「iVDR EXPO 2012」開催。USB接続のiVDRも参考展示

-1TB iVDR登場、4Kも視野に。「SHDD」に苦言


 リムーバブルHDDの規格団体「iVDRコンソーシアム」は31日、「iVDR EXPO 2012」を開催。市場動向などを説明したほか、関連製品を展開する各社が新製品の紹介や、参考展示を行なった。

 アイ・オー・データ機器は、iVDRコンテンツ事業への参入を発表したほか、iVDR-S録画番組のパソコンでの編集や新メディアサーバーソフトウェアなどを参考展示。HGSTは1TBのiVDR-S/iVDRメディアなどを発表した。


■ iVDR-S内のデジタル放送をPCでカット編集

iVDR-Sの録画番組をパソコンでカット編集可能に

 アイ・オー・データ機器は、iVDR-Sに記録したハイビジョン番組をパソコンで編集可能にするソフトウェアと、PC用管理ソフト「iVDR Media Server3」などを参考出展した。いずれも、iVDR-S対応アダプタ「RHDM-US/EX」(4,780円)のユーザー向けに無料で提供予定としている。提供予定時期は7月上旬。

 これまでiVDR-Sで録画した番組をパソコン上で編集する手段が用意されていなかったが、ペガシスの「TMPGEnc MPEG Smart Renderer 4」と「RHDM-US/EX」添付のiVDR Media Serverの新バージョンを組み合わせることで、Windowsパソコン上でのカット編集が可能になる。サーバーソフトの「iVDR Media Server」は7月上旬にバージョン3にアップデート。これにより、DTCP-IPムーブインだけでなく、ムーブアウトに対応。iVDR Media Server 3から、DTCPムーブ対応BDドライブやサーバーにムーブできる。コンテンツのリネームなどにも対応する。


iVDR Media Server3DLNAサーバーやBDドライブなどにムーブアウト可能に
SAFIA対応のUSB HDD

 また、参考展示ながら、USB 3.0接続のSAFIA対応USB HDDも展示。SAFIAはiVDR-Sで用いられている著作権保護方式だが、これを通常のUSB HDDに実装したもの。USB HDDでiVDR-Sと同じ機能を実現できるため、通常のUSB HDDでは録画したテレビでしか録画番組を再生できないが、SAFIA対応により録画機器以外の他のSAFIA対応機器でも録画番組を再生可能になる。SAFIAへの対応に特別なハードウェアなどは必要なく、ファームウェアの書き換えで対応できるという。ただし、テレビ/レコーダなどの録画/再生機器側がiVDR-Sに対応したUSB機能を搭載する必要がある。

 iVDRのようなカートリッジや特別なコネクタが不要となるため、SAFIA対応HDDの低価格化も見込めるという。しかし、iVDRコンソーシアムでのSAFIA対応USB HDDの規格が策定されていないため、今後規格化を呼びかけていくという。


iVDRコンテンツの「桃井はるこ ライブ しょうわ歌謡ショー」

 詳細は別記事で紹介しているが、アイ・オー・データはiVDRコンテンツ販売にも参入。日立アドバンストデジタルは、iVDR用コンテンツ製作用のオーサリングツールを出展した。アイ・オーの発売タイトルのほか、'11年に発売した「オーパス・アルテ ハイビジョンオペラ プレミアムセレクション Vol.1」などでも使用しており、メタデータやメニューの作成などが可能となる。BDに比べてオーサリングがシンプルで、小ロット生産も可能なことから、1万以下の単位であれば制作費はiVDRのほうが安い点などを訴求し、iVDRのセルビジネスの拡大を図る。iVDRのデュプリケーターも数社が出展していた。


日立アドバンストデジタルのiVDR用コンテンツ制作ツールこれまで手動ツールで担っていた青色の部分の処理を、GUIの各項目に入力していくだけで処理可能にiVDRコンテンツ用のデュプリケーターも
マクセル「VDR-R3000」

 日立マクセルは30日に発表した「VDR-R3000」を展示。1TB HDD+iVDR-SやWチューナなどの機能を紹介していた。日立は、L46-S08などのiVDR対応テレビを出展していた。

 HGSTは、1TBのiVDRメディアを発表。iVDR-Sの「iS1000」とiVDR(SAFIA非対応)の「iP1000」を6月より発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格はiS1000が15,800円前後、iP1000が14,800円前後。iVDR-SはWooo用、iVDRはREGZA用としてテレビの録画HDDとして展開する。

 iP1000にはUSB接続用のアダプタが同梱される。また、USBハブ機能を搭載し、4台までのiVDRを接続できる「iP1000X4」も発売。1台のiVDRが同梱されており、店頭予想価格は17,800円前後。


iS1000iP1000iP1000X4

■ iVDR対応USB HDDを提案。SHDDに苦言

iVDRコンソーシアム日置理事長

 iVDRコンソーシアムの日置敏昭理事長は、iVDRの特徴や今後について説明。iVDR立ち上げの10年を振り返り、PCとAVの融合が進んだことなどを紹介。「対応製品も少しづつ充実してきた」とする。また、次世代の進化が止まった光ディスクに対し、iVDRは大容量化などの最新の成果を取り込みながら進化できることなどを強調。非圧縮の24bit/192kHzオーディオや4K映像などにも対応できること、クラウドサービスのキャッシュとして利用できること、家庭内でも自由に持ち運べる点などをアピールした。


アイ・オー・データ機器 細野社長

 アイ・オー・データ機器の細野昭雄代表取締役社長は、これまでの同社の取り組みとiVDRのラインナップ強化を説明。また、シャープがSHDDというiVDRによく似た形状の独自HDDメディアのレコーダを発表した事に触れ、「『いよいよシャープがiVDRを出してくれた』と思ったら、セキュア技術もなく、録画したレコーダでしか使えない、独自のもので驚いた」と苦言を呈した。質疑応答で、SHDDについて質問されたiVDRコンソーシアム日置氏も、「なぜ独自なのかは私も聞きたいですが、こういうことを電機業界でやっているというのは悲しい。もしやるならば、今あるものよりも、よりよいものを作って欲しい。そこに競争が生まれる。いまよりもレベルが低いものは余りやらないほうがいいんじゃないかと思っている」とした。

 また、細野氏は、業界をあげてiVDRやDLNAの相互互換を確保していくべきと述べ、これからの録画HDDの展開としてUSB接続のSAFIA HDDを提案した。「USB HDDの録画がテレビが普及した。一方で、『テレビを買い換えたら使えなくなった』という問い合わせが本当に多い。テレビの販売ピークは2009年、2011年だが、買い換えてはじめて『昔録画した番組が見られない』となる。iVDRのWoooではテレビを買い換えても、録画番組はそのまま見られるし、マクセルのプレーヤーでも見られる。これを、どこのテレビを買っても再生できるようにしなければならない。iVDR関係者だけでなく、家電業界全体にとってもここに可能性があると思う」と訴えた。


麻倉怜士氏

 デジタルメディア評論家の麻倉怜士氏は、「新エアチェックメディアiVDRに期待する」と題し講演。iVDRの認知率が低く、「iVDRを知っているのは、コンソーシアムの関係者だけ。いま使っている人はiVが欲しくて買ったわけではない。Woooを買っただけ。iVDRを持つことによって、どれくらい生活が楽しくなるか。訴えていかなければいけない」とし、「持つだけでコンテンツが自分のものになる」よう感じられる提案をすべきと提言。光ディスクのような技術的な制限がなく、進化に応じて容量や転送速度を向上できること、長時間録画ができること、さらに4Kやロスレスオーディオなど、容量を活かしたコンテンツの実現への期待を語った。

 また、USB HDD録画との違いもiVDRの特徴。USB HDD録画の場合は録画機器と一対一で暗号化するため、機器が壊れると録画番組も視聴不可能になる。東日本大震災でも、テレビが壊れて買い換えたら録画していた番組が見られなくなったという相談を多く受けたという麻倉氏は、他のプレーヤーやレコーダでも再生できるというiVDR-S(SAFIA)魅力の一部として言及した。



(2012年 5月 31日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]