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第779回 UHD BD入門に最適、CDリッピングもできるパナソニックDIGA「DMR-UBZ2020」

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UHD BD入門に最適、CDリッピングもできるパナソニックDIGA「DMR-UBZ2020」

Ultra HD Blu-ray元年

 今年6月ぐらいから徐々に、Ultra HD Blu-ray(以下UHD BD)でハリウッドの大作タイトルがリリースされはじめた。対応プレーヤーは今のところパナソニック「DMP-UB900」および「DMP-UB90」、レコーダでは同じく同社「DMR-UBZ1」が対応と、パナソニックが先行している。他社もこの秋冬商戦に向けて製品が出てくる事と思われるが、追い打ちをかけるがごとくまたまたパナソニックから対応製品が登場する。

パナソニックDIGA「DMR-UBZ2020」

 11月下旬より発売予定のDIGA「DMR-UBZ2020」および「DMR-UBZ1020」は、トリプルチューナ搭載の最新レコーダであり、UHD BD再生にも対応したモデルだ。店頭予想価格は2TB HDDの「UBZ2020」が10万円前後、1TBの「UBZ1020」が9万円前後となっている。実売価格の動きにもよるだろうが、HDD容量が倍違って価格差が1万円なら、UBZ2020のほうが狙い目だ。そんなわけで今回は発売前ではあるが、UBZ2020をお借りすることができた。

 もちろんUHD BD再生だけでなく、レコーダの機能やホームサーバーも改良されている。UHD BDで独走態勢とも言えるパナソニックの最新レコーダを、早速試してみよう。

気負いのないデザイン

 2014年発売のモデルから、DIGAはアクリルのフロントパネルにベベルをあしらったデザインを続けているが、今回のUBZ2020も基本的には同じデザインテイストで作られている。フロントパネルにはULTRA HDのロゴがあり、これが再生対応の目印となる。なおUHDは録画規格がまだ策定されていないが、録画ができるようになればまたロゴも新たに策定されるのだろう。

従来のイメージを継承したデザイン
独特のベベルにUltraHDのロゴが

 左側にはUHD Allianceが策定した「Ultra HD Premium」のステッカーが貼ってある。これは単に4K解像度に対応するだけでなく、広色域(BT.2020)、HDRにも対応する機器という意味だ。

左側には「Ultra HD Premium」のステッカー

 UHD BD対応となっても特に大型化する事なく、トリプルチューナ機としては至って普通のサイズだ。DIGA特有の奥行きの短さも健在で、外寸は430×199×66mm(幅×奥行き×高さ)となっている。リーズナブルな価格ではあるが、脚部がしっかりしている点は好感が持てる。

奥行きの短さは昔からのこだわり

 表に出ているボタンは、天板の電源とイジェクトボタンのみ。今年5月発売の全録モデル「DMR-BRX7020」では、この両ボタンはタッチ式となっていたが、コストダウンの影響か本機は物理スイッチとなっている。

表出しているスイッチはこの2つのみ

 フロントパネルを開けると、左側にUHD BDドライブと取り込み用USB端子、SDカードスロットがある。中央のディスプレイ部を挟んで右側にB-CASカードスロットがある。内蔵HDDは、UBZ2020が2TB、UBZ1020が1TBとなっている。

左側にUHD BDドライブ
右はB-CASカードスロット

 背面に回ってみよう。録画機器としては、地上波及びBS/CSのRF入力のほか、拡張HDD用のUSB端子、光デジタル音声出力、Ethernet端子と、オーソドックスな構成だ。一方HDMIに関しては、映像/音声出力端子のほか、音声専用端子も備えている。

一見シンプルな背面パネル
2系統のHDMI出力を装備

 実際にUHD BDで4Kの映像を再生するには、HDCP 2.2対応が必須となる。一方で少し古いAVアンプではHDCP 2.2非対応のものも多いと思うが、音声だけならHDCP 2.2対応は必須ではない。そこで、映像/音声出力のHDMIはテレビなどに接続、音声専用の出力は古いAVアンプに繋ぐというわけだ。過渡期であるため、この機能は今のところ必須という事だろう。なお4KとHDR出力をしないのであれば、設定で両方とも映像・音声出力に切り換えられる。

K出力はサンプリングレートやビット数の選択が可能
HDMIの音声側は映像出力にも切り換え可能

 リモコンも見ておこう。形状やボタン数は今年の春モデル「DMR-BRG2020」に付属のものと同じだ。機能一覧ボタンの上に「新番組」や「ゆっくりはっきり」ボタンが大きめにフィーチャーされている。放送波ボタンと並んでNetflix専用ボタンがある点も同じだ。

リモコンは従来通り

番組持ち出しを強化

 では最初にレコーダ系の新機能をチェックしておこう。リモコンで「新番組」が大きくフィーチャーされていることはすでに述べたが、番組表を表示しただけで、下部に新番組や特番のお知らせが表示される。一見するとバナーのように見えるので、つい広告かと思ってしまうが、番組改編シーズンと無関係に始まる番組も油断なくチェックできる。ここで「新番組」ボタンを押せば、全チャンネルや放送波の新番組情報が一覧できる。

番組表の下に新番組のお知らせが出る
お知らせの表示頻度はサブメニューから設定可能

 番組表の表示スタイルも若干改良された。以前は番組名と内容説明が同じフォントサイズで表示されていたため、番組名が認識しづらかった。今回の番組表では、番組名は大きめにボールドで、内容は小さめに標準フォントで表示される。また番組内容の表示もOFFにできるので、番組名だけわかればいい場合にはもっとスッキリした表示にできる。

一番細かい表示。大型の4Kテレビならそれほど見辛くない

 レコーダの機能をサポートするスマホアプリ「Media Access」も機能が充実している。事前にアプリとレコーダをペアリングしておけば、宅外からでも番組をストリーミング視聴できるが、iPad版ではPinP表示もでき、別のアプリを操作しながらの“ながら見”もできるようになった。12.9型のiPad Proでは若干PinP画面が小さくなりすぎのきらいもあるが、おそらく9.7型で調整してあるのだろう。

番組のPinP表示でながら見にも対応

 番組表の表示に加え、そこからレコーダへの予約もできる。例えば誰か家族が録画番組を見ている場合、わざわざ再生を止めて貰って録画予約するというのもイケてないが、そこをスマホでさっと予約が完了させるわけだ。この機能はファミリー層のほうが、便利に活用できそうである。

Media Accessの番組表
そこから予約もできる

 さらに新機能としては、番組をダウンロードして持ち出せる機能が追加された。録画番組の中から持ち出したい番組を選択し、「あとで見る」リストに追加する。「あとで見る」リストへ移動し、ダウンロードアイコンをタップすると、スマホ用に変換されて番組がダウンロードされる。ダビング10対応の機能なので、スマホへダビングするとダビング回数が1回消費される。

iPhone、iPadでも番組持ち出しが可能に

 持ち出せる画質は、画質優先(720p)、標準(VGA 1.5Mbps)、容量優先(VGA 650kbps)の3段階から選択できる。ただし、画質優先と容量優先は「ディモーラ」の有料会員の登録が必要となる。単純に高画質になるほど会員登録が必要というわけではなく、画質が低くても会員登録が必要という仕組みはなかなか珍しい。

 高解像度タブレットで視聴する場合はフルHDで見たいところではあるが、スマートフォンなら画面サイズ的にも720p解像度あれば不満はないだろう。冬休みも近づきつつあるが、実家へ帰省中でもダウンロードした番組が見られるというのは、メリットが大きい。

お手軽派から本格派まで、UHD BD再生機能

 UHD BD再生は、特に通常のBDの再生と変わったところはない。ただ接続するテレビ側の準備が必要だ。4K解像度を持ったテレビである事はもちろんだが、先に述べたHDCP 2.2への対応が必要となる。基本的にはこれさえクリアしていれば、UHD BDは映る。

 だがUHD BDのポテンシャルを引き出すためには、3つの条件が揃う事が理想である。高解像度、高色域、高ダイナミックレンジへの対応だ。具体的には4K/60p対応、BT.2020対応、HDR対応だ。今年発売のモデルではいくつか全対応のテレビも出てきているが、わかりやすい探し方と言う点では、先に紹介した「Ultra HD Premium」のマークも一つの基準になるだろう。

 また、通常のHDMIケーブル(10.2Gbps)も利用可能だが、4K/60pフルスペック(カラーフォーマット:4:4:4/8bit、4:2:2/12bit)接続のためにはUltra HD Premiumロゴを取得した転送速度18GbpsのハイスピードHDMIケーブルも必要だ。このタイプは、出力側と入力側が決まっている。つまり信号が流れる方向が決まっているので、ケーブル記載の表示をよく見ながら配線する必要がある。

Ultra HD Premiumロゴを取得した転送速度18GbpsのハイスピードHDMIケーブル

 あいにく筆者宅のテレビ(VIERA TH-40AX700)は4K/60p対応ではあるが、BT.2020、HDRには対応していない。したがってUHD BDの本来の映像クオリティは表示できていない。ただ、これまで4Kの商業コンテンツと言えば、ネット配信ぐらいしかなかったわけだが、高ビットレートのUHD BDは、ちょっと再生してみただけで結構な違いがある。

 今回は「マッドマックス 怒りのデス・ロード」と「オデッセイ(The Martian)」を視聴したが、CGシーンの多い映画では、実写シーンよりもCGシーンのほうが4K高解像度の威力を感じる。ゆくゆくはUltra HD Premiumのテレビを購入して、本格的に楽しみたいものだ。

このセットだけでUHD BDが視聴できる

 UHD BDの再生機としては、これまでのメディアのように高級機も続々と発売されるだろう。だがまずはお試しとして、リーズナブルなレコーダに再生機能が付いている点は高く評価したい。

CD再生も美味しい? ハイレゾリマスター

 レコーダはメディアサーバとしての機能を持つものが多いが、テレビ番組に関しては専用アプリなど決まったものからしかアクセスできない。一方、自分で撮影した写真や動画は、ホームネットワーク内の機器から自由にアクセスすることができる。

 これまで音楽CDの取り込み機能を持つレコーダもあったが、あまり積極的には使われてこなかったように思う。それよりはNASやPCの外付けHDDにリッピングしておいた方が、使い勝手が良かったからだ。また最近はiTunes MatchやGoogle Play Musicといったクラウドサービスを利用する人も多いことだろう。つまりローカルのレコーダに音楽を溜めるメリットはあんまり見えなかった。

音楽を聴く機能が大幅に進化

 本機も新たにCDのリッピング機能を備えたが、加えてアップサンプリング機能を使ってCD音源をハイレゾ音源相当にリマスターする「ハイレゾリマスター」も搭載した。HDMI出力から、最大で192kHz/24bitにアップサンプリングした出力が可能だ。

CDをリッピングしてアップサンプリング再生が可能
リマスターの効果も3段階から選べる

 CDは、FLACの44.1kHz/16bit/1,000kbps越え(VBR)でリッピングできる。ロスレスなので、ほぼリニアPCMと同等のクオリティで取り込まれることになる。曲名などは、GracenoteのMusic IDから取得する。ただしリッピングは、番組の録画中にはできないので、作業は録画を止めるか、録画していない時間帯に行なう必要があるのは残念だ。

 もちろんすでにPCなどのHDD内にあるハイレゾ音源も、本機のHDDにネットワーク経由でコピーしてそこから再生することが可能だ。再生対応ファイルは以下のようになっている。

  • WAV:192kHz/32bit
  • FLAC:192kHz/24bit
  • DSD:5.6MHz/2.8MHz
  • ALAC:192kHz/32bit
  • AAC:48kHz/320kbps
  • MP3:48kHz/320kbps

 ほぼ現状で使用可能なフォーマットは網羅しており、既に結構なハイレゾライブラリを持っている人でも対応できるはずだ。これまでPCで再生していた人も、リビングの機器でハイレゾ再生ができるという点でメリットが出てくるだろう。

 なお取り込んだ音楽データは、BDまたはSeeQVault対応USBハードディスクにバックアップできる。だが、現状DRMがかかってない音楽ファイルに、わざわざDRMをかけてバックアップするのはメリットがない。再生機の一つの選択肢として見ておくほうがいいだろう。

総論

 DMR-UBZ2020は、レコーダとして劇的な進化があったとは言えない。すでにレコーダは完成の域にさしかかった商品であり、これ以上のイノベーションがもたらされるためには、放送のDRMが解除されるといった構造変化が必要になる。

 番組表の表示スタイルや録画番組の持ち出しなどは、これまで他社ではすでにやっていたことであり、機能的には横に並んだわけである。しかし今回の決定的な差別化要因は、UHD BDの再生機能だ。これまで新しく登場してきたハイエンドメディアのプレーヤーは、まず高嶺の花のような高級機が続々と登場し、庶民は早く安いモデルが出ないか指をくわえて待っているというのが常であった。

 だが今このタイミングで、9万円、10万円といった普及クラスのレコーダに再生機能を載せるという戦略は、これまでとは明らかに違っている。DVDの普及はPlayStation 2が大きな役割を果たしたわけだが、パナソニック的にはその役割をレコーダに任せることで、一気に“普通のもの”というレベルまで普及させたいという狙いがあるのかも知れない。

 UHDパッケージの価格は、今のところ5,000円弱~7,000円台といったところである。作品やレーベルによって違いがあり、現状は通常のBDと2枚セットなので価格が高止まりしている印象だが、プレーヤーの普及に伴って価格もこなれてくるだろう。一方でネット配信ではすでに4K配信を謳っているサービスもいくつかある。当然本機もNetflixの4K配信にも対応しており、そのあたりはぬかりない。

 一方で音楽CDのハイレゾリマスターや、ハイレゾデータを直接再生できる機能を持たせたのも面白い変化だ。レコーダを音楽プレーヤーとして利用するような時間があるのかという話もあるが、これまでPCやポータブルプレーヤーがメインストリームであったハイレゾ環境に、ちょっと違った選択肢ができることは歓迎したい。

 レコーダとしては、全録機にするか、UHD再生機能を取るか悩ましいところではあるが、この冬のボーナスの使い道として、このレコーダは一つのターゲットとなり得るだろう。

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小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチビュッフェ」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。