、製品と正対した写真をすべて新規に撮り下ろしている。この工程には約3年を費やしたという。なお、市川氏は本書の出版から会場全体のデザインまで関わっている。

市川氏の発案で、什器の分かれ目の線をデザインとして取り込み、製品やキャプションの配置も書籍の中面のような工夫がされている

 パネルディスカッションでは、ソニー クリエイティブセンターのセンター長を務める長谷川 豊氏、プロジェクトを立ち上げた当初からデザインのプロセス、デザインそのものを見つめなおす仕事に関わってきた、OeO/クリエイティブディレクターのトーマス・リッケ氏、そしてデザインエディター/TRI+ 取締役の関 康子氏が登壇。関氏の進行の元で進められた。

長谷川 豊、トーマス・リッケ、関 康子各氏のプロフィール

 まず、「マイ・ベストソニープロダクト」について、長谷川氏はスカイ センサー ICF-5800を手に、「父親に買ってもらい、兄と共有していた一品で、BCL(編注:短波ラジオによる国際放送)を楽しんでいた。プロフェッショナリズムをいかに一般ユーザーに楽しませるかが、デザインの細かい処理や使い勝手の良さとしてうまく設計されている」と語り、飛行機のコックピットデザインを模した取扱説明書も取り出しながら、製品の世界観がよく現れている一例とした。

 一方、リッケ氏は、「数ある製品の中であえてひとつ選ぶなら、ウォークマン」として、アウトドアやスポーツ用に開発されたウォークマン第1号機、WM-F5を紹介。ニューヨークにいた12歳の頃に買ったものだと語り、「いつでもどこでもステレオを聞ける、これはまさしく表現の自由を体現していると思った。ソニー製品のキャラクターが現れている製品として、今でもよく覚えている」とコメント。関氏も「ウォークマンは自分の当時の喜び、楽しみといった記憶とともにあって、ソニーの製品と自分の人生体験がリンクしていると感じる」と応じた。

長谷川 豊氏
トーマス・リッケ氏
関 康子氏

 中にはスケルトンデザインのウォークマンや、オーディオ機器をいち早く子ども向けにデザインした「MyFirst」シリーズ、世界で初めてのペット型ロボット「AIBO」など、実験的な試みの製品もあったと関氏は振り返った。長谷川氏は「成功も失敗もあって、その中でソニー製品のデザインの原型を作ってきた。これからどういったデザインをつくっていけばいいか、新しい本のなかで紹介しているさまざまな実験的な試みをたくさんの人に見て頂いて、さまざまなフィードバックを貰いたい」。

子ども向けのAV機器ブランド「My First」の製品
スケルトンデザインのウォークマン「WM-504」

 後半では、会場で上映される映像「BOLD TYPOLOGIES」を公開。最後に「今で言うところのユーザーエクスペリエンスを体感させる世界を作ってきたのがソニーで、その体験の原型を今後も作ることが大事。これからのソニーデザインの中でいかに深化させるかを考えたい」と締めくくった。

「BOLD TYPOLOGIES」

(庄司亮一)