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HDRや360度VRなど“次のテレビ”が、日テレ「デジテク2016」に

 日本テレビは、4K/8K放送や、放送通信連携などの最新技術を紹介する、放送業界関係者向け展示会「デジテク2016」を、汐留日本テレビタワーの「日テレホール」において3月8日~9日に開催。この中で、4K/HDRに関する技術や、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、ドローンなどを活用したコンテンツも展示している。

HDRライブ制作のデモ

 なお、同イベントでは、日テレ初となる8Kで収録された「笑点」の8K上映デモも実施。その内容は別記事でレポートしている。

HDRライブ映像を複数の輝度で比較。4K映像のMPEG-DASH配信

 一部の映像配信サービスでは既に導入され、今後の放送でも採用が見込まれるHDR(ハイダイナミックレンジ)映像の紹介として、会場に用意されたステージ上でミニファッションショーや、殺陣師による演技をHDR対応カメラでライブ撮影。その内容を複数のHDR対応モニターで比較するという展示を行なっている。

HDRデモでは、ステージ上の演技を撮影し、モニターで比較。一番右が、JVCリアプロモニターでの5,000nits表示

 今回のデモでは、Hybrid Log Gamma(HLG)と、Perceptual Quantizer(PQ)の2つの方式へ同時変換表示して、様々な輝度設定で表示。暗いステージ上でも衣服の色がつぶれず、刀に反射したライトの光が白飛びせずに表現できる点などをアピールしている。SDR映像と、HDR映像(HLG、PQ)の、輝度1,000nits、200nits、5,000nitsを比較可能。ステージ横に用意されたモニターのうち4台(30型)は4Kだが、JVCの36型リアプロモニターは2Kの5,000nitsで表示。4K解像度でなくても、明るいHDR表示により従来のSDR映像よりも高画質なことが分かりやすい点も紹介している。

 そのほか、4K映像関連では、ハイブリッドキャスト 2.0で実現したMPEG-DASH方式による4K動画の再生を紹介。プロ野球中継時に、ハイブリッドキャスト対応テレビの視聴者はネット経由の4K映像で観る選択も可能になるというもの。今回のデモでは、回線状況に応じて18/8/3Mbpsでビットレートを制御して配信している。

MPEG-DASHでの4K映像配信デモ。放送受信中に、通信経由の配信に切り替えて視聴できる

 4KからHDの切り出しやブレ補正が行なえるアストロデザインの「GP-4020」も展示。日本テレビと共同開発し、昨年のデジテク2015でも参考出展していたが、これが製品化された。4K映像から最大4カ所を、HD映像として低遅延(1フレーム以内)で切り出せるのが特徴。切り出したHD画像に回転効果やブレ補正の処理も行なえる。本体は中継車への搭載を想定し、1Uハーフラックサイズに小型化している。

4K-HD切り出しやブレ補正などが可能な「GP-4020」

 K-WILLが日テレと共同開発している画質評価装置は、4K映像を二重刺激(比較方式)で評価し、既存製品をベースに、HEVCへの対応や、HDR映像モード、BT.2020(広色域)モード、想定評価画面サイズを考慮したモードを追加したもので、4月の発売を目指している。

4K画質評価装置

VRやロボットなどとテレビ/放送が連携

 空中から撮影した映像の新しい届け方として、DJIのドローン「Phantom 3 Standard」に、リコーの360度全天球カメラ「THETA S」を接続した「ドローン×リアルタイム全天周映像」をデモ。緊急災害時の状況把握手段などとしても提案している。

DJI「Phantom 3 Standard」と、リコー「THETA S」で撮影

 ドローンに装着したTHETA Sを、ワイヤレス送受信機で接続し、1,920×1,080ドットのフルHD映像をリアルタイム伝送。PCでその映像を合成/表示することで、スマートフォンなどを使ってユーザーが好きな方向から映像を見られる。カメラを固定するアタッチメントは3Dプリンタで作ったもの。

受信した映像をパソコンで表示したところ
ドローンとTHETA Sで撮影した映像を、スマホで自由な視点から見られる

 ドローンでの撮影以外にも、THETA Sなどの360度カメラから出力された映像をリアルタイムで合成/表示できる簡易な全天周動画撮影システムを開発中。事前にキャリブレーションを行なうことでレンズのパラメータを取得し、高精度な画像合成が行なえるという。ソフトは自社で開発し、他の360度カメラにも対応可能なことから、民生機器を有効活用できるとしている。スポーツ中継などの生放送番組や、収録前のロケハンなど番組制作への活用を見込んでいる。

全天周画像の応用事例として、視聴者向けプロモーションで採用した例を紹介。日テレジェニックの「グラビア愛奴隷 360度動画」や、東京マラソンの観戦スポットを紹介する動画などを撮影した

 ヤマハと協力して展示しているのは、HMDのVR映像と立体音響によるピアノ演奏視聴システム「テオミルン」。これは、ピアノの前に座ってHMDとヘッドフォンを装着すると、他の人が演奏した指の動きや音などを見たり聞いたりしながら演奏できるというもの。有名ピアニストの演奏を自宅で体験したり、初心者のレッスンなどに活用できるほか、自分の演奏を記録して公開するといったことも可能だという。

ヤマハと協力している「テオミルン」の展示

 今回のデモでは、日本テレビアナウンサーの後藤晴菜さんが演奏した映像と、モーションキャプチャーからCG化した手の動き、立体音響を体験しながら、目の前のピアノも演奏しているような気分が味わえる内容になっている。ユニークな点として、手の動きだけでなく、演奏者の“感情の変化”もビジュアライズしているのが特徴。演奏時の心拍センサーのデータをもとに、演奏の上手な人がどの部分で気分が盛り上がっているかを“見える化”している。デモではHMDにOculusを利用していたが、今後は透過型HMDへの実装や、テレビとの連携も視野に開発中としている。

HMDを装着している人が見ている映像。縦に伸びている光の線が、感情の盛り上がりをビジュアル化したもの
上を見ると、演奏していたときの後藤晴菜アナウンサーの表情

 「201X年、ちょっと未来のリビング」として参考展示しているのは、ソフトバンクの「Pepper」などのロボットや、家電機器がテレビを起点として連動するというもの。1台のロボットとユーザーが音声で話していると、会話の流れでロボットがテレビを起動。今度はPepperが番組の内容に応じて、一緒に盛り上がったり、関連する商品の情報を教えてくれたりするというデモを行なった。

Pepperなどのロボットがリビングでテレビと連動
料理番組が放映されると、家にある食材と無い食材を教えてくれて、スーパーの特売情報まで案内
テレビを起点として、ロボットや、プロジェクタ、照明などが連携

テレビで分散コンピューティング、単3電池の残量自動判別など

 通信連携の新たな提案として、「分散コンピューティング」をテレビで行なうという技術を特許出願中。難病の研究などを目的に、膨大な計算量を、世界中の人が持つパソコンなどで分担して処理する分散コンピューティングを、ハイブリッドキャスト対応テレビで行なうもの。ユーザーがテレビ画面上で協力する意思を示すと、プロジェクトに参加できる。テレビを起動してネットにつなげると、ハイブリッドキャストのブラウザによる処理能力を活用し、放送の画面や音声には影響を与えずバックグラウンドで計算を行なう。通信による制御だけでなく、放送波による一斉制御も可能としている。

テレビによる分散コンピューティングのデモ。参加しているテレビの数や処理の正解率などを表示

 番組制作時に、ワイヤレスマイクなどで使った単3電池を再利用するため、残量に応じて4種類に自動選別する装置「avocado」を開発。自動ネジ締め機などの組み立て機や加工機を手掛けるオオサカ精機が製品化した。従来機は手動で電池を並べて台にのせる必要があったが、1月から製品化された新しい3号機では、自動装填に対応。液晶ディスプレイで視認性を向上。作業時間を短縮し、1本を約3秒で処理する。現在は日テレのみ採用しているが、他の映像/音響制作会社などへの販売を検討中。価格は、フルセットで100万円を切るという。

「avocado」の最新モデルと、開発経緯
avocadoが自動で電池の残量別に仕分けるデモ

 ネット局の中京テレビは、複数の距離センサーと小型カメラを用いて、実際の空間を3DCGで映像化する「自由視点映像生成システム」を紹介。サッカーのスタジアムを再現して、選手のプレイをHMDの360度映像で楽しめるというコンテンツや、デジテクの会場を複数のセンサーやカメラでとらえ、モニター上にリアルタイム表示するデモを行なっている。

中京テレビの「自由視点映像生成システム」サッカーのスタジアムを再現し、HMDで360度映像として体験できる
自由視点映像生成システムで使用されている距離センサー
デジテク2016の会場を3DCGで再現
視聴者がTwitterやInstagramにハッシュタグを付けて写真を投稿すると、特集ページなどに掲載されるシステム「ハシュハシュ」のデモ。主催者側が投稿をチェックして、OKの写真を掲出できる
スマホを手に持って、テレビの映像に合わせて運動する「NAGARAMIエクササイズ」。ティップネスと共同で展開
「わんこそば方式」のリアルタイム字幕制作システムの次世代版を展示。リレー方式/テイク出し方式にも同じシステムで対応可能とした点などが特徴

(中林暁)