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「シン・ゴジラ」で急に特撮ファンに。Huluのゴジラ見放題で勉強開始
2016年8月9日 09:30
映画「シン・ゴジラ」を初めて見た夜、映画館を出て自分が乗ってきた自転車を呆然と押しながら帰った。庵野秀明監督が生み出した「ゴジラ」は、非常に恐ろしかった。これを書いている時点ではまだ3回しか観ていないが、その恐怖を乗り越えてでもこの映画を見るために、あと何回か劇場に足を運ぶことになるな、と思わずにはいられない。
「シン・ゴジラ」は庵野秀明が脚本・総監督を務める、この夏の目玉映画のひとつ。監督・特技監督を樋口真嗣、准監督・特技統括を尾上克郎が手がけ、音楽は鷺巣詩郎が担当。7月29日の公開以来、興行収入を順調に伸ばしているという。
新しいゴジラ作品が今年登場することは映画館の予告編などで知っていたが、筆者は特撮映画を熱心に見るほうではないので“絶対に観たい”わけではなかった。だが「話題らしいから観に行ってみよう」という極めて軽いノリで劇場に足を運んだのが運の尽き。新しいゴジラの造形は不気味で、都心を荒らしまわる様子は恐ろしいが、それに対峙する人間たちの政治的駆け引きや、一見無茶苦茶だけどなるほどそれもアリか、と思わされるゴジラ撃退作戦発動までのシークエンスはとても面白い。結果、パンフレットとサウンドトラックを購入し、シン・ゴジラ特集の特撮雑誌を買い、さらに過去作品も見たくなってゴジラシリーズ28作品を配信中の「Hulu」を契約。要は、ゴジラ沼に足を踏み入れてしまったのだ。
これまで昭和・平成ゴジラシリーズのいずれも見たことがなかった。ゴジラ作品ではないが、東宝公認のゴジラということであれば、映画「ALWAYS 続・三丁目の夕日」冒頭のちょい役で襲来するゴジラと鈴木オートのオヤジの対峙を見たことがあるくらい。予備知識が無いだけにシン・ゴジラを見たときのインパクトは凄まじかった。
ゴジラが東京に現れたとき、現代日本の政治家たちは、人々はどう行動するのか。ゴジラは人々にどんな影響を与える存在なのか。そもそもなぜ、突如日本の首都に現れたのか?日本にとってセンシティブな歴史問題をテーマに織り込みつつも、庵野監督の作品らしい特徴的な字幕表現や「そこから撮るか!?」と唸らされるカメラアングル、そして音楽のチョイス。俳優たちの軽妙なやりとりにクスッと笑わされてしまうシーンもあり、個人的には今年最高のエンターテイメント作だと思う。
シン・ゴジラの制作では、特撮でお馴染みのミニチュアを並べて壊していくアナログ手法と、ゴジラやそれに立ち向かうための爆装を施したヘリ部隊や戦車をフルCGで描くデジタル手法が混在。しかし現実の風景とCG映像のつながりに違和感はほぼなく、本当に東京にゴジラが侵入したドキュメンタリー映像を見ているのかと錯覚しそうになる。ストーリーの抑揚に合わせて緩急をつけた映像の切り替えは観ている方を飽きさせない。実際の撮影ではiPhoneのカメラやアクションカムのGoProがさまざまなところで使われたそうで、そうした制作にまつわるエピソードも興味深い。
こうした多彩な映像表現に目が慣れてしまうと、60年以上も前のオリジナルの'54年版ゴジラは長回しのシーンが多く、迫力という点でもやや物足りなさを感じてしまう。そこで目に焼きついてしまったシン・ゴジラの記憶は頭の中から追い出しつつ、約60年前の人々の心境をイメージするよう心がけて観ると、当時の時代背景もあってさぞ衝撃的な映像だったことだろう、と妙にしんみりしてしまう。もちろん「ここはあのシーンとカメラアングルや構図が似てる!」とか、「このセリフどこかで聞いた気がする」など、シン・ゴジラとの共通点を見つけてはマニア気分でニヤリとしてしまうのだが。
Huluで配信されているゴジラ映画のラインナップは「ゴジラチャンネル」のページで確認できる。ついコマ送りや巻き戻しをしてしまうので、全部見終えるには日がいくらあっても足りなさそうだ。ざっと冒頭だけをさらっていて興味深かったのは、'84年版「ゴジラ」とシン・ゴジラの物語の描き方がどことなく近いこと。突如現れたゴジラに日本政府・国際社会がどう対処するのか、一人の登場人物の視点でそれを追う展開に、シン・ゴジラと似たものを感じた。ちなみに、シン・ゴジラと'84年版ゴジラでは「マキゴロウ」という名前の読みが同じ登場人物が出てくる。つい深読みしたくなるポイントだ。
これからの盆休みなどを使って、シン・ゴジラを観た後にHuluでゴジラ映画三昧するのは大いにアリだと思う。最初の2週間は無料で試せるので、筆者はこれを機に、ゴジラだけでなく「マイティジャック」や「ウルトラマンシリーズ」なども見てみるつもりだ。