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TADスピーカー「CE1」のブラック。漆/アルミの限定デザインモデルも
(2015/8/28 17:20)
テクニカル オーディオ デバイセズ ラボラトリーズ(TAD)は、Evolutionシリーズの新製品として、ブックシェルフ型スピーカー「TAD-CE1」のブラックモデル「TAD-CE1K-KJ」を、11月中旬に発売する。価格は1本84万円。
9月下旬に発売予定のディスクプレーヤー新モデル「TAD-D1000MK2」とパワーアンプ「TAD-M2500MK2」に合わせてたブラックカラーを採用したモデル。カラー以外は従来機種と同じ。なお、「TAD-D1000MK2」と「TAD-M2500MK2」については、別記事で掲載する。
さらに、サイドパネルに特別なデザインを採用した、全世界10台ペア限定のバージョンも10月より受注生産を開始。漆仕上げモデル2機種と、アルミパネル採用の2機種で、価格は漆仕上げが1本140万円、アルミパネルが1本120万円。
光沢と艶消しを組み合わせた深い黒を追求
「TAD-CE1K」は、ハイエンドのReferenceシリーズの思想と技術を継承した、Evolutionシリーズのブックシェルフ型スピーカー。3.5cmのドーム型ツイータと14cm径ミッドレンジを組み合わせた同軸ユニットと、18cm径のウーファを搭載した3ウェイ。エンクロージャはバスレフ型で、側面にスリット状のダクトを備える。
ブラックモデルは、エンクロージャ全周に、高光沢のピアノブラック塗装を施し、サイドのアルミパネルの周りを黒艶消し仕上げ。ピアノブラックの部分は「漆黒を再現する」というポリエステルと素材を使用し、吹き付け作業や下地塗装の研磨、最終の磨き上げに時間を掛けて仕上げたとしている。異なる質感の色や素材を組み合わせたことで、深い色味や艶気のあるデザインに仕上げたという。
カラー以外の本体仕様は既存モデルと共通で、Referenceシリーズと同様に、独自の蒸着法で加工したベリリウム振動板を使ったツイータを含む、中高域の同軸ユニット「CSTドライバー」を搭載。ツイータとミッドレンジのクロスオーバーにおける位相特性と指向特性を一致させることで、全体域で自然な減衰特性と指向放射パターンを両立している。
ウーファには軽量で剛性の高いアラミド繊維の織布と不織物を何層もラミネートした振動板を採用。センターキャップとコーンを1つのピースとしてシェル(殻形状)に一体化。内部損失が高く、強度もあり、かつ軽くして、豊かな低音再生とクリアな中低域再生を実現したという。磁気回路にはネオジウムマグネットを使ったTポール型磁気回路を使っている。
特徴であるエンクロージャは、高剛性の樺の合板を骨組みとし、内部損失の高いMDF材と組み合わせることで、強度と低共振を両立した「SILENTエンクロージャー構造」。両側面に10mm厚の高剛性アルミパネルを装備し、筐体の共振を低減している。
バスレフ構造で、サイドのアルミパネルはポートを形成するパーツも兼ねている。エンクロージャの両サイドに穴があいており、その上にアルミパネルを配置。エンクロージャとパネルの間には隙間があり、それがスリット形状のバスレフポートとして機能する。開口部は外に行くつれて幅が広くなるホーン形状で、空気の流れを滑らかにしている。このポートシステム「Bi-Directional ADS」は、大振幅時のポートノイズを低減しつつ、ポートからの内部定在波の漏洩を抑制。レスポンスの良い、豊かな低音が再生できるという。また、ポートの開口部は前後・左右対称にレイアウト。ポート駆動による振動を打ち消し合って、自然な低域を再生できるという。
再生周波数帯域は34Hz~100kHz。クロスオーバー周波数は250Hz、2kHz。出力音圧レベルは85dB。インピーダンスは4Ω。ターミナルはバイワイヤ/バイアンプ接続が可能。外形寸法は290×446×524mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は30kg。ショートケーブルとクリーニングクロスを同梱する。スタンドは別売の「TAD-ST2-K」を用意する。
漆やアルミの世界10台限定モデル
TAD-CE1をベースとした特別バージョンとして、サイドパネルを変更した4モデルを用意。漆塗りのパネルを用いた「TAD-CE1MW-US」(ホワイト/漆 桜紋)と、「TAD-CE1MK-UN」(ブラック/漆 烈紋)が1本140万円、アルミパネルの「TAD-CE1MW-NW」(ホワイト/ホワイト)と、「TAD-CE1MK-NK」(ブラック/ブラック)が1本120万円。いずれも受注生産。スピーカー本体の仕様はTAD-CE1と共通。スタンドは別売となる。
漆塗装パネルは、輪島塗の技術をチタンやガラスなどに活用した製品なども手掛けるDucoとのコラボレーションにより実現。同社代表の渡邉和子氏は、福井県鯖江市の塗師・大久保隆三氏に師事し、輪島や木曽を巡った後、工房「NADESYCCO」を立ち上げ、MARUMANによる漆仕上げのゴルフクラブ「マジェスティ プレステジオ ジャパン」(1,680万円/税込)も手掛けている。
今回のパネルの模様は、ガラスに下地処理を行なって漆を塗れるようにした後、100%ピュアな漆を塗って銀箔を貼ると、漆が乾く過程で銀箔を引き裂くことによって生まれる“自然紋”のため、同じものは2つ作れないというものだが、9種類ほどのパターンを開発し、実現したという。
アルミパネルのモデルは、ルイ・ヴィトンやディオールなどの作品を手掛けるアルミ加工会社のNeay Feayとコラボ。アート作品や家具、オーディオ機器のアルミパネルなどを多数手掛けており、今回のTAD-CE1用には「ヘビ柄」と呼ぶ、凹凸のあるウロコのようなデザインを採用。上下と中央で目の細かさが異なり、立体的に見えるのが特徴となっている。
“ミュージックリッチ”に訴求。インターナショナルオーディオショーの展示も刷新
TAD製品のユーザーは平均50代後半で、一部は若年層にも購入されているとのことだが、60代や70代が多いという。一方で、10万円を超えるポータブルプレーヤーやヘッドフォンなどを複数持つ若いマニアに対し、「(スピーカーを使った)オーディオにも目覚めて欲しい」とのオーディオ業界側の取り組みも行なわれているが、TADの平野至洋社長は、「オーディオ業界、電機業界の“音からビジュアルへの転換”で大きな穴が開いたため、困難」と指摘。
そうした中で、ハイエンドオーディオの世界は知らないが、購買力があり、音楽が好きな層を平野氏は“ミュージックリッチ”と呼び、「リビングに合うモダンなオーディオ」として同社製品を展開していくという。その一例として、今回のTAD-CE1による漆/アルミパネル限定モデルのような異業種による協業を紹介した。合わせて発表されたディスクプレーヤー新モデル「TAD-D1000MK2」やパワーアンプ「TAD-M2500MK2」も、従来のオーディオマニア以外の層にもユーザーを広げていく製品の第1弾と位置付けている。
今回の新製品は、9月25日~27日に開催されるイベント「2015 東京インターナショナルオーディオショウ」でも新製品を試聴可能。同社は展示方法を従来の方法から刷新する予定で、「ハイエンドの世界をもっとポピュラーに」との想いから、試聴スペースの椅子や周囲のインテリアなどもオーディオ専門色を排したものにするという。試聴楽曲も、ジャズやクラシックだけでなくロックやクラブ系ダンス音楽も楽しめるようにする。同社の出展ブースはガラス棟4階の「G401」。
同社は、新しいユーザー層開拓のために、音楽への深い造詣で知られるピーター・バラカン氏が音楽の魅力を伝えるWebマガジン「A Taste of Music」を、他のオーディオメーカーらとの協力で発行。合わせて東京・代官山のカフェ/バー「山羊に、聞く?」で行なっているオーディオイベントも毎回満席となっているという。協力しているメーカーは、タイムロード、アコースティック・リバイブ、リンジャパン、シンタックスジャパン、ナスペック。