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NEC、8K放送に向けHEVCエンコーダ/デコーダを4月発売。22.2ch音声やMMT伝送も

エンコーダ「VC-8350」

 NECは、8K放送の実現に向けた、8K/60p映像対応のH.265/HEVCエンコーダ「VC-8350」とデコーダ「VD-8350」をNHKとの協力で開発し、4月より発売する。出荷は9月より開始し、5年間で100台の販売を目標としている。

 既報の通り、BS 17chを使った4K/8K試験放送は、NHKが8月、次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)が12月より開始する。さらに、2018年には4K/8K実用放送の開始、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催時には、多くの視聴者が市販のテレビで4K/8K番組を視聴できる環境の整備が総務省のロードマップで掲げられている。NECのエンコーダ「VC-8350」とデコーダ「VD-8350」は、このロードマップに則り、NHKとの協力で開発した。

 8K(7,680×4,320ドット)映像のエンコード/デコードに加え、最大22.2ch音声のリアルタイム高効率圧縮/伸長処理にも対応。「臨場感あふれる8K放送サービスの実現に貢献する」としている。さらに、次世代の伝送規格であるMMT(MPEG Media Transport)にも対応し、放送と通信を連携したハイブリッドサービスを容易にするという。

 映像符号化方式にはH.265/HEVCを採用し、Main10プロファイル(Level6.1)まで対応。8K/60p超高精細映像データを約500分の1までリアルタイムで圧縮処理できる。音声符号化には、MPEG-4 AAC-LCを採用し、最大22.2chの音声圧縮に対応する。サンプリング周波数は48kHz。

 デコーダ「VD-8350」は、入出力信号の制御や伝送方式に合わせた信号処理(ベースバンド処理)を行なう本体部分と、映像信号の伸張のみを行なうサーバー部分の2つのユニットが連結して動作。ユニット単位で処理を分けることで、高速/効率的に動作でき、高品質な映像を再現可能としている。

デコーダ「VD-8350」の本体
VD-8350の映像デコードサーバー

 新製品を利用することで、放送事業者は、既存の衛星放送やIPネットワークなどの伝送路を利用して、8K放送サービスを提供可能。4K映像の圧縮/伸長処理にも対応しており、4K/8K番組が混在する放送サービスも実現できるという。

 次世代の伝送規格MMT(MPEG Media Transport)は、放送と通信で伝送するコンテンツを同期しているため、受信側で伝送路を区別することなく映像を表示することが可能。放送と、映像配信などの通信の両方を活用したハイブリッドサービスが容易となり、高効率な映像/音声伝送を行なえるという。放送事業者は、受信端末や伝送環境に応じた映像コンテンツの提供や、マルチスクリーンサービスなどが提供可能となる。

 エンコーダ「VC-8350」は、H.265/HEVC対応の専用LSIを搭載。NECが地上波デジタル放送開始以前から培った高画質アルゴリズムを適用することで、装置の小型化と高画質を実現した。8K/60p対応コーデックには、4K/60pコーデックと比べ約4倍以上の処理量とメモリ領域を必要とするが、新エンコーダは、NECの既存製品である4K/60p対応H.265/HEVCエンコーダ(VC-8150/VD-8100)と同等サイズの5U筐体(440×220×670mm/幅×奥行き×高さ)に抑え、8K放送設備の省スペース化に貢献するという。

(中林暁)