レビュー

ソニー“本気のポタアン”再び、「PHA-2」を聴く

遂にウォークマンとデジタル接続。DSD再生も

 ソニーが昨年10月に、同社初のポータブルヘッドフォンアンプとして発売した「PHA-1」。ヘッドフォン/イヤフォンムーブメントの中でも、ポータブルヘッドフォンアンプはどちらかと言うとマニアックな製品で、一部のユーザーが楽しむイメージがあったが、そこにソニーが参入した事は大きなインパクトがあった。

 しかも、iPhoneの30ピンDockと接続すればデジタル伝送でき、アンプ内蔵DACで高音質にアナログ変換。PCと接続すれば24bit/96kHzまでのハイレゾデータも再生できると、当時としては高スペックで、「話題だからちょっと作ってみました」というレベルではなく、“ガッツリ本気のポタアン”である事も話題に拍車をかけた。

 一方で、当時のウォークマンはWM-PORTからアナログ出力しかできず、PHA-1とデジタル接続することはできなかった。アップルのiPhoneとデジタル接続できるのに、自社製品のウォークマンではそれができないという、考えてみれば妙な状態になっていたわけだ。

PHA-2

 そこで、ウォークマンとのデジタル接続や、24bit/192kHzまで対応するUSB DAC機能、DSD再生なども可能にし、さらに音に磨きをかけた“ソニーのポタアン”第2弾が、10月25日に発売された「PHA-2」だ。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は55,000円前後。「PHA-1」(49,350円)よりも6,000円ほど高くなっているが、PHA-1は併売されるため、後継ではなく、上位モデルと言えるだろう。

PHA-1とPHA-2の外見的な違い

 外観から見ていこう。気がつくのはカラーリング。PHA-1はやや赤みがかった独特の色合いだが、PHA-2はヘアライン仕上げが映えるブラックカラーになった。基本的なデザインは同じだが、色が濃い分、引き締まって見える。素材はアルミだ。

 サイズを比較してみると、68×140×29mm(幅×奥行き×高さ)で、PHA-1の67×130×26mm(同)よりも奥行きが若干伸びている。重量はPHA-1が約220g、PHA-2が約270gと若干重くなった。

左がPHA-1、右がPHA-2。PHA-1は若干赤みがかっているのがわかる。PHA-2は、ブラックボディに金色のハイレゾマークが映える
左がPHA-1、右がPHA-2。端子やレイアウトは基本的に同じだ
重ねて横から見たところ。下段のPHA-2は奥行きが長くなっているのがわかる
左がPHA-2、右がPHA-1。PHA-2の左端にあるのがウォークマンを接続するためのUSB端子だ
NW-F880の長さとピッタリマッチするので、重ねて持っても収まりが良い

 ポータブルアンプは持ち歩いて使うため、サイズが大きくなるのは歓迎しづらい。ただ、厚さは29mm(PHA-2)、26mm(PHA-1)とあまり変わらないため、iPhone 4Sやウォークマン(NW-F880)と重ねて持ってみても、“持ち心地”自体に変化は無い。また、筐体は長くなっているが、スマホ/ウォークマンで大半が隠れてしまうため、“長くなったなぁ”という感じもあまりしない。特にNW-F880とは長さがピッタリマッチするので、収まりが良く見えるくらいだ。

 ただ、例えばプレーヤーとアンプを小さなポーチなどに入れて持ち運んでいるという人は、奥行きが長くなった事で、これまでのポーチに入らなくなるなどの問題も出てくるだろう。

 端子類は、前面にアナログライン(ステレオミニ)の入出力兼用端子を1系統装備。背面にはUSB入力×3がある。USB入力はそれぞれ、ウォークマン用、PC用、iPhoneなどのiOS用だ。前述の通り、ウォークマンとのデジタル接続が可能になったのが大きな進化点だが、可能なのは新ウォークマンの「NW-ZX1」と「NW-F880」のみで、従来のモデルは対象外だ。実際に接続するとどうなるかは後述する。

 出力は、ステレオミニのヘッドフォン出力を前面に搭載。電源を兼ねたボリュームノブを備え、それを保護する亜鉛ダイキャストのバンパーを両サイドに設けている。

背面端子部分
前面

 PHA-1からの特徴だが、側面に出っ張りがあり、ここに付属のシリコンベルトを引っ掛ける事で、スマホやプレーヤーをアンプに固定できる。ベルトで固定する位置を、ディスプレイにかからないように調整すれば、サンドイッチした状態でも問題なくプレーヤーが操作ができるのは便利だ。

側面に出っ張りがある
出っ張りに付属のシリコンベルトを引っ掛けて、プレーヤーを固定する
シリコンベルトで固定すると一体感が出る
ベルトがディスプレイにかからないようにすれば、操作性は落ちない
プレーヤーとアンプを重ねた際に傷がつかないよう、シートも付属する

PHA-1とPHA-2の機能的な違い

 どちらのモデルもPCと接続し、USB DACとして動作するが、PHA-1が24bit/96kHzまでの対応だったのに対し、PHA-2は24bit/192kHzまでをサポートした。転送はアシンクロナスで、高精度のクロックジェネレータで独自のクロックを生成。送信側のクロックジッタの影響を排除している。なお、Windowsの場合は専用ドライバをダウンロードする必要がある。

 DSDファイルの再生にも新たに対応した。2.8MHz、5.6MHzのどちらもサポートしている。USB DACとしては、現時点で求められる機能を網羅していると言って良いだろう。

モデル名 PHA-2 PHA-1
USB DAC 24bit/192kHz 24bit/96kHz
DSD
ウォークマン
デジタル接続
iPhone
デジタル接続

 なお、ハイレゾの拡充を進めているソニーでは、同社が定義する条件にマッチしたモデルを「ハイレゾ製品」として訴求している。その条件は、再生周波数帯域40kHz以上のモデルで、社内の聴感検査をパスする事だが、ポータブルアンプでは24bit/96kHz以上に対応し、FLAC/WAVへの対応も必須とされている。この結果、PHA-1とPHA-2は、どちらも“ハイレゾ製品”として訴求されている。

Hi-Res Audio Player。DSDファイルを再生しているところ

 Windows用のプレーヤーソフトも用意されている。「Hi-Res Audio Player」と名付けられたもので、ソニーのサポートページから無料でダウンロードできる。使い方は簡単で、起動後に設定画面から「Sony ASIO driver」を選択するだけ。複雑な設定をしなくてもDSD再生できるのは安心感がある。

 ソフトの機能としてはシンプルだが、プレイリスト作成なども可能だ。DSD再生だけでなく、WAV/AIFF/FLAC/Apple Lossless(ALAC)/MP3の再生も可能。また、別のソフトとしてfoobar2000を使ったところ、このソフトでも無事再生できた。なお、Hi-Res Audio Playerは、PHA-1には対応していない。

24bit/192kHzのFLACを再生しているところ
「Hi-Res Audio Player」の設定画面。「Sony ASIO driver」を選択するだけだ
foobar2000も利用できた

 音質面の大きな違いは、DACが異なる事。PHA-1はWolfsonの「WM8740」を、PHA-2はTIの「PCM1795」を採用し、DSDにも対応した。マスタークロックは内部に2個のクロック発振(22.5792MHz/24.576MHz)を持っており、44.1k、88.2k、176.4k用と、48k、96k、192k用とでクロックを切り替えている。

 さらにPHA-2では、35μmの厚膜銅箔プリント基板やオーディオ回路のフィルムコンデンサなど、高品位なオーディオ専用部品も採用している。アナログ回路とデジタル回路を分離させたレイアウトとする事で、干渉による内部電気的ノイズの発生を低減した。

内部基板の表側
裏側

 ヘッドフォンアンプICはTIのTPA6120。正負2電源方式によるOCL出力段を使い、パワフルに駆動できるという。最大出力は約165mW×2ch(8Ω/10%歪)。側面にはゲイン切り替えスイッチも搭載。ラインアウト用にはTIのオペアンプ「LME49860」を使い、DACからの出力をそのまま2Vrmsで出力している。

 バッテリの持続時間は、デジタル接続で約6.5時間、アナログ接続で約17時間。PHA-1はデジタル接続で約5時間、アナログ接続で約10時間であるため、どちらも伸びている。

音を聴いてみる

iPhone 4Sと接続したところ

 iPhone 4Sを用意、PHA-1に付属しているDock-USBケーブルを使い、PHA-2とPHA-1にデジタル接続。その音を聴き比べてみた。ヘッドフォン/イヤフォンは、ソニーのMDR-1Rや、ShureのSE535、UEのカスタムイヤーモニター「UE 18Pro」などを使っている。

 「藤田恵美/camomile Best Audio」の「Best OF My Love」を再生。PHA-1で聴くと、高域が伸びやかで抜けが良く、低域はパワフル。量感が豊かで、スケール感のある音だ。しかし、最低音はそれほど沈み込まず、ベースの輪郭はややボワッとしている。

 PHA-2に切り替えると、音場がスーッと広くなり、ヴォーカルや楽器の音像が、その広い空間に距離を置いて定位するのがわかる。見通しがよく、開放的なサウンドだ。

 面白いのは、音像との距離が離れたように感じるにも関わらず、口の開閉や、歌い出しの前の「スッ」と息を吸い込む音などが、PHA-2の方が生々しく、近くに感じられる。また、低域はPHA-1のようにモコモコと膨らむ感じではなく、適度にタイトで、ズシンと芯のある低音が深く沈む。

 「Kenny Barron Trio」から「Fragile」を再生すると、ルーファス・リードのベースがPHA-1では「ヴォーン」と緩んだ印象だが、PHA-2では「ゴーン」と芯があり、凄みを感じる。分解能もPHA-2の方が高いようだ。

 音色はどちらのアンプも色づけが少なくナチュラルで、大きな違いはない。それよりも、前述のようにPHA-1は低域の量感が膨らみがちで、PHA-2はタイトで締まりがあるため、PHA-1の方が派手目なパワフルサウンドに聴こえる。PHA-2は膨らみを適度に抑えつつ、クールに描写していく。好みによると思うが、ハイレゾ音源の細部、特に低域の動きなどを細かく聴きたいという場合には、PHA-2の方がわかりやすい。

 次にウォークマンと接続する。接続に使うのはPHA-2に付属している専用ケーブルだ。これにより、ウォークマンからアンプへデジタル伝送し、アンプ側のDACでアナログ変換し、アンプで増幅。より高音質な再生ができるというわけだ。なお、このデジタル伝送では最高で24bit/192kHzまでのPCMデータに対応する。

 また、PHA-2にはウォークマンをデジタル接続するためのケーブル、USBマイクロケーブル、ステレオミニのアナログケーブルも同梱されている。

ウォークマンのNW-F880
PHA-2に付属するUSBマイクロケーブル、アナログケーブル

 ウォークマンはNW-F880を用意。専用ケーブルは、片方がWM-PORT、反対側がUSBのミニBだ。単なるミニB端子ではなく、その横に、棒状の突起のような端子が追加されている。PHA-2側の入力端子部を見ると、USB端子の横に、この棒を差し込める穴が空いている。この棒がどのような役目なのかはわからないが、これがあるため、専用ケーブルを別のUSB DACなどに接続するのは難しい。

ウォークマンのWM-PORTとアンプの接続ケーブル
USB端子の隣に突起があるのがわかる
突起はアンプ側のくぼみに入るようになっている

 ウォークマンとのデジタル接続の前に、NW-F880単体の音を聴いておこう。ポータブルプレーヤーとしては、音声の広さや定位感が良好で、色付けも少なくクリア。素のままの音というより、音像が綺麗に整理整頓され、高域もやや綺羅びやかで滑らかな“美音”という印象だ。単体でも十分に高音質で、聴いていると「わざわざポータブルアンプを追加しなくても良いかな」という気がしてくる。

 だが、PHA-2を接続してみると、やはり音質は大幅に向上する。

 特に違いがわかるのは音場の広さ。単体でも伸びやかなサウンドだが、PHA-2を通すと1.5倍くらいに音が広がる空間が拡大。ヴォーカルの声が、消え入る様子もより遠くまで見通せるようになる。

 低域の量感も豊かになり、迫力がアップ。前述の通り、PHA-1と比べて締まりがあるため、低域がパワフルと言っても、モコモコと肥大化した音ではなく、中高域はクリアなまま。低い音がキッチリと沈み込む事で、上下のレンジも拡大したように聴こえ、低重心な安心感のあるサウンドに変化する。

ウォークマン「NW-F880」直接の音と、PHA-2の音を聴き比べる

 アンプの駆動力にも余裕があるため、ヴォーカルが口を開いた時の湿り気のある吐息や、オーケストラのホールの広さがわかるかすかな観客席の物音など、微細な音の描写が丁寧で、音楽に“艶”が出てくる。ピュアオーディオの高級パワーアンプで、ブックシェルフスピーカーを余裕でドライブしているような感覚だ。

 なお、NW-F880は本体側面にボリュームボタンを配置しているが、PHA-2を接続すると、デジタル伝送になるため、これが機能しなくなる。以降はPHA-2側のボリュームノブで操作する。

 NW-F880の設定画面から、ボリューム設定のパネルを出したままPHA-2を接続してみると、マスターボリュームの部分に「外部出力中」という表示が出て、ボリューム位置のポイントが消えるのが確認できた。なお、この場合でもマスター以外のアラームなどのボリュームバーは調整できた。

通常は側面のボリュームボタンを押すと、このようにボリュームバーが変化する
アンプとデジタル接続していると、マスター(外部出力中)と表示され、ボリューム位置を示すポイントが消える

まとめ

 DAC内蔵のポータブルヘッドフォンアンプは各社から様々なモデルが登場しているが、PHA-2はその中でも完成度の高いモデルだ。機能面ではPCMの24bit/192kHzに加え、DSDにも対応しているのがポイント。iPhoneやウォークマンと組み合わせている時はDSD再生はできないが、例えば喫茶店にノートPCを持ち込んで仕事でもしている時に、USBでPCと接続し、DSDのライブラリを楽しむといった事が可能だ。PC用のUSB DACとしても常用できる事を考えると、5万円を超える価格に対する印象も変わりそうだ。

 欲を言えば、デジタル接続できるウォークマン「NW-ZX1」と「NW-F880」が、今後のアップデートなどでDSD再生できるようになると嬉しい。負荷などの問題で単体で再生できなかったとしても、WM-PORTから出力して上手くPHA-2にデータを渡せられれば、アナログ変換はPHA-2がやってくれるので負荷は少なそうだ。ただ、今回のウォークマンにおいて、ファームウェアアップデートでのDSD再生は「難しい」というコメントがソニーから発表されている。今後のモデルで期待したいところだ。

 ウォークマンとのデジタル接続は、他のポータブルアンプでは真似のできない大きな魅力だ。ハイレゾ対応ウォークマンの登場と共に、moraでも本格的なハイレゾ配信がスタートしており、e-onkyo musicではランティスのアニメソングがハイレゾ配信されて新たなユーザー層を開拓している。ハイレゾデータを購入し、家の中でも外でも楽しむというスタイルは、今後着実に広がっていくだろう。

 ウォークマン単体でもハイレゾの良さは味わえるが、細かな音の描写力が高く、見通しも良いPHA-2を通して聴くと、その醍醐味をより実感できるだろう。もちろん、iPhoneと接続し、ハイレゾではない音楽を再生した場合でも、DACやアンプとしての能力の高さは十分味わえ、そのクオリティはポータブルアンプの中でもトップクラスだ。

 気になるのは、もともと大柄なPHA-1と比べ、さらに奥行きが伸びたサイズだ。購入時には店頭デモ機などを活用し、愛用しているスマホやウォークマンと実際に重ねて手に持ってみて、「このサイズなら常用できそうか否か」を判断して欲しい。

 ウォークマンのような純粋なプレーヤーと組み合わせるのであれば、スマホと違って頻繁にディスプレイを操作せず、カバンの中に入れっぱなしにできるので、利便性の低下は比較的我慢できるかもしれない。とはいえ、同じソニーなので、小型・薄型化して、ウォークマンの背面に保護ケースのようにガチャッと装着できるアンプなども欲しいところだ。

 昨今のトレンドとしては、バランス駆動も気になるところ。奇しくも、ソニーの新ハイブリッドイヤフォンはケーブル交換が可能になっているので、対応ケーブルさえあればバランス駆動の条件は整う。マニアックな道を突き進むソニーのアンプだからこそ、さらに尖った今後の展開にも期待したい。

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(山崎健太郎)