第423回:クリエイティブのUSBオーディオ「SB-DM-PHD」を試す
~フォノ入力対応で、アナデジ変換用に魅力的 ~
USB Sound Blaster Digital Music Premium HD |
コンパクトなUSBオーディオインターフェイスで、アナログおよびデジタルの入出力に加え、フォノイコライザーを装備し、カセットテープやレコードプレイヤーの楽曲をデジタル化するためのアプリケーションがバンドルされている。
DTM用途のオーディオインターフェイスとは一線を画し、アナログ素材の取り込みにフォーカスを絞った製品だ。実際どんな製品なのか試してみた。
■ 日本側からさまざまなオーダーを出して実現した製品
USB Sound Blaster Digital Music Premium HDは、ブラックボディーのコンパクトなオーディオインターフェイス。フロントにはボリュームノブと標準ジャックのヘッドフォン出力、マイク入力が装備され、リアにはRCAのステレオ端子が入出力それぞれ2つずつ並び、S/PDIFの光入出力も装備されている。また一番左にあるのは、アース用の端子。これぐらいのコンパクトな機材でアースが用意されているのも、ちょっと珍しいように思う。
また、USB端子がミニとなっている。USB Sound Blaster Digital Music Premium HDは、シンガポールのCreative Technology本社に対して日本側からさまざまなオーダーを出して実現した製品とのことだが、金メッキの端子が採用されているなど、さまざまなところにこだわりがあるようだ。
iPhone 3GS(右)との大きさ比較 | フロントにはボリュームノブと標準ジャックのヘッドフォン出力、マイク入力を装備 | リアにはRCAのステレオ端子が入出力それぞれ2つずつ並び、S/PDIFの光入出力も装備されている |
初代のUSB Sound Blaster Digital Music(右)より一回り大きい |
ちょうど手元に初代のUSB Sound Blaster Digital Musicがあったので、並べてみたところ、Premium HDは初代機より一回り大きいが、よりガッチリしたボディーになっている。個人的にヘッドフォンは標準ジャックが好きなので、Premium HDのほうが扱いやすく、ボリュームノブも適度な大きさで操作しやすい。
ボリュームノブはWindowsミキサーと連動している |
このボリュームパネルは、バンドルされているアプリケーションのランチャーともなっているのだが、まずCreativeエンターテインメントコンソールを起動するとSound Blaster X-Fiシリーズでお馴染みの画面が登場する。X-Fiと比較すると設定できる項目は少ないが、まずスピーカーの設定では2/2.1chかヘッドフォンかの設定ができるようになっている。
Premium HDをコントロールするためのボリュームパネル | Creativeエンターテインメントコンソール | スピーカーの設定では2/2.1chかヘッドフォンかの設定ができるようになっている |
■ フォノイコライザも内蔵
EAXの設定 |
ちなみに、Premium HDはヘッドフォンを挿すとRCA端子のライン出力は切れるという仕様になっている。EAXの設定を有効にすると、各種ホールでの音場効果を得ることができる。個人的にはあまり使わないが、エフェクトアマウントを控えめに設定すると、それなりに心地いい感じにはなりそうだ。
そしてTHX TruStudio PCテクノロジーの設定はライブの臨場感、映画やレコーディングスタジオのオーディオ環境をPC上に実現するためのTHXの技術。これに関しては、先日紹介した、「Sound Blaster X-Fi Titanium HD」に搭載されていたものとまったく同じ機能のようなので、詳細は割愛するが、CrystalizerはMP3やAACなどの圧縮オーディオを再生させる場合には、有効に利用できそうだ。
ミキサーでは、どのソースを出力するのか、どのソースをレコーディングするのか、それぞれのレベルをどの程度に設定するのかといった調整ができる。この画面を見て気づく方もいると思うが、USB Sound Blaster Digital Music Premium HDにはラインインと兼用の端子を使ってフォノイコライザが利用できるようになっている。アナログのレコードプレーヤーを接続して録音する場合、わざわざフォノイコライザを購入して接続しなくても、Premium HDのラインインの端子に直接接続すれば使える。
THX TruStudio PCテクノロジーの設定 | Crystalizerの設定 | ミキサーの設定。フォノイコライザもここで設定する |
入力されている信号のサンプリングレートが表示される |
このあたりが少し、物足りないようにも感じたが、コンシューマ製品であることを考えれば仕方ないところだろう。それに関連していえば、ASIOドライバに対応していないのも、やはり用途が異なるということで理解すべきところなのだろう。
■ 「高級オーディオ用の高音質コンポーネントを採用」
なお、X-Fiではこのコンソールはエンターテンメントモード、オーディオクリエイションモード、ゲームモードと3つのモードに切り替えて使うことができ、モードを切り替えることで、オーディオインターフェイスとしての機能もいろいろと変わるのだが、USB Sound Blaster Digital Music Premium HDにはオーディオクリエーションモードやゲームモードといったものは存在しない。すべてエンターテインメントコンソールで操作する形になっている。
Creativeオーディオコントロールパネル |
なお、このCreativeエンターテインメントコンソールのほかに、Creativeオーディオコントロールパネル、というものもあるが、基本的にはすべてエンターテインメントコンソールで操作できる内容になっている。
一方、バンドルされるCD-ROMの中には収録されていないが、自動で無償ダウンロードできるアプリケーションとして「スマートレコーダー」、「Creative WaveStudio 7」という2つがある。スマートレコーダーは入力音を検知して自動的に録音を開始する機能や、タイマーで好きな時間に録音を行なう機能などを備えた簡単録音ソフト、Creative WaveStudio 7は最高で24bit/96kHzに対応した波形編集ソフト。
いずれも、Sound Blasterシリーズで以前からバンドルされていたり、無償ダウンロードできるソフトだったので、目新しさはないが、エントリーユーザーにとってはなかなか便利なソフトといえるだろう。
Creative Media Toolbox 6 |
この中にはノイズリダクション機能も装備されている。ミュージッククリーナーというのがそれで、パラメータを見ると「ヒスノイズ除去」、「クリック音除去」の2つが用意されているのがわかる。おそらくはテープのヒスノイズを取ることと、レコードのプチプチいうクラックルノイズを取ることを目的としたものなのだろう。-~+という、ちょっとわかりづらいパラメータだが、デフォルトではともに中央の位置になっている。
パラメータは「ヒスノイズ除去」と、「クリック音除去」の2つ |
せっかくなので、以前から何度も使っているAreareaの「愛のあかし」という曲にノイズを乗せた2つのサンプルを使って、どの程度のノイズリダクション効果があるかを試してみよう。片方はヒスノイズを乗せたもの、もうひとつがクラックルノイズを乗せたものだ(元データは第18回に掲載)。いろいろとパラメータを動かしながら試してみたが、結論からいうと、あまりいい結果は得られなかった。確かに多少ヒスノイズを抑えることはできるが、わずかなノイズであれば、有効かもしれない。ただ、強めにかけると本来の音まで変質してしまうので、注意が必要だ。
クラックルノイズ | cracle.mp3(469KB) |
ヒスノイズ | hiss.mp3(469KB) |
ところで、クリエイティブメディアのWebページを見ると「高級オーディオ用の高音質コンポーネントを採用」といった記述がある。実際どんなチップが載っているのか、試しにネジをはずして中をあけてみた。基板には、CREATIVEの「CA019-2AG HF」と書かれているコントローラチップのほかに、CIRRUS LOGICの192kHzのA/Dコンバータ「CS5361」と、旭化成(AKM)の24bit/192kHzのD/Aコンバータ「AK4396VF」があった。これらを用いて高音質を実現しているというわけだ。
基板には、CREATIVEの「CA019-2AG HF」、CIRRUS LOGICの192kHzのA/Dコンバータ「CS5361」、旭化成の24bit/192kHzのD/Aコンバータ「AK4396VF」を装備 |
■ 再生用のデバイスとしても、なかなか使い勝手がいい製品
最後にいつものように、RMAAを用いてのテストを行なった。ただし、今回の製品はASIOが使えないので、出力はDirectSound、入力はMMEドライバでテストしている。このドライバが理由で音質が若干落ちているということも考えられるが、結果はここに掲載したとおりだ。44.1kHz、48kHz、96kHzのそれぞれで「THD + Noise」などがやや低めの結果となっている。
とはいえ、この価格でこれだけの音質を実現するとともに、フォノイコライザ内蔵で、さまざまな機器との接続にも対応しているなど、アナログ素材のデジタル化を目的とした機材としてはなかなか魅力的だ。もちろん、再生用のデバイスとしてみても、なかなか使い勝手がいい製品である。