小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第685回:PC用NASとしても使え、宅外視聴もOK! DIGA「BRZ2000」
第685回:PC用NASとしても使え、宅外視聴もOK! DIGA「BRZ2000」
上位機の機能をほぼ網羅するお買い得レコーダ
(2014/10/29 09:50)
秋のレコーダ商戦始まる
毎年10月末から11月にかけては、各社レコーダの発売シーズンである。特に季節商品というわけではないとは思うのだが、やはりこれから年末、お正月にむけて、コタツでぬくぬくしながらレコーダでテレビ番組を網羅したいという人が多いのか、この時期にレコーダがよく売れるようだ。
さてそんな中、秋冬商戦に向けてもっとも早く動いたのが、パナソニックのDIGAである。今年5月におよそ1年半ぶりの全録モデルが登場したばかりだが、この10月にはシングル・ダブル・トリプルチューナ機を一新する。
番組表から録画予約してそれを見るという格好の、レコーダとしての基本機能はとっくの昔に完成しきっている。昨今は番組のレコメンドや自動録画といった機能強化、番組検索、タイムシフト・プレイスシフトをどれだけ簡単にやらせるかという点にエネルギーを注いでいる。数年前まではまさに「テレビは死んだ」状態であったが、今また面白い事が色々できるようになってきて、ネットと組み合わせて使う人が増え始めている。
今回ご紹介する「DMR-BRZ2000」(以下BRZ2000)は、10月20日に発売されたラインナップ中では最上位モデルで、店頭予想価格は約9万円。ネットの通販サイトでは7万円台前半といったところである。トリプルチューナ、4Kアップコンバート機能搭載の新モデルを、さっそくテストしてみよう。
高機能ながらコンパクト
今回発売のDIGAは全部で5モデルだが、一番安いシングルチューナモデルを除くと、あとはチューナ数とHDDの違いだけで、同仕様である。
型番 | チューナ | HDD | 店頭予想価格 |
---|---|---|---|
DMR-BRZ2000 | 3 | 2TB | 約9万円 |
DMR-BRZ1000 | 3 | 1TB | 約8万円 |
DMR-BRW1000 | 2 | 1TB | 約7万円 |
DMR-BRW500 | 2 | 500GB | 約6万円 |
DMR-BRS500 | 1 | 500GB | 約5万円 |
まずデザインからだ。以前からDIGAは奥行きの短さにこだわってきたが、今回のボディもかなり小型だ。高さは4.5cm、横幅43cmとほぼ1Uサイズ、奥行きは17.9cmと、かなり短い。最上位モデルとは思えないサイズだ。
正面の角が切り落とされたデザインは、先に発売されている全録モデル「DMR-BXT970」と同じテイストで、フロントパネルのスモークミラーも同じだ。イメージとしては、あれの薄いヤツである。ただし脚部は普通のゴム足で、BXT970のようなインシュレータタイプではない。
天板はヘアライン加工があるが、金属ではなく樹脂製天板に印刷したものだろう。ただ見た目の効果は高く、高級感の演出に一役買っている。天井の電源ボタンとイジェクトボタンは右側に集められており、散らばった感じがなくシンプルにまとめている。
フロントパネルの内部は、Blu-rayドライブ、SDカードスロット、USB端子、B-CASカードスロットがある。本機はネットワーク機能が充実しており、レコーダに対してメディアや機器を直結するという行為は減るだろう。フロントパネルを開けて何かするという操作は、次第に無くなっていく可能性も出てきている。
チューナは三波トリプルチューナで、内蔵HDDは2TB。USB HDDへの直接録画も可能になっている。
背面に回ってみよう。端子類もシンプルだ。地デジ、BS/CS110度デジのRF入力とスルー端子ほか、HDMI端子、アナログAV出力、光音声出力が各1系統。ネットワーク端子とi.LINK端子は1つ、USB端子が2つだ。そのうちHDDが接続できるのは、USB 3.0の方のみだ。USB HDDに複数番組を同時録画するには、外付けHDDもUSB3.0対応機器を用意する必要がある。
なお本機では、SeeQVault対応HDDも使用できるようになっている。SeeQVaultとは、デジタル放送のDRMコンテンツを柔軟に運用するために開発されたコンテンツ保護技術で、パナソニック、サムソン、ソニー、東芝の4社によって開発された。
これまで一般的な外付けHDDにテレビ番組を録画する際には、HDDを暗号化して使用する必要があった。だがこの方式では、レコーダの買い換え時にHDDをつなぎ換えても、もう中身の番組は取り出せない。フォーマットし直すしか、HDDを使う道はなかった。
だがSeeQVault対応のHDDをSeeQVaultフォーマットして録画すると、別のSeeQVault対応レコーダに繋いだ場合にも、中身を再生することができる。現在まだDIGA用のSeeQVault対応HDDは発売されていないが、近日中にアイ・オー・データ機器から発売される予定だ。
こうして聞くとSeeQVaultはバラ色の技術のように聞こえるが、実はSeeQVault対応HDDには、直接予約録画ができないという弱点がある。つまり本体HDDに録画した後、ダビング10のルールに従って、ダビング回数を消費してコピーするしかできないのだ。
なお、HDDが1TB少ないBRZ1000と、BRZ2000の価格差は、実売ベースで8,000円程度。だが今、普通の外付けHDDなら、8,000円も出せば2TBが買える時代だ。一方SeeQVault対応HDDは、2TBで予価18,700円。何をどう組み合わせればコスパが高いのか、色々悩ましいところである。
リモコンは、全録のBXT970で大きく変わったのも記憶に新しいところだが、本機では以前からのスタイルに戻っている。全録はどちらかと言えばテレビの延長線上で、レコーダとなればオーソドックスなスタイルのほうが好まれるという判断だろうか。
ただ本機のリモコンでは、他社製テレビも操作できるようになった。いや、以前からチャンネル変更やボリューム上下ぐらいはどこのリモコンでもできたが、本機では「テレビ操作」キーを押すことで、十字キーやその周囲のボタンや4色ボタンなども操作できる。
ちなみにうちのテレビは東芝REGZAだが、「スタート」ボタンでレグザリンクメニューが、「番組表」では番組表が、「サブメニュー」ではクイックメニューが開き、十字キーで問題なくメニュー操作ができる。各社ともすでにテレビの操作体系は固まってきているととはいえ、他社互換は検証も含めなかなか大変な作業だ。現在は自社以外にLG、シャープ、ソニー、東芝、パイオニア、日立、フナイ、三菱のテレビに対応している。
奥深い再生関連機能
では中身のほうを見ていこう。本機からは、4K VIERAとBXT970で採用された「セレクトバー」を搭載している。リモコンにも専用のボタンがあり、すぐに表示できる。
これは画面の四隅によく使う機能をアサインしたもので、テレビ視聴を邪魔することなく録画番組に関連する操作が行なえるというものだ。言わば他社ではサイドメニューの階層化した部分を、四方に展開したものだと言える。もちろんスタートメニューは従来通りあって、これは全画面取り切りだ。映像を見るという行為だけでも、2タイプのUIを搭載していることになる。
再生機能としては、初搭載となる「ゆっくり/はっきり再生」はパナソニックらしい視点だ。リモコンに専用ボタンがあり、これを押すと現在再生中の番組に対して、「はっきり再生」、「ゆっくり/はっきり再生」が選択できる。
「はっきり再生」は、音声処理を行なって、高齢者がより聞き取りやすい音で再生される。「ゆっくり/はっきり再生」は、これに0.8倍速再生を組み合わせたもので、早口で何を言ってるかわからないといったケースに対応する。
NHKの調査では、ニュースのアナウンサーの読み上げる速度は、1960年代から70年代までは1分間に300語前後が一般的であったが、1980年代以降次第に早口化が進行し、現在はおよそ350語から400語となっている。40年前に比べると、数値にして1.3倍早くなっているわけだ。したがって0.8倍にするというのは、話すスピードを40年ほど前に戻すという意味でもある。もちろん、単純に歳を取って認知が追いつかないから遅くする、ということなのだが、0.8倍という数値はなかなか意味深い。
昨今のトレンドということでは、宅外視聴(リモート視聴)は重要だ。アプリとしては、今年5月のBXT970発売に合わせて公開されたAndorid/iOSアプリ「Panasonic Media Access」を使用する。これは以前も使い勝手をご紹介したので詳細は省くが、従来はビットレートが3.5Mbps/1.5Mbps/400kbpsの3段階だったものが、今回は新たに650kbpsが加わり、4段階となった。400kbpsでは明らかに画質が落ちすぎだったが、650kbpsはビットレートの割には納得できる画質に収まっている。
一方宅内視聴では、6Mbpsと2Mbpsの2択だ。スマートフォンも高解像度化が進むところだが、iPhone 6で視聴する限り、6Mbpsは十分な画質である。
4KとPCへの対応
4K対応も見逃せないところだ。とはいっても4Kチューナが搭載されているわけではなく、4K/30pまでのアップコンバータを搭載しており、大型4K対応テレビでの表示もサポートしている。
さらにカメラで撮影した4K映像の再生にも対応しているのもポイントだ。現在パナソニックで4K撮影可能なカメラは、デジタル一眼の「GH4」、ネオ一眼の「FZ1000」、ウエラブル4Kの「HX-A500」と、結構種類がある。どれも4K撮影は30pまでサポートしている。この映像をストックしておく場所としてレコーダというのはありうる。
ただ、本体HDDに入れてしまうと、そこから取り出して利用したいと思った時に大容量のSDカードを接続するとか、面倒な話になる。外付けHDDに移しても、テレビ番組用に暗号化されているので、他の機器では再生できなくなる。かといってBlu-rayも4Kに対応しているわけでもなく、どうするんだという話になる。
そこで冒頭のSeeQVault対応HDDを使いましょう、というシナリオになる。確かにこれに保存しておけば、今後発売されるであろうSeeQVault対応レコーダに繋いて、再生できる。だがそもそも自分で撮影した映像は、著作権保護技術でカバーしてもらう必要がない。それなのに割高なSeeQVault対応HDDを使わなければ、自分のコンテンツさえも保存できないというのは、納得できない。
そこで本機のポイントである、ファイル共有機能の出番である。これまでレコーダは、DLNAを介してホームネットワーク内の機器にファイル転送ができた。しかしそれの主な目的は、あくまでも映像や音楽、写真のようなコンテンツをやりとりするための仕組みであり、ファイルタイプは問わずなんでもやりとりできるような、NAS的な機能は持っていなかった。SCEの「nasne」のような機器はあったが、あれはNASにチューナを乗せて録画の便宜を図ったもので、スタンドアロンのレコーダとは言えない。「テレビ録画に対応したNAS」、の延長線上にある機器だ。
本機に新搭載されたファイル共有機能は、レコーダの内蔵HDDの一部をNASのように見せる機能だ。したがってPCから見た場合も、「ネットワーク」からレコーダが見える事になる。NASとしてストレージが見えれば、PCからファイルをレコーダに送ったり、レコーダからPCへ取り出すこともできる。
これだと本当にただのNASでしかないが、レコーダに転送した4KのMP4ファイルは、レコーダ側で再生できる。ノートPCあたりではとても再生できなかった重い4Kファイルも、レコーダのパワーで再生できるわけだ。4Kテレビが繋がっていればベストだが、フルHDテレビでもとりあえず再生はできる。これまでPCに4Kファイルがあっても、テレビに表示する方法がなかった方には、いい機能だろう。
設定としては、まずレコーダの中で、ログインのためのパスワードを設定しなければならない。ネットワーク設定の中の「ファイル共有サーバ設定」で、サーバ機能を「入」にし、パスワードを設定する。ユーザー名は「DIGA」に固定されている。
マニュアルによれば、PC側ではネットワークの中にレコーダ名が出てくると解説されているが、筆者宅のWindows 8環境では「その他のデバイス」のところにしか出てこない。これをダブルクリックすると、Webブラウザに飛ばされ、パスワードの入力画面となる。
だがここでパスワードを入力しても、ログインできなかった。ユーザー名を入力する画面が出てこないため、ユーザー名が合わないのだろうと思われる。
一方Mac OSでは、「ネットワーク」の中にレコーダが表示された。出てこない場合は、IPアドレスを指定してやればよい。これにユーザー名とパスワードを入力すると、ログインできた。
レコーダの中には、USER_area、DIGA_movies、DIGA_photosの3つのフォルダが見える。このうち自由に読み書きできるのはUSER_areaだけだ。DIGA_moviesとDIGA_photosは、DIGAにSDカードを入れたりUSBでカメラを接続して取り込んだ動画や写真が保存される場所だ。書き込みはできないが、読み出しはできる。
今回は以前GH4で撮影した4KのMP4ファイルを転送して、DIGA上で再生できることを確認した。またDIGA上に転送した4K動画も、きちんとファイルとして取り出せた。
総論
テレビよりも買い換えサイクルの短いレコーダは、ホームネットワークのハブとしての機能を持ち得ることは以前からもわかっていた。一方、最初からディスプレイに直結するNAS、いわゆるネットワークプレーヤーと呼ばれる一連の商品郡、似たような機能を提供しながらも、ハブとして常設しておくポジションは築けなかった。
この違いは、レコーダはテレビ録画機として常時電源ONかスタンバイ状態にあり、最低限の機能はテレビと同程度という、「操作の簡単さ」にある。ただレコーダは、テレビ放送を扱うが故に厳しいDRMに対応しなければならず、そこが妙に制限が多い商品となっていたのもまた事実だ。
BRZ2000は、多くの制限をうまくクリアしつつ、ユーザーフレンドリーに仕上げたレコーダである。これまでレコーダとして培ってきた機能、自動録画やUSB HDD直接録画、お部屋ジャンプリンクといった機能は落とさずに、今度はPCユーザーにも一歩進んだ使い方を提案する。特に4Kは、「何に保存しとくんだよ問題」が全く解決していなかっただけに、アーカイブと再生が同時にできるレコーダに入れておくというのは、一つの解となる。
正直レコーダは、もうこれ以上進化のしようがないんじゃないかと思った事もあるが、今後は4K対応も含め、ネットワーク複合機への道を歩み始めた。「誰でも使える」から、「どんなユーザーレベルにも対応」にシフトしていく方向性が見え始めたのが、今年のDIGAのポイントと言えるだろう。
パナソニック DIGA DMR-BRZ2000 |
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