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長尺のハイレゾ音源もパッケージ化可能に。iVDR規格拡張
RECBOX連携で録画番組スマホ視聴など新提案も
(2015/6/5 20:32)
リムーバブルHDDの規格団体・iVDRコンソーシアムは5日、iVDRの最新動向や今後の可能性などを紹介する「iVDR EXPO 2015」を開催。ハイレゾ対応のiVDR TV Recording規格 Ver.2.40が発表されたほか、加盟各社によるiVDR搭載プレーヤー/テレビなどのハードウェア、映像/音楽コンテンツの新タイトルが展示された。
テレビ録画や、PC、放送局などプロフェッショナル用途、セルパッケージビジネスといったこれまでの展開に加えて、新たな動きとして「iVDRもハイレゾへの対応を本格的に推進する」との方針が示された。
ハイレゾ対応の最新規格Ver.2.40発表。4K規格も検討
iVDRコンソーシアムの助田裕史理事長は「ハイレゾ時代の到来とiVDRのビジネス展開」をテーマに最新動向について説明。
開催当日の6月5日には、「iVDR TV Recording規格 Ver.2.40」が正式発行された。音楽CDの44.1kHz/16bitやDATの48kHz/24bitを超える情報量を持つ音声データをハイレゾとして、Ver.2.40では96kHz/24bitの最大7.1chや、192kHz/24bitの最大5.1chを音声規格に加えた。なお、従来はBSデジタル放送の音声を基準としたため、音声は最高でもAAC-LCの2~5.1ch(256~384kbps)のみだった。
映像に関してはMPEG-4 AVC/H.264で変わらないが、音声の拡張によって全体では最大40Mbpsまでの対応となった(従来は24Mbps)。
HDDを使ったiVDRの特徴である大容量を活かし、他のパッケージメディアのように、メディア容量に合わせて細かなビットレート調整やオーサリング処理といった“職人技”に頼ることなく、クラシックのコンサートのような長尺コンテンツも高画質映像とハイレゾでパッケージ化できることなどを利点としている。従来のiVDR製品で再生可能なコンテンツとのハイブリッド構成も可能。
なお、'14年のiVDR EXPOでは“4K”を打ち出した内容となっており、当時説明された「iVDR/TV-Recording規格Ver.2.50(Draft)」からは、バージョンナンバーで見ると後退したことになる。今回、4K映像に関する規定は無いが、これは著作権保護に関する統一規格が定まっていないことを理由としている。コンテンツ保護の規格化を待つよりも“すぐ使える規格”としてまずは「2K映像+ハイレゾ音源」を(将来のVer.2.50の)サブセットとして用意するとの狙いから、今回のVer.2.40を発表したという。
ハイレゾのフォーマットはPCMのみで、FLACなどの圧縮音源や、DSDに関する規定は検討しているもののVer.2.40では定めていない。これは、最初の段階からフォーマットを細かく決めてしまうのではなく、まずは“ハイレゾ対応”という方向性を打ち出すことを優先し、コンテンツホルダーなどにとっての利益やビジネスの可能性があるかどうかを探る狙いがあるという。
今後のiVDR規格のロードマップについて説明し、「4K録画規格に関する業界の合意形成に合わせて規格化していく。細かいことを先に規格として決めてしまうと、全体のビジネスの阻害要因になることもある。そのため、まずはオーディオコンテンツの事業に使える枠組みを、業界内で話し合いながら作っていく」と述べた。
RECBOXとiVDR-S連携で録画コンテンツのタブレット視聴も
参加企業によるプレゼンテーションも行なわれ、iVDRの長所を活かしたハードウェアの最新モデル説明や、コンテンツビジネスの現状などについて、各社から説明が行なわれたほか、会場に最新製品や試作機などのデモ展示が行なわれた。
iVDR製品関連では、パソコン用アダプタなどを販売しているアイ・オー・データ機器は、ネットワーク対応レコーダ/メディアサーバーの「RECBOX」とiVDRアダプタの連携について提案。RECBOXの試作機を使って、iVDR-Sのテレビ録画番組をスマホ/タブレットなどでもWi-Fi経由で観られるというデモを行なっている。
具体的には、iVDR-SアダプタをRECBOXにUSB接続することで、SAFIAで著作権保護されたテレビ録画映像をRECBOXで読み込み、Wi-Fi接続したスマホなどのDTCP-IP/DTCP+再生アプリを使って、宅内/宅外で視聴できるようにするというもの。対応RECBOXの発売については、市場性があるかどうかなどを見て検討するとのことで具体的には決まっていないが、iVDR-Sアダプタや、スマホ/タブレットアプリは既存のものをそのまま使えるのも特徴。
また、別の提案として、ペガシスのPC用オーサリングソフト「TPMGEnc Video Mastering Works 6-iVDR対応版-」のプロトタイプを紹介。
前述したiVDR TV Recording規格のVer.2.40に対応したことで、ハイレゾ配信で購入したコンテンツなどをiVDRカセットにまとめて「iV VIDEO Plus」形式として書き込み、テレビとiVDRSプレーヤーを使って再生することが可能になる。
また、これまで撮影したAVCHDのハイビジョン映像など、TPMGEnc Video Mastering Works 6でインポート可能なPCコンテンツを、iVDR形式に自動変換して書き出すことも可能になる。これにより、iVDRを使ったライブラリとして管理/活用できるという。
これらの使い方は、TPMGEnc Video Mastering Works 6は、後日行なわれるバージョンアップと、iVDRアダプタの「RHDM-UT/TE」によって可能になる予定。
日立マクセルは、発売中のiVDRプレーヤー「VDR-P300」において、新たに192kHz/24bitのハイレゾ音源を再生に対応するアップデートを実施。8月出荷分から、最新ファームウェアを搭載して販売するほか、既存ユーザー向けにも無償でアップデートを行なう。詳細は別記事で掲載している。
China Record(中唱勝利)の総経理 閻 華氏は、中国における音源アーカイブプロジェクトの現状と、iVDRの活用について説明。国家からの予算を得て進めている大規模なプロジェクトで、かつてのテープメディアに収められた音源を含むアーカイブ化を進めている。ファイルはDSDとPCMの両方を保存し、メディアはバックアップの意味でもDVDとHDD(iVDR)を採用。今後、上海図書館のアーカイブプロジェクトなどにもiVDRを推奨していくという。
中国では、ハイレゾ音源をSDカードに収めて販売するというビジネスも開始。中国における、IRIVERのハイレゾプレーヤー「AK380」ローンチに合わせて発表したという。日本でも、ハイレゾ音源をiVDR-Sでパッケージ化して販売することを検討している
DSDなどハイレゾ作品も数多く手掛けるレコーディングエンジニアとして知られる藤田厚生氏(エフ代表取締役)は、「ハイレゾ音楽市場の動向とiVDRに対する期待」として、現場での録音から編集、納品の流れと、記録メディアの関係などを説明。ドームやアリーナなど大会場でのアーティストのコンサートを収録する場合などは、データ容量が2TBや4TBに達するため、大容量メディアの重要性を強調した。
最後に、講演者やナクソス・ジャパンの白柳龍一社長、iVDRコンソーシアム会長の日置敏昭氏らによるパネルディスカッションも行なわれた