小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第675回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

TV体験を加速する3ソリューション。nasne連携PC TV with nasne/TV SideView。8ch一気表示のガラポンTV

変わりゆくテレビ体験

 8月7日に行なわれた「文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会 第2回」において野村総研が調査した、「私的録音録画に関する実態調査(私的録画編/※リンク先はPDF)」が公開されている。

 これはクラウドの利用に関してどのような著作権法上の整備が必要かを検討する小委員会だが、議論の参考として現在のテレビ録画事情を調査したものだ。テレビ視聴はリアルタイムから録画へと変わってきていることは、これまでレコーダの利用者である我々は体感的には感じていたことだが、改めて国の審議会用の資料として公開されたことは意義がある。

 3年前と比較という形でリアルタイムと録画視聴の増減を調査したところ、リアルタイム視聴は減少し、録画視聴が伸びている。なぜ録画をするかという問いでは、「見たい番組の放送時間に、外出していたり手が離せない場合に、後で見るため」が最多で、「同じ時間帯に複数のチャンネルで見たい番組が重なった場合に、見られなかった番組を後で見るため」と、いわゆる裏番組録画のニーズが続く。記録として保存する「興味ある番組を保存するため」が第3位、「CMを飛ばしたり、興味があるところだけをあとで早送りしながら見るため」というレコーダの機能を駆使した視聴方法が4位に入っているのも興味深いところだ。

リアルタイム視聴は、3年前から減少傾向
一方録画視聴は増加傾向に
録画する理由
録画視聴が増えた理由

 一方で録画番組視聴時間が増えたのはなぜか、という問いでは、「CMを飛ばして効率良く見たいから」が最多となっており、見る人はCMスキップ機能を重視していることがわかる。逆にファイルコピー(ダビング)によって自宅内外で見るといった用途は、瀕死状態であることもわかる。ダビング10で回数は緩和されたものの、限られた機材でしかコピーできないのでは、衰退は当然であろう。文化を保護するための著作権法が、民間の文化を破壊した一例である。

 「テレビ離れ」なる言葉がネットを賑わせて久しいが、実際に視聴率も昔ほど上がらなくなってきている。しかしテレビ番組を録画して見るように生活がシフトしてきているのなら、リアルタイム視聴しか計測しない視聴率が下がるのは当たり前で、テレビ番組自体はそれほど変わらず視聴されているとも考えられる。

 以前からレコーダ業界は、難易度の高いコピーはやめて、ホームネットワークを使ったストリーミング再生に力を入れてきたが、2012年のDTCP-IPのルール緩和により、特別なモデルではなく一般のスマートフォンやタブレットでも視聴の道が開けた。ただそうはいっても、まだまだその事を知らないため、テレビの視聴機会を逃している人も多い。

 今回は、最近公開、または販売が開始された、テレビ視聴を助けてくれるソリューションを3つまとめてご紹介したい。

パソコン視聴の道を開く、「PC TV with nasne」

 考えてみればアナログ放送時代、テレビ視聴の可能性を大きく開いたのは「パソコン」であった。いわゆる「テレパソ」がブームとなり、デスクトップに小さくテレビ窓を開いての「ながら視聴」、録画番組でビデオCDやDVDビデオを作るというのが一つのトレンドを作った。それらがデジタル放送になってほぼ全滅状態となったのは、すでにご存じの通りである。

nasne

 冒頭にも述べたように、2012年のDTCP-IPのルール緩和により、ネットワーク経由のテレビ視聴は少しずつ広がりを見せ始めている。ソニーが販売する「PC TV with nasne」(以下PC TV)もその一つだ。元々はソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が販売するゲーム機向けのネットワークレコーダ「nasne」をVAIOで視聴するための「VAIO TV with nasne」というアプリだったものだ。ご存じのように、VAIO事業も売却されたため、一般のPCでも広く使えるように変更された。ソニーストアで3,000円で販売されているが、14日間使える体験版も公開されている。

 nasne自体はもう2年前から販売されている製品だが、PS3などと接続してテレビ録画ができるストレージである。nasne自身はチューナ搭載のNASであり、UIを持たないので、インターフェースとしてはPS3などのゲーム機を利用してきた。PS3との組み合わせのほうが簡単で子供にも使え、色々見た目にも楽しいが、PCアプリの「PC TV with nasne」だけでも十分機能としては使えるようになっている。

 今回はレノボのWindowsタブレット「ThinkPad Tablet 2」でテストしてみた。デフォルトの設定では番組再生がうまくいかなかったが、アプリ設定の「番組の再生」-「ハードウェアアクセラレーターによる再生を使用する」をOFFにしてソフトウェアを再起動したところ、うまく再生できるようになった。

レノボの「ThinkPad Tablet 2」
PC TVの設定画面

 設定はウィザードに沿って、ホームネットワーク内にあるnasneに登録作業を行なうだけと、ほとんど手間いらずだ。Windowsのファイヤーウォールの設定も自動で行なわれ、うまく動いている。設定を見ると、nasne側の設定も揃っている。PS3を持っていなくても、nasneだけ買えばPCがテレビに化けるというわけだ。

ウィザードに沿って簡単な設定をするだけでセットアップ完了
nasne側の設定にもアクセスできる

 起動後は、すべてのデータがPC TVの画面に反映されるまで少し時間がかかるが、UI的にはシンプルながら、十分な情報が表示される。home画面では未視聴の画面のほか、現在放送中の番組情報、自分で検索項目4パターンが設定できるマイサーチ、注目の番組などが表示される。nasneのHDD残量もわかる。

PC TVのhome画面。ここだけでも十分使える

 home画面はnasneで利用できる“おいしい機能“を幕の内的に並べてあるわけだが、画面上のタブを切り替えて各機能へアクセスするという作りだ。「video」は録画済みの番組、「guide」はテレビ番組表だ。「schedule」は予約状況、「tv」は現在放送中の番組がライブ視聴できる。スマートフォンより大きなWindowsタブレット画面がすんなりテレビ画面になるというのは、やはりインパクトがある。アナログ放送時代には経験していたことだが、今はテレビもタブレットも高解像度化しており、薄いテレビを持ち歩いているような感覚だ。

録画番組一覧のvideo
番組表のguide
今後の予約を示すschedule
ライブ視聴が可能なtv

 タブ横の矢印をタップすると、各タブの表示スタイルが変更できる。例えば番組表は、今日の番組を一覧するだけでなく、1つの放送局の1週間表示にも切り替えできる。

タブを展開して絞り込みや表示形式の選択ができる

 録画番組の再生は、自動チャプタのポイントもきちんと認識し、そこまでスキップできるので、効率の良い視聴が可能だ。また録画番組は、PCに転送することもできる。さらにPCのDVDドライブを使って、録画番組の外部保存も可能だ。これまでもDTCP-IPのネットワークダビング対応ソフトを使えば同じような事は可能だったが、nasneの様々な機能を活用できるPC TVで、光ディスクへの書き出しまでできるのはやはり便利だ。

自動チャプターもきちんと扱える
昔録画してそれっきりになっていた番組もディスクに救出

 ネットワーク環境も含め、すべてのPCでうまく動くかどうかわからない部分もあるので、まずは14日間のお試し期間を使って動作確認していただきたい。

手元にテレビ、TV SideView

 もう一つ、nasne関連のアプリとして「TV SideView」をご紹介しておこう。これは元々ソニー製のテレビやレコーダ向けに無償で提供されているリモコン/番組表/ストリーミング視聴アプリだ。Xperiaにはプリインストールされているので、あるのは知ってるが使ってなかったという方も多いだろう。

 これが7月下旬公開のバージョン2.6へのアップデートと、500円のプラグイン購入で、nasneの番組をストリーミング視聴できるようになった。Android版とiOS版があり、どちらのユーザーでも利用できるのが強みだ。今回はAndroid版でテストしている。

 アプリを起動すると、現在放送中の番組が綺麗なグラフィックとともに表示される。絵柄は番組側が提供しているものがない場合、ジャンルに応じたグラフィックをあてているようだ。番組をタップすると、ライブ視聴ができる。

 下にスクロールすると、nasneの予約状況からはじき出した「人気番組」、過去の予約番組から推測した「あなたへのおすすめ」、YouTubeの人気コンテンツなどが次々と出てくる。

グラフィカルなルックスのTV SideView
1画面を縦にスクロールしていくUI

 サイドメニューでは、番組表から番組も予約できるし、録画番組も視聴可能。番組削除にも対応する。録画番組のおでかけ転送、すなわちWi-Fiを使った番組コピーも可能だ。nasneとの組み合わせとしては、最もミニマムかつ現実的なテレビ視聴・録画環境が出来上がる。

サイドメニューから必要な機能にジャンプ
番組表で宅外からの録画予約も可能

 ただ残念ながら、ソニー製レコーダでは実現していた、宅外からのストリーミング視聴には対応しない。これはnasne側がDTCP+に未対応だからで、将来的には対応する予定があるという。自動チャプタは、チャプター位置の表示は出ないものの、スキップボタンで次のポイントにジャンプすることができる。

 DTCP-IPに対応したモバイル視聴向けアプリは「DiXiM」や「Twonky Beam」、「MLPlayer」などがあるが、「TV SideView」はUIが優れているので、使いたいという気持ちにさせるアプリだ。

今度はマルチライブ視聴!「ガラポンTV四号機」

上が参号機、下が稼働中の四号機

 ワンセグ放送を8チャンネル全録するというユニークなコンセプトで人気のガラポンTVだが、8月7日より最新モデルとなる四号機の発売を開始した。価格も下がって、36,500円となっている。ただ現時点では公表品切れ中で、次回入荷は8月22日以降となっている(※8月19日現在)。

 筐体が参号機と全く同じなので見た目の変化はないが、中身は大きく変わっている。最大のポイントは、ブラウザを使えば受信している8チャンネル全部の番組を、すべて同時に見られる機能を搭載したことである。

 テレビ画面というのは、1つの番組が全画面表示されるので、見たい番組を探すためにチャンネルを次々に変える「ザッピング」を行なってきた。ただこれもチャンネル切換の早いアナログ放送時代では主流だったが、デジタル放送になりチャンネル切り換えに時間がかかるようになったため、ザッピング行為自体は下火になっているのではないだろうか。多くは番組表を出して選ぶというスタイルに変わってきているものと思われる。

 ただ番組表では、その瞬間にどんなシーンをやってるのかまではわからない。やっぱりチャンネルは、変えてみなければわからないのだ。

 だが四号機では、PCおよびMacのブラウザから「ガラポンTVサイト」にログインし、「放送中」タブから「全局ライブ視聴」をクリックすると、現在放送中の8チャンネルが同時に表示される。放送中とはいっても実質は追っかけ再生になるので、本当のライブよりも数秒間のディレイはある。

ブラウザを使って受信中の8チャンネルを同時視聴

 元々ワンセグなので解像度は低いが、8チャンネルの小画面では丁度いい画質だ。音声はいずれか1つの局が再生される仕様のため、どれか1つの局が選択されている状態になる。音声切り換えは見たい画面をクリックするだけだ。1つの局を大きく表示することもできる。ただその場合は全体がリロードされるため、全画面が揃うまで少し待たされる。

1つの局だけ大きく表示することもできる

 また番組を自由な位置に巻き戻すことも可能だ。現時点では選択した番組を個別に巻き戻すだけだが、各局の再生ポイントをある時間にセットして、一斉にスタートということも技術的には可能だという。ガラポンはAPIも公開しているので、誰かがインターフェースを作れば実現できるわけだ。

 なおこの全画面表示機能は、内部のプロセッサが違うため参号機ではできず、アップデート対応もないという。

 これによって劇的に変わるのは、夕方のニュースの時間帯だ。各局がトップニュースで何を持ってきているのか、どれぐらいの時間を割いて報道しているのかといったことが、リアルタイムでわかる。音声は1局しか出ないが、テレビ番組はテロップが充実しているので、音声なしでも何をどう報じているのかが見ればわかるのだ。

 これまでこんな見方でテレビを見たことがある人は、テレビ局勤務経験者ぐらいだろう。いよいよこれで、「テレビ局が何をやっているのか」が一般人でも把握できるようになった。テレビを見る目が一変すること請け合いだ。

総論

 今回3つのソリューションを実際に使ってみると、PC TV with nasne、TV SideViewは、スマホやタブレットPCなど身近なモバイル機器がテレビの端末にもなり得るということに、大きな可能性を感じた。テレビディスプレイとして、これらの端末はこんなに洗練されていたのかという素朴な驚きでもある。

 意外に思われるかもしれないが、一番便利に感じたのは、録画よりもライブ視聴である。テレビの見方として、狙ったものを録画しといて時間をずらして見るという方法が主流になりつつあるわけだが、なんとなく流しておいて、見逃してもいいやというつもりでチラチラ見るという方法論が、またこれで復活するのではないかという手応えを感じる。

 リビングに60型の4Kテレビを置くのはなんか違うなーと思う方も、実際には多くいらっしゃるのではないだろうか。ソファにドッカと座って見るのではない“テレビの見方”として、案外テーブルサイドにある充電中のスマホやタブレットは適していると思う。

 ガラポンTV四号機の8チャンネル同時視聴は、やってみるとかなりインパクトがある。昨今はワンセグ受信のみ対応のケータイやスマホも少なくなって、何のためにワンセグやってるのかがだんだんわからなくなってきているところに、ワンセグで十分なソリューションが産まれたことになる。ずっと8チャンネル表示を出しっ放しにしておいて、面白そうなネタがあったらクリックして見るという、“究極のつまみ食い”が可能だ。ある意味こんな贅沢なテレビの見方というのはない。

 今回はPCで8チャンネル表示しておいて、面白そうな番組があったらタブレットで大きく見るというやり方をしていたら、なんだかんだで休日の1日が終わってしまった。テレビがつまらなくなったとも言われているが、それは面白いところまで1つの番組を辛抱して見てないといけないというあり方が、今の世の中に合わなくなってしまったのだろう。

 探せば何かが見つかるネットが生活に入ってきた中で、ずっと受動でいることに耐えられないわけだ。だが全チャンネル視聴でどこかでは面白いことをやっていることがわかっただけでも、テレビを見直すきっかけになるだろう。

 テレビの見え方が変わるだけで、テレビに対する失望感が減る。今後はテレビ局も積極的に、あらゆる場所での快適な視聴を提供するよう、変わるべきである。それがWin-Winの関係というものだろう。

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小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田の『金曜ランチビュッフェ』」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。