レビュー

Androidアプリ対応の「au Smart TV Stick」を試す

ケータイ系スマートTV比較(3)。動画以外も充実

au Smart TV Stick

 携帯電話各キャリアが力を入れるスティック型スマートテレビ端末とビデオを中心とした配信サービス。第3回目は、KDDIの「au Smart TV Stick」を取り上げる。

 テレビのHDMI端子に接続するスティックタイプの端末という点では、他キャリアのSmart TVスティックと共通だが、au Smart TV Stickの特徴はOSがAndroid 4.0.4で、アプリの追加なども可能ということ。リモコンも付属する。ビデオパスのようなauのコンテンツサービス以外の活用方法も気になるところだ。auショップなどにおける直販価格は9,800円で、単体購入も可能だ。

 ドコモ「dstick」(レビュー)やソフトバンク「SoftBank SmartTV」(レビュー)など、他キャリアの展開するスティック端末との違いはどうなっているだろうか。

【各キャリア端末のサービス比較】

キャリア端末対応サービス月額料金配信数その他機能操作
NTTドコモdstickdビデオ525円約7,000タイトル
約57,000コンテンツ
DLNA
YouTube
スマートフォン・タブレット
dアニメストア420円
※1
約300タイトル以上、約4,000話
※2
dヒッツ315円約100万曲
KDDISmart TV Stickビデオパス590円
※2
約2,000タイトル約7,000本YouTube
ニコニコ動画
Androidアプリ
スマートフォン・タブレット
専用リモコン(同梱)
うたパス315円
※3
約50チャンネル
LISMO WAVE各250円
※3
FMラジオ52局、ミュージックビデオ(Musiclips)
ソフトバンクSoftBank SmartTVUULA490円約60,000本-スマートフォン・タブレット
TSUTAYA TV都度課金約40,000作品
BBTV NEXTチャンネルごと課金50チャンネル
GyaO無料約2,000本
※3

※1一部個別課金あり
※2月額390円のスマートパスとセット契約すると合計で780円に割引
※3スマートパス会員は無料
※4スマートフォン・タブレットは約600作品約9,000話
※5開始当初は500本

HDMIケーブル経由でテレビに接続。電源もアダプタが必要

 KDDIの「au Smart TV Stick」は、HDMI端子を備えたスティック型端末を利用してテレビ向けに定額の動画配信サービスを提供するという基本的な部分は、NTTドコモの「dstick」、ソフトバンクモバイルの「SoftBank SmartTV」と同じだが、ハードウェア面、ソフトウェア面ともにほかの2サービスとは大きく異なっている。

 Smart TV Stickの本体サイズは31×105×14mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約45gと、他サービスの端末よりも一回り大きく重いが、最大の違いは接続インターフェイス。dstick、SoftBank SmartTVともにHDMI端子を備えており、端末を直接テレビに装着していたのに対し、Smart TV StickはHDMI端子ではなくHDMIポートを搭載し、テレビとHDMIケーブルを介して接続する機構になっている。また、電源もマイクロUSBポートは備えているもののUSB経由で供給はできず、同梱のアダプタを使う必要がある。

マイクロUSBを装備
付属のACアダプタを利用して給電する

 本体の操作もアプリのインストールが前提だった他サービスと異なり、Smart TV StickはBluetooth経由で接続するリモコンが標準で付属。Androidスマートフォン/タブレットのアプリ「Smart TV Remote」も別途提供されており、リモコンとアプリの好きな操作方法を選択できる。

 サービス面でも定額制の動画配信サービス「ビデオパス」、音楽配信サービス「うたパス」に加えてAndroidアプリを利用可能。標準でYouTubeやniconico、radiko.jpといったアプリがインストールされているほか、Google Playを利用して自由にアプリをインストールすることも可能だ。

 価格はオープンプライスで、auショップなどの直販価格は9,800円。au Online Shopからインターネットで購入することはできる。なお、端末の購入および基本機能はKDDIの回線契約がなくても利用可能だが、「ビデオパス」「うたパス」といった対応サービスの利用にはKDDIのauの携帯電話回線契約またはau光などのブロードバンド回線契約が必要になる。

マイクロSDスロット部
底面
スマートフォン(左)と並べたところ

リモコンとアプリ2つの選択肢を用意。操作感はやや難あり

付属リモコン

 同梱のリモコンは左右上下方向のボタンと決定ボタンを配し、画面に表示されたアプリを自由に選択できる。決定ボタンの斜め4方向には1から4までの数字が割り振られており、auの各種サービスを表示するショートカットボタンになっている。また、テレビに接続すると常に電源が入っていたdstickやSoftBank SmartTVと異なり、au Smart Stickはリモコンの電源ボタンで本体の電源をオフにすることもできる。

 ホームボタンや戻るボタン、メニューボタンなど、Android操作用のボタンも搭載。また、リモコン下部にある矢印ボタンを押すと操作方法がポインティングモードに切り替わり、リモコンを上下左右に動かすことで画面に表示されたポインターを動かすことができる。操作感はWiiリモコンのようだが、テレビ側に設置したセンサーを利用するWiiリモコンと異なり、au Smart TV Stickのリモコンは画面に向けずとも操作できる反面、ポインターの移動精度はWiiリモコンほど高くなく、小さな文字にポインターを合わせる時は操作が難しい。ボタン操作とポインター操作のこまめな切り替えが必要そうだ。

 スマートフォンのアプリはKDDI独自の配信サービス「au Market」に用意されており、au Smart TV Stickの設定画面からインストールできる。設定画面の「Smart TV Remote操作設定」から「Smart TV RemoteのConnect Play連携設定」を選ぶと、画面にはリモコン操作に必要な2つのアプリ「Smart TV Remote」「Connect Play」のインストール用URLがQRコードで表示される。アプリはau Marketで公開されているため、QRコードを使わずにインストールすることも可能だ。

設定画面はAndroidそのまま
アプリのインストールは設定画面から行なえる
QRコードを利用してアプリをダウンロード。au Marketからでもダウンロードは可能
QRコードを読み込んだところ
au Marketからアプリをダウンロード
au Marketからアプリをダウンロード
Connect Playが未インストールの場合はインストールを促される
Connect Playのダウンロード画面
アプリとの接続は無線LAN経由
初回設定時は利用時にWi-Fiを必ずオンにする機能の設定が促される
連携設定の指示画面
au Smart TV Stickに接続するかどうかを選択
Smart TV Remote

 2つのアプリをインストールし、Smart TV Stickと同じWi-Fiネットワークに接続した状態でSmart TV Remoteを起動すると接続設定を開始。「Connect Play機器選択」の画面で「Smart TV Stick」を選択すると自動で接続を行ない、設定が完了する。同梱のリモコンはBluetoothで接続するのに対し、Smart TV Remoteは無線LAN経由で操作する仕組みになっている。

 Smart TV Remoteの操作は、スマートフォンに操作のためのボタンのみを表示するdsitckと同じ形式。操作方法はdstickよりも豊富で、タッチ操作でポインターを移動する方法や十字ボタンで選択する方法の2種類から選択できる。Smart TV Stickの電源オン/オフもSmart TV Remoteから可能だ。

上下左右と中央の決定ボタンで操作できる「フリック」モード
画面上をタッチしてポインターを操作する「マウス」モード
フリックモードに加えて早送りや早戻しなどのトリックプレイにも対応した「フルキー」モード。動画再生中に利用する
文字入力モード。いつでも起動できるが文字入力時以外には不要
設定画面
アプリから電源を操作できる連動機能
スキン設定

 アプリとリモコン、2種類の操作方法が用意されているという点ではdstick、SoftBank SmartTVよりも便利ではあるが、細かいところで使い勝手が悪い、というのが正直な印象。リモコンに関しては十字ボタンの隙間にショートカットボタンがあり、決定ボタン含めてすべてのボタンが同じ大きさのため、手元を見ないで操作すると誤操作が多発する。ショートカットボタンを押してしまうと、元の画面に戻るときには途中まで入力していた文字がリセットされたり、TOPページからやり直す必要があるため、手元を見ることなく気軽に使うのが難しい。

 アプリに関しても、画面下部に入力モード切替のボタン類が1列、ホームやメニューボタンなどが1列とボタンが2列表示されていることもあり、「文字入力」など通常操作には不要な画面まで標準でボタンが用意されているため、ボタン数が多くて操作がわかりにくい。ボタン数のぶん、ポインターの操作エリアも狭くなってしまうため、もう少しボタン類を整理して欲しいと感じた。

ビデオパスはお気に入りや視聴履歴、続きを見る機能に対応

au Smart TV Stickのホーム画面

 起動時のホーム画面は横表示のAndroidそのもので、画面下にはアプリ一覧やブラウザ、Google Play、設定アプリ、KDDIの各種定額サービスなど7つのアイコンが並び、その上にはインストール済みのアプリやウィジェットを表示。スマートフォンやタブレットと同様、ポインティングモードでアイコンやウィジェットを長押しすることで、好きな位置に表示することができる。Androidのバージョンは設定画面で確認したところ4.0.4だった。

 定額の動画配信サービス「ビデオパス」は、スマートフォンとは異なるau Smart TV Stick独自の画面構成となっており、画面左側にメニュー、画面右側に動画一覧を表示する仕組み。画面右の「MENU」と表示されている緑色のバーを選択するか、リモコンのメニューボタンを押すことで各種メニューを表示できる。

ビデオパスのホーム画面
メニューからジャンル指定や検索、マイリスト機能が利用可能
検索画面
配信作品のジャンル表示
続きからの再生やお気に入り、視聴履歴を管理できる「マイリスト」機能

 機能面では気に入った動画をお気に入り登録する機能、一度視聴した動画を続きから視聴する機能などを搭載。一番最後に視聴した動画はメニューの「続きを再生」からすぐに再生でき、それ以外の動画も停止位置を記憶しているため続きから再生できる。

 ビデオパスは完全な定額サービスではなく、一部の動画作品は別途料金を支払う仕組み。そのため動画の下部には追加購入が必要な場合「チケット」というアイコンと視聴期間や料金が表示され、購入履歴やレンタルの視聴期限などが表示される。

ラインナップは少なめ。グラビアコンテンツなどが目立つインターフェイス

 見放題の対象となる作品数は4月3日時点で5,752件。これは「見放題プラン」を選択した時に表示される数値だが、一覧にはアニメやドラマが1話単位で表示されるため、この数はタイトル数ではなく、実際に視聴できる話数ということになる。dstick対応の「dビデオ」やSoftBank SmartTVの「UULA」が、音楽コンテンツが多数を占めるとはいえ数万以上のラインナップを揃えていることを考えると、作品数としては少々物足りない印象だ。

 以下はビデオパスで配信されている作品のカテゴリごとの表示件数を一覧でまとめた表だ。ジャンルが重複している可能性があるほか、この数には見放題だけでなく追加で料金が必要なタイトルも含まれている。また、見放題プランでは話数表示だったが、カテゴリ表示の場合はタイトル数になるため、海外ドラマや国内ドラマなどはシリーズ全体で1作品としてカウントしている。

【ビデオパスの配信作品ジャンル一覧】

カテゴリサブカテゴリ表示件数
洋画アクション/アドベンチャー287
ホラー/サスペンス193
恋愛/コメディ125
ドラマ/ファミリー/その他237
邦画アクション/サスペンス48
ドラマ/恋愛/ファミリー211
心霊・ホラー/その他107
海外ドラマ73
国内ドラマ76
韓流・華流(ドラマ/バラエティ)158
アニメ一般164
ラブコメ・キャラクター9
ファミリー・キッズ/特撮62
音楽12
エンタメ・ホビー164
アイドル・グラビア258

※定額対象外作品も含む

見放題プランの配信作品。グラビア向けや性的表現の強い作品も一覧に並ぶ

 音楽コンテンツが圧倒的な数だったdstick、SoftBank SmartTVと比べると音楽は少なく、相対的に映画やドラマ、アニメなどが充実した印象を受ける。タイトルとしてはTBSオンデマンドやテレビ東京オンデマンドのドラマ作品、アニメ・特撮、洋画など、主要なラインナップとしては他2サービスと同じ作品が揃えられている。

 一方、気になるのはグラビアコンテンツを含む成人向けの作品が多いこと。新着コンテンツは映画やドラマに混じり、胸を強調したグラビアアイドルの動画や、性的表現の多いドラマなどが同じように並んでおり、家族で見ることもあるテレビに映し出すサービスとしてはやや配慮が足りないように感じる。

再生操作はシンプル。トリックプレイは操作に難あり

 動画の再生は見たい作品を選び決定するだけで、映像品質などの設定画面は再生前には用意されていない。画面上部にはお気に入りボタンのほかTwitterとFacebookボタンが用意されており、事前にアカウントを設定しておくことで気に入った作品をTwitterやFacebookへ投稿できる。

 動画再生中はメニュー画面から画質を変更でき、「自動」「超高画質」「高画質」「標準」の4段階から選択できるほか、プロファイルも720pと480pに切り替えが可能。ただし、プロファイルは変更すると画質の違いを確認できるものの、「超高画質」「標準」は切り替えても画質の違いをさほど感じられなかった。au Smart TV Stickでは接続が無線LAN経由になるため、設定は自動のままでいいだろう。

動画の再生前画面
FacebookとTwitterの連携設定
画質変更機能

 早送りや早戻しといったトリックプレイはリモコンでは操作できず、Smart TV Remoteを「フルキー」モードに切り替えたときのみ利用できる。また、タイムバーの操作はどちらにも搭載されておらず、画面を1回クリックして表示されるタイムバーをポインターで操作する必要がある。ポインター操作自体が細かな動きに対応しておらず、見たいシーンを移動する間に画面をポインターが動き回るため気が散ってしまう。物理操作は難しいかもしれないが、アプリ側ではタイムバーを利用した操作も対応して欲しいと感じた。

動画以外にも音楽やラジオ、Google Playなどさまざまなサービスに対応

 動画以外にも定額制の音楽配信サービス「うたパス」にも対応。ただし、好きな動画を自由に選べるビデオパスと異なり、うたパスは邦楽か洋楽かの音楽ジャンル、またはAKB48や加藤ミリヤといったアーティスト単位でのチャンネルを選択して視聴する仕組み。各チャンネルはスキップや一時停止はできるものの、楽曲一覧から好きな楽曲を選択できるわけではなく、イメージとしては有線放送のチャンネルに近い。

うたパス
うたパスの再生画面。楽曲選択などはできない

 ラジオ配信サービス「LISMO WAVE」「radiko.jp」もプリインストール。どちらもインターネット経由でラジオを聴取できる点は共通だが、radiko.jpはユーザーの居住地エリアのみラジオ局を選択できるのに対し、LISMO WAVEは他の地域でもラジオを聴取できる点が違い。料金面ではLISMO WAVEの場合スマートパス会員であれば無料、非会員は月額315円となる。スマートパス会員はLISMO WAVEを利用するのがいいだろう。

全国のラジオが聴取できるLISMO WAVE
居住地域のラジオ放送局に限るが無料で利用できるradiko

 au MarketやGoogle PlayからAndroidアプリをインストールして利用することも可能。スマートパスにも対応しており、スマートパス会員向けの定額アプリも利用できる。ただし、Google Playについてはすべてのアプリに対応しているわけではなく、FacebookやLINEといったソーシャルサービスのアプリは非対応になっているため、完全にAndroidとして利用できるわけではない点は注意が必要だ。

auスマートパスに対応
スマートパス対象の有料アプリを無料でインストールできる
スマートパス対象の「ぷよぷよフィーバー」をインストール
インストールされたアプリ一覧
Google Playからアプリをインストールできる
Facebook、LINEなどインストールできないアプリも
ブラウザからFacebookは利用できる
YouTube

 Youtubeやniconicoなど動画共有サービスのアプリもプリインストール。YouTubeは手持ちのスマートフォンとペア連携を設定することで、スマートフォンで見たい動画を探し、再生はau Smart TV Stickで行なうことが可能なほか、Googleアカウントでのログイン機能も備えている。niconicoはユーザーIDを持っている会員のみの限定サービスだが、現在放送中のニコニコ生放送を視聴することが可能だ。

GoogleアカウントでのYouTubeログイン機能
niconicoの利用にはユーザーIDが必要
放送中のニコニコ生放送が視聴できる

コンテンツ配信を超えたスマートテレビ。操作や画面構成の改善に期待

 NTTドコモのdstick、ソフトバンクモバイルのSoftBank SmartTVがコンテンツ配信に注力していたのに対し、au Smart TV Stickはコンテンツ配信以外にもさまざまな機能を備えており、アプリで機能を追加することもできるなど、サービスの位置づけはスマートテレビというジャンルに近い。本体サイズや形こそスティック型ではあるものの、電源が別途必要なことを考えるとハードウェアとしては小型のセットトップボックスと考えた方がいいだろう。

 本体操作はアプリだけでなくリモコンが付属するというのは便利。スマートフォンを充電中だったり、鞄の中に入れっぱなしだった場合でも、リビングにリモコンがあればいつでもau Smart TV Stickを利用できる。とはいえリモコンでは誤操作が頻発し、トリックプレイがリモコンでは利用できないなど操作感には課題を感じるところも多い。

 ラインナップは他サービスに比べると少なく感じるものの、国内ドラマや海外ドラマ、洋画など主力となるタイトルはさほど変わらず、数字の差ほど大きくは感じない。とはいえ繰り返しながらグラビアコンテンツが目立つ画面構成などは、テレビ向けに配信するサービスとしてやや配慮が足りないように感じた。

 これまでレビューしてきたdstick、SoftBank SmartTVにも共通することだが、見放題のコンテンツを生かし切れていないという点はau Smart TV Stickにも感じる。ビデオパスは新着やジャンル、ランキング程度しか用意されておらず、特集などは組まれていない。せっかくの定額コンテンツを楽しむためにも、レコメンドや特集のようなコンテンツはもっと拡充を期待したい。

甲斐祐樹

Impress Watch記者から現在はフリーライターに。Watch時代にネットワーク関連を担当していたこともあり、DTCP-IP周りのネット連携や動画配信サービスなどが興味分野。ライター以外にもネット家電ベンチャー「Cerevo」スタッフとして活動中。個人ブログは「カイ士伝」)