西川善司の大画面☆マニア

第194回

将棋の4K放送画質に驚愕! “本物”の4Kテレビ。REGZA「58Z10X」

 2014年6月から4K試験放送が始まり、2015年には4K対応ブルーレイの規格も固まるといわれている。「いよいよ4Kコンテンツの提供が本格化していくのか……」、そんな予感を覚える昨今、4Kチューナ内蔵の4Kテレビが東芝より発売された。それが今回取り上げる東芝「REGZA Z10X」シリーズだ。

58Z10X

 4Kチューナ“内蔵”テレビはこのZ10Xシリーズが初の製品となる。業界団体のJEITAでは、4Kチューナを内蔵しない4Kパネルのテレビを「4K対応テレビ」と呼び、4Kチューナ内蔵テレビを「4Kテレビ」と呼ぶよう規定している。そのため、東芝も「正真正銘の4Kテレビ」と4Kチューナ内蔵をアピールしている。

 Z10Xシリーズは50型、58型、65型の3サイズ展開となっており、今回評価したのは58型の「58Z10X」だ。2014年11月20日時点の実勢価格は45万円前後。前回の大画面マニアでは筆者宅への4K放送導入の顛末を紹介したが、今回は58Z10Xを使って、4K放送を始めとした新Z10Xシリーズの実力を検証する。

設置性チェック〜外観デザインはZ9Xを踏襲。音質性能が向上

狭額縁デザインを継承

 外観は先代モデルであるZ9Xとほぼ同一。狭額縁デザインを採用。念のために実測してみたが、上下左右全ての額縁は約14mmでZ9Xと同じであった。

 ディスプレイ部のサイズは130.2×76.9cm(幅×高さ)。これは、2011年モデルの55型「55ZG2」(ディスプレイ部130.4×78.5cm)よりも小さい。3年前の55型を置いていた場所に58型が置けるようになったと言うことだ。最近のテレビの画面サイズが、微妙に変わってきたのは、サイズアップを検討する買い換え層にアピールする目的もあるのだろう。

側面

 スタンド利用時の外形寸法は130.2×30.4×81.4cm(幅×奥行き×高さ)。最近はスタンドの背を低くするデザイントレンドがあり、58Z10Xもこの流れに沿って、設置台からディスプレイ部下辺まではDVD/BDパッケージ4枚分強のスペースしかない。実際、55ZG2よりも設置時の背は低い。買い替えにより、サイズアップしても、上辺位置は下がる可能性もある。そうした変化も想定し、設置シミュレーションを行ないたい。

 室内情景の映り込みは皆無ではないが、鏡面のような強い映り込みがあるわけでもない。いわゆるハーフグレアといった見映えである。

 重量は、スタンド込みで約21.5kg。Z9Xに対して約500gの重量増となっている。画面サイズから連想される重量よりは軽いと言えるが、背面は丸みを帯びていて持ちにくいので一人での運搬、設置はお勧めしない。

電源LED表示を消す設定を新設

 Z10Xは、外観や設置関連でZ9Xから大きな変更がないのだが、2つマイナーな変更が施されている。ひとつは正面右下部にある緑色の丸形のLEDによる電源インジケータを消灯できるようになったこと。このLED照明は一見すると、電源スイッチのように見えるがただの飾りで、暗室での映像視聴時に煌々と光って気が散ると言う声があり、今回の対応になったそうである。とはいえ、デフォルトではオンなので、オフにしたい人は「機能設定」メニューの「電源LED表示設定」設定を変更する必要がある。もうひとつは、スタンド部がクロームメッキ仕上げになったことで、見た目の高級感が増した印象だ。

スタンド部

 スピーカーシステムはZ8から採用された3.0×9.6cmの角形フルレンジユニットを継承。「ラビリンス型バスレフボックス」構造はパワー感のある低音出力がウリで、テレビ用スピーカーとしてはなかなか高音質。総出力は30W(15W+15W)で、音量をかなり上げても出力バランスに破綻のないサウンドを出せていた。なお、Z10Xでは、帯域ごとのコンプレッションレベルの適正化を進めたとのことで、これに対して「インテリジェント・レベル・コントロール」という技術名を与えている。実際、音量レベルに依存しないフラットなサウンドが出せていると感じる。「音声調整」メニューでは「低音強調」設定も選べるが、今回視聴した感じでは、そのままでも十分に低音は出ていると感じた。

 バーチャルサラウンド機能も搭載。過去の製品では、音像のワイド感は拡大されるものの、ビットレートが下がったような乾いた音質に変化する特性が気になったのだが、Z10Xではこの特性が改善されていた。これについて東芝は「新シネマサラウンド」という名称を与えている。音像のワイド感はそのままに音質も自然で心地よい。音楽番組や映画番組の視聴の時には試してみて欲しいし、常用設定としてもいいと思う。

接続性チェック〜HDMIは4K/60Hz表示とHDCP 2.2対応。2,560×1,440モードも

 接続端子も基本的にはZ9Xの構成をそのまま継承しており、正面向かって左側面と左背面に接続端子パネルがレイアウトされている。HDMI入力1、2が背面側、HDMI入力3、4が側面側に実装される。全てのHDMI端子がDeep Color、x.v.Color、HDMI CECに対応する。

 また、HDMI 2.0対応なので4K/60Hz入力に対応する。ただ、今回の評価で、PC接続を試したところ、NVIDIA GeForce GTX980にてRGB各8bitでの4K/60Hz接続が行なえず、YUV444での4K/60Hz接続となった。この接続のためGeForce GTX980とHDMI1端子に接続し、「HDMI1モード選択」にて「高速信号モード」を設定する必要があった。評価機特有の問題かも知れないが、困ったときにはこの設定をいじるといい。

HDMI1の動作モード設定。4K接続時になにか不都合を感じたときには調整して見よう
PC用の民生機としては現時点で唯一のHDMI 2.0対応のGPUであるGeForce GTX980との接続において、Z9XやJ9XではRGB接続の4K/60Hz接続ができたのだが、Z10XとはYUV444での60Hz接続となった。YUV444は色間引きはないので画質的にはRGB888と同等ではある

 外付けの4Kチューナを接続する際などに必要となる著作権保護技術「HDCP 2.2」に対応しているのはHDMI3のみ。ただし、Z10Xは4Kチューナを内蔵しているので差し迫ったHDCP 2.2の必要性はないかも知れない。HDMI1のみがARC(オーディオリターンチャネル)対応だ。なお、HDMI3は、モバイル向けのMHLにも対応している。スマートフォンやタブレットからの4Kコンテンツの出力に対応するため、HDCP 2.2をサポートしたHDMI3をMHL対応としたと思われる。

 HDMI関連で補足しておきたいのは、筆者のリクエストで採用された2,560×1,440ピクセルの入力への対応だ。現在の大作PCゲームのほとんどが2,560×1,440ピクセルの60fps描画に対応しており、この解像度の映像をHDMIでZ10Xに接続してやると、Z10Xは4Kにアップスケールして表示してくれるのだ。最上位品質設定でPCゲームを動かすと最新GPUでも4K/60fpsはパフォーマンス的に厳しいケースがあるので、そういった場合に2,560×1,440ピクセルはフルHD(1,920×1,080ピクセル)より高解像度で4K(3,840×2,160ピクセル)よりはパフォーマンス的にやさしいモードなので、今のPCゲーミングにぴったりなのだ。PCゲームファンでZ10Xユーザーになったら是非活用していただきたい。

2,560×1,440ピクセル入力にも対応。ちゃんと再構成型超解像処理も適用されての4K化が行なわれる

 REGZAなので、HDMI階調レベル設定やアンダースキャン設定(オーバースキャン無効化設定)には当然対応している。

HDMI階調レベル設定の手動設定にも対応。ただ、最近はオートが賢い
アンダースキャン(ジャストスキャン)設定は「画面サイズ切換」設定から

 アナログ系ビデオ入力は、コンポジットビデオ入力+ステレオ音声入力のみ。D端子は実装されない。なお、音声入力はHDMI2入力のアナログ音声入力としても利用できる。音声関連では、光デジタル音声出力端子、ヘッドフォン端子で、ヘッドフォン端子はアナログ音声出力端子兼用の扱いとなる。

 SDカードスロットも装備。静止画/動画/音楽が収録されたSDカードの再生に対応している。静止画は4,096×4,096ピクセル以内のJPEGなど、動画はフルHD解像度までのMPEG-2 TS、MPEG-4 AVC/H.264など、音楽はMP3やAACなどに対応する。

 USB端子は、背面にUSB-A、B、Cの3系統、側面にも1系統がある。背面のUSB-A、BはUSB 3.0対応でタイムシフト録画用HDD接続用。背面USB-C端子はUSB 2.0対応の通常番組録画用HDD接続端子になる。関係者からの情報では、メーカー動作保証対象外との前置きがあったものの、4TB×4基内蔵の合計16TBのHDDをこれらUSB-A、B、Cに接続も可能だとのこと。

別売のタイムシフトマシン用HDDを背面に装着して、6ch地デジ録画も

 ただし、現状では4K試験放送のUSB HDDへの録画は行なえない。2015年春以降にアップデートで録画対応となる見込みだ。

 側面側のUSB端子はUSB 2.0対応で、こちらはデジカメ、USBメモリ等のストレージ、キーボードなどが接続できる。このUSB端子に接続したストレージについても、SDカード相当のメディア再生に対応している。

 この他、3D立体視のシンクロエミッタを接続するための端子も用意されている。東芝は3D立体視への対応には距離を置き始めており、ついに今期の普及型4Kモデル「J10X」シリーズからは3D立体視機能が削除されている。

 アンテナ端子は、正面向かって左背面に地上波デジタル用と、BS/110度CSデジタル用のアンテナ端子が実装されており、正面向かって右側面にスカパー!プレミアム対応の124/128度CSアンテナ端子が実装されている。現在の4K試験放送はスカパー!プレミアムのシステムを利用しているため、4K放送の視聴にはこのアンテナ端子を利用する。また、4K放送対応に伴い、Z10XではHEVC/H.265デコーダを新搭載することとなった。

地デジやBS/110度CSデジタルは背面に
4K対応のスカパー! プレミアムチューナは向かって右端に

操作性チェック〜4K放送のシンプルな操作。リモコンで音声入力!

 リモコンの外観デザインはそのままだが、そのボタンレイアウトはZ10X特有の機能追加に伴って若干の変更が施されている。

 例えば、スカパー!プレミアムチューナー内蔵に伴い、最上段に[スカパー!]ボタンが搭載された。これによって、4K試験放送の「Channel 4K」(CH502)も、地デジやBS/CSと同等感覚でリモコンから簡単に切り換えられることとなった。

新デザインのリモコン
スカパー!ボタンでChannel 4Kにアクセス

 4K試験放送の視聴方法については、前回のレポートで紹介したが、58Z10Xの4K放送視聴の魅力はシンプルな操作性だ。外付けの4Kチューナを接続した時のような入力切替といった操作が不要で、だれでもワンボタンで4K放送のChannel 4Kをすぐに視聴開始できる。

 現状やや物足りないのは4K放送の録画ができないこと。'15年春にはアップデートで対応予定とのことだが、Channel 4Kは、試験放送ということもあり、放送時間が短く、11月現在では平日は12時〜19時(7時間)、土日祝日は10時〜22時(12時間)のみ。現在の番組の多くはリピート放送だが、時折1回だけの番組も有る。現状、貴重なネイティブ4Kコンテンツだけにちゃんと見ておきたい。早期の対応を期待したいところだ。

スカパー!プレミアムで試験放送されている「チャンネル4K」の番組表

 Z9Xのリモコンでは、この位置にあった2画面機能のオンオフを行う[二画面]ボタンは、Z10Xのリモコンでは[青][赤][緑][黄]のカラーボタンの上側に移設されている。

 Z9Xのリモコンでは、カラーボタンの下にはデザインアクセントの凹みがあったのだが、Z10Xではこの凹みをボタン化するような格好で[字幕]ボタン、[CH番号入力]ボタン、[音声切換]ボタンを新設している。

 リモコン操作系の大きな進化は、音声入力に対応したこと。これにより、タイムシフトマシンなど、Z10Xを使って録画した番組に対し、自然言語での検索が掛けられるのだ。ネットワークを使ったクラウドサービスになるので、動作速度自体はネットワーク速度にやや依存するが、なかなかどうして、これが意外に賢い。

 「アニメの新番組が見たい」、「誰々出ているお笑い番組が見たい」という感じで、普通に人間に問いかけるような感じで検索ができるのだ。「〇〇のCMがみたい」といった感じで、気になるCMを見つけだすことができたのには驚かされた。

Z10Xの音声検索機能。インターネット接続が必須だが、タイムシフトマシンを活かすとても便利な機能だ

 音声入力用のマイクはリモコンに内蔵。音声操作が、標準リモコンだけで行なえるのがなにげに好感触だ。最近、こうした音声入力に対応したテレビ製品も出てきているが、標準リモコンとは別にマイク付きの特殊リモコンを使わせる機種がほとんど。テレビに2つのリモコンが付いてきても、実際の所、標準リモコンの方しか使わなくなってしまうので、標準リモコンに音声入力機能をまとめた東芝のやり方はスマートだ。

「画面サイズ」と「スピーカー切換」が「サブメニュー」に復活

 本連載で指摘した、Z9Xにおける操作系の不満としてアスペクトモード(画面サイズ)の変更が過去モデルと比較してさらにメニューの奥底に追いやられてしまったことについて、東芝はZ10Xで、早々に対応を施してきた。

 Z9Xでは「サブメニュー」-「その他の操作」に潜らなければ設定を変更出来なかった「画面サイズ」が「サブメニュー」の最上階層に戻ってきたのだ。他にも同系の要望があったためだろうか、音声をテレビ内蔵スピーカか外部オーディオ機器で鳴らすかの設定を選べる「スピーカー切換」も同じく最上階層にやってきている。

 アスペクトモードはZ9X世代から変更なし。地デジ放送はスーパーライブ、ズーム、映画字幕、フル、ノーマルの5種類。1080pの外部入力の場合、[フル]表示のほか、フルHD映像の1ピクセルを縦横2×2の4ピクセルで描画する「ネイティブ」モードも選択できる。

 3,840×2,160ドットの4K放送や4K映像の外部入力時には[4Kフル]となる。4,096×2,160ドット入力時には、[4Kフル]は128ドットをカットして3,840×2,160ドット表示、[4Kノーマル]は、アスペクト比維持のまま4,096×2,025ドットに圧縮表示する。

2K映像入力時の「フル」設定時。2Kが4K化されて表示される
対して「ネイティブ」時は、このように2Kの1ピクセルを2×2表示してリアル2K表示とする

 電源オン時に地デジ放送映像が出てくるまでの所要時間は約3.0秒。地デジ放送のチャンネル切換所要時間は約2.5秒。最近の機種としては平均的な早さだ。

 電源オフ時に4K試験放送を受信しておき、ここから電源をオフにして、再び電源をオンとして4K試験放送の画面が出てくるまでの所要時間は約5.5秒であった。地デジ放送よりも若干遅い。HDMI入力の切換所要時間は約3.0秒。標準的な速度だ。

画質チェック〜4K放送に向けた映像エンジンの進化

 58Z10Xの液晶パネルはVA型液晶パネルを採用する。Z9X時は84インチがIPS液晶パネルだったが、Z10Xは、50/58/65型の全てがVA液晶パネルである。なお、今季から追加された4K対応のJ10Xシリーズは43型、49型、55型の全てがIPS液晶パネルとなっている。サイズ展開に差はあれど、REGZAは、液晶パネルの種別で製品シリーズを選ぶことが可能ということもできる。

 日本では視野角依存の色調変移の少ないIPS型液晶パネル信奉が強いが、VA液晶パネルはIPS液晶に対して黒の締まり、暗部階調性能、コントラスト性能に優れるという特性がある。VAパネルを採用する58Z10Xも、表示面から大きく外れて掠め見ない限りは、色調変移は気にならない。最近のVA型は、サブピクセルレベルでマルチドメイン化されているのでTN型と比較すれば視野角は十分に広いので、当たり前のことではある。

Z10Xの画素。RGBのサブピクセルは3段にマルチドメイン化されているのがわかる
電子顕微鏡で接写したZ10Xの画素

 バックライトシステムは白色LEDを液晶パネルの背面にマトリックス配置した直下型バックライトシステムを採用する。搭載白色LED個数は非公開。映像の明暗分布に応じて白色LEDの明暗を局所的に制御するいわゆる「エリア駆動」にも対応する。このエリア駆動の制御単位ブロック数(エリア数)も非公開だ。最大輝度は700cd/m2を誇り、この値は先代のZ9Xから継承されている。

全面直下型LEDバックライトを採用
全面直下型LEDを訴求

 Z10Xでは、このエリア駆動に関して手が入れられた。Z9Xのエリア駆動は、映像中の各ブロック(エリア制御の最小単位)のピーク輝度を保全させる意図を持った明暗分布を実践していたのに対し、Z10Xでは、映像中の各ブロックの平均輝度(APL:Average Picture Level)を基軸にした明暗分布を実践するのだ。

 何が違うのか。解説すると、Z9Xでは、映像中のハイライトなどの「きらめき」を重視する制御だったと言うこと。このアプローチでは、比較的明るい室内において、ハイダイナミックレンジ感の強い、いわば液晶テレビらしい映像が楽しめる。しかし、一方で、暗室で見たときには、暗部がピーク輝度に引っ張られ、やや黒浮き傾向が強めに出る傾向があった。

均一性(ユニフォミティ)のチェック。中央が若干明るめなのが見て取れるが、それでもエッジ型と比較すれば直下型らしい十分に優秀な輝度均一性

 Z10Xで採用されたAPL感応式では、その映像中に暗部の存在が大きいと、映像中のハイライトがどんなに明るくとも、APLは下がるため、暗部重視のエリア駆動となる。従って、暗室で見た時の黒浮きは低減されることとなる。

 筆者的には、Z9Xのピーク重視式とZ10XからのAPL感応式、どちらがいいとは断言できないが、それぞれに一長一短はある。しかし、他社の競合ハイエンド系製品がAPL感応式を採用してきているのと、「Z10Xオーナーは暗室で見る機会が多いのでは?」という想定のもとに、こうした判断になったと思われる。個人的には、Z9Xのピーク重視式も捨てがたいので、将来的にはバックライト制御の設定メニューで選べるようになればマニアックなREGZAらしさが増して楽しくなると思う。あるいは、画調モード「あざやか」モードではピーク重視式、「映画」モードではAPL感応式というのもいいかもしれない。

 実際に、暗部と明部が共存するような映像を見てみると、暗部の沈み込みは以前よりも良くなっている気がする。木陰や暗がりに立つ人物を含んだシーンにおいても、暗闇に深みが増しているし、星空のようなシーンも夜空側の黒浮き感は低い。また、だからといって、液晶らしい明部の伸びが損なわれているわけでもない。

LEDエリアコントロール=オフ
LEDエリアコントロール=弱
LEDエリアコントロール=中
LEDエリアコントロール=強。設定を強くしていくと暗部が締まり黒浮きが低減していっているのが写真でもわかる

 やや意地悪なテストとして、白い四辺形を黒背景に表示させてみたが、この場合はやはり白四辺形の周囲に黒浮き感が若干出る。これに関しては「映像調整」-「ピーク輝度復元」設定を「オート」から「手動」として「0-10」の設定範囲の中で値を下げていくことで改善する。

ピーク輝度復元=手動0。黒浮きが低減される傾向が強まる
ピーク輝度復元=手動10。高輝度の伸びが重視される傾向が強まる

 現在は、APL感応式のエリア駆動制御をブロック単位でやっているそうだが、映像フレーム全体の暗部面積に配慮する制御を入れてもいいかもしれないと感じた。いずれにせよ、プラス方向に考えれば、APL感応式とはいえ、Z10Xでも、REGZA特有の明部の伸びのある画質は損なわれていないということではある。

 発色関連機能についてはZ10Xでは大きな変更はない。機能の詳細については本連載Z9X編を参照して欲しい。

 Z10Xでも、Z9X同様に広色域液晶パネルを採用しているため、デジタルシネマイニシアチブが規定するDCI-P3色空間をほほ100%カバー出来るということになる。また、4K、8K世代の映像規格に採用されることとなった新色空間「ITU-R BT.2020」の表示にも対応している。

 この広色域機能は「映像設定」-「色域設定」で「色域復元」設定にすることで、現在の標準色空間規格であるBT.709(sRGB相当)においても効かせることが可能だ。

 実際に「色域復元」モードでの映像視聴を行なったが、いわゆる「彩度を高める」系の広色域表現ではなく、分かりやすく言えばナチュラル志向の表現になっている。人肌などは過度に赤味を増しておらず、BT.709域では味気が薄れてしまっている箇所に血の気が戻ったような表現になる。原色系の草花などについても色が濃くなるというよりは、色深度が深くなる印象だ。明部の表現においても、輝度が高すぎて白に寄ってしまっている箇所に色味が戻るようなこともある。有り体にいえばリアルに見えるのだ。

色域設定=標準(sRGB相当)
色域設定=色域復元(DCI-P3相当に拡張)。sRGBでは朱色っぽかった赤に深みが増す。写真はこの程度だが実際にはもっと分かりやすい
色域設定=標準(sRGB相当)
色域設定=色域復元(DCI-P3相当に拡張)。sRGBでは淡泊だった人肌に血の気が戻るような感じに。こちらも実際には違いはもっと分かりやすい

 超解像エンジン関連では「4Kマスターリファイン」機能がZ9X時よりも進化している。

 その1つが「2K/4K放送ノイズエリア解析超解像技術」である。

 これは、Z9X時から搭載されていた「ノイズエリア解析超解像技術」の進化版で、結論から言ってしまうと、4K試験放送対応に向けた4Kコンテンツ向けの機能改良したということ。

 MPEG圧縮ノイズとして知られるモスキートノイズは、一般に輪郭付近に出やすい。また、MPEG圧縮単位ブロックサイズの境界線が顕在化してしまうブロックノイズは、グラデーション表現や平坦階調付近に出やすい。Z9X時の「ノイズエリア解析超解像技術」は、そうしたMPEGノイズが出やすい箇所付近には超解像処理を低減させることでMPEGノイズを抑え込む機能であった。

 「2K/4K放送ノイズエリア解析超解像技術」ではこの機能を4Kコンテンツにも適応させたということになる。

 従来は微小信号には超解像処理を掛けず、信号振幅がある程度の大きさの箇所に超解像処理を適用していた。Z10Xでは、4Kコンテンツは解像度が高いことから、逆に、超解像処理を微小信号(1ビット輝度段差程度)にのみ掛けるようにしたようだ。この超解像処理は地デジ放送の水平1,440ピクセル→1,920ピクセル化時と、2K→4Kアップスケール時の両方に適用されているという。

 実際に映像を見てみると、4K化された2K映像においても、4K試験放送の4K映像においても、「いかにも超解像処理しました」という表現は少なくなったと感じる。テクスチャ部をやや鮮明にするといった、他社製品と比較すると控えめな効かせ方という印象だ。

2K/4K放送ノイズエリア解析超解像などで、地デジ画質も高画質化

 地デジ放送に関しても同様の味わいだが、「2K/4K放送ノイズエリア解析超解像技術」の効果も有って、MPEGノイズのうるささは全く感じられない。4Kにアップスケールされている分、ドット感が低減されていることもあって味わいとしてはしっとりしている印象だ。

 4K放送に特化した高画質化技術としては「4K放送映像周波数解析オートピクチャー」という機能が「4Kマスターリファイン」に追加されている。

 これは4K映像の周波数成分(換言すると実効解像度)を解析して、実質的な解像度に応じた超解像処理を行なうというもの。解析はフレーム単位で行なわれる。信号としては4K映像フォーマットであっても、2K映像からのアップスケール映像なのか、ネイティブ4K映像なのかを判別して適切な超解像処理を行なうためのプリプロセスに相当する。

 東芝によれば、内蔵チューナを用いての4K試験放送を視聴する場合は「映像設定」-「コンテンツモード」設定が「オート」で効くそうだが、HDMI入力で効かせる場合はここを「4K放送」とすればいいとのこと。外部チューナーや外部プレーヤーで4Kコンテンツを視聴する場合は明示設定するといいだろう。4Kチューナを備えていない、J10Xシリーズでもこの方法が有効だという。

Channel 4Kを視聴

 これらを踏まえて、4K試験放送を見てみた。

 映像がシンプルな分、解像感の違いが分かりやすかったのは「将棋女流棋士スペシャルマッチ2014」の将棋放送。画面に激しい動きがない分、女流棋士達の着物の模様などが鮮明に見えて面白い。直上から映した将棋盤の映像もなにげに感動的だ。というのも、将棋の駒の黒い刻み文字の上に、室内照明を受けてのハイライトが見えているのだが、その一つ一つが4K解像度の幅1ドットの表現なのだ。木目の模様や、畳の編み込み模様などもそれに近い、ドットレベルに近い線描で描かれており、見応えがあった。過度な先鋭感もなく自然な感じなのは、今回の一連の4K対応新機能の恩恵が大きいのかも知れない。

 REGZA Z8シリーズから搭載された、撮影時に圧縮されたダイナミックレンジを復元する「ハイダイナミックレンジ復元」機能は、かつての超解像のように、東芝が仕掛けた新しい高画質化技術トレンドだ。最明部の輝度を直下型バックライトの強みを生かして伸長し、現実世界のダイナミックレンジを再現するという考え方は、競合製品でも採用されつつある。

 Z10Xでは、この「ハイダイナミックレンジ復元」機能が早くも進化し、「インテリジェント・ハイダイナミックレンジ復元」となった。

 Z9Xまでは、主に最明部の面積を見ながらダイナミックレンジ復元量を決めていたのに対し、Z10Xではヒストグラム解析を組み合わせて、最明部の面積に加えて、映像中の明るい領域の全体量にも配慮する調整を入れている。これにより、映像全体が明るいケースにおいても、自然な階調伸長が行なわれる。

 さらに、直下型バックライトシステムが持つ輝度ダイナミックレンジ能力に適した階調補正を行なう「インテリジェント質感リアライザー」もZ10Xで新搭載となった。これは「インテリジェント・ハイダイナミックレンジ復元」と関係の深い機能で、ダイナミックレンジ拡張(復元)を行なう際に明部と暗部のバランスを整える制御に相当する。

ハイダイナミックレンジ復元=オフ
ハイダイナミックレンジ復元=オン。写真ではオン時の方が暗部が落ち込んで見えるが、実際には明部の輝きが伸長されている。カメラでは高輝度部を基準に露出補正して撮影してしまうため、このような写真となる。実際には暗部の視覚特性を維持したまま明部を拡張してくれる

 実際に、スタジオ収録のワイドショーやバラエティ番組のような画面全体が明るめな映像を見てみてたが、最明部のハイライトだけが輝くような表示ではなく、明部全体の階調が伸びやかに拡張されていることが確認できた。分かりやすいのは、白ワイシャツなどの明るい色の衣装のシワや陰影だ。鋭い輝きの中にもちゃんと明るい階調が再現されている。また、明部が有彩色の場合は、ちゃんと色味を維持したまま明るくなっているのも確認できる。屋外情景の映像などは、以前よりもさらにリアルに見えるようになったと思う。

 倍速駆動機能にも進化が見られる。補間フレーム生成アルゴリズムは従来のままなのが残念だが、補間フレーム生成を行なわないときの表示において、インパルス駆動が選べるようになった。

 毎秒60コマ(60Hz)映像では、実体フレームを1/120秒単位で二度描きする基本方針になり、最初の描き込みを行った直後の最初の1/120秒期間は全消灯し、次の1/120秒期間にバックライトを点灯して表示を行う。2回目の描き込みでも消灯期間があるが、2回目の消灯期間は、「1/120秒-その映像フレームの輝度に依存した時間」となっている。この駆動法により、液晶画素の書き換わり(応答)を隠蔽する効果と前フレームからのホールドボケを低減する効果を期待できる。

倍速駆動設定に「インパルス」設定が選べるようになった

 実際に、空撮された夜景がゆっくりとスクロールしていく4K放送の「東京夜景」の映像を見てみたが、星のように暗部に浮かび上がるビル群の隣接する窓達が、ちゃんと二重像にならず独立して動く様子が確認できた。インパルス駆動の恩恵で、ホールドボケの特徴である輝きが糸を引くような視覚はない。

 こうしたインパルス駆動において読者が気にしそうな要素としてフリッカーがあるとおもうが、一般的な明るさの映像であれば気にならず。ただ、インパルス駆動時は、通常時よりも、バックライトが消えている時間が長くなるため、若干輝度は落ちる。ただ、もともと暗い映像に関しては、さらに暗くなってしまうという印象はない。動き重視派の人は、好みに応じて積極活用しても良いと思う。

 なお、映画やアニメのような毎秒24コマ(24Hz)映像については、毎秒1/96秒単位で4度描きする制御になっている。つまり、24Hz映像時には4倍速の96Hz駆動となる。駆動と消灯期間については、前述した60Hz映像表示例の2度描き目と同等の制御になる。

 毎秒24コマ時のインパルス駆動の効果は、「ダークナイト」等のブルーレイで確認してみた。元々搭載されていた「フィルム」モードと「インパルス」モードとでは、ジャダーの出方に大きな差異は認められなかったが、輪郭描写のキレは「インパルス」モードの方がいい。毎秒24コマの映像は「フィルム」では5-5プルダウン、「インパルス」では4-4プルダウンで「インパルス」のほうが黒挿入時間が多くなる。どちらも2-3プルダウン無しの実質、毎秒24コマ表示が維持されるのだが、黒挿入時間の多い「インパルス」の方が動きの切れが良くなるのは理屈通りである。映画ブルーレイなどを暗室で楽しむ際には「インパルス」常用でもいいと思う。

 「ゲームするならレグザ」は、ゲームファンや業界に定着した感もあるが、Z10Xでも当然、低遅延機能の「ゲームダイレクト」が搭載されている。機能自体はZ9Xのものとほぼ同等なので詳細は本連載Z9X編を参照してほしい。本稿でも簡単に紹介しておくと、前フレームをバッファリングするパイプラインで構成されている倍速駆動対応テレビとしては、理論最速値の約8.3ms(60Hz時、約0.5フレーム)に近い約10ms(60Hz時、約0.6フレーム)を達成している。これは倍速駆動テレビとしては業界最速値になる。また、補間フレーム挿入を有効化させた「ゲームスムーズ」モード時においても遅延時間は約19.2ms(60Hz時、1.15フレーム)。この値も業界最速だ。約1フレーム遅延と言えば、他社で言うところのゲームモード(低遅延モード)に相当する。つまり、Z9X、Z10Xでは補間フレーム挿入ありでも、一般的なテレビ製品の低遅延でゲームが楽しめると言うことだ。

 さて、Z10Xのゲームモードに進化がないのかと言えばそんなこともない。2つほど進化ポイントがある。

 1つは映像処理が、Z9Xでは低遅延性能に配慮してフル10bit処理だったものが、Z10Xでは低遅延性能を維持したままフル12bit処理となった。Z10Xの高画質化エンジン処理後のグラデーション表現等でその差が感じられるはずである。なお、フル12bit処理は1080p、720pの60Hz映像、あるいは4K/30Hz映像に限られる。

ゲーム関連の画質進化

 そして、もう一つ、前述したインパルス駆動モードが、画調モードが「ゲーム」時にも「ゲームインパルス」モードとして選択できる点も進化ポイントとなる。システム遅延時間は「ゲームダイレクト」に準拠する約10ms(60Hz時、約0.6フレーム相当)だが、最初の1/120秒期間に消灯している関係で、映像表示は8.3msさらに遅れることになる。なので、補間フレームありの「ゲームスムーズ」とほぼ同等の遅延時間ということになりそうだ。

 実際に、黒背景に高輝度動体を動かすテスト映像で評価してみたところ、「ゲームダイレクト」では二重像で見える動体輪郭が、「ゲームインパルス」は嘘のように消えて見えていた。

 まとめると、Z10Xでは、ゲームファンとしては、低遅延重視の「ゲームダイレクト」か、動体を的確で目で追える「ゲームインパルス」か、あるいはヌルヌルとスムーズに動く「ゲームスムーズ」か、を選択できるようになったということだ。

プリセット画調モードのインプレッション
「あざやか」。輝度重視傾向の画質モード
「標準」。万能性の高い「迷ったらこれをつかえ」的な画調
「ライブプロ」。暗部階調再現に優れる
「映画プロ」。コントラスト感よりも情報量重視の画調。色温度は低め
「ゲーム」。「あざやか」ほどではないが色温度と輝度の高いモード
「モニターD93」。日本の放送局のマスターモニターを再現したとされる画調
「モニターD65」。映画制作スタジオのマスターモニターを再現したとされる画調

リアル4Kコンテンツによる、“自慢できる”4Kテレビ

 これまでの4Kテレビは、「2K映像を高画質化処理した、その出力先」としての「4K」の解像度性能を応用していた。

 今回のREGZA Z10Xシリーズも、そのコンセプトは継承されているが、4K対応チューナを内蔵したことによって、4K放送コンテンツを楽しめる「本当の意味での4Kテレビ」の実力も兼ね備えたことになる。

 いつもは、2Kブルーレイを超解像化しての4K画質と、あるいはPCから出力させた4K静止画表示中心の評価となっていたが、筆者宅にも4K視聴環境を導入したことで、実際に4K映像を表示させての評価も行なえた。

 普段見慣れたリビングルームに、リアル4K映像が浮かび上がるのはなかなかの感動体験であった。かつての「DVD映像を見慣れた自分」が、初めてBDを見たときの感動が、今回再び蘇ったような感覚だ。DVD→BD時は約6倍の解像度アップだったが、今回のフルHD→4Kは約4倍の解像度アップとなる。「プラス数十%」の画質改善は映像マニアでないと分かりにくいが、「数倍」の画質改善は誰が見てもわかりやすい。

 現状の4K放送は試験放送である。しかし、逆にいえば厳選された4Kコンテンツを放送しているともいえ、どれも、実際に4Kの魅力が伝わりやすい内容となっている。また、4Kコンテンツは、展示会や店頭など、限られた場所や時間内でしか見たことがない人がほとんどなので、この厳選4Kコンテンツの視聴環境は、友達や知人、家族に自慢しやすい(笑)。年末年始に向けて来客も多くなり、自慢の機会も増えるはずで、その意味で、このタイミングは4Kテレビの買い時と言えるかもしれない。

 また、別途外部チューナが必要な他の4Kテレビと比較して、4K対応チューナ内蔵のZ10Xのほうが、4K放送視聴までのハードルは低いし、操作もシンプルだ。Z9Xからの確かな画質進化、そして音声操作などの機能強化もあるが、Z10Xオーナーになった暁には是非、4K放送視聴環境を構築し、その魅力を体験して頂きたい。

(協力:東芝ライフスタイル)

トライゼット西川善司

大画面映像機器評論家兼テクニカルジャーナリスト。大画面マニアで映画マニア。本誌ではInternational CES他をレポート。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。映画DVDのタイトル所持数は1,000を超え、現在はBDのコレクションが増加中。ブログはこちら