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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第529回:夏休み工作:コンパクトオーディオを作る

〜デジタルアンプとスピーカーの自作に挑戦!〜


■夏休み企画とは

上がデジタルアンプのキット「D_5709kit」、左下が別売のACアダプタ、その隣が専用ケース

 古くからの読者の方でも既にご存じないかもしれないが、実はこの連載、毎回夏には「夏休みの工作シリーズ」と題して、真空管アンプバックロードホーンスピーカーなど、AV機器関連の自作をやってきた。最後にやったのが2006年で、それから5年間やってなかったんである。

 忘れてたんだろ、と思われるかもしれないがまさにその通りで、忘れてた。いやそもそも夏休みの工作シリーズの発端は、夏は新製品があんまりないねー、なんかじゃあ自作でもやってみる? というところだったので、2007年以降は結構夏場も困らないぐらい新製品があったわけである。

 しかし、今年は久しぶりに工作企画を立ち上げてみた。もう夏休み終わるんですけど! という声もないではないが、どうせ社会人は夏休みなどないも同然だし、これから秋の夜長を楽しみながら工作するのも楽しいだろう。

 今回は大阪・日本橋の電子部品専門店デジットが開発したフルデジタルオーディオパワーアンプキット「D_5709kit」、そして今大好評で品不足が続いているFostex製スピーカーエンクロージャ「P800-E」、さらに音楽之友社から出ているSetreo誌7月号の特別付録で、同じくFostex製自作スピーカーユニットを組み合わせてみる。

 どんな音が出るんだろうか。さっそく作ってみよう。




■ナメてたら大変「D_5709kit」

キットの中身。マニュアルほか、補足説明が2枚入っている
 まずはデジタルアンプ「D_5709kit」から制作開始である。通販価格で12,600円、ケースが2,800円、ACアダプタも別売で3,129円、合計18,529円となる。電源は12〜20Vで動作するようなので、手持ちで余っているものがあれば流用してもいい。

 キットの中身としては、すでに完成された基板が入っており、あとは入出力端子、LEDとボリューム、電源スイッチなどを取り付ける事がミッションとなる。専用ケースがあれば楽だが、自分でイイ感じのケースを作るのもいいだろう。ただ、その場合は電子工作と言うよりも板金加工がメインになるかもしれない。


 以前エレキットの真空管アンプを作ったときは、基板への部品実装も全部自分でやるというものだったが、今回のキットは地味に調整箇所が多いので、これを自作させるのは難易度が高い、ということなのだろう。

 専用ケースはアルミ製で、前面、背面ともにちゃんと文字入れがされている。高級感はあんまりないが、エレキットがシールを貼るだけなのに比べると、手が込んでいる。

 電源は定格出力 DC19V/3.2Aのもので、定格入力AC90〜264Vまで使えるワールドワイド仕様のものだ。国内仕様だけのものなら、もう少し安いものもあるだろう。

別売の専用ケースはアルミ製 こちらも別売のACアダプタ

 メイン基板は完成しているのでそっちはほっといて、まず最初は前面パネルへのパーツの取り付けである。注意すべきはLCDモニターまわりで、マニュアルにはないが補足説明に100Ωの抵抗を取り付ける手順が入っている。液晶の取り付けの前にこれをやっておいたほうがいいだろう。ヘッダピンも半田付けが必要である。


まずは前面パネルにパーツ取り付け ヘッダピンは自分で半田付け
見落としがちな補足説明 前面パネルはなかなかイイ感じだ

 続いて背面パネルにスピーカー端子などを取り付けていく。基本的にナットで止めるだけなので簡単だが、スピーカー端子はケーブルを通す穴があるタイプなので、あとでケーブルを差し込みやすいよう、穴の向きを考えながらネジ止めしたほうがいいだろう。まあ有り体に言えば、筆者はそれにあとから気づいたので、失敗したわけである。

背面パーツを取り付け 入力はデジタル系のみ

 入力は光デジタルと同軸デジタルの2系統があり、前面のセレクトスイッチで切り替えられる。サンプリング周波数は最大48kHzまでしか対応していないのがちょっと残念であるが、CDやDVDソースには十分対応できる。サンプリングビットは16bitまでとWebサイトには書いてあるが、実際には24bitまで自動追従するようだ。



■いよいよメイン基板へ

 ここまでは単なる仕込みである。ここからいよいよメイン基板と前面、背面パネルの結線だ。

 まず専用ケースにメイン基板を差し込む。ケースに溝が切ってあり、そこに基板をスライドさせて差し込むという作りだ。面白いのは基板の固定方法である。普通は絶縁スペーサーを挟んでネジ止めするところだが、このキットでは丸いゴム足を使って基板が動かないように固定する方法をとっている。

 最初はケースの底面に付けるゴム足かと思ったが、メイン基板を押さえ込むものとは思わなかった。しかしなかなかいいアイデアである。

メイン基板を溝に合わせて差し込む ゴム足を使って基板の位置を固定

 さて続いて前面パネルとの配線だが、ここでいきなり難易度が上がる。相当の本数のケーブルを半田付けしていくわけだが、そこの説明がマニュアルには図が1枚だけである。配線図も後の方に載っているが、例えば3本ある電源スイッチの端子のうち、どれにどの色の線を繋ぐかは図ではわからない。電気工作の経験が豊富な人は、黒がグランドとしてスイッチの作りを見て判断するだろうが、そういったベーシックな知識は必要である。

 またLCDのバックライトの配線も、この結線図には先のほうが行方不明になっている。配線図のほうには載っているので、両方を見比べながら配線していくことになる。

これを見ながら配線せよと… 前面の配線完了 前面パネルをシャーシに仮止め

 背面パネルの配線はそう難しくないが、専用のケーブルはなく、自分でメガネケーブルを裂いて適当な長さに切って使うことになる。最初からそう書いてあれば黙ってやるだけだが、そういう段取りは何一つ書いてないので、果たしてそれでいいのか不安になる。前半の丁寧な説明に比べるとなんだか急にほったらかされた気分である。

背面の配線は、付属の赤黒ケーブルを適当に切って使う 配線するとこんな感じ
完成したので、結線して軽く音出し

 あとはパネルをネジ止めすれば完成である。試しにスピーカーを繋いで音出ししてみたところ、エラーもなくちゃんと音が出た。エラー表示は基板中央にあるLEDの組み合わせで判断する。ジャンパの切り替えでマスタークロック周波数、サンプリングビットなどが換えれるが、標準設定で入力に応じて自動追従するようになっている。

 普段使っているスピーカーはKlipschの「RB-51」である。これに、この記事で作ったパワーアンプを繋いでいるが、アンプを今回のキットにまるっと差し替えてみた。入力はPCから光デジタルで、24bit/48kHz送信である。

 いくつかAACのソースを再生してみたところ、いつものアナログアンプよりもかなりクリアな音である。S/Nが良いせいか、普段よりもボリュームを高めにしてもうるさい感じがない。また低域の立体感が非常に良い。エッジの立ち上がりが早いため、音の輪郭がはっきりしているのがわかる。




■スピーカーユニットも自作

 コンパクトなアンプには、コンパクトなスピーカーを合わせたいところである。過去エンクロージャは自作キットを作ってみたことはあるが、今回編集部が「こんなこともあろうかと」と出してきたのが、オーディオ専門誌「Stereo」2011年7月号に付録として付いてきた、自作スピーカーキットである。箱を作るのではなく、ユニットそのものを作るというユニークな付録だ。

Stereo7月号付録のキット

 小型フルレンジとしてはおなじみの8cmのユニットである。マニアの中にはへたったエッジを自分で張り替える方もいるが、筆者としてはスピーカーユニットそのものを自作するのは初めてである。

 キットとしては磁気回路、フレーム、ボイスコイル+ダンパー、コーン部、センターキャップを接着剤で止めていくだけ、半田付けなしという、シンプルなものである。しかしこれだけで音が鳴るわけだから、かなり精度の高いキットだと言える。

 まずは磁気回路とフレームを接着、その後ボイスコイルの中にガイド用のギャップゲージを挿入したのち、フレームに接着する。接着剤はかなり強力なもので、乾くとまず簡単には取れないので、向きなどをよく確認する必要がある。

 ボイスコイルから出ている引き出し線をフレームに付いているスピーカー端子に巻き付けるのだが、マニュアルに書いてあるほど引き出し線が長くない。まき付けが中途半端になってしまったので、ここは半田付けした。


磁気回路をフレームの底に接着 その上にダンパーをかぶせて接着 引き出し線が想定よりも短かった

 続いてコーン紙の接着である。コーン紙はエッジ部分と一緒になっているので、まず真ん中にギャップゲージを通したのち、エッジ部分を接着する。次にボイスコイルの筒とコーン紙の穴の部分を接着剤で埋めていく。このとき、左右のスピーカーで接着剤の量などがなるべく均等になるように注意すると、左右の特性が近くなるはずである。そもそも振動板の重さが違っては話にならない。

コーン紙をかぶせてこれまた接着 センターキャップをかぶせれば完成

 ここで1時間乾かしたのち、ギャップゲージを抜き取り、センターキャップを取り付けると完成である。キットでは、ダンボール箱に穴を開けてとりあえず鳴らしてみるという趣向だが、今回はFostexのエンクロージャ「P800-E」をお借りしているので、そっちに取り付けてみた。これはもう、ケーブルを繋いで4点をネジ止めするだけで、チューニングなどは必要ない。ちなみにこのエンクロージャ、1台1,470円と低価格なこともあり、大変人気になっているようだ。

 これで一応工作は完成である。一通りちゃぶ台に並ぶ程度のコンパクトなオーディオセットができあがった。

人気のFostex「P800-E」 ちゃぶ台サイズのデジタルオーディオセット完成

 最後に全部揃えての音出しである。音源としてオンキヨーのiPodトランスポート「ND-S1」を用意。これにiPhoneを接続し、今度は同軸でデジタルアンプに接続してみた。最初のうちは低音が浅いぽやんとした音だったが、しばらくするとみるみる馴染んできて、ちゃんとした音が出るようになってきた。エージング時間はそれほど必要のないキットスピーカーである。

 所詮付録スピーカーだとなめていたが、エンクロージャが良くできているのか、とても付録とは思えないバランスの取れた音がする。もちろんデジタルアンプの特性もあるだろうが、意外に低音も良く出る。

 ただ中域が若干ゴチャッとした感じがあり、ボーカルものでもちょっとソースを選ぶきらいがある。からっとしたウエストコーストサウンドは綺麗に鳴るが、ピーター・ガブリエルとかは密度が濃すぎて聴きづらい、と言えばわかるだろうか。音量を最大に上げるとさすがに歪むので、小音量でニアフィールドとして聞くのがちょうどいい。



■総論

 全体のセットとしては解像感が高く、いくらデジタル接続とは言っても圧縮音源では十分なダイナミックレンジが得られないという傾向もわかる。BGM程度ならこれで良いが、できればデジタル音源直結か、PC接続でもなるべくリニアPCM音源で聞きたいところだ。

 iPhone+ND-S1で同じAACソースを同軸接続(おそらく16bit/44.1kHz)で鳴らした後、PCと光デジタル接続し、24ibt/48kHzで再生して比較したところ、音質とステレオセパレーションに大きな違いがあることがわかった。ND-S1の方がセパレーションが狭く、中音域に集中した感じがある。一方PCからの出力のほうが、ステレオセパレーションが広く、ややドンシャリ気味だ。サンプリングレートや伝送ルートが違うだけで、全然違う音になっているところが面白い。

動作状況は簡単にLEDでわかるが、フタをしたら見えない
 こうしたデジタル接続の場合、判断が難しいのは音が出ない時である。サンプリングレートが合わないのか、ストリームの種類に問題があるのかといったことが、アンプ側で可視化されない。一応内部のLEDでは多少判断できるのだが、ケースのふたをしてしまうと中身が見えない。いろんなタイプの音源ソースを持っている人は、今後デジタルアンプを購入する際に、こういう問題解析機能があるものが望ましいだろう。

 最近はダウンロード販売で、24ibt/96kHzの音源も売られている。今回のデジタルアンプではそこまで対応していないのが残念だ。しかし、デジタルアンプの音の特性は十分に楽しむことができる。これまでフルデジタルで聞いたことがないという人の入門としては、非常に面白いキットである。


(2011年 8月 31日)

= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]