小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第780回 素早く録画を消化、“時短”で攻める東芝新レコーダ「DBR-T2007」。SeeQVault SDも

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素早く録画を消化、“時短”で攻める東芝新レコーダ「DBR-T2007」。SeeQVault SDも

あれ? 全録じゃないの?

 秋冬商戦のレコーダ第2弾と言うことで、今回は東芝のレコーダをお送りする。東芝と言えば、2013年あたりから全録モデル「レグザサーバー Mシリーズ」を展開し、注目を集めた。しかしながら全録モデルは昨年2月の「DBR-M590」以降新製品が出ておらず、この時期で後継機がないということは、今年の新製品投入はもうないかもしれない。

東芝REGZA「DBR-T2007」

 一方でレコーダとしては今年の新モデルとなるダブルチューナ、トリプルチューナ機が登場する。11月16日に発売されるDBR-T2007/T1007がトリプルチューナ機、DBR-W1007/W507がダブルチューナ機だ。型番からだいたい想像が付くように、HDD容量は2007が2TB、1007が1TB、507が500GBとなっている。

 この中でも今回は、最上位モデルとなるDBR-T2007を取り上げる。店頭予想価格は85,000円程度で、通販サイトでの実売もだいたいそれぐらいである。

 東芝のレコーダは、全録機ではないモデルでも、実質的に全録機能とのハイブリッドになっていた。例えばトリプルチューナ機であれば、最大3チャンネルまでの全録機として使える「タイムシフトマシン」機能を搭載していた。一方この秋冬モデルは、「レコーダは、時短で選ぶ時代。」として、少しの時間で効率良く見られることを主眼に機能強化を測っており、全録系の機能は見送られた。

 またほぼ同じタイミングで、SeeQVault対応SDカードとカードリーダー/ライターのセット「MSV-LTAシリーズ」も発売になっている。テレビ番組をSDカードにムーブして、iPhone/iPadといったApple製品で視聴するためのデバイスだ。せっかくなのでこちらも試してみよう。

前作を継承したシンプルなデザイン

 まずデザインだが、フロントパネルの両脇を丸くラウンドさせた作りは継承している。ただパネル開閉部はシルバーではなく、ブラックとなった。黒なのであまり目立たないが、ヘアライン仕上げなのは変わっていない。

 天板の左には丸い電源ボタンがレイアウトされるのは、もはやお馴染みのスタイルだ。中央やや左にはBlu-rayドライブのイジェクトボタンがある。多くのレコーダは電源とイジェクトボタンを集める傾向があるが、東芝はドライブの近くにイジェクトボタンを配置する。

両脇のラウンドがポイント
開閉部も黒でシックなイメージに
真ん中あたりにイジェクトボタンを配置

 前面には画像取り込み用のUSB端子とSDカードスロットがある。B-CASカードはminiタイプを採用しているので、見た目もスッキリしている。

中央部に端子、スロット類が集中
miniタイプのB-CASカードでカバー内部の見た目もスマート

 背面に回ってみよう。デジタル音声端子がないのですっきりして見えるが、未だアナログAV入力を備えているのは東芝らしいこだわりだ。USB端子は増設HDD専用となっている。有線LAN端子も見えるが、無線LANにも対応している。

アナログAV入力は最近のレコーダでは珍しい

 HDMI出力は4Kへのアップコンバートにも対応するが、ソースが24pの時に限られるようだ。HD出力でも、1080/24p出力専用モードがあるなど、映画にこだわっている。

4Kアプコンにも独特のコダワリが

 リモコンも見ておこう。昨年のトリプルチューナ機DBR-T670で採用されたものとボタン数やデザインは同じだが、上部の目立つ位置に「時短」ボタンが搭載された。以前はユーザーの好みに合わせて関連番組を探してくれる「ざんまいプレイ」があったところだ。また「タイムシフトマシン」機能が無くなったことで、「過去番組表」のボタンも不要になり、その関係でボタンの位置が整理されている。

リモコンの作りは前作を継承
時短ボタンが今回のポイント

強烈な「時短」機能

 再生だけでなく、予約したい番組を見つけることも「時短」するとして、おまかせ自動録画が強化された。スタートメニューの「予約」の中に、「おまかせ自動録画」の設定がある。まずはお好み設定として、番組カテゴリに順位を付けていく。最大21個まで選択でき、特定のタレントやサブジャンルも設定可能だ。

まずはお好み設定でジャンルを選択
お好みの選択肢は自分でカスタマイズできる
人物リストはかなりの人名を網羅

 人物リストでは、あいうえお順にタレント名が出てくるので、それを選択するだけだ。かなりの人名を網羅しており、よほどマニアックな趣味で無ければ、大抵は見つかるだろう。

 次の画面では、選択したカテゴリのうち、実際に自動録画したいものを選んでいく。さらに詳細設定として、1日の録画時間や放送時間帯、自動削除の対象にするかといった設定ができる。

星マークがついているジャンルを自動録画する

 ジャンル選択と実際に録画するかの二段構えになっているのは、段取り臭すぎる気もする。まとめてしまうと詳細設定や録画プライオリティ順の設定が煩雑になるからかもしれないが、もう少しUIの工夫で手順は詰められそうだ。今は「時短」かもしれないが、手順が多すぎて「手間短」ではない。

 続いて今回の目玉とも言える、再生の「時短」機能だ。時短プレイとして1.3倍速や1.5倍速再生機能の搭載は、特に珍しくない。だが本機では、「マジックチャプター」によって切り分けられた部分を自動的にスキップする「らく見」、らく見 + 1.3倍速で再生を行なう「らく早見」、らく見再生部分を20分割し、それぞれを15秒再生する「飛ばし見」の3パターンを搭載した。さらにはこの3パターンのうち、どれかをデフォルトにする機能も備えている。

まずは初期設定でおまかせプレイ機能を有効に
録画番組を3タイプの時短プレイで再生できる
再生のデフォルトを一括変更できる

 リモコンの「時短」ボタンを押すと、時短再生機能にアクセスできる。録画された番組が、それぞれの再生パターンで何分で見られるかも一覧でわかるようになっている。忙しい合間を縫って番組を鑑賞する際に、だいたいの目安がわかるのは助かる。これらの機能は「マジックチャプター」がキーになるわけだが、3チューナで同時録画しても全ての番組にチャプターが付けられるので、安心してこの機能が使えるわけである。

 一方でWebサイトでは特に言及されていないが、「らく見」は実質的にCMオートスキップ機能として使える。CMの自動スキップ機能については、2010年に民放連の会長が会見で、CMカット、スキップはARIBの運用規定違反の可能性があることを指摘し、翌年には三菱機から該当の機能を省略するという事になった。

 民放の収益はコマーシャル枠の販売によって成り立っているため、CMスキップによるダメージがある事は考えられる。これまで視聴率はライブ視聴しか測定していなかったが、ビデオリサーチが、今年10月から関東地区ではタイムシフト再生も測定するようになった。この機能が揉める事にならないかちょっと心配だ。

 では実際に試してみよう。「らく見」再生では、CMにさしかかる直前で一瞬番組再生が停止し、次の番組本編まで再生がスキップする。内部的には自動的にプレイリストが作られているようで、番組を早送りしてもCM部分にはさしかからず、次の番組本編に突入する。オープニングも飛ばしたいような場合にも対応できるわけだ。

 次に「らく早見」を試してみた。1.3倍速再生は、動きの不自然さもなく、言葉の明瞭度もギリギリ保ったままで内容が把握できる。話の筋を早く追いたいドラマやドキュメンタリー、映画などでは重宝するだろう。一方ほとんどがマシンガントークで占められるバラエティ番組では、話の内容に追いつくのに精一杯で、笑える部分も笑ってる暇が無いというデメリットがある。

 「飛ばし見」はユニークな機能だ。とにかくどんな長さの番組でも20分割してしまうので、30分番組だとそれなりに内容が追えるが、2時間番組だとほとんどわからない。またドラマや映画のように1つのストーリーを追う番組なら飛び飛びでもなんとなく話が繋がるが、1時間の間に複数のコーナーに別れるバラエティ番組の場合、コーナーの結論がわからないままになってしまい、内容の把握ということでは不満が残る。

 思いのほか、使い方が難しい機能である。やはりそこはA.I.を使ってダイジェストと思われるプレイリストを自動生成するとか、そのレベルまで行って、初めて全ての番組を5分で把握するみたいなことができるのだろう。なお再生方法を変更したい場合は「緑」ボタンを押せば、変更できる。

再生中に緑ボタンを押すと、再生モードを変更できる

スマホ対応も強化

 これまで東芝機は、スマートフォン向けに「レグザAppsコネクト」として、様々な機能のアプリを提供してきた。ハードウェアでの進化とともにできることが徐々に増えていったわけだが、逆にアプリが色々ありすぎて、途中から使い始めたユーザーには何が何だかわかりにくい部分もあった。

 また、スマホやタブレットでの番組視聴には力を入れてきたが、スマホでの番組表確認と、そこからの番組予約は、他社に比べれば弱点だった。以前は録画予約用の「RZスケジューラ」が用意されたが、2014年9月末のアプリ ラインアップの見直しで配布を終了。コマンドを記したメールを投げれば予約できるのだが、今どきそれはないだろう。

DiXiM Playで本機を選択すると、2つの選択肢が出る

 そこで新モデルでは、デジオンのアプリ「DiXiM Play」と連携することで、このあたりの機能を整理・拡張した。DiXiM Playで録画サーバを選ぶと、「録画番組や放送中番組を視聴する」か、「ネットdeナビ」の選択画面が出る。ネットdeナビへ進むと、録画予約一覧や録画リスト、番組表などにアクセスできる。

 番組表へ進むと、かなりワイルドな番組表が現われる。東芝とデジオンとどっちががんばらないといけないのかよくわからないが、他社の同じようなサービスと比べると見劣りする。もうちょっと見た目と情報量をなんとかして欲しい。ここから番組予約もできる。録画モードや持ち出し設定も可能だ。

番組表は情報が少ない
録画予約もできるようになった
録画リストから番組を再生

 録画リストでは、録画された番組がリスト表示される。ここで番組を選ぶと、レコーダ側で選んだ番組が再生される。スマホ側で番組を再生するには、いったんトップ画面まで戻って、「録画番組や放送中番組を視聴する」を選び直さなければならない。DiXiM Playは言わば汎用のDLNAプレーヤーなのだが、それに「ネットdeナビ」機能をくっつけたからこうなってしまったのだろう。あまりスマートとは言えない実装だ。

 外出先からの録画予約や番組再生も、DiXiM Playで対応する。ただしこの機能を使うには、DiXiMに登録し、月額108円(税込)を支払う必要がある。

 この108円を支払うためにデジオンのサイトへ行き、ライセンスキーをカートに入れて購入、クレジットカード払いの場合、カード番号や名前その他を入力し、使用許諾契約書を確認し、アプリに戻ってDiXiM IDでログイン。別途メールで送られてくる確認コードを入力したのち、購入したライセンスキーを選んで利用開始する必要がある。さらにそこからiOS CAのインストールをした後、レコーダを選んで利用規約に同意し、ペアリングする。

宅外リモート機能を使うには、DiXiM Playの有料購入が必要
会員登録からストアでのライセンス購入まで、延々と手続きが必要
宅外リモートでも操作体系や画面の作りは同じ

 これはさすがにめんどくさすぎだろう。機能が有料という時点でムムムと思うのに、もうちょっと支払いから利用開始までの手順を減らさないと、他社の同様の機能と比べて圧倒的に利用開始のハードルが高い。

 実際に108円を支払ってリモート機能を試してみたが、操作体系としてはホームネットワークとまったく同じだ。すなわち最初に「録画番組や放送中番組を視聴する」か、「ネットdeナビ」の選択画面が出て、どちらかへ進むというスタイルである。

時短再生はできない

 DiXiM Playでの番組視聴では、時短再生はできない。通信費の問題も出てくるため、時短プレイもしたいところだ。アプリからアクセスすると「ざんまい(時短)」というメニューもあったが、特に時短再生はできなかった。

 話が長くなったが、最後にSeeQVault対応SDカードでの番組視聴も試してみよう。今回は16GBのmicroSDHCが付属する「MSV-LTA16G」をお借りした。すでにAndroid向けのSeeQVault対応リーダー/ライターは製品化されているが、今回はiPhone向けにLighting端子のコネクタを採用したものが発売になったというわけだ。実売は9,980円前後だ。

SeeQVault対応カードリーダー/ライターと16GBmicroSDHC

 レコーダからの番組転送は、SeeQVault対応microSDカードをフルサイズのSDカードアダプタに刺し、レコーダのSDカードスロットに差し込む。レコーダ側では、てっきりダビング10機能を使ってのコピーになるのかと思ったら、HDDからSDカードへのムーブという形になる。もともとSeeQVaultはレコーダをまたいだ番組保存用の規格として設計されているので、そういうことになるのだろう。

SeeQVault対応SDカードへの書き出しは、ムーブ

 再生は専用アプリのSeeQVault Playerから行なう。アダプタを挿してアプリを起動すれば番組リストが出てくるので、タップしたらすぐ再生が始まる。さすがにローカルファイルを再生しているだけあって、画質的にも十分で面倒な手続きもなく、操作レスポンスも良好だ。リーダー部分はLighting端子の根元の強度が多少心配だが、扱いに注意するしかないだろう。

iPhoneに挿して再生するだけ
専用アプリSeeQVault Playerから番組を選ぶ

 ちなみにiPhoneで見終わった後、SDカードからHDDに書き戻すこともできるが、元の画質には戻らない。また録画リストにも復活しない。まあ一度消化した番組はレコーダで見なくていい人は気にしないだろうが、健全に利用したいユーザーに対してここまで不便を強いる今のテレビのDRMのあり方に、大きな疑問を感じる。

SDカードからの書き戻しもできるが、解像度は元に戻らない

総論

 全録じゃない東芝機を扱ったのは久しぶりのような気がするが、新シリーズとなるT2007は、タイムマシン機能がなくなってスタートメニューの作りもすっきりした。内部的にもリスタートしたような印象を受ける。

 今回の「時短」で最大の目玉は、マジックチャプターを利用した「らく見」と「らく早見」だろう。自動チャプター機能は東芝レコーダのお家芸であり、その魅力を最大限に引き出した機能だと言える。大変強力な機能で、またずいぶん攻め込んだなと思う。

 ただ最近、家庭内でテレビを見ている時、CMを飛ばす機能は本当に必要かなとも思い始めている。うちではもはやタイムシフト視聴のほうが標準になってしまっていて、CM部分にさしかかってもいちいち飛ばしたりせず、そのままなのだ。レコーダ経由でテレビ番組を見ることは特別なことではなく、「そういえば飛ばせるんだった」ぐらいの認識になっている。子供が成長するにつれ、相対的にテレビ放送に対するプライオリティが下がってきているのかもしれない。

 むしろそういう機能は、時間とネットワーク資源が限られるリモート視聴時に使えた方がメリットが大きい。しかしその部分は今回DiXiMとのコラボなので、自社開発アプリとの連携具合とはちょっと違い、手間の多さやUIのこなれてなさが気になるところだ。

 一方でSeeQVault対応microSDによる番組持ち出しは、手順としてはこなれている。難点は、コピーではなくムーブになってしまうところだろう。書き戻しもできるが、解像度が元に戻らないのは残念である。ただ、機能のギリギリのところまで使い込んでソリューションとして攻め込んでくる姿勢は、東芝技術陣らしいガッツを感じる部分だ。

 東芝のレコーダは、かつてのRDシリーズから熱心なファンを持っている。今回の方向性に戸惑うユーザーも多いかもしれないが、選択と集中が行なわれた結果の新シリーズということで、改めて刮目すべき機体に仕上がっていることは間違いない。

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REGZA
DBR-T2007

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチビュッフェ」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。