西田宗千佳の
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E3 2010特別編 マイクロソフト関係者に聞く今年の「Xbox 360」

~「Kinect」、「新型」から「日本のZuneビデオストア」まで~


 今回のE3で発表された「新型Xbox 360」と体感型コントローラー「Kinect for Xbox 360」(以下Kinect)の登場で、日本におけるXbox 360の環境も変わり始める可能性が高い。

筆者宿泊中のホテルにもKinectの広告が「浸食」。実は同じステッカーは、E3会場のトイレにまで貼られていた

 アメリカでも、Kinectにかけるマイクロソフトの意気込みは相当なものだ。写真は、E3の1日目(15日)にホテルに戻った際、シャワールームに起こっていた変化を撮影したものだ。俗に言う「安ホテル」で、お世辞にも高級とはいえないし、規模も大きくはない。E3主催者側で宿泊先として紹介される場所にはなっているが、少なくとも特別な場所ではない。だが、ここですらハウスキーピングの際にこのような広告が「仕込まれる」くらいなのだから、E3会場周辺のホテルの多くで、同じようなことが起きているに違いない。

 では、実際のところKinectはマイクロソフトの中でどう位置づけられているのだろうか? そして、どのような機能を持っているのだろうか? 実体験も含め検証していこう。

 また、6月8日に、マイクロソフトはついにオンライン映像配信「Zuneビデオストア」を、今秋からスタートさせると発表している。なぜこれほど時間がかかったのか? どのようなコンテンツがどのような形で提供されるのかも気になるところだ。

 米マイクロソフト・Xbox製品担当プロダクトマネージャーのアルバート・ペネロ氏と同プロダクト担当のブランデン・パウエル氏へのKinectおよびXbox Liveに関するインタビューと、マイクロソフト株式会社・ホーム&エンターテインメント事業本部 Xboxマーケティング本部 本部長の坂口城治氏への日本でのマーケティング施策およびZuneビデオストア関連のインタビュー、Kinectの体験プレイ取材を再構成した形でお伝えする。(以下インタビュー中は敬称略)


米マイクロソフト・Xbox製品担当プロダクトマネージャーのアルバート・ペネロ氏と同プロダクト担当のブランデン・パウエル氏マイクロソフト ホーム&エンターテインメント事業本部 Xboxマーケティング本部 本部長の坂口城治氏

 


 

■ 「間接構造」を取り込むのがKinect。自由度の高さが魅力であり特徴

 まず、Kinectの「ゲーム」について触れておこう。本連載はゲームそのものについて言及するものではないので、ゲームの内容の詳細については僚誌GAME Watchの記事などをご参照いただくとして、ここでは「Kinect」でなにができるのか、を見ていきたい。

 写真ではとても伝わりにくいので、とりあえずムービーをごらんいただくのがいいだろう。体を動かす、という意味ではWiiと同じなのだが、やはり「手だけではない」のがカギとなる。

【Kinect Adventure】
「Kinect Adventure」をプレイ中の映像。プレイ中はこんな風に体をしっかりと動かす。テレビのバラエティショーに出ているようだ


【Kinect Animals】
猫や虎の子供などを飼うペットゲーム「Kinect Animals」(マイクロソフトよりローンチタイトルとして発売予定)のプレイ画面。画面内に手を突っ込んで子猫をなでたり、子猫を走らせて楽しんだりする。人を個別認識し、「特定の人に慣れる」といった個性を持つ

 それからもう一つ大きいのは、「かっこよくプレイすると確実にかっこよくなる」ことだろうか。ダンスゲーム「Dance Central」(Harmonix)での例が顕著だが、コントローラーの動きでなく、きちんと「動きそのもの」を取り込んでいるため、「ダンスがうまい人ほどプレイがかっこよくなる」(開発元・Harmonix担当者)という特長がある。

【Dance Central】
Harmonix制作、発売MTV Gamesによる「Dance Central」(日本での発売は未定)のプレイ映像。プレーヤーは同社のデモンストレーターで、本当にダンスがうまいが、それがきちんと再現されている。ちなみに筆者が試した時は、ゲーム内の映像はかっこよかったものの、現実のダンスはドタドタもいいところだった

 この点は、Kinectの技術特性を非常によく表している。WiiやPS3のMoveが「センサーが指し示す位置と、センサーの動き」(正確には、Moveでは顔も認識し、体の方向や位置の判定に利用するという)をゲームに取り込むものであるのに対し、Kinectの本質は「体の関節がどう動いたのかを取り込む」という点にある。例えば同じ「手を振る」という動作でも、Wii/Moveがセンサーの先を見るのに対し、Kinectは手のひら・手首・肘・肩をつないだ「骨格構造」(CGでいうところのボーン)を取り込む。運動物理=「kinetic」の名を冠しているのはそのためだ。

 この点は特に、フィットネスゲーム「Your Shape:Fitness Evolved」の画面を見るとよくわかる。自分の体型が取り込まれて表示されるが、動作の方は実際に「ボーン」として見える。これを手がかりに、お手本に合わせるよう体の動きを修正し、太極拳やヨガを習得していく。

フィットネスゲーム「Your Shape:Fitness Evolved」(Ubisoft)。体のボーンをしっかり取って姿勢を認識するので、お手本に合わせやすい。他の方式では難しい遊び方だ

 骨格をとるということは、それだけ様々な動きをトラックできるということでもある。他方、ちょっと手首を返しただけ、といった動きの認識は苦手だろう。だがそれは欠点というより「特質」だ。コントローラーを握ることとは確実に「違う」プレイ体験が可能だろう。

 例えば、Rareが開発中のスポーツゲーム「Kinect Sports」では、他のプラットフォームのスポーツゲーム同様、ボウリングができる。手を振って握ったボールを投げるところまでは同じなのだが、「投げる」自由度がちょっと異なる。

 実際のボウリング場で、片手でなく「両手」でボールを転がしてみたことはないだろうか? スイカを持つときのように抱えて、レーンに置くように投げる。投げ方の正式なルールは知らないが、おそらく反則で邪道なのだが、きっと誰もが遊びでやったはずだ。片手にコントローラーを持つ方式では当然できないが、手の動きをトラックするKinectでは再現できる。それどころか、砲丸投げのように上から投げることもできるのだ。こちらはレーンが壊れるので、現実には100%禁止だが、こういう自由度が発揮できることが、他の方式との差別化点なのだ。

 音声認識や画像認識など、様々な機能を持つKinectだが、基本は「ボーン認識」である。音声認識などを併用することももちろんできるが、それだけメモリやCPU資源を使うため、活用はゲームデベロッパーの側に任されている。マイクロソフトのペネロ氏は「どれだけのCPUパワーを必要とするのか、公開できる情報はない。しかし、メモリのフットプリントはさほど大きくないはず」と話している。ただし開発者の中には、「特に音声認識に関しては、認識用の辞書データがメモリを圧迫する」との認識を持っている人もおり、ゲームの内容によっては採用に慎重になる向きもあるようだ。開発時には、CPUやメモリのリソースをしっかり勘案しておく必要がある。

 では、Xbox 360の拡販の現場では、Kinectをどう活用しようと考えているのだろうか? 日本でマーケティングを統括する坂口氏は次のように話す。

坂口:まだ日本では、Kinectの発売日と価格を発表していませんが、年末商戦には確実に販売されます。秋や年末を待つことなく、今から徐々にメッセージを強めていきます。

 Kinectをご体験いただく前と後で、印象が変わったと思うのですが、いかがですか? 私の場合「怖い」と感じていたんです。自分だけ認識がおかしくならないかとか、うまく使えないんじゃないかとか……。でも、そんなことはないんですよ。最初にキャリブレーションや設定をする必要もなく、誰もが簡単に使える。体験プレイでも、2人プレイ対応のゲームをお試しいただいたと思うのですが、プレイする人が入れ替わっても、すぐに認識したはずです。パーティーなどで多くの人が入れ替わり立ち替わりプレイするような場合でも、まったく気にすることなく遊べます。

 そういう簡単さがKinectの特長です。とはいえ我々は、それを「ライトユーザー向け」とは定義していません。「誰もが遊べる」と考えています。

 他方で、現在Kinect向けに提供されているものは、どちらかというとパーティーでワイワイやるタイプのもので、一人でじっくりやるタイプとは異なるのも事実です。だからといって我々は、コアであるところのハードゲーマーを忘れることはありません。実のところ今年は、ハードゲーマー向けタイトルが最高に充実した年になるはずです。我々にとっても大切なお客様ですから、これまで以上にしっかりサポートしていきます。

 実は個人的には、Kinectを使った「じっくりやるゲーム」に期待しているんです。まだ登場はしていませんが、例えばこんなことができます。Kinectでは全身を認識するだけでなく、上半身だけを認識してもいいんです。FPSで照準や射撃など、基本動作には従来通りコントローラーを使い、避ける動作は体を動かして行なう、といった感じに使えれば、おもしろいと思うんですよね。

 要は適材適所ということです。だってやっぱり「狙う」ならコントローラーの方が楽だし、個人的にもコントローラーでプレイしたいと思いますから(笑)


■ Xbox LiveもKinectに向けて進化。リモコンよりも快適な操作を「手」と「声」で

 他方、本連載的にも、筆者的にも注目したいのは「AV家電としてのXbox 360の価値」を上げるものとしてのKinectだ。

 Kinect発売時には、それに合わせてXbox 360のシステムソフトウエアもアップデートする。手での動作や音声を使って基本操作を行なうための機能アップが行なわれるためだ。

 操作の様子はムービーをごらんいただきたい。アイコンを選び、画面を切り替える様がスムーズに行なわれているが、これらはすべて手のひらで操作する。手を画面上で動かし、アイコンの上で止めて、そのまましばらく待つだけだ。意図せずに「手」の形のカーソルが動いてしまったり、認識されずにイライラしたりすることはない。

【KinectによるXbox Live操作画面】
Kinect導入後のXbox Live操作画面。手を軽くかざして選ぶだけでOK。選択中のアイコンは平面から3Dグラフィクスに変化し、選択中であることがわかりやすくなっている

ペネロ:このアップデートは、かなり大規模なものです。手や音声などを使って操作しやすいよう、ユーザーインターフェイスにはKinect用の「スキン」のようなものがかぶせられます。操作がとてもスムーズなのは、ごらんいただければおわかりになると思うのですが。

パウエル:音声でも手ぶりでも、自由に操作していただいてかまいません。もちろん、従来通り、パッドやリモコンでもOKですよ。こういった操作をXbox 360でやれば、とても簡単になります。映画を見ながら電話がかかってきた時にも、「Xbox、Pause」と言えばOKなんですから。私も自宅では、テレビなどの操作にいくつものリモコンを使っていますが、これがあれば楽なのにな、と思いますよ!

 デモブースには、マイクロソフトのこんなキャッチフレーズが掲げられていた。「あなたの体が14個のボタンを置き換える」。

 14個とは、Xbox 360のコントローラ+電源ボタンの総数。すなわち、元々は大量のボタンを使わねばならない操作を、すべて「自然な動作」に置き換える、ということなのだろう。

 手や声で家電を操作する試みは、様々な家電メーカーがすでに試みている。だが、Xbox 360+Kinectのように大規模なものは製品化例が少ない。例えばテレビに内蔵しているプロセッサで操作を行なう場合、UIの実現に必要な演算能力やメモリが不足するため、現実的な価格に抑えるにはシンプルな機能にするしかないからだ。だがゲーム機であるXbox 360とKinectの組み合わせならば、他の機器に比べ十二分な性能がある。だから、Xbox 360+Kinectでの家電的操作は、十分快適な速度と操作性を維持できているのだ。また、手だけでも音声だけでもないところが、使いやすさにつながっているのだろう。

 もう一つおもしろいのは、「個体識別」「個人認識」の機能を大幅に活用している点である。

パウエル:電源を入れ、Xbox Liveにサインインする時には右手を挙げるだけです。そうすれば、あなた自身をKinectが認識し、あなたのゲーマータグ(ID)でサービスに自動的にサインインします。メニューから「選ぶ」必要はありません。

ペネロ:ここでは個人認識技術を利用しています。あなたの顔や体型といった情報を記録しておき、その情報を使ってサインイン時にあなたを識別するわけです。

左がサインイン前、右がサインイン後の画面。事前に10秒程度の登録作業を行なっておけば、その後はKinectの前で手を振るだけで、個人を識別してサインインできる

 ここまでの個体認識は、すべてのゲームで利用されるわけではないようだ。例えば、ペットゲーム「Kinect Animals」はペットが「個人」を認識し、よく遊んでくれる人にはなつくがそうでない人には吠える、といった「ペットの個性」の演出に使われている。他方、他のゲームであっても、同時プレイ時などにゲーム側はプレイヤーを個体認識するため、「体型や服の色でおおまかな認識を行なう」(マイクロソフト担当者)ようになっているという。これは、プレイヤーが入れ替わってもゲーム内で混乱が起きないようにするための配慮だ。

 他方気になるのは音声認識だ。日本語対応はどうなるのだろう? 実は担当者によって返答のニュアンスがちょっと異なる。

ペネロ:マルチリンガル対応を予定しています。元々ディクテーション(文字入力)や複雑なコマンドに対応するものではないので、エンロール(音声の学習作業)も不要です。

パウエル:音声コマンド情報はマイクロソフト側で調整し、ソフトウエアのアップデートに合わせて提供する形になります。

坂口:「停止」がいいか「ストップ」がいいかなど、決めなけれないけないことは多いですね。方言についての問題もあります。個人的には「エックスボックス」でなく「Xbox」と発音して欲しいのですが(笑)、そうもいかないでしょうし。どちらにしても、日本で出す以上、日本のユーザーの方に満足していただけるものにしないといけない、とは思っています。

 特定のコマンドを入力するタイプの音声認識は、すでに「マルチリンガル・不特定話者」の場合でも、かなりの水準に達している。日本語ではまだ不満が残ることもあるが、そのあたりは認識率以上に、「どのような操作に使うか」というインターフェース設計上の問題が大きい。日本版でどこまで実用的になるかは、ぜひ試してみたいところだ。

 カメラを生かした機能として注目されるのは、ビデオチャット「VideoKinect」だろう。テレビでのビデオチャットは、使いやすさ・手軽さの点から注目されており、Kinectでもキラーアプリケーションの一つとなるだろう。

ペネロ:この機能は、Xbox Liveのゴールドメンバーシップ(有料版)ユーザーのみに提供されるものです。ビデオチャット機能はWindows Live Messengerのものと互換性があり、Xbox 360+Kinect同士だけでなく、Live messengerの利用者ともチャットができます。

 VideoKinectでは、顔を認識して、ユーザーの動きをカメラが追いかけるような機能が搭載されています。しかし実は、この機能はソフト的に実現しているものです。Kinectにはモーター連動型の自動チルト機能が内蔵されていますが、こちらは上下の調整のみに対応しています。テレビの上に置いても下に置いても、Kinectのカメラが自動的にあなたを追従し、調整します。

 ビデオチャットのカギは、「どれだけ同じビデオチャットを利用できる人が多いか」にある。先日発表された、iPhone 4搭載の「FaceTime」は、iPhone 4というヒット確実な製品に搭載されるだけでなく、技術を最終的にはオープンにすることで利用者を増やす戦略を採っている。それに対してVideoKinectは、すでに普及したLive Messengerと連携するのがポイント。PCユーザーとの親和性はかなり高い。

 そういえば、気になる点がもう一つあった。Kinectの正式名称は「Kinect "for Xbox 360"」だ。ということは、「Kinect" for PC"」もあり得る、ということだろうか?

ペネロ:そうですね。私からコメントできることはないんですが、名前を見れば、そういう展開を予想しますよね。Kinectはとても優れたユーザーインターフェース・テクノロジーですから、他のプラットフォームでもぜひ使えるようになって欲しいと期待しています。

 完全否定でもないということは、当たらずとも遠からず、ということだろうか。 


■ 日本でも「Xbox 360での映像配信」がスタート! 秋にハリウッド映画から開始

 AVファンとして気になるのは、日本での「Zuneビデオ」の展開だ。アメリカではEPSNのサービスが提供されるなど、「映像配信を見るSTB」としてもさらに魅力的になっているが、日本はようやく、サービスが始まる秋からスタートラインに着く、といった感じである。

 元々Zuneビデオとその前身である「Xbox Video Makeretplace」は、アメリカでのサービス開始時より、日本でのサービスに向け準備が進められていたものだ。なぜこんなに、スタートに時間がかかったのだろうか?

坂口:時間がかかった理由を説明するのは難しいのですが、一言で言うなら「権利処理に時間がかかった」ということです。今回、ある程度権利処理が完了しましたので、ビデオストアの展開を公開できることとなりました。

 元々今回の動きは、ビデオだけにとどまるものではなく「Zune Marketplace」(注:Windows PhoneおよびZune向けの音楽配信サービス)を日本で展開する、という中の一要素となっています。

 Xbox 360で映像配信を展開する場合、「Netflix」型と「Zuneビデオ」型の二つがあり、どちらを先に展開すべきか、という問題もあったのですが、今回は特に後者の形で配信できるかな、というめどが立ったので、発表をさせていただいた、ということです。また、Xboxユーザーの方に望まれるコンテンツはなにか、というリサーチに時間をかけた、ということもあります。

 坂口氏の言うとおり、Xbox 360での映像配信には2つの形がある。一つは「Zuneビデオ」型のビデオ・オン・デマンド。もう一つが坂口氏の言う「Netflix型」だ。こちらは、各サービス専用にソフトウエアを作り込み、その国の事情に合わせた事業者のブランドで展開するサービス。代表格はNetflixだが、前出のEPSNや、ヨーロッパで展開中のBSkyBなどもこれにあたる。日本でも、例えばCATVや衛星放送の事業者が手を挙げれば、「Netflix型」の配信が可能となる。現状ではそちらより、マイクロソフトが音頭を取る「Zuneビデオ」型の方が先に進んだ、ということだろう。

 次に気になるのは「コンテンツ」だ。現状、ライバルであるPS3やPSP向けには、アニメを中心としたラインナップ展開が行なわれている。ゲーマー層が中心となると、やはりXbox 360でもアニメが中心か? とも思えるが、どうやら少々違うようだ。

坂口:まずはハリウッドの映画からスタートします。今回は彼らから許諾を得る形になりました。配信は、アメリカと同じく、1080p、5.1chで、Silverlight技術を使ったストリーミング方式です。中には、ダウンロード販売が行なえるような許諾をいただいたタイトルもあると思います。

 本数は、現状ではコメントが難しいですね。しかし数本ではなく、少なくとも数十本という単位から始めたいと思います。日本の皆様に楽しんでいただけるようなコンテンツを集められるよう、努力します。

 スタートタイミングは、必ずしもKinectの発売日と同期しているわけではありません。しかしどちらにしろ、日本の皆様向けとしては、システムソフトウエアのアップデートを行なっていただき、それからスタートすることになります。

 Xbox 360でのストリーミング配信は、バッファ待ちの時間もほとんどなく、操作性が良いことが魅力だ。しかも今回からは、Kinectのユーザーインターフェースが加わる。実際、筆者も操作してみたがなかなか魅力的だ。コンテンツの量によっては、非常に強力な武器となりそうだ。

 そして最後の疑問だ。なぜこのビデオストアは「Zune」ブランドなのだろう? アメリカでは音楽プレイヤーの「Zune」を展開しており、今後Windows Phoneの次期バーション「Windows Phone 7」での採用も公表されている。関係はどうなっているのだろう? すなわち、日本でもWindows Phone 7が登場する、ということだろうか? しかも、Zuneビデオが登場すると予告されている「秋」に。

坂口:うーん、その点については、発表できるレベルのお話はまったくありません。ただ、今回のスタートに際し、グローバルブランドの「Zune Marketplace」の名前を持ってきた、ということはすでに発表済みです。ということは、将来、当然ご質問のように、「連携」していく可能性もある、とはお考えいただいていいと思います。

 Xbox 360が、新型+Kinectで攻勢をかける裏には、Windows Phoneなどの「マイクロソフトのホーム&エンターテインメント戦略全体」に関わる動きがありそうだ。

(2010年 6月 18日)


= 西田宗千佳 = 1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、PCfan、DIME、日経トレンディなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「iPad VS. キンドル日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏」(エンターブレイン)、「iPhone仕事術!ビジネスで役立つ74の方法」(朝日新聞出版)、「クラウドの象徴 セールスフォース」(インプレスジャパン)、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)などがある。

[Reported by 西田宗千佳]