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第129回:液晶テレビ最高峰「CELL REGZA」の実力を検証する

比類なき画質と進化への期待。東芝「55X1」


55X1

 東芝は液晶テレビの最高峰モデルとしてCellプロセッサを搭載した「CELLレグザ(REGZA) 55X1」を12月に発売開始した。CEATECの開幕にあわせて10月にお披露目されたが、出荷が始まったのは2009年12月。年が明けて2010年1月下旬になって、やっと本連載でも評価をする機会を得た。

 現在考え得る液晶テレビのハイスペックと、次世代テレビライフをイメージさせる新機能の数々はどのような仕上がりになっているのだろうか。


 


■ 設置性チェック〜重量と消費電力はヘビー級。スタンドは別売り。

 現行CELL REGZAは55V型の55X1の1サイズモデルラインナップ。55型のディスプレイ部と、チューナボックスが別々に分かれた製品構成となっている。

 ディスプレイ部のサイズは133.3×7.4×80.4cm(幅×奥行き×高さ/スピーカー除く)、表示面サイズは121×68cm(横×縦)と大迫力だ。重量もヘビー級で、ディスプレイ部単体で37.5kgもあり、移動は一人では無理。筆者宅へ評価機を運び込んで設置した際は、スタンド上に置いてからの左右の位置決めも2人で行なった。

55X1。55インチの大画面。スペックや価格だけでなく、重量もヘビー級

 購入時に注意したいのが、テレビスタンドが別売と言うこと。一般的な形状のスタンドとしては純正オプション「FPT-TS55」(実売16,000〜20,000円)が設定されているが、これ以外に壁寄せ型の「FPT-KY55」、壁掛け設置用の「FPT-TA12」、テレビ台一体型ラック式スタンド「RL-H150」もラインナップされる。今回は標準スタンドといえるFPT-TS55を利用した。重量が約7kgもあるため、設置場所まで移動してディスプレイ部に取り付けることをお勧めする。また、FPT-TS55には首振り機構は無い。

 設置時に気をつけたいのがスピーカー部。55X1はアンダースピーカーデザインだが、このスピーカーはユーザーがディスプレイに取り付ける。スピーカー部はディスプレイ部にネジ止めするタイプだが、取付け後にスピーカー部を持って55X1を移動したりすると、接合部に荷重がかかり、破損する恐れがある。運搬、組み立て時には注意したい。

55X1のスピーカーは別体型

意外に大きいチューナボックス

 チューナボックスはチューナだけでなく、総容量3TBのHDD、Cellを中核とした映像エンジン、入出力端子などを実装しており、いわば55X1における頭脳、心臓ともいえるものとなっている。大きさは436×387×109mm(幅×奥行き×高さ)、重さは10.5kg。

 なお、チューナボックスとディスプレイ部との接続には、同梱されるHDMIケーブルを用いる。今回の評価で、私物の安価なHDMIケーブル(5m)での接続も試してみたが、リモコン操作時のカーソルの動きがぶれたり、画面全体ぶれが出るなどの障害が散見された。付属ケーブルに差し替えたところこの症状は無くなったので、付属ケーブルを使うべきだろう。

 液晶パネルはクリアパネル(光沢タイプ)を採用している。設置した場所から相対する位置に窓などがある場合は、日中はこれが映り込んでくることがあるかもしれない。このあたりは事前に設置シミュレーションを行ない、映り込まない位置を見つけ出したいところ。額縁の幅は上、左右、下ともにほぼ約6cm。いわゆる狭額縁というほどではない。

 額縁部はアルマイト加工を施したブラック・アルミ素材でできており、つやを抑えた渋いカラーリングのため天井照明の映り込みは少ない。黒アルミ額縁の外周にはさらにスモーク調の透明樹脂の縁取りがしてあり、見た目としてハイエンドらしい格調高い面持ちとなっている。東芝のロゴは下部中央にクロムメッキ調のプレートとして配されているが、自発光するようなこともなく、控えめな印象。

光沢パネルを採用。額縁は高級感の漂うアルマイト仕立て。額縁への映り込みは最低限 厚みは10cm。直下型LEDバックライトシステムを採用しているわりにはスリム。もっとも高機能なシステム部分はチューナーボックス側にあるので、ある意味当たり前だが

 消費電力はチューナボックスが140W、ディスプレイ部が320Wで、システム全体では最大460Wとなる。これは同型サイズの一般的なCCFLバックライト採用の液晶テレビの約2倍近い消費電力であり、機能が高い分、さすが消費電力は大きい。

 動作時の騒音は、本体に耳を近づければディスプレイ部からはごくわずかにブーンという稼働音、チューナーボックスからはHDDのアクセス音が聞こえる程度で、1mも離れればほとんど気にならないレベルだ。

 


■ 接続性チェック〜遅延低減のゲーム入力専用端子やマニアックなセンタースピーカーモードも

 主な入出力端子は、チューナボックス側の背面に備えており、HDMI入力が4系統、アナログビデオ入力が2系統となる。アナログビデオ入力の2系統は、ビデオ1/2のそれぞれにコンポジットとアナログ音声を有しているほか、ビデオ1に排他仕様のD5入力、ビデオ2に排他仕様のS2ビデオ入力が組み合わされている。アナログビデオ入力の統廃合は来るところまで来たという感じだ。

 チューナボックス前面側の蓋を開けた内側には、HDMI入力と、コンポジットビデオ入力、アナログ音声入力を備えている。

チューナボックス 背面の接続端子 前面にもHDMI入力や6系統のB-CASスロットを装備する

 ディスプレイ側には、正面向かって右側面にゲーム機などの接続を想定した接続端子が2系統備わっている。うち1系統はアナログビデオ入力でコンポジット入力、アナログ音声入力、排他仕様のD5入力。もう1系統はHDMI入力だ。

ディスプレイ部にも正面向かって右側面にも接続端子群がある。こちらは「ゲーム入力」と名付けられている

 1つ留意しておきたいのは、このディスプレイ部側面の接続端子は、チューナボックス側の接続端子群とは別管理となっているという点だ。これらは「ゲーム入力」と命名されており、HDMIがゲーム1、アナログ側がゲーム2という入力系統名になっている。

 実はただ名前を変えているだけではない。ゲーム入力側に接続した場合は、チューナボックスの接続端子に接続したときと比べて、表示遅延が少ないことが保証されるのだ。もちろん、管理名が「ゲーム」なだけであって、ここにゲーム機以外を接続しても問題なく表示できるし、55X1が持つ高画質化機能の全てを適用できるので、非ゲームユーザーでも追加の入力系統として活用できる。

 リモコンには、「ゲーム」という専用の入力切換ボタンが備えられており、これを押すことでゲーム1、ゲーム2の入力切換をダイレクトに行なえる。チューナボックス側の接続端子については、従来のREGZAと同様の、[入力切換]ボタンによる順送り切り替えとなる。

 まとめると、チューナボックス側はHDMIが5系統、アナログビデオが3系統、ディスプレイ部はHDMIとアナログビデオが1系統ずつということになる。入力系統が多いので、[入力切換]を辿るのではなく、[ゲーム]を押せば必ずディスプレイ側の入力選択になるというのは操作面においても優れた設計だと言えよう。

 注意点としては、ゲーム1のHDMI端子はHDMI CEC関連の機能をサポートしていない。つまり、CEC対応の新型PS3をブルーレイプレーヤーとして活用しているケースにおいて、REGZA側のリモコンでPS3のBD再生制御は行なえないということだ。PS3を「ゲーム機としてディスプレイ部に接続するか」、「AV機器としてチューナーボックス側に接続するか」の選択が迫られる。

 チューナボックスには、USB端子が背面に2系統、前面に1系統配置されている。背面側の2系統は録画用のUSB HDDを接続するためのもの、前面側1系統はUSBキーボードやデジカメ、USBメモリなど録画用途以外のUSB機器を接続するインターフェイスに割り当てられている。なお、USBキーボードは、番組検索のフリーワード入力には利用できなかった(リモコンからの入力のみに対応)。取扱説明書ではブロードバンド機能の際にのみ利用できるとあるが、番組検索のキーワード入力にもキーボードが使えるように改善を期待したい。

 アンテナ入力端子は地デジ用とBS/110度CS用がそれぞれ1端子づつあるのみ。55X1はチューナが地デジ11基、BS/110度が3基、アナログが1基、合計15チューナ内蔵しているが、アンテナケーブルはこの2つに接続しておけばあとはチューナボックス内部で分配される。

 PC入力用端子はないが、市販のDVI-HDMI変換アダプタなどを介すれば、PCとデジタルRGB接続は可能だ。「画面調整」メニューの「スキャン切換」設定において「ジャストスキャン」を選択すれば、オーバースキャンをキャンセルして、PC画面の全域をちゃんと表示できる。筆者の実験ではNVIDIA GeForce GTX280、ATI RADEON HD4850の双方で、ドットバイドットの1,920×1,080ドット表示が行なえていた。

 PC接続時に心配される「HDMI階調レベルの誤認ケース」についても55X1は抜かりはない。「RGBレンジ設定」を「フルレンジ」とすれば、RGB各0-255までの正しい階調表示を確実に行なってくれる。

「RGBレンジ設定」メニュー フルレンジと、リミテッドレンジが選択できる 入力信号の詳細が知りたければ「信号フォーマット詳細表示」で確認できる

 なお、本格的に55X1にPCを接続する場合はHDMI“4”入力の端子を利用することをお勧めする。チューナボックスの背面にはHDMI4入力のための専用のアナログ音声入力端子「HDMI4アナログ音声入力」が設けられているので、PCからのサウンド出力をここに接続すれば、HDMI4に切り換えてPC画面にしたときに55X1のスピーカーからPCサウンドを鳴らすことが出来る。これはPCゲーマーなどは是非とも活用したい機能だ。

「センタースピーカーモード」メニュー

 この他、55X1の再生音声を外部AVアンプなどで再生するための音声出力は、アナログステレオと光デジタルの1系統ずつがある。逆に、アナログビデオ機器に録画するための録画出力端子は55X1では省略されている。主に写真データ用となるSDカードスロットは、チューナボックス側に備えている。SDHC 32GBにまで対応し、閲覧可能な写真は1枚あたり24MB、6,000×4,000ピクセルまで。

 最後に、以前からREGZA開発チームに提案していて、今回新搭載されたマニアックな機能について紹介しておこう。それは55X1のスピーカーシステムを5.1ch(7.1ch)のサラウンドサウンドシステムのセンタースピーカーとして利用できる機能だ。

 AVアンプのデコード済みのPRE OUT CENTER端子と、前述した「ゲーム2」のアナログ音声入力端子の白側(左側)とを接続し、「音声設定」の「センタースピーカーモード」を「オン」にすることで利用できる。表示映像がどの入力系統のものであっても、55X1からの出力音声は音声が「ゲーム2」のアナログ音声入力端子の白側(左側)からのモノラル再生となる。55X1をホームシアターの中核ディスプレイとして利用する際に活用してほしい。

 


■ 操作性チェック〜2段階スライド構造の新リモコンが付属

2段階スライド構造を採用したCELL REGZA専用リモコン

 リモコンは他のREGZAとは違う専用設計。発光機能やディスプレイなどを装備しているわけではないが、作りはかなり凝っている。

 上面全体が、2段階にスライドする構造になっており、1段スライドするごとに下部に配されたボタン群が姿を現す。スライド式の携帯電話のイメージで、1段階スライドでは、使用頻度の高い録画コンテンツの再生制御系のボタン群が、2段目のスライドで設定メニュー、マルチ画面、録画などの使用頻度が若干落ちるボタン群が出現する。蓋の下にボタンを隠すデザインは多くのメーカーで採用されているが、このようにスタイリッシュにボタンを隠した例は珍しい。

 もう1点、さすがハイエンド機のリモコンと思わせてくれるのは、リモコンと55X1本体との通信に電波(RF)方式を採用している点。リモコンをテレビに向けなくても確実な操作ができるのだ。

 この無指向性通信を活用した機能として、見あたらないリモコンを、チューナボックス側から呼び出して探すことが出来る機能が備わっている。チューナボックス側の[リモコン呼出]ボタンを押すと、電波受信範囲にあればリモコン側よりブザー音を鳴らすことができるのだ。電池を消耗するらしいのであまり何度も使いたくはないが、オーナーとなった暁には一度は試してみたくなる機能でもある。

 贅沢なことに、十字キー部分はキー兼タッチパッド機構になっており、押し込めばボタン操作が、指でなぞればタッチパッド操作が行なえる。タッチパッド操作は主にWebブラウザ使用時のマウスカーソル移動に用いることになるが、録画コンテンツの再生制御にも利用できる。パッド部の左右端をダブルタッピングすると少し戻し、少し送りが行なえる。同等の操作はリモコンの蓋を1段スライドさせたところにある「再生制御」ボタンでもできるので、あえてタッチパッドを利用する人は少ないかも知れない。現在はまだ未対応だが、将来のアップデートにより、タッチパッドの左右端をなぞることでページ送りが出来るようになったり、文字の手書き入力なども出来るようになるらしい。55X1の番組表や録画リストのページ切換は、現状あまりレスポンスが良くないのだが、アップデート後、タッチパッドが効果的に使えるようになれば、そうした操作系も改善を見ることになるかも知れない。

 リモコン関連でいくつか気になった点があるので挙げておこう。従来のREGZAのリモコンにあった比較的使用頻度の高いボタンがなくなってしまったことが、少々使い勝手を悪くしている。

 特に残念と感じたのは、画調モード(映像メニュー)の切り替えボタンと、アスペクトモード(画面サイズ)の切り替えボタンが無くなってしまった点。「映画」「標準」「ゲーム」の画調モードは頻繁に切り換える場合、従来のREGZAならば「おまかせ映像」ボタンを押すだけで切り換えられたのが、CELL REGZAではメニュー階層を潜らなければならなくなってしまった(使用頻度の高いメニュー項目を集めた「クイック」メニューから行っても手間が減らない)。

「映像設定」メニュー 「映像調整」メニュー 「詳細調整」メニュー 「カラーイメージコントロールプロ」メニュー 「レゾリューションプラス設定」メニュー 「画面調整」メニュー
「ヒストグラム表示」メニュー 「映像調整」メニュー 「機能設定」メニュー 「外部入力設定」メニュー 「REGZAリンク設定」メニュー 「初期設定」メニュー

 55X1では、ディスプレイ部側のゲーム入力端子とゲーム機を接続した際、映像の表示遅延を最低限にする「ゲームダイレクトモード」が備わっているが、これを活用するためには画調モード「ゲーム」に切り換えて、さらにアスペクト切り替えでゲームダイレクトモードのアスペクトモードを選択する必要がある。55X1では2つのボタンがなくなってしまったため、通常の画調モードとゲームダイレクトモードの行き来が、メニューまさぐらなければならず煩わしい。

 さらにいえば、従来のREGZAリモコンにはあった字幕のオン/オフ切り替えボタンもなくなってしまったのも残念だ。常時字幕を出しているわけではないが、コンテンツを見ていてよく聞き取れなかったところだけ戻して字幕ありで見る、ということは意外によくやることなので、このオン/オフがワンタッチで出来なくなってしまったのは悲しい。

 ボタンの有無問題とは別に、操作系として従来のREGZAよりもわかりにくくなった部分もある。たとえば従来は画面に何を映していても(外部入力の映像でも)、[録画リスト]ボタンを押せばワンタッチで録画リストを呼び出せたのだが、55X1では、一度テレビ放送に切り換えてからでないと[タイムシフト]機能に移行できず「エラー」メッセージが出る。リモコンの[タイムシフト]ボタンはタイムシフト機能へのショーカットボタンなので、エラーを出さずに直接飛んでも操作系設計として問題ないはず。これも改善を望みたい。

 もちろん、従来REGZAよりも操作系として進化した部分もある。録画コンテンツを再生した際、早送りと早戻しだけでなく、ワンタッチスキップという設定した秒数(デフォルトでは30秒)単位で一気に進めたり戻せるようになった。これは前述したようにタッチパッド左右端のダブルタップをするか、あるいは再生制御ボタンのスキップボタンを押すことで行なえる。早送りとは違い、CMなどをワンタッチで瞬時に飛ばせるので非常に快適だ。

 新開発のリモコンとGUIということで、良いところもあれば、足りない点もある。リモコンについて個人的な要望を言えば、ここまで贅沢な仕様にするのならば、ついでに自照式ボタンも採用して欲しかった。55X1は、その画質ポテンシャルの高さゆえに、部屋を暗くしてコンテンツを楽しむことが多くなるので、リモコンの各ボタンのライトアップ機構は理にかなっていると思う。

 電源をオンにしてから、地デジ放送の画面が表示されるまでの所要時間は約20秒。普通のテレビと違ってブートアップに手間がかかるのか、最近の機種としては遅めだ。入力切り替えの所要時間はSビデオ→HDMIで約3.6秒、HDMI→HDMIで約3.3秒とこちらもあまり早くはない。一方、地デジのチャンネル切り替えの所要時間は約1.8秒と標準的なスピード。

 ハイエンド機の割には、あまりぱっとしない印象を抱いたかも知れないが、55X1には、他にはないチャンネルナビゲーション機能が搭載されており、切り替え速度の遅さのマイナスポイントを大きくカバーする。

 まず、チャンネル切り替えの上下ボタンのいずれかを押しっぱなしにすると、だんだんと切り替え速度が加速していき、その後は瞬間的に切り替わるようになる。また、見たいチャンネルがこれといってない時は、チャンネルを順送りするよりも「マルチ画面」機能の活用を試みるべき。これは1つの親画面と7つの子画面で、合計8画面分の番組を同時に視聴できるという画期的な機能だ。親画面は約40V型相当、7つの子画面ですら約13V型相当の大きさがあるので、そこに表示される映像はかなり緻密で見応えがある。

その時点で放送中の最大8番組を同時にプレビューできる 2画面モードも搭載するが55X1では、ここに外部入力の組み込みができない

 8チャンネル分の映像の同時表示、ということは、首都圏であればNHK、NHK教育、日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京の全ての番組をリアルタイム表示できるということだ。再生音声は1番組のみになるが、これはリモコンの十字キーで音を聞きたい番組をカーソルで合わせることで随時変更が可能。チャンネルをガチャガチャと切り換えるよりも効率的に今やっている番組を俯瞰できるので強力に便利な機能だ。ここに、外部入力の画面なども入れられれば楽しいのだが、これには未対応。左右に画面を並べたサイドバイサイド2画面モードも有しているが、この時も外部入力を映せない。このあたりの制限は撤廃してもらいたいものだ。

 3つめの55X1ならではのチャンネルナビゲーションは番組表だ。これは一般的なデジタルテレビに備わっている電子番組表と基本的にはかわらないのだが、地デジ受信中は、番組表最上段に、現在放送している番組の映像がリアルタイムで動画サムネイル表示される。マルチ画面だと、面白そうだと思っても番組名がわからないが、こちらは文字情報と映像情報の両方を同時に把握できる嬉しい機能だ。

番組表。地デジ受信中は上部に放送中の番組を小画面で表示する ミニ番組表でもサムネイル表示がある

 ちなみに、外部入力画面表示時にも[番組表]ボタンを押すと一発で番組表にジャンプするが、外部入力画面表示時に[マルチ画面]ボタンを押すとエラーが出てしまう。これは前述の[タイムシフト]ボタンの件と同様、改善を要するポイントだ。

「クイックメニュー」メニュー。ここからアスペクトモードを変えなければならない

 録画機能のインプレッションなどは後述する。基本的なメニュー構造については、これまでのレグザから大きな変更はない。ゲームモード以外のアスペクトモードの紹介、ドルビーボリュームを初めとしたサウンド関連機能、基本的な画質調整機能の詳細については本連載第99回の「REGZA 46ZH500編」、および第118回「REGZA 55ZX8000」を参照して欲しい。以下では、55X1で新設されたり、名称が変更になった機能などをフォローしておく。

 まず、55X1では、ゲーム入力に接続した機器の映像表示の際に利用できる専用のアスペクトモードとして「ゲームダイレクト」「ポータブルズーム1」「ポータブルズーム2」の3つが新設された。ゲームダイレクトは解像度変換を行なわずに原信号のまま表示するモードだ。ポータブルズーム1と2はプレイステーションポータブル(PSP)を接続したときを想定したもの。型式番PSP-2000以降のPSPは、テレビ出力機能が備わったが、一般的なテレビに接続すると、メニュー画面とゲーム起動後の画面とで表示の拡大率が変わり、全画面表示が行なえないのだ。

 万が一、PSPの画面を表示していて、REGZAに全画面表示が行なえない局面では、この2つのズームモードを使い分けるといい。ちなみにこのポータブルズームにおける表示遅延は最低限に抑えられている。


「ゲームフル」 「ゲームノーマル」
「ポータブルズーム1」。PSP映像を水平3倍オーバーサンプリングして3倍に拡大。1,440×816ドット領域にPSP映像を表示 「ポータブルズーム2」。PSP映像を4倍拡大表示する。PSP映像を全画面表示するモード

 「映像設定」メニューに「色解像度」という設定項目が新設されているが、これは以前のレグザでは「色帯域」と呼ばれていた設定項目だ。機能の効果自体に変化はないのでこちらも詳しくは第118回「REGZA 55ZX8000編」の該当箇所を参照して欲しい。

色解像度=スタンダード。480p出力した映像を拡大 色解像度=ワイド。色境界が鮮明になる。つまり色解像度が向上している

 55X1で新設された画調パラメータとしては「ピーク輝度」がある。これはLEDバックライトのエリア駆動を行なった際の最明部の伸び率を設定するもので、「オフ」「弱」「中」「強」が選択できる。「オフ」設定ではピーク輝度調整を行なわず、「強」設定はもっともコントラスト感が強くなる。ただし、完全暗室で視聴した場合など、明部が局所的で暗部が支配的な映像では明部に隣接した暗部に黒浮きが発生する光輪(ヘイロー)現象が知覚される場合がある。画調モードを「おまかせ」モードにしているときは「オート」が選べ、通常はオートで問題ない。明るい部屋で黒浮きが気にならない視聴環境では、コントラスト感の強い映像表現が楽しめる「強」も悪くない。

 


■ 画質チェック〜ピーク輝度向上と、最高品位のエリア駆動によって実現された液晶未踏のコントラスト

 録画系の機能は後述し、まずは注目の画質を見てみよう。55X1の映像パネルは55V型フルHD/1,920×1,080ドットの倍速駆動対応垂直配向(VA)液晶パネルを採用する。液晶パネルは55X1用にカスタマイズされている。

くっきりとした画素描画が美しいクリアパネル

 液晶パネルのタイプとしては、表示面を光沢加工した「クリアパネル」が55X1でも採用されている。クリアパネルは周囲からの映り込みの影響が出やすいものの、液晶画素からの出力が拡散されずにダイレクトに目に届くため、フォーカス力が高まったかのように映像が見える利点がある。55X1は他のREGZAよりもピーク輝度も高いので、SN比的な観点から見ても、他のクリアパネル採用REGZAと比べて、映り込みの影響が少ない。

 55X1の画質に関わるハードウェア面での最大の特徴は、LEDバックライトシステムの採用だろう。55X1は白色LEDを液晶パネルの背面直下に配した直下型LEDバックライトシステムを採用する。さすがはハイエンド製品、そのLEDの個数たるや4,608個にも上り、表示映像の輝度分布に応じ、局所的にLED輝度を変化させるエリア駆動の分割ブロックに至っては512ブロックに達する。これは、量産化されている民生向けテレビとしては世界最高スペックだ。消費電力が、一般的な同サイズ液晶テレビより高いのも頷ける。ちなみに、512ブロックは縦横不均等に32×16ブロックで構成され、1ブロックあたりの白色LED数は3×3の構成。すなわち4,608個の白色LEDの内訳は「32×16×9=4,608」ということになる。

55X1のディスプレイ部の内部構造図解 エリア駆動の仕組み 55X1の白色LEDバックライトシステム
拡散板を外したカットモデルによるLEDエリア駆動の点灯状況デモ
LEDエリアコントロール=オフ。一様に暗部階調が盛り上がる。写真写りはこちらの方がいいが、実際のコントラスト感はオンに劣る LEDエリアコントロール=オン
LEDエリアコントロール=オフ。黒部分が明るくなってしまっている LEDエリアコントロール=オン。黒部分の黒浮きが消える

 公称ネイティブコントラストは5,000:1。これでも十分なスペックだが、LEDのエリア駆動を組み合わせた動的コントラストは500万:1に達する。最近では最大輝度を公表する機種は少なくなってきたが、55X1ではあえてこれを1,250cd/m2と謳っている。これは一般的な液晶テレビの450cd/m2の約2.8倍に相当する明るさだ。

 実際の映像を表示して55X1を見てみると、たしかにコントラスト感は、最近のプラズマテレビのそれを凌駕している。暗室で完全な黒表示を行なった場合は、液晶パネルの表示面がほぼ部屋の暗さに消失するほど暗くなる。ここで、画面の一部にアイコンなどを表示してみると、そのアイコンのみが鋭く光る。REGZA 55ZX8000では、全黒の一部にアイコンを表示した場合、そのアイコンの周辺にうっすらと明るくなる「光輪」のアーティファクトが知覚されることを述べているが、55X1の映像を見る限りではこれがほとんどない。光輪は、同じ黒表示でも、エリア駆動によってバックライトが点灯した箇所の黒と、消灯したままの箇所の黒とで明暗差が生まれてしまうことで生じるのだが、55X1はエリア駆動分割数が512個と細かいせいで、これがかなり抑えられているのだ。ここまでの明暗差を同居させて理想的なコントラスト表現が実現できている映像は、液晶では見たことがない。

 「圧倒的な最暗部の沈み込み」、「明暗を同居させての正確均一なコントラスト性能」。この2つはプラズマが得意とする高画質性能だが、さらにここに55X1ならではの“旨味”が付加されることでオンリーワン画質を実現する。それはピーク輝度の鋭さである。

 最大1,250cd/m2の55X1の高輝度性能は、ただ画面表示を明るくできるというだけでなく、エリア駆動と組み合わされることで、局所的なハイライトを非常に鋭く明るく描画できることに結びつけられる。

 最新のプラズマは暗部を沈み込ませることでコントラストを向上させ、数万:1以上のコントラスト性能を謳うようになった。進化著しいプラズマの高画質映像には見るたびに感心させられてきたものだが、55X1の画質は、そうした暗い方向だけでなく、明るい方向にもダイナミックレンジを大幅に拡大した画質になっている。「プラズマと液晶のそれぞれの高画質特長が組み合わさった」という感じだ。

 通常は、画調モード「おまかせ」を選択し、「ピーク輝度」設定は「オート」にしておけばいいのだが、ここをあえて「強」や「中」を選ぶとハイライト部がハイダイナミックレンジ化するので、屋外シーンのリアリティが高まる。「ピーク輝度」設定は現行REGZAでは55X1専用の設定項目であり、かなりいじり甲斐があるパラメータだ。

ピーク輝度調整=オフ ピーク輝度調整=強。同一撮影条件で撮影すると、ここまで明部のきらめきが変わって写る

 発色は最近の白色LEDバックライト特有のナチュラル系のチューニングとなっている。照明用の白色LEDとは違い、最近の液晶テレビ用の白色LEDは、カラースペクトル上で見ても比較的理想的なRGB三原色のピークが立っているため、理想的なRGB三原色が取り出せるのだという。従来のCCFLでは、プロジェクタ用バックライトの超高圧水銀系ランプに似た強い青緑のピークや、他にも細かいピークが見られるため、“色の雑味”を強引に押さえ込んでのカラー表現であったが、新世代の白色LEDバックライトはそうしたこともないため、今回の55X1のような自然なフルカラー表現が出来ているというわけだ。

 実際、映像を見てみると、RGB-LEDのような過度に色域を広げた感じはないものの、各純色は非常に伸びやかな表現となっている。赤は鋭く、緑は鮮やかで、青からは深みが感じられる。x.v.Colorにも対応している。

 純色→黒のグラデーション表現を見ても非常にリニアで色深度の高さが伝わってくる。この“高”色深度描写力とエリア駆動による黒浮きの少なさとの相乗効果で、最暗部においても、正確に色味を伴った描画を行なってくれている。なので、あまり階調を盛り上げたガンマカーブでなくても、暗部の情報量が多く見える。暗い屋内シーンでも十分な立体感が感じられるし、黒いボディの車に映り込んだ情景などにもリアリティがある。

 色深度が高いため、二色混合のグラデーションも擬似輪郭がなくスムーズで美しい。REGZAはZ7000系以降、こうしたグラデーション表現が美しくなったが、55X1では、この白色LEDバックライトの色特性の旨味が付加されたことでさらに良くなっている。

 人肌も良好。白い肌の表現に透明感があるだけでなく、赤味を帯びた肌にもみずみずしさを感じる。肌に生じる陰影における肌色から茶色へのグラデーションもなだらかだ。55X1ではハイライト側の肌色だけでなく、“陰”側の肌色も美しい。

 55X1の映像エンジン周りにも触れておこう。55X1の映像エンジンは、これまでのREGZAの「メタブレイン」ではなく、「CELLプラットフォーム」という名称になっているが、Z9000/ZX9000型番の「メタブレイン・プレミアム2」がベースとなっており、これをCellのポテンシャルで拡張した仕様となっている。

 REGZAファミリーということで55X1にも当然、超解像機能は搭載されている。超解像については本連載第102回を参照して欲しいが、簡単に言うと、その映像が撮影されたりデジタル化されたりした際に失われたと推察される解像度情報を推測して補いつつ高い解像度の映像に変換する技術だ。

 55X1搭載の超解像については外部入力端子経由の映像に対してはZ/ZX9000と同等のメタブレイン・プレミアム2に内蔵された「レゾリューション・プラス3」相当の効果が働く。Z/ZX8000のレゾリューション・プラス“2”では、映像そのものの周波数(実効解像度)を分析して、映像信号種別にとらわれずに、480i〜1080pの全てに対して超解像を適宜適用していくものであったが、今期のレゾリューション・プラス3では、これに「アニメーション画質最適化処理」が加わっている。

 アニメーション画質最適化処理とは、アニメ特有の、色境界や輪郭線の周辺に目立つ二重映りにも似たノイズを効果的に低減しつつ超解像処理を行なうものだ。実際に「ちびまる子ちゃん」の放送をオン/オフで視聴してみたが、予想外に効果が高いことを確認した。

 オフ時はデジタルカメラのJPEG画像にも見られる、半透明のシワのような輪郭の二重写りが、オン時には低減され、輪郭線のみがくっきりとする。まるでJPEG保存前のRAW画像を見ているような表示になるのだ。設定メニューの「レゾリューション・プラス」階層下の「アニメモード」設定で効果を調整できるが、試してみた感じではオート設定相当の「おまかせ」が優秀なようなので、これを常用すればいいと感じた。

アニメーション画質最適化処理

 また、今回の評価では洋画「The HANGOVER」の北米版Blu-ray(1080/24p記録)を視聴したが、6分37秒あたりのシーンで、レゾリューション・プラスをオン/オフして見比べてみたところ、住宅の石壁のテクスチャ、庭に生い茂る草木の細かい葉の描写力がかなり違って見えた。元々のソースが1080pではあるが、明らかに解像感が増し、過度に輪郭強調をするのとは違う。まるで視力がよくなったような見え方になった。1080p映像に超解像が効くのはレゾリューション・プラス“2”からの効果だが、東芝によれば、この新追加となったアニメーション画質最適化処理は、アニメ映像でないと判定されたときにも、垂直方向のカメラ撮像ボケ(撮影時に解像度情報が丸められて記録されて生じるボケ)補正を行なうとのことで、この効果が効いてきていると思われる。実写のブルーレイを視聴する際にも「アニメモード」の設定はあえてオフにせず、「おまかせ」のままでいいだろう。

【1080p映像における超解像】

超解像オフ 超解像オン。アニメーション画質最適化処理はアニメ映像だけではなく実写映像にも効き、撮像ボケが低減される。

 55X1が誇る「CELLプラットフォーム高画質」ならではの超解像機能としては「自己合同性超解像技術」と「色超解像技術」が新追加されている。これはZ9000/ZX9000にも搭載されていない現状、CELLプラットフォーム高画質専用の高画質ロジックだ。

自己合同性超解像技術」と「色超解像技術」

 前者の「自己合同性超解像技術」とは、映像の輪郭部の超解像処理を行なう際に、その映像中に含まれる類似箇所の情報を参考にするというもの。この自己合同性超解像技術は720pまでの解像度の映像に対応しており、1080i、1080pの映像には対応していない。簡単に言うとDVDビデオなどの再生時に効果的に効く。実際にオン/オフ時でDVDの再生映像の違いを見比べてみるとオン時はより自信ありげに輪郭部分が描かれるようになり、これもまた視力がよくなったような見栄えになる。印象としては、従来REGZAの超解像よりも輪郭部が濃く細くなったような感じに見えた。


【480p映像における超解像】

超解像オフ 超解像オン。陰影がより自信ありげに描き出される

 後者の「色超解像技術」は、デジタル放送視聴時(あるいはその録画再生時)にのみ適用が出来るもので、欠落している色情報を超解像技術を使って復元しようとするもの。一般的なデジタル放送映像はYUV=4:2:0の色差映像信号で、輝度は1ピクセルごとに表現されているが、色情報については2ピクセルごとに、しかも一走査線ごとに飛ばして表現している(インターレース映像)ということである。これを色超解像技術ではYUV=4:2:2へと高品位変換する。効果としては色境界における“滲み"の低減が期待できるのだが、通常に番組を視聴している限りでは、この恩恵がどこに効いているというのは気づきづらかった。前出の「色解像度」設定と混同してしまいそうだが、色解像度の機能はAV機器側が行なった4:2:0→4:4:4変換映像に対して補正を行なうモノで、色超解像技術は、55X1側の放送映像を4:2:0→4:2:2変換するものとなっている。

【1080p映像における超解像2】

超解像オフ 超解像オン。超解像によってモアレが出てしまう例。55X1でもこの現象を確認。自己合同性超解像が1080pにも効けば改善できるか

 55X1の残像低減技術についてはZ/ZX8000より搭載された「Wスキャン倍速」の発展形を採用。Wスキャン倍速とは、補間フレームを挿入してフレームレートを倍増化させる、いわゆる「倍速駆動技術」と、液晶画面の映像書き換え中にLEDバックライトを消し、書き込み後に点灯させることでブラウン管的な映像表示を行なう「インパルス表示」を組み合わせたもの。Z/ZX8000以降のWスキャン倍速では、このインパルス表示を、画面を水平方向に8分割し、この各1/8領域単位での走査発光を行なっていた。55X1では、LED個数、エリア駆動の分割ブロック数が増大していることもあって、この水平分割数を2倍の16分割にして、より高精度なインパルス表示を行なっている。

 実際に表示映像を見てみると、動きのキレはかなりいい。ただ、倍速駆動のために挿入される補間フレームの精度はZ/ZX8000から変わっていないようだ。という推測が成り立つのも、「ダークナイト」(BD)のオープニングのビル群のフライバイシーンで、Z/ZX8000テスト時に見て取れた「左奥の白いビルの窓枠の振動」が55X1でも依然と残っていたためだ。そろそろ、この補間フレームの生成アルゴリズムは改良を行なう時期が来ていると考える。

 なお、55X1の「Wスキャン倍速」ではオン/オフ設定がなくなり、代わりに「弱」「強」の係具合の設定しか行なえなくなった。この変更意図は不明だ(Z/ZX9000ではオフの設定がある)。

 プリセット画調(映像メニュー)モードのラインナップは本連載第99回で取り扱った「REGZA 46ZH500編」と同一であり、画質傾向に変わりはなかった。インプレッションはそちらを参考にして欲しい。

【プリセット映像モード】

あざやか 標準 映画
テレビプロ 映画プロ1
映画プロ2 PCファイン

 音質に付いても触れておこう。

 55X1のスピーカーはアルミ製の高剛性エンクロージャーを採用した高品位な別体ユニットとなっており、テレビ用スピーカーとしては異例の総合出力60Wを誇る。フォスター電機との共同開発したというこのスピーカーシステムの構成は2ウェイ7スピーカーで、その内訳は左右それぞれにウーハーユニットが2基ずつ、ツイーター1基ずつ、これに中央にもう1つツイーターで、合計7スピーカーとなる。音量を上げたときにもフラットな特性の音像が崩れず、安定した高品位サウンドを鳴らしてくれる。迫力の重低音が鳴ってもビビリ音がなく、それでいて高音域の破綻もない。

 音楽再生用としてもかなり優秀なので、自分のサラウンドシステムまでを稼働させるほどでもない音楽番組の視聴や音楽DVDなどの再生には、55X1で全く事足りる。

中央のツイーターはセンタースピーカーモード時にのみ駆動される。その左右にある穴はバスレフダクト 片チャンネルあたりは「2ウーハー+1ツイーター」と言う構成。

 なお、贅沢なことに7スピーカーのうちの真ん中に内蔵されたツイーターは、前述したセンタースピーカーモード時にのみ利用されるという。こちらは単体で20W駆動されるため、センタースピーカーモード時も20W+20W+20Wの60W出力となる。


■ 録画機能もチェック。タイムシフトマシンの使い勝手は?

 55X1の購入を検討している人は、全8チャンネルを随時録画し続けるという「タイムシフトマシン」など、録画関連機能についても関心が高いかと思う。過去/現在を意識しないでいいというこの“タイムマシン”だが、実際に使ってみると「理想と現実」があることに気付くのでレポートしておこう。

「地デジ機能設定」メニュー。タイムシフトマシン録画の設定はここで行なう

 55X1には3TB分のHDDがチューナーボックス側に搭載されているが、このうち2TB分の容量を用い、設定したチャンネルの番組を延々と録り続ける。2TBの容量がいっぱいに近くなると、その時点での一番古い録画内容が消されていくことになる。録画対象として設定できるチャンネルは地デジのみ。BS/CSは組み入れられない。

 また、録画品質は設定できず、放送波をそのままMPEG-2 TSをビットストリーム録画する。地デジ放送を録画すると、1時間あたりの番組が約6〜7GBになるので、8チャンネル分をタイムシフトマシン録画すると1時間あたり48〜56GBの容量が必要になる。このペースで録画すると、36〜42時間で2TBを使い切ってしまう。つまり、1日まるまる8チャンネル分を録り続けると1日半しか持たない。なので、「1日あたり何時から何時までをタイムシフトマシン録画対象とするか」というカスタマイズをすることによって、初めてタイムシフトマシンで遡れる日数を伸ばせるわけだ。

 たとえば、19時から深夜1時までの6時間をタイムシフトマシン対象とすれば、6〜7日間分をストックできることになる。こうした録画時間設定は、55X1の運用開始後も随時変更は可能だが、設定を変えると、それ以前にタイムシフトマシン録画された内容は消失してしまう。なので、設定は慎重に行ないたい。なお、タイムシフトマシン録画を行なう曜日は任意指定が可能だが、全8チャンネルの各チャンネルに個別にタイムシフトマシン録画時間帯を設定することは出来ない。

タイムシフトマシン録画されたコンテンツは、過去番組表のスタイルで表示される。見たい番組あるならばそれを選択して決定すれば普通に再生される

 タイムシフトマシン録画が実行中であっても休止中であっても、55X1では、これとは無関係に、通常のREGZAのような番組予約による録画が行える。この部分も非常に贅沢で「地デジ+地デジ」、あるいは「地デジ+BS/CSデジ」の組み合わせでダブル録画が行なえ、さらに2系統W録画中でも地デジ放送などが視聴できてしまう。ここまで録画と視聴の自由度が実現できているテレビ製品はこの55X1が史上初だろう。

 通常の録画用のHDDとしては、1TB分のHDDが用意されるが、これはハードウェアの都合(物理ドライブとして500GB HDDが2基ある)で500GB分ずつを二つに分けて使う仕様になっている。これは1基の大容量ドライブとして利用できるスパニングモードもサポートして欲しかった。

 なお、タイムシフトマシン録画されている番組を録画コンテンツとして保存しておきたい場合は、この500GB×2のドライブのいずれかにダビングすればいい。ただし、この操作を行なうと保存後の番組はダビングカウントが1減った状態となる(ダビング10番組の場合)。タイムシフトマシン録画をキャンセルし、その2TB分のHDDを通常の録画用に転用することも出来るが、その際は2基の1TBドライブとして利用することになる。将来的には論理的に1ドライブに見える大容量HDDを、ユーザーがタイムシフトマシン録画用、通常録画/保存用に自在に切り分けられるようになるとよいと思う。

 使っていて気になったのは、録りためた録画番組のナビゲーション画面に行くまでの道筋が、従来のREGZAよりも遠くなってしまったという点。タイムシフトマシン録画された過去の番組リストは[タイムシフトマシン]ボタンで一発で呼び出せるのに、通常の録画リストは[REGZAリンク]-[録画番組を見る]-[ハードディスク選択]という3ボタン操作をしなければ出てこない。しかも、操作レスポンスがあまり早くないので少々煩わしい。従来のREGZAと同様にリモコンに[録画リスト]ボタンも設けるべきだったし、内蔵HDDなのに、ドライブ選択をユーザーにさせるというパソコン的機能デザインは家電にはそぐわないと感じる。

ローミングナビで関連番組をビジュアルサーチ

 タイムシフトマシン録画、番組表、録画ストックのいずれにおいても、カーソルをあてて、[黄色]ボタンを押せば、「ローミングナビ」が起動する。これはカーソルをあてた番組のタイトル名、出演人物名、番組ジャンル、関連キーワードを含む、ないしは関係性がある番組を適合具合に応じてピックアップしてくれる機能だ。実際に使ってみたところ、キーワード、タイトル、ジャンルでピックアップされたものにはあまりピンとこなかったが、人物でピックアップされた番組群はかなり精度が高く情報として有用であると感じた。お気に入りの出演者やグループが出演している番組を効果的に探す手段として面白く活用できそうだ。

タイトル、キーワード、人物、ジャンルなどで絞り込める。お気に入りタレントの出演番組を追っかけ視聴するのに便利

 


■ まとめ〜CELL REGZAの"真価"は"進化"にあり!?

 REGZA最上位機として登場したCELL REGZA「55X1」。近年の薄型テレビ製品としては他にライバルがいない、とてもユニークな製品に仕上がっていると感じる。

 55X1は、自動車メーカーにおけるフラグシップスポーツカーと同じで、万人向けの製品ではないものの、そのメーカーの技術力顕示を請け負い、イメージリーダーを務め、一般ユーザーに、そこに詰め込まれたハイスペックが普及機にも将来的には降りてくる期待感を抱かせてくれる存在になっている。

 また、55X1の要素技術が単体製品として発展する期待感まで抱かせてくれる。例えば(ほぼ)全チャンネルのデジタル放送録画対応のチューナボックスは、それ単体で高い商品力がある。また、512ブロックエリア駆動対応でピーク輝度1250cd/m2のハイダイナミックレンジ性能を誇る55インチのディスプレイ部は、その専用スピーカーの高音質ぶりと相まって、ホームシアターのセンターモニター商品としての価値があると考える。それぞれの単体売りの予定はないようだが、そんな「夢」や「憧れ」を抱かせる魅力が55X1にはある。

 では、55X1としてはどうか。画質至上主義な大画面☆マニア的視点で評価すると、55X1は、文句の付けようがない高画質を実現しており、満点に近い仕上がりになっていると思う。液晶のアナログ感に、プラズマの自発光画素のキレが組み合わさったような高画質性能はまさに唯一無二。色味も「白色LEDだから」という負い目がなく、むしろ透明感のあるナチュラルな発色は心地よいと感じるほど。暗部を過剰に持ち上げることなく、ここまで暗部情報量の多い画質が液晶で見られるとは数年前までは想像できなかったほど。階調性能も優秀だ。

 タイムシフトマシン録画はテレビ放送の楽しみ方を変えてくれそうで、ゲームダイレクト機能を初めとしたマルチメディアディスプレイとしても完成度が高い。まさに55X1は全方位高性能を具現化した製品といってもいいと思う。

 ただ、第1世代ということで、使い勝手の面ではまだ改良を望みたい部分はある。本文中でもいくつか指摘しているが、「こうなるだろう」と想像して操作したことがその通りに実現されないことが結構ある。これはアップデートで一つ一つ潰して改善していって欲しいと思う。また、前述の通り、55X1のリモコンは、欲しいボタンがかなりなくなってしまっており、再考してほしい。使いやすさの面では、今期のREGZA Z9000シリーズのリモコンの方が、気になるところはあるが使いやすい。また、ZX9000と比較すると、メニューレスポンスも55X1の方がもっさりしている所が気に掛かる。録画コンテンツの再生制御もZX9000の方が反応が早い。

 55X1もアップデート等で、Cellプロセッサのイメージに相応しいキビキビした動きになればと思う。理想を言えばPS3のXMBくらいのレスポンスだろうか。次世代CELL REGZAでは3Dメニューも実装されると言うが、このレスポンスのまま、3D化されたのでは不評を買う可能性が高い。どんなに見た目が格好いいGUIよりも、レスポンスの良さの方を重視して欲しいと筆者は考える。

 次世代CELL REGZAの話は本連載124回を参照して欲しいが、55X1の発売後わずか一カ月で3D対応の次世代機の予告があったという事を考えると、現行モデルの買い控えが心配だ。

 これを払拭するには、現行モデル「55X1」の進化のロードマップを積極的に打ち出す必要があると思う。CELL REGZAの真価は“進化”にあるはず。ネットワーク機能のアップデートは既に公表されているが、購入検討者は、55X1の高性能を気に入った上で、さらに、その将来性に投資できるかで悩んでいるはずだ。今後、安心材料が積極的に提供されることを期待したい。


(2010年 2月 4日)

[Reported by トライゼット西川善司]

西川善司
大画面映像機器評論家兼テクニカルジャーナリスト。大画面マニアで映画マニア。本誌ではInternational CES他をレポート。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。映画DVDのタイトル所持数は1,000を超え、現在はBDのコレクションが増加中。ブログはこちらこちら。近著には映像機器の仕組みや原理を解説した「図解 次世代ディスプレイがわかる」(技術評論社:ISBN:978-4774136769)がある。