ミニレビュー

電車でも風呂でもツール・ド・フランス、「J SPORTS LIVE+オンデマンド」を活用してみた

 健康診断の通知に、要約すると「何か運動しないとヤバイよ」と書かれた事で一念発起。体を動かそうと、ロードバイクを購入。暇を見つけて走るようになった結果、1年ほどでめでたく10kgほどのダイエットに成功。通知に並んだ「A」(問題無し)の文字にニンマリ。以来、すっかり自転車の魅力にハマっている。

駅のホームで「J SPORTS LIVE+オンデマンド」を楽しんでいるところ

 すると急に気になってくるのが「ツール・ド・フランス」などの自転車競技だ。平地を100km、平均時速20km/h程度で走り「疲れたなぁ。おっ、1,600kcal減った!」などと喜んでいる自分に対し、世界の一流選手は200km以上を時速40km/h以上で走破、アルプスなどの2,000m以上の峠を何個も登って降りて……。消費カロリーは1日で7,000kcal、8,000kcalとも言われ、同じ人間とは思えない異次元のパフォーマンス。体内のエネルギーが枯渇するので、自転車で走りながらバナナなどをバクバク食べる選手達の姿に、「この人たちレース中になんか食べてる!?」と衝撃を受けて以来、観戦にもハマりつつある。

 ただこの自転車レース、テレビで観戦するのはちょっと曲者だ。TVで視聴する場合は、スカパー!の「J SPORTS」が定番だが、自転車競技が盛んなヨーロッパで開催される事が多いため、時差の関係でリアルタイムで観ようとすると日本での放送時間は夜になる事が大半なのだ。走行時間も長いため、中継番組の尺も4時間、5時間と長め。放送開始時間に仕事が終わらず、面白い場面が展開しているらしいのにまだ帰宅途中の電車の中……という事もしばしば。

 そこで、インターネット経由で視聴できる、スカパー! オンデマンドの「J SPORTS LIVE+オンデマンド」に加入。7月に行なわれたツール・ド・フランスを楽しんでみたところ、これが、かなり快適だった。

PC、スマホ、タブレットでどこでも視聴

 「スカパー! オンデマンド」は、簡単に言えば、スカパー! で放送されている趣味性の高い様々な番組を、インターネット経由でオンデマンド配信するサービスだ。「スカパー! オンデマンド」という配信プラットフォームの上に、「Jリーグオンデマンド」や「フジテレビNEXTsmart」など、様々なチャンネルが用意されている。

 「オンデマンド」とあるように、会員登録をした上で、PCのブラウザでサービスページにアクセスし、好きなコンテンツをクリックすれば再生できるのは他の動画配信サービスと同じ。マルチデバイスにも対応しており、スマートフォンやタブレットでも視聴でき、iOS/Android用視聴アプリなども用意されている。

PCのブラウザでアクセスしたところ

 これにより、移動中の電車内でも、スマホで気軽にツール・ド・フランスが楽しめる。端末が防水であれば、お風呂の中でも視聴OK。場所を選ばずに視聴できれば、忙しい最中でもレースが楽しめるのではと期待して加入した次第だ。

 なお、「スカパー!」という名前がついているが、衛星放送のスカパー! と契約していようがいまいが、関係なく加入できる独立したサービスだ。一方で、放送の方に加入していると割引などのサービスが受けられるチャンネルもある。例えば「フジテレビNEXTsmart」や「AXN Plus」などは、放送の各チャンネルに加入していれば、追加料金無しでオンデマンドサービスが利用できる。

 今回紹介する「J SPORTS LIVE+オンデマンド」は割引タイプで、オンデマンド単体の契約では月額2,469円だが、放送の「プレミアムサービス J SPORTS 1+2+3+4」や「スポーツセレクション」などを契約していると、月額1,080円に割引される。

 チャンネルによって異なるが、月額固定の見放題に加え、番組ごとのPPV契約、ドラマ全話のパックセットなども用意されている。

 登録方法は簡単で、専用ページでIDを取得、必要情報を入力すれば利用できる。既にスカパー! に加入しており、「Myスカパー! ID」を持っている場合は、そのIDとパスワードでログインできる。

MHLでテレビでも楽しめる

 PCのWebブラウザから視聴する場合は、専用ページにログインし、視聴可能コンテンツの一覧から見たいレースを選ぶと、別ウインドウが立ち上がり、そこに映像が表示される。LIVE配信のスケジュールをまとめたページもあり、ツール・ド・フランスのような、期間中ほぼ毎日開催されるレースの場合は、LIVE配信ページを見るようにした方が便利だ。

 なお、LIVE配信されているレースでは、追っかけ再生も可能。普通にレースをクリックすると、番組の頭から再生がスタートするが、画面内にある「LIVE」ボタンを押すば、現在の放送中のポイントまでジャンプできる。解像度は800×450ドット程度で、デスクトップの隅に設置してながら視聴するには適したサイズ。ビットレートはさほど高くなく、選手の背後で高速で流れていく木々などはボワッとしがちだが、見にくいというほどではない。フルスクリーン表示も可能だ。

放送済みコンテンツの選択画面
見たい番組を選べばウインドウが立ち上がり、再生がスタート
レジューム再生も可能だ

 スマホやタブレットの場合は、専用アプリ「J SPORTS」から視聴する。起動すると、視聴できるコンテンツがズラッと並ぶシンプルなアプリだが、LIVE配信のスケジュールもキッチリ記載されている。コンテンツを選べば、PCのブラウザと同じように、頭から再生開始。LIVE配信番組であれば、LIVEボタンでリアルタイムポイントまでジャンプできる。

LIVE中継のスケジュール画面
スマホでオンデマンドコンテンツを選んでいるところ

 スマホの場合、電波状態の良い無線LAN環境下では、再生ボタンを押してから絵が出るまでで5秒程度、一度再生がスタートすれば、シークバーで移動しても1秒程度で絵が出て、レスポンスに大きな不満はない。LTEの場合も5秒程度、1秒程度で同じだ。

縦向きだけでなく、縦向きの全画面表示も可能だ

 ツール・ド・フランスの期間中使ってみた結果、仕事が終わって帰宅途中にLIVEで視聴を開始。帰宅して、お風呂の中でも防水スマホで継続視聴、PCのある部屋に入ったら、PCのブラウザからもログインして大きな画面で最後まで継続視聴。レース終了後「いやぁ面白かった」と布団の中にもぐりこんで、「見ていなかった前半はどんな感じだったんだろう?」と、タブレットを取り出し、オンデマンドモードで最初から再生。シークバーで飛ばしながら「ああ、ここでレースが大きく動いたのか」と遡るという視聴スタイルに落ち着いた。

帰宅しながら観戦スタート。歩きながらスマホ画面を見るのは危険だが、音声だけでも状況は把握できる。電車の中ではジックリ楽しめた
スマホが防水であればお風呂の中でも観戦できる。写真は防水Bluetoothスピーカーを併用しているところ
寝る時はタブレットで

 マルチデバイスに対応しているため、ユーザーが視聴している場所に合わせ、最適なデバイスを使い分けながら、同じ番組を継続視聴できるのは非常に便利だ。スポーツの醍醐味はLIVE視聴で盛り上がる事だけに、オンデマンドだけでなく、LIVE配信にも気軽に切り替えて視聴できるのは、このサービスの醍醐味の1つと言えるだろう。

 ただ、スマートフォンやタブレットの小さな画面で見ていると、もっと大きな画面で見たい時もある。PCのブラウザで見るのも良いが、いちいちPCを立ち上げるのも面倒だ。

 そんな時はテレビで視聴する方法もある。スマホやタブレットがMHLに対応していれば、MHL対応のHDMIケーブルを使い、対応テレビにスマホ&タブレットの画面を表示してしまえば良い。

MHLを使い、スマホの画面をテレビに表示して大画面を楽しむ

 テレビに近づいて視聴すると、ディテールの甘さや、動きの激しい部分にブロックノイズが見える。ただ、ある程度距離をとって視聴すれば、あまり気にならない。

 なお、今回は試していないが、視聴方法としては他にも、STBの「光BOX+」、スカパー! プレミアムサービス用のSTB「TZ-WR320P」など、PlayStation Vita TV(VTE-1000)も対応端末。テレビのBRAVIA、AQUOS、REGZA、Woooの一部モデルや、バッファローのチューナ「DTV-X900」、「DVR-X1」などでも利用できる。詳細は、視聴環境の解説ページに記載されている。

 と、概ね快適に利用しているが、幾つか不満点や改善して欲しいポイントがある。1つはスマホ版アプリの安定度。Xperia Z1を使っており、ちゃんと対応端末に含まれているのだが、一度ホーム画面に戻って再度アプリに復帰した場合など、まれにエラーが出てアプリが終了してしまう事があった。

 もう1つは、細かい話だが、コンテンツ一覧の“見せ方”だ。PC向けのWebページも、アプリも同じなのだが、例えばツール・ド・フランスのページを表示すると、第1ステージ、第2ステージと、コンテンツが十数個ズラッと並ぶ。その各コンテンツに設けられているサムネイル画像が、全部同じなのだ。つまり、まったく同じ絵が上から下までズラッと並んでいるので、一瞬全部同じ番組に見えてしまう。上から順番に再生していると、「どこまで再生したっけ?」とわからなくなる。各ステージのコースマップでも、コースの風景写真でもなんでも良いので、コンテンツごとに違う画像を表示して見分けやすくして欲しい。

まれにアプリが終了してしまう事がある
これはル・マン24時間レースを表示したところだが、このように同じサムネイルがズラッと上から並ぶので、コンテンツの区別がつきにくい

 また、せっかくスマートフォンやタブレットで視聴できるので、視聴している間に、気軽にTwitterなどにコメント投稿ができるような機能も盛り込んで欲しい。同じレースを観ている人と、ワイワイ盛り上がれれば、スポーツ中継観戦の楽しさは何倍にも膨らむだろう。

 なお、当然ではあるが、屋外で配信を楽しんでいる場合、LTEなどの通信経由で視聴する事になるため、7GBなどの帯域制限には要注意だ。各地の無線LANや、別回線のモバイルルータを併用するなど、賢く使いたいところだ。

シンプルなサービスだからこその使いやすさ

 実のところ、「J SPORTS LIVE+オンデマンド」と同じような視聴環境を、このサービスに加入せず構築する事は可能だ。放送のスカパー! に加入し、J SPORTSと契約。自転車ロードレース番組をBDレコーダなどで沢山録画。その番組を、スマートフォンやタブレットにお出かけ転送したり、DTCP+対応のレコーダやアプリを使い、宅外配信・視聴するというスタイルだ。

 だが、逆に言えば、そうした機器を用意したり、こまめに録画予約をしなくとも、それと同等の環境が、加入するだけで実現するのが「J SPORTS LIVE+オンデマンド」の大きな利点と言える。LIVE配信だけでなく、過去番組のオンデマンド配信も含まれているので、レコーダと較べて録画予約漏れの心配が無いのも良い。もっとも、過去番組のオンデマンド配信は永遠に残っているわけではなく、放送終了から一定期間すると見られなくなってしまう。その点では、「名勝負をBlu-rayに書き出していつまでも保存したい」などのニーズにはマッチしない。

 レコーダでキッチリ録画してディスクに残していくライブラリ派、テレビの録画機能を使って番組を気軽に録画し、観たら消していくカジュアルなタイムシフト派に分けるとするならば、「J SPORTS LIVE+オンデマンド」は、ちょうど中間に位置するようなサービスだ。これが映画やドラマのチャンネルであれば、「末永く残したい」というニーズが大きくなるかもしれない。逆に、スポーツ番組をLIVEを中心に楽しみたいという人には、シンプルで手軽かつ、満足度の高いサービスだと感じている。

 なお、今年のツール・ド・フランスは終わってしまったが、8月23日からは、今年で69回目を迎えるスペインを舞台にしたレース「ブエルタ・ア・エスパーニャ」が開幕。こちらも楽しみだ。今回はロードレースばかりを取り上げたが、モーターレースの「SUPER GT」、サッカーのイングランド プレミアリーグなど、様々なスポーツを楽しむ事ができる。

山崎健太郎