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ソニー、「ハイレゾオーディオ」普及へ本格展開

「聴く」から「感じる」オーディオへ、18製品投入

8カテゴリ18製品でハイレゾ対応

 ソニーは26日、ハイレゾオーディオ製品の発表会を開催し、HDDオーディオプレーヤー「HAP-S1」やその上位モデル「HAP-Z1ES」、USB DAC内蔵アンプ「UDA-1」などの新製品を発表した。また、25日発表のウォークマンZX1、F880シリーズや、ヘッドフォン、ヘッドフォンアンプ、DSD対応PCMレコーダなど、今秋発売のハイレゾリューション対応製品を一堂に集め、オーディオ製品を「ハイレゾ」をキーワードに積極的に強化、推進していく姿勢を示した。

 ソニーは、CD(44.1kHz/16bit)を超える高音質の音楽ファイルを「ハイレゾ」とし、24bit/96kHz以上のFLACやWAV、DSDなどの高音質フォーマットに対応した製品を強化する。単純にハイレゾ再生ができるだけでなく、音質設計などハードウェアの性能面で、ハイレゾ楽曲の能力を十分に発揮できる商品に「Hi-Res AUDIO」ロゴを貼付し、高付加価値製品として提案していく。

8カテゴリ18製品でハイレゾ対応
Hi-Res AUDIOロゴ

 26日発表のHDDオーディオプレーヤーなどを含めると、8カテゴリ18製品がハイレゾ対応となり、今後も商品ラインナップを拡大させていく。

製品名種類発売日実売価格
HAP-S1HDDオーディオ
プレーヤー
10月26日8万円前後
HAP-Z1ES220,500円
(標準価格)
TA-A1ESプリメイン
アンプ
220,500円
(標準価格)
UDA-1USB DAC内蔵アンプ10月12日5万円前後
SS-HA1スピーカー10月26日7万円前後
SS-HA310月12日4万円前後
NW-ZX1ウォークマン12月7日75,000円前後
NW-F88010月19日27,000円
~4万円前後
PCM-D100DSD対応
リニアPCM
レコーダ
11月21日10万円前後
MDR-10Rポータブル
ヘッドフォン
10月25日19,000円前後
MDR-10RCポータブル
ヘッドフォン
(オンイヤー)
19,000円前後
MDR-10RBTBluetooth
ヘッドフォン
(BT接続はハイレゾ非対応)
27,000円前後
MDR-1RMK2ヘッドフォン10月25日25,000円前後
MDR-1RBTMK2Bluetooth
ヘッドフォン
10月25日35,000円前後
XBA-H3カナル型
イヤフォン
(BA+ダイナミック)
10月25日37,000円前後
PHA-2ヘッドフォン
アンプ
10月25日55,000円前後
HAP-S1とSS-HA1
HAP-Z1ES
UDA-1とSS-HA3
TA-A1ES
XBA-H3とNW-F880
NW-ZX1とPHA-2
PCM-D100とMDR-1RMK2
MDR-10RCとNW-F880
NW-ZX1とMDR-1RMK2
音楽業界と協力してハイレゾ推進

 一方で、配信サービスやコンテンツも強化。10月17日からウォークマン公式ミュージックストア「mora」において、FLAC形式の音楽配信を開始する。moraへの楽曲配信については、ワーナーミュージックと、ユニバーサルミュージックが参加するほか、ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)も初めてのハイレゾ配信を行なうこととなる。

 また、音楽業界との連携を深めることで、ハイレゾ音源を手軽に楽しむための環境整備やプロモーションを進める。ソニーマーケティングでは、ナビゲーションサイト「ハイレゾリューション・オーディオゲート」において、moraだけでなく、同様にハイレゾ音源を配信する「e-onkyo music」や「OTOTOY」とも連携。ハイレゾに興味を持つ人に、横断的に音源購入への導線提供や、ハイレゾ機器紹介を行なっていく。

8カテゴリ18製品でハイレゾ対応。「聴く」から「感じる」に

ソニー ホームエンターテイメント&サウンド事業本部 高木副本部長

 ソニー 業務執行役員 SVP ホームエンターテイメント&サウンド事業本部の高木一郎副本部長は、ソニーのサウンド事業と今後のハイレゾ強化について説明した。

 ソニーでは、サウンドビジネスの基本方針として、「五感に響く音技術/商品の徹底強化」と「地域カルチャー/カスタマー嗜好、エンタテインメントプロの感性を反映した音作り」、「ソニーグループ全体へのいい音技術展開」の3点を掲げている。五感に響く音技術/商品の徹底強化については、2012年のウォークマン発表会でも強調していたもの。

 この方針のもと2012年に発売したヘッドフォン「MDR-1R」が高い支持を集め、シェアや商品単価が向上したことなどを紹介。世界のサウンド市場においても、日本、アメリカ、ヨーロッパ、インド、ブラジルなどでトップブランドになっていることを強調した。

ハイレゾで音楽を『聴く』から『感じる』に

 基本方針は2013年秋以降も共通だが、今後は「ハイレゾ」に注力。声の温度感や息継ぎ、弦楽器の響きなど、ライブ会場の雰囲気などをより繊細に再現できると訴え、ハイレゾにより、「音楽を『聴く』から『感じる』楽しみを届ける」とアピールした。

 ハイレゾに取り組む理由については、「いい音で聞きたい」というユーザー側のニーズと、アーティストやクリエーターの「いい音を届けたい」という双方の思いを実現できるソリューションと説明。インターネット環境の高速化や、ハイレゾ処理に関わる技術の革新などを受け、本格的に取り組むこととした。

 ソニーの差異化技術としては、高域補間技術の「DSEE HX」のようなDSP信号処理、S-Master HXのようなアンプ技術、WDスーパーツィータのような、スピーカーやトランスデューサー技術などを紹介。HDDオーディオプレーヤーやプリメインアンプ、USB DAC、ウォークマン、ヘッドフォンアンプ、リニアPCMレコーダ、ポータブルヘッドフォンアンプなど8カテゴリ18製品にそれらの技術を盛り込み、ホームオーディオからポータブルまで幅広いラインナップを揃えた。

ソニーの差異化技術
18のハイレゾ製品展開
音楽業界と連携

 また、高木副本部長が強調したのは、音楽業界との協業。moraには、ワーナーミュージックと、ユニバーサルミュージック、SMEらがハイレゾ楽曲の提供で協力するほか、e-onkyo musicやOTOTOYなどの既存ハイレゾ配信ストアとも協力し、新しいコンテンツやサービス、ハードウェアを普及させるための仕組みづくりに取り組む。

 ワーナーミュージック・ジャパンの石坂敬一CEOや、ユニバーサルミュージック合同会社小池一彦CEO、SMEの盛田昌夫会長も登壇し、ハイレゾの魅力とソニーへの期待を語った。

 ワーナー石坂会長は、「デジタル配信の音質は、高音が強すぎ、軽い感じがする、という疑念を持っていたが、試聴会でハイレゾを聞いたら、これはスゴイとなった。重低音、それから奥行き、トータルなインテグレートサウンドの大きさなど、まさに推薦できます。1958年以降、あらゆるポピュラー音楽を聞いてきたが、ブリティッシュロックや日本のロックなどとの相性が良い」と述べワーナーとEMIで600以上のハイレゾ音源を用意したことを紹介。「ぜひ聞いて欲しい」とアピールした。

 ユニバーサルミュージックの小池CEOは、「全世界では、デジタル音楽配信がCDの売上を上回った。しかし、廉価な配信で浅く広くお金を集める、という形になっており、サブスクリプションやストリーミングといった聞き放題が主流。日本でCDが多いのは、所有欲やいい音にこだわるから。ソニーは、こうしたハイレゾのいい音を聞かせてくれるシステムを揃えているので、高品質高付加価値の楽曲配信に全面的に協力したい」と述べた。自身もジャズファンという小池氏は、上原ひろみ、山中千尋、コルトレーンなどのラインナップを紹介し、「アナログ、CD、配信と全部持っているものもあるが、個人的にももう一回買わないといけないものも多い。音楽ファンはそう思うのでは? 」と語り、ハイレゾ化のリクエストにも答えていく姿勢を示した。

 SMEの盛田会長は、「多くの人は学生時代に親しんだ曲を長く楽しむが、ハイレゾでは、その時代の"あの音”や感動が味わえる。高価なヘッドフォンも売れており、若い人もプロやスタジオクオリティの音で聞きたいという意欲がある。ロックなどのほか、SMEでは『いきものがかり』や『SCANDAL』などの邦楽のラインナップも考えている」と語った。

ワーナー石坂会長
ユニバーサルミュージック小池 CEO
SME盛田会長

オーディオに占める「ハイレゾ構成比」は2割に。「体験」の強化も

ソニーマーケティング粂川 執行役員

 ソニーマーケティングの粂川滋執行役員は、2012年以降のオーディオビジネス強化で、ウォークマンやヘッドフォン、スピーカー、ICレコーダ、ホームオーディオなど各カテゴリでシェアを向上したほか、高付加価値モデルの構成比が向上したことを説明。

 特にヘッドフォンについては、MDR-1Rがヒットしたことで、1万円以上の製品の構成比(金額ベース)が、2012年4-6月期の20%から2013年4-6月には30%まで拡大。業界平均の25%に対しても、高級ヘッドフォンの構成比が高くなったという。また、PCオーディオも盛り上がっており、USB DAC搭載アンプは前年比200%と成長しているという。

ヘッドフォンでいい音ニーズが高まる
PCオーディオも伸張
各商品カテゴリでハイレゾ提案

 しかし、中高年を中心に、PCオーディオは難しい、という声も上がっているという。そこで、パソコンを前提とするのではなく、もっと簡単にホームオーディオをという狙いで「HAP-1」などのHDDオーディオプレーヤーも企画した。

 ハイレゾ音源を簡単かつ快適に楽しめるようにし、新発表のハイレゾ製品を、今秋の国内ソニーオーディオカテゴリの売上構成比で約20%まで高める計画。また、「(国内販売では20%が目標だが)事業側としては、早期に30%を越えていきたいと考えている」(ホームエンターテイメント&サウンド事業本部 高木副本部長)という。

 一方、「ハイレゾ」という言葉の認知率も高くなく、「音がいい」と語るだけでは、大きな広がりは期待しづらい。そのため、ソニー銀座ショールームやソニーストア名古屋、大阪などでは先行展示を行なうほか、家電量販店などでもハイレゾ体験コーナを設置。体験試聴会なども開催し、「なによりも実際に聴いて貰う機会を作っていきたい(ソニーマーケティング 粂川執行役員)」とした。

 なお、今回のハイレゾ製品ラインナップでは、PCMレコーダの「PCM-D100」がポータブル機ながら、DSD対応しているものの、ウォークマンについてはDSD対応していない。将来的なウォークマンでのDSD対応については、「今回は、重さやスタミナなどトータルバランスの中で搭載せずという決定をした。ファームウェアアップデートでの対応は難しい。次回の機種、その次などで、考えたい」(高木副本部長)とした。

(臼田勤哉)