藤本健のDigital Audio Laboratory

第541回

Nexus 10とiPadの音を比較する

アナログ出力で実験。USBオーディオ出力はできる?

Nexus 10(左)と第3世代iPad(右)

 以前から買おう、買おうと思いながら、いまひとつ購入に踏み切れなかったNexus 7だが、いざ買おうと決心したところでNexus 10が発売された。10インチと一回り大きいだけに価格も16GBで36,800円と高いものの、せっかくのタイミングだったので、Nexus 7をキャンセルしてNexus 10を購入した。音を出してみると、ステレオスピーカーだからか、iPadのスピーカーサウンドと比較すると、かなりいいようにも感じた。そこで、今回は筆者の手元にある第3世代iPadとNexus 10を音で比較してみることにした。

Nexus 10のスピーカーは思ったよりいい音?

Nexus 10

 Nexus7の購入にすぐに踏み切れなかった理由は単純。これまでの経験上、Androidタブレット、AndroidのスマートフォンがDTM用途であまり使えなかったからであり、興味はあったものの、自分にとって何の役にも立たずに放置することになるのではないか……と思ったからだ。とはいえ、やはり最近少しずつ面白いアプリも登場してきているため、思い切って買おうとしたら、Nexus 10が出てしまったというわけだ。

 Android用のDTMアプリの話は今回は割愛するが、DTMでの歴史があるiOSのものと比較すると、圧倒的に数は少ないし、使えるアプリも少ないのが実情。とはいえ、Heat SynthesizerやCausticなど、iOSにはない面白いアプリも徐々に登場してきているし、音のレイテンシーの問題も少しずつだが解決されつつあるようなので、今後に期待したいところだ。

Heat Synthesizer
Caustic
Nexus 10はステレオスピーカーを装備

 一方で、今回のテーマはNexus 10の音質について。筆者が最新の第4世代iPadを購入していないので、1つ前の第3世代iPadと比較して、どう違うのかを実験してみようというわけだ。といっても、半分はお遊び的な実験。なぜ、そんな実験をしてみようと思ったかというと、まったく期待せず、深く考えもせずにNexus 10でエフェクトのかかったシンセサイザの音を出したら、予想外にいい音に思えたからだ。Nexus 10は左右にスピーカーが取り付けられており、ステレオで音がなり、顔を近づけた状態で鳴らすと、結構立体的に音が聴こえるのだ。この感覚はモノラルスピーカーのiPadにはなかったため、断然いい音に感じたのだ。

 とはいえ、これはたかがチッポケな10インチの端末に小さなスピーカーの音の話なので、過剰な期待は当然禁物。間違ってもサウンドデバイスではなく、オマケのスピーカーであり、オーディオ機器と考えれば物足りないサウンドであることは間違いない。あくまでも、スマートフォンのスピーカーやiPadのスピーカーと比較して……というレベルの話であることをご承知おきいただきたい。

 というわけで、試してみたのは、Nexus 10および第3世代iPadのスピーカーで音楽を再生させたものをリニアPCMレコーダーで録音し、その音を比較してみるというもの。使ったのはRolandのR-05で、スピーカーから10〜15cmという程度の距離に置いて録ってみた。再生したのは、いつもリニアPCMレコーダーの比較で使っているTINGARAのJUPITER。16bit/44.1kHzのWAVファイルをNexus 10、第3世代iPadのそれぞれに転送した上で、これを再生してみたのだ。Nexus 10は標準のミュージックプレーヤーである「ミュージック」を、iPadも同じく標準のミュージックプレーヤー「ミュージック」を使っており、いずれも最大音量で歪まなかったので、最大音量に設定している。

スピーカーから10〜15cmの距離に置いて録音
Android標準のミュージックプレーヤーを使用

 それに対し、R-05側は24bit/44.1kHzでレコーディング。レコーディングレベルは音をモニターしながら、最大が-6dB程度になるように調整して行なっている。その後、波形編集ソフトのSoundForgeで最大レベルを0dBにノーマライズした上で、16bit/44.1kHzのWAVで保存したのが、この2つのファイルだ。ぜひ、聴き比べてほしい。

音声サンプル
Nexus 10 nexus10_jupiter.wav(6.98MB)
第3世代iPad ipad_jupiter.wav(7.00MB)
楽曲データ提供:TINGARA

 まあ、どちらの機材にせよ聴いた瞬間に、チャチな音であるのは分かると思うが、聴き比べてみると、明らかに違うことも分かるはずだ。まあ、この曲自体、それほど派手なステレオサウンドではないので、立体感というところまではいかないが、音の広がりという面では当然Nexus 10が上だ。ただ、音圧の面ではiPadが上回っていて、なんとなくiPadのほうが音がいいようにも感じてしまうから不思議だ。ただ、後半になってキックドラムやベース音が入ってくると、iPadはまったく低音が出ていないことも分かる。Nexus 10だって、それほど出ているわけではないが、iPadと比較すればかなり出ている。おそらく、このこととステレオであることが、実物で音を出した瞬間にインパクトを与えてくれるのかもしれない。この結果をスペクトル分析してみたので、参考に見比べいただければと思う。

Nexus 10
第3世代iPad

 なお、その音圧の話と直接関係があるのかは分からないが、最大音量に設定した際の音のパワーはなぜかiPadのほうが断然上。ためしに、R-05の録音レベルを固定したまま、Nexus 10、iPadの音量を比較してみると、ピークレベルはiPadのほうかなり大きいという結果になった。

Android 4.2でもUSBオーディオ出力はできず

Androidのバージョンは4.2.1

 ところで、以前ニュース記事などを読んで気になっていたのが、Android 4.1からUSBオーディオがサポートされたという点。Nexus 10はAndroid 4.2.1というバージョンになっているので、接続すればきっと動いてくれるはず、と思っていた。そこで、Nexus 10をUSBホストとしてキーボードやマウスが接続できるというアダプタを購入し、各種オーディオインターフェイスやUSB-DACを接続してみたが、結論からいえば、うまくいかなかった。どうやらNexus 7もNexus 10も、USBオーディオ接続の機能が無効化されているようなのだ。

 ネットで調べてみたり、Twitterなどで教えてもらった情報によれば、Nexus 10にインストール可能な別のAndroidのカーネルや、Ubuntu touchというLinuxがあるとのことだが、さすがにそこまでしてNexus 10をオーディオマシンにしたいとまでは思わないので、見送った。

 となると、いまのところNexus 10から音を出す手段は、前述のスピーカーとヘッドフォン端子だけ。当然、ヘッドフォン端子から出したほうがいい音であろうことは予想されるが、実際のところどうなのだろうか? これについても第3世代iPadのヘッドフォン端子の出力との違いを比較してみた。

 この実験に用いたのは、1kHzのサイン波を16bit/44.1kHzで作成したWAVファイル、それに20Hz〜20kHzまでを1分で生成したスイープ信号のWAVファイルのそれぞれ。これらをNexus 10および第3世代iPadの再生させた上で、RolandのQUAD-CAPTUREを用いてWindowsでレコーディング。それをWaveSpectraで分析してみたのだ。

 まず1kHzのサイン波の結果を見比べてみよう。これについてはどっちもどっちという感じであまり違いは見られない。S/NでいうとiPadが51.37dBにあるのに対し、Nexus 10が54.18dBと若干Nexus 10のほうがいいようだが、高周波の出方を見ても低域のノイズ、歪みの具合にしても、ほぼ似たような傾向だ。

1kHzサイン波(Nexus 10)
1kHzサイン波(第3世代iPad)

 次に、スイープ信号だが、こちらも大きな差は見受けられない。ただ、細かく見ていくとiPadは900Hzあたりから減衰が始まっているのに対し、Nexus 10は1.2kHzからあたりで、10kHzでの落ち具合もNexus 10のほう少ない感じ。若干だが、Nexus 10のほうがよさそうに思える。

スイープ信号(Nexus 10)
スイープ信号(第3世代iPad)

 では、実際に聴いてみるとどうなのか。音を出してすぐに分かるのは、やはりiPadのほうが断然音量が大きいこと。最大ボリューム設定にした際の音量レベルの大きさは、それぞれで6dBほどの違いがあった。つまり、iPadはNexus 10の倍の音量が出ているということになる。iPadの音量を下げて、Nexus 10と比較して聴いてみると、高域での差はさほど感じないが、低音の出方はiPadのほうがしっかりしている。スイープ信号の結果だけでは、こうした違いは分からないが、オーディオ回路の出来はやはりAppleのほうがいいということなのかもしれない。

Nexus 10の音量
第3世代iPadの音量

 以上、Nexus 10とiPadの音の比較実験を行なってみたがいかがだっただろうか? スピーカー出力ではNexus 10の勝ち、ヘッドフォン出力はiPadの勝ちと、トータルでは引き分け。どういう使い方をするのかによってチェックポイントも変わってくると思うが、ひとつの参考にしてみていただければと思う。

藤本健

 リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。  著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。またブログ型ニュースサイトDTMステーションを運営するほか、All AboutではDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。EPUBマガジン「MAGon」で、「藤本健のDigital Audio Laboratory's Journal」を配信中。Twitterは@kenfujimoto