小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第665回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

RX100の最終形? XAVC Sも撮れるソニー「RX100M3」

有機ELファインダー搭載。カメラAppで星の軌跡も

3世代目のRX100

 ここのところ高級コンパクトデジカメ市場が、なかなか賑わっている。ここ数年、コンパクトデジカメの平均価格は15,000円前後だろうと言われてきたが、昨年末あたりから徐々に平均価格が上がってきている。これはコンパクトデジカメでも高級モデルが売れ始めているからだ。

 高級と一口に言っても、上は20万円超えから下は数万円まで幅広い。いかんせん平均が平均なので、4〜5万円でも人によっては高級カテゴリに入るかもしれない。ただ10年ぐらい前はどのカメラもそれぐらいの値段だったので、より高画質化・高機能化して戻ってきたという方が正しいのかもしれない。

1/1.7型以上のセンサーを搭載した高級コンパクトの実売平均単価推移(ソニー調べ)

 ソニーではコンパクト機ながらフルサイズセンサーを使ったRX1/1R、1インチセンサー+高倍率ズームのRX10、そして1インチセンサーをコンパクト化したRX100/100II(DSC-RX100M2)と、ラインナップを拡充してきたわけだが、一番人気のRX100シリーズがまた進化し、RX100III(RX100M3)となった。

 筐体はほぼ同サイズながらレンズを刷新し、ファインダをも内蔵した新モデルである。5月30日から発売を開始しており、店頭予想価格は88,000円前後となっている。

 動画機能としては、新たにXAVC Sに対応するなど、画質面でもかなりのジャンプアップが期待できるところだが、さらにRXシリーズとしては初めて、後からアプリ形式で機能を拡張できる「PlayMemories Camera Apps」にも対応した。こちらも待望の機能追加である。

 個人的にもそろそろ取材用のカメラを刷新したいということもあり、ファインダ内蔵型のRX100M3に注目していた。いや誰でも40歳を過ぎた頃から老眼がキツくなり、液晶モニタだけではフレーミングが厳しくなるのである。そんなとき、視度調整が付いたビューファインダは強い味方なのだ。

 今回は動画性能以外にも、取材カメラとしてどうなのか、という点でも評価してみたい。

ボディはほぼ同じ

 人気シリーズのリニューアルモデルということで、初代RX100とRX100M2のボディはほとんど変わらなかった。軍艦部にアクセサリーシューが付いたり、センサーが裏面照射になったりしたが、見た目とサイズ感はそれほど変わらなかった。

 RX100M3もその辺は同じで、いわゆる「あの形」を継承したまま、機能強化されている。これまでポップアップフラッシュだった部分に、そのままEVFが埋め込まれた。横のスライドスイッチでポップアップさせ、ファインダを引き出すという斬新な仕掛けである。細々したメカ大好きな人にとっては、これだけでたまらない。

見た目は初代とあまり変わらないが……
ビューファインダがポップアップ

 一方フラッシュは、RX100M2でアクセサリーシューがあった中央部に薄型のものが搭載された。これもスライドスイッチでポップアップする。アクセサリーシューはなくなったが、初代もなかったので、デザイン的には先祖返りした格好である。

 レンズは新設計となり、静止画3:2の時に35mm換算で24〜70mmの光学2.9倍ズームレンズとなった。以前が28〜100mmの光学3.6倍だったので、ワイド端は拡がったがズーム倍率が下がった格好だ。

センターにフラッシュ
新設計のレンズ。ワイド端で最長となる

 その代わり開放F値はF1.8〜2.8と、従来のF1.8〜4.9と比べると、テレ端で2段近く明るくなったのがポイントだ。それに合わせて3段分のNDフィルタも内蔵された。オート、オン、オフに設定できる(動画モードではオン、オフのみ)。ただそのぶん、M2よりレンズ沈胴時に2.7mmほど厚みが増している。

厚みは2.7mmほど増えたが、コンパクトさは変わらず
奥がDSC-RX100M2、手前がDSC-RX100M3。レンズのリング部分の厚みが若干異なる
奥からからDSC-RX100、DSC-RX100M3、DSC-RX100M2

 注目のポップアップファインダは、0.39型の画素数144万ドットOLED(有機EL)で、視野率は100%。接眼レンズにはZEISS T*コーティングが施してあるため、ビューファインダにもT*マークがある。ポップアップは本体電源と連動しており、ポップアップすると電源ON、収納すると電源OFFとなる。またアイセンサーも搭載しているので、接眼すると自動的にファインダに切り替わる。

ビューファインダは、ポップアップさせたあと接眼部を引っ張り出す
ビューファインダにもT*マークが

 液晶モニタは3.0型(4:3) 122万8,800ドットのエクストラファイン液晶で、ヒンジの設計が変わったため、下向きには45度、上向きには180度回転できるようになった。横方向には動かないが、自分撮りニーズも取り込む。

 背面ボタンは右下がカスタムキーとなった。ただソニーのカメラは元々設定でボタン機能を色々変えられるので、大まかな操作体系は変わっていない。

自分撮りも可能な液晶モニタ
ボタン数は変わらないが、機能が若干変更になった

 初代RX100で気になっていたのだが、銅鏡部のリングがボディの下部ギリギリまであるため、大きめのビデオ三脚シューに固定するとリングが回らなくなってしまう問題があった。M2を触っていないのでいつから変わったのかわからないが、底部に少し高さが足されたため、相変わらずシューには当たるものの、なんとか回るようにはなっている。

 ただずっとこのままゴリゴリ回していると、いつかリングの塗装が剥げるんじゃないかと心配である。写真用三脚はシューが円形のものが多いのでおそらく当たらないと思うが、シューの面積次第では当たるので、その場合は何かスペーサーをかませる必要があるだろう。

モデル名 DSC-RX100M3 DSC-RX100M2 DSC-RX100
発売年 2014年 2013年 2012年
センサー 1型 Exmor R
(裏面照射型)
1型 Exmor R
(裏面照射型)
1型 Exmor
ISO感度
(静止画)
ISO 125〜12800 ISO 125〜12800 ISO 125〜6400
画像処理エンジン BIONZ X BIONZ BIONZ
レンズ 24〜70mm F1.8-2.8 28〜100mm F1.8-4.9 28〜100mm F1.8-4.9
ファインダー
動画記録方式 XAVC S
AVCHD 60p/60i/24p
AVCHD 60p/60i/24p AVCHD 60p/60i
無線LAN/NFC
PlayMemories
Camera Apps

光学性能に追いついたコーデック

 では早速撮影である。今回の動画は、新対応となったXAVC Sで撮影してみた(AVCHDでも撮影可能)。これまでXAVC Sは、コンシューマ4Kカメラの記録フォーマットとして使われる例が多かったが、アクションカムのHDR-AS100VなどHDのカメラでも使われるようになっている。

動画フォーマットは3タイプから選択
フレームレートに関係なく、ビットレートは50Mbps固定

 それというのも、1080/60p撮影では、AVCHD規格の上限である28Mbpsではあきらかにビットレート不足が目に付くようになってきたからだ。他社はMP4で対応する例が多いが、ソニーはXAVC Sフォーマット、50Mbpsで頑張るようである。

XAVC Sフォーマットで撮影、編集したサンプル
sample.MP4(306MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい
動画用に多彩な手ぶれ補正を備える

 もっとも違いがわかるのは水面のカットだろう。手持ちで歩きながらの水面はかなり厳しい条件だが、破綻もせずに綺麗に撮れている。

 手ブレ補正については、静止画は入/切の2択しかないが、動画撮影では切、スタンダード、アクティブ、インテリジェントアクティブの4モードがある。切とスタンダードでは、横は静止画の画角と変わらず、上下が切れて16:9になるのみだ。だが補正量が大きくなると、動画撮影の画角が狭くなる。

補正モード ワイド端 テレ端
スタンダード
アクティブ
インテリジェントアクティブ

 インテリジェントアクティブは今年発売のハンディカムやサイバーショットに搭載が始まっている機能で、これまでの垂直・水平移動、Z回転(ロール)方向のブレ補正に加え、上下・左右の回転方向、つまりヨーとピッチにも対応した。

 実際にテストしてみると、ワイド端では非常になめらかに撮影できることがわかる。一方テレ端では手ぶれ補正の誤動作が目立つ。特に左右回転(ヨー)方向が弱いようだ。

ワイド端とテレ端でインテリジェントアクティブモードを使用(MPEG-4/H.264にエンコード)
stab.mp4(59MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 画質的には非常にニュートラルで、色味も自然だ。ただ若干露出過多の傾向があり、明るい方に飽和しがちだ。昼間の動画撮影では、露出補正で少し絞った方がいいかもしれない。

発色はナチュラルで、すっきりしているが、やや明るめの傾向
静止画も傾向は同じだが、ダイナミックレンジは広い

 取材用のカメラとしては、ワイド端が広いのは結構だが、光学ズームが2.9倍しかなく、記者発表会などで登壇者を撮るような時には辛いだろう。全画素超解像ズームを使えばトータルで5.8倍まで寄れるので、多少はいいかもしれないが、オールマイティというわけにはいかないようである。

 動画撮影時にも全画素超解像ズームは使えるが、やはり光学ズーム範囲に比べると甘い感じがする。

光学ズームテレ端
全画素超解像ズームのテレ端
NHK技研公開の取材で試用してみた。現場はかなり暗いが、ブレもなくフォーカスも問題ない

 室内撮影では、基本的に撮像素子の性能がそれほど変わっていないので、ISO感度は上がっていない。ただ裏面照射ということもあり、静止画撮影ではNRも効くので、暗い場所でもフラッシュなしで十分なシャッター速度が稼げる。画像処理エンジンも「BIONZ X」に進化している。

 一方動画では、S/Nが悪くても増感して明るく撮ろうとする傾向があるので、手動でISO感度を設定するほうがいいだろう。なお今回から室内撮影の場所を変更したため、照明は以前より暗くなっている。ろうそくのみのショットは同じ条件だが、照明ありのショットは以前との比較はできなくなっているので、ご留意いただきたい。

室内撮影サンプル(MPEG-4/H.264にエンコード)
room.mp4(61MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

大幅に楽しみが広がるCamera Apps

 RXシリーズとしては初めて対応となった、PlayMemories Camera Apps。これまではミラーレスのαシリーズを中心に展開されてきたが、一部コンパクトデジカメの新モデルでも対応が始まっている。

カメラ内からもインストール可能なCamera Apps

 これはカメラにアプリをインストールすることで機能拡張ができるという仕掛けだが、カメラにWi-Fi機能が搭載されているのが最近は当たり前になってきているので、カメラから直接アプリを探してインストールまで可能になっている。一度に買い揃えなくても、出先で必要になったらスマホでテザリングして、サッとダウンロードできるわけだ。

 今年4月にいくつか新しいアプリが登場しているが、これまでCamera Appsをレビューしたことがなかったので、動画でも使えそうなものをいくつか選んで試してみた。

スタートレイル「明るい夜空」の設定画面

 まず星の軌跡を残せる「スタートレイル」。従来のカメラでもレリーズを使った長時間露光をすれば、光の軌跡を捉えることができる。だが街の明かりが多い場所では光が被ってきてしまい、綺麗に撮ることができないが、そのあたりをうまいこと処理してくれる。

 原理としては、2秒程度の露光による静止画をインターバルで大量に撮影し、その差分をどんどん重ねて行くことで星の軌跡を表現するわけだ。1枚を長時間露光するわけではないので、街の明かりのかぶりなどもそれほど影響がない。

スタートレイルで撮影(MPEG-4/H.264にエンコード)
star.mp4(98MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 いわゆるタイムラプスの変形版といった機能だが、自宅のベランダからでも綺麗に撮影できたのには驚いた。やりたくても田舎に行かないとうまくできないと思っていた方には、ぜひ試して頂きたいアプリだ。

 撮影後は、アプリ内で簡単なプレビューができるが、アプリを抜けてしまうとカメラ内では再生できない。出来上がった動画ファイルを抜き出してみると、200Mbps近いMotion JPEGになっていた。カメラ本体にはMotion JPEGの再生機能がないので、アプリを抜けると見えなくなってしまうのだろう。

 もし単に連番の静止画が撮れるだけでは、動画としての結果がプレビューできないので、撮影が成功したかどうかがわからない。またメモリー内に何千枚も静止画が撮られても、動画にするには編集アプリに読み込ませて再レンダリングしなければならないのでは、作品になるまでが難しすぎる。

ただのタイムラプスでも、いろんなシーンに対応する

 Motion JPEGは、静止画のJPEGを束ねて動画ファイルにしているようなものなので、JPEGで撮影した静止画をどんどんMotion JPEGファイルに追加していくことで、簡単に動画ファイル化してしまおうということなのだろう。

 「タイムラプス」も同じような機能だ。ただこちらは残像は残さない。SunriseやSunsetなど、刻々と光量が変わっていく撮影にも対応しているので、難しい設定や長年の経験は必要ない。

タイムラプス機能で夜明けを撮影してみた。光量の変化をやわらかく追従している
laps.mp4(60MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 「スムースリフレクション」は静止画用のアプリだが、連続で64枚の写真を撮影し、差分を重ねて行くことで水の流れを表現する。これも長時間露出ができれば撮れるのだが、昼間に長時間露光するのはかなりの濃さのNDフィルタが必要だ。これを普通に撮影した写真を重ねて演算することで、長時間露光と同じ結果を出すというものである。

水辺を美しく撮影するスムースリフレクション
64枚から1枚画像を生成。S/Nもいい
モノトーンも雰囲気がある
多くのプリセットを持つライブビューグレーディング

 動画向けのアプリとしては、「ライブビューグレーディング」がある。これは撮影時に様々なトーンのプリセットを選んで動画を撮影するという機能で、スタンダードやシネマ、エクストリームといったグループからさらに細かくプリセットを選択できる。

グループ プリセット サンプル
標準
スタンダード クリア
ビビッド
モノクローム
ボールド
シネマ コーストサイドライト
シルキー
ミスティブルー
ヴェルヴェッティ
エクストリーム 180
サーフトリップ
ビッグエアー
スノートリック

 本体内には元々クリエイティブスタイルやピクチャーエフェクトといった機能が内蔵されており、それらを細かく設定していけば表現の幅はかなり広いのだが、現場で色を作ってるヒマなどないというのも一理ある。これはそれらの機能を取り出して象徴的な絵づくりをプリセットしたもの、と考えてもいいだろう。

総論

 静止画の撮影機能は、レンズも明るくなって相当良くなっているわけだが、動画機能も高ビットレート対応になり、レンズやセンサーのクオリティにふさわしい、破綻のない絵が撮影できるようになった。これが手のひらに乗ってしまうぐらいのカメラでできるのだから、驚きである。

 中でも大きいのは、Camera Appsの対応だろう。アプリがなければコマ撮り動画もできなかったというのは、高機能コンデジとしては少々意外だったが、アプリの出来もいいので、相当楽しめるカメラになっている。

 ただ、面白いことをしたければ、結果が静止画でもカメラを固定しないといけないアプリが結構あるので、小型三脚やゴリラポッド的な固定器具は、いつも持っていたほうがいいだろう。

 RX100M3は、RX1やRX1Rのような20万円超えまではいかないが、価格が8万円超えと、現行のソニーのラインナップの中でも結構高いほうである。ただ、このクオリティでビューファインダ付き、さらにはCamera Appsまで対応したら、仕方ないのかなという気がする。

 取材仕事では、これまでNEXシリーズを使っていたのだが、もうこれだけでいけそうだ。それだけでなく、遊びでも相当使えるカメラだということがわかった。

 どうせ買うなら、いろんなことに使えた方がいい。久々に手応えのあるコンパクトデジカメである。

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小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田の『金曜ランチビュッフェ』」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。