西田宗千佳のRandomTracking
ついに小型化し、Ultra HD Blu-ray対応。「Xbox One S」に迫る
2016年6月15日 12:58
今年のE3レポートは、まず、新ハードを発表したマイクロソフトの話題から始めたい。とはいうものの、マイクロソフトのプレスカンファレンスの時間帯はサンフランシスコでWWDCを取材中で参加できなかった。すでに新ハードウェアの報道もあるし、僚誌GAME Watchのレポートもある。
ここでは、ブースに展示された機材の写真と、会場で得た情報を加味してお伝えしたい。
大幅に小型化、縦置きにも対応
製品として明らかになっているのは、Xbox Oneのスリム版といえる「Xbox One S」と、将来に向けたVR対応機である「Project Scorpio」の2つ。後者についてはプレスカンファレンスで存在が公表されたものの、ブースにはハードウェアの展示はない。Xbox One Sは発売も近いことから、ハードウェアが実際に展示された。ただし、現地に説明員もおらず、単に展示されていただけである。
Xbox One Sの第一印象は「やっとこのサイズになった」という印象。特にXbox Oneは、縦置きできない上に巨大なACアダプターもあったため、ライバルであるPlayStation 4に比べ大柄でかさばる印象は否めなかった。しかしXbox One Sは、ボディ全体がぐっと小さくなり、縦置きもできるようになり、なにより、ついに電源が内蔵になった。ようやく追いついた、ともいえるが、改善されたことに変わりはなく、前向きに評価したい。
ここまでの小型化は、設計変更だけでなくSoCの低消費電力化が重要なので、GLOBAL FOUNDRIESの14nm FinFETプロセスで製造されているのでは、と予想できる。
テレビ系機能のためのHDMI Inがなくなるのでは……との噂もあったが、きちんとそのままで、Xbox Oneから機能的に落ちたところは殆ど無い。Kinect専用端子がなくなったが、別途アダプターを介し、USB端子に接続することでそのまま使えるという。
ただし、アダプターが必要になったということは、Xbox OneにおいてKinectの利用は後退気味である、とみて間違いなさそうだ。Kinectの技術はHololensにかなりフィードバックされているし、ゲームとしての「体感系」は退潮し、VRに統合されていく流れだ。そう考えると、Xbox One世代にとっての重要度は落ちた……といえる。
4Kは動画+HDRにのみ対応。完全刷新は「Project Scorpio」向けか
ハードウェアが小型化されただけでなく、強化されたこともXbox One Sの特徴だ。ポイントは「4K」、ただし動画の4Kである。
4K動画とHDRに対応していることから。Xbox One Sでは搭載されているHMDIインターフェースの世代がHDMI 2.0a、もしくは2.0b世代へと更新されているようだ。
動画での4K、という点が重要で、Xbox One Sでは、グラフィックのパフォーマンスそのものには変化がない。すなわち、ゲームのパフォーマンスは現行モデルと同じである。
ただし、HDRレンダリングについては、もともとGPU負荷がほとんどないので、ソフト側が対応すれば問題なく実現できる。事実、「Forza Horizon 3」はHDR対応が行なわれており、Xbox One SとのセットではHDRで表現される。デモブースでも、他のタイトルが現行モデルを使う一方、Forza Horizon 3ではXbox One Sが使われていた。
また、映像面では、Netflixなどの4K+HDR動画はもちろん、Ultra HD Blu-rayにも対応する点が見逃せない。Ultra HD Blu-rayは3層100GBのメディアを使うため、ドライブがBDXL対応でなくてはいけない。これもカバーされるようだ。
発表やニュースリリースを確認する限り、Ultra HD Blu-rayへの言及が薄いようだ。 マイクロソフトの製品担当者が捕まらなかったので詳しいことは不明だが、現地で聞く限り、(言及が薄いことに)「特に深い意味はないと思う」とのこと。アメリカでディスクビジネスへの期待が弱い、ということかもしれない。
残念ながらXbox One Sの発売時期は、日本では「年内予定」としか公表されておらず、欧米よりも遅れての登場となる。E3でも詳しい取材は難しそうである。
マイクロソフトは、この先に「Project Scorpio」を2017年末発売に向けて準備中だ。これは、Xbox Oneの初期設計ではボトルネックとなったGPUやメモリー帯域といった部分に手を入れ、よりパフォーマンスが出せるものになるようである。しかし、Xbox One Sはあくまで「小型化+HDMIの世代刷新+ドライブの世代刷新」にとどまり、ゲームプラットフォームとしては「Xbox Oneそのまま」である。