“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語” |
■ いよいよデジタルオンリーの世界へ
今年7月のアナログ停波に向けて、本格的にテレビ、チューナ、レコーダなどのデジタル化対応が必要になってきている。おそらく停波までにはもう一回、夏の新製品投入タイミングがあると思われるが、この春もそれを睨んだ製品投入が行なわれてきている。
特にレコーダ分野での大きなトピックは、いよいよハイエンドモデルもアナログチューナを搭載しないモデルが主流になることである。BDレコーダメーカーはパナソニック、ソニー、東芝、シャープ、三菱、ビクターがあるが、この春商品にまだアナログチューナを搭載しているのは、とうとうシャープだけとなった。
アナログチューナを搭載しないBDレコーダが録画補償金の対象であるかを巡っては、SARVH(私的録画補償金管理協会)と東芝が係争中で、第一審の東京地裁では、BDレコーダは補償金の対象であるが、補償金徴収の協力義務に強制力はないとして、賠償金請求は退けた格好となっている。
筆者の知る限りでは、東芝、パナソニック、ソニー、三菱が現在も補償金徴収を行なっておらず、ビクターはつい最近RyomaXで参入したばかりなので情報がない。シャープはアナログチューナも入っているので、徴収されているはずである。
まあ裁判の行方は今後も引き続き注目していくとして、レコーダの果たす役割は実に多機能化しており、現在でも音楽サーバやオンラインサービスのハブとなったりしている。先日のRyomaXはさらにオーディオアンプも搭載するなど、AVソリューションを統括する動きも見せており、もはや従来の「デジタル化したビデオデッキ」ではなくなりつつあるというのが現在の姿だ。
新ブルーレイDIGAのラインナップ |
さてそんな中パナソニックがこの春投入してくるのが、なんとトリプルチューナを搭載したブルーレイDIGA、DMR-BZTシリーズだ。新ブルーレイDIGAのベースは3D対応となっており、トリプルチューナのBZTシリーズは900、800、700、600の4モデルである。今回は最上位モデルのBZT900をお借りすることができた。
発表時の店頭予想価格では32万円前後となっていたが、今ネットでは21万円台まで下がってきており、お買い得感も高い。
パナソニックが考える最高のレコーダとは何か、じっくり調べてみよう。
■ 多少色気? が出てきたボディ
まず外観だが、従来のDIGA同様最上位モデルでありながら奥行きが短く、コンパクトにまとまっている。天板に3D FULL HDとロゴが刻まれているほか、細かい波目のグラデーションがデザインされている。これまでこのような装飾を施した例はDIGAには少なかったが、ハイエンドモデルゆえに多少の色気も欲しいということだろうか。
前部にはフェザータッチの電源とイジェクトボタンがあり、その部分が少し凹んでいる。規格対応上必要なロゴ類はすべて天面の奥に集中して表示されており、デザイン的にもかなりのこだわりが見られる。
ハイエンドモデルでもコンパクトさは変わらず | 天板の波目模様が新しい | 天板のくぼみはフェザータッチのボタン |
前面パネルはハーフミラーになっており、閉じたときには何も露出箇所がないという作りだ。開けると左側がBDドライブ、USB、SDカード、i.LINK、B-CASのスロットがある。チューナは同時に3系統が動作するわけだが、B-CASカードは1枚でいいようだ。そのほか操作ボタンは一切なく、すべてリモコンでの操作となる。
背面に回ってみよう。地デジとBS/CS110兼用端子は1つずつだが、内部でそれぞれ3チューナに分配される。出力端子としては、ハイエンドモデルではおなじみの設計となった2系統のHDMI端子を装備するほか、デジタル音声端子は光と同軸を両方備えている。アナログAV端子は、入力が1系統、出力が1系統。
カバー内部にボタン類はなく、端子のみ | BDドライブは左側 | HDMIを2系統装備、Ether経由でスカパー!HD録画にも対応 |
D端子も備えるが、ACCSの規定により、市販ブルーレイや番組を録画したディスクからのハイビジョン出力が制限されており、SD解像度のみの出力に限定される。HDDに録画した番組をD端子でテレビ接続する場合は、HD解像度での出力は可能だ。
もっと先の話をしておくと、2014年1月以降の発売製品では、BDからのアナログ出力そのものが禁止されるので、アナログテレビがまだある人は、早めに再生機器を買っておいたほうがいいだろう。
背面にもUSBとi.LINK端子があるほか、Ethernet端子もある。LAN経由でのスカパー! HD録画にも対応しており、それも3チューナにプラスすると、一度に4番組の録画が可能になる。
アナログ波がなくなり、ネットが放送波切り替えクラスに出世? |
過去ネットワークに関しては、無線LAN対応させるためには専用のUSB接続無線LANアダプタが必要だったが、今回は無線LAN機能も内蔵となった。いよいよレコーダも、ネット接続必須の時代がやってきたというわけである。
リモコンも見ておこう。ボタン数やデザインなどは従来モデルのものと同じだが、ボタンの役割に若干の変更がある。アナログチューナ廃止に伴って、従来はアナログ、デジタル、BS、CSの4ボタンだったが、今回から地上、BS、CS、ネットの4ボタンになっている。従来ネット関連は、「アクトビラ」ボタンがリモコンの下部にあったが、いよいよテレビ放送波と同列に扱われることになった。ただネット系の機能は、録画中には働かないという制限があるのは残念だ。
そのほかデータ放送を表示するボタンは下部のカバーの中に押し出され、そのかわり今回の特徴であるSkypeのボタンがある。
■ 上手い「仕掛け」の3番組録画
1秒で起動するという番組表 |
まず番組表だが、Gガイドなのは以前と同じだ。ただ待機状態から約1秒で番組表を表示するという、「1秒番組表表示」を搭載した。試しに自宅の東芝REGZA 37Z3500との組み合わせで実験した見たところ、実際に番組表がテレビに表示されるまで5秒ぐらいかかる。
どうも条件がいろいろあるようで、まずテレビの電源が入っていること、入力がすでにDIGAに切り替わっていること、クイックスタートが入になっていることが条件だそうである。今回の実験もこの状態はクリアしているが、それでも5秒かかった。
レコーダ側の条件としてはクイックスタートしかないので、REGZA側がHDMIの入力が安定するまで絵を出さないのかもしれない。ただ実際には、テレビはまあONになっているにしても、入力切り替えまでしたのちおもむろにレコーダのリモコンに手を伸ばすということはあまり考えにくいので、結果的にはHDMI-CEC機能を使ってテレビとの連動を図ることになるだろう。番組表の表示が早いことは歓迎だが、あまりこのような訴求は現実的とは思えない。
「アイアンマン」を3本録画 | 実は3つのうち1つは、DRで録ってあとで変換する |
録画に関しては、3チューナ同時録画可能と言うことで、1つの番組を3つの画質モードで録画できる。2番組圧縮録画は昨年あたりからおなじみの機能となってきたが、今回のDIGAは3番組ともに圧縮記録ができる。
これにはちょっとした仕掛けがある。同時にエンコードできるのは2系統だけだが、3つ目の番組はいったんDRで録画し、電源OFFの間に設定した録画モードに自動変換する。1人時間差のような機能である。
同じ番組を3つも同時録画ができると、画質を比較してみるもよし、BDを30枚焼くもよしと、変なことがいろいろできる。まあ実質普通の使い方でも、3系統も録れれば毎日の番組録画がかぶるということはないだろう。しかもスカパー! HDは別なので、イレギュラーな予約にも対応できる。
HD解像度の画質モードは、DRモードを除くと6モードある。今回の評価で、筆者の感覚で「まあハイビジョンと呼んでもいいよね」クラスの解像感が楽しめるのは、だいたいHLモードぐらいまでであった。
画質モードの数は前回と変わらないが、さらに長時間記録を実現したHZモードを搭載した。地デジのDRと比較すると約10倍、BSとの比較では15倍の、1.6Mbpsで記録する。過去最高圧縮のHBモードは約1.879Mbpsだったので、そこからさらに約85%になった計算になる。
モード名 | ビットレート | 3TB 録画時間 |
DR(地デジ) | 17Mbps | 約381時間 |
DR(BSデジタル) | 24Mbps | 約270時間 |
HG | 約12.9Mbps | 約480時間 |
HX | 約8.6Mbps | 約762時間 |
HE | 約5.72Mbps | 約1143時間 |
HL | 約4.27Mbps | 約1524時間 |
HM | 約2.96Mbps | 約2160時間 |
HZ | 約1.6Mbps | 約4050時間 |
今回はこのモードで、日本テレビで日曜日に放映された巨人-楽天のオープン戦を録画してみたが、確かに細かい解像度は実現できないものの、画質が荒れて見づらいという感じではない。選手の成績といったスーパーもかなりくっきりしており、なかなかアルゴリズムの作りが上手いと感じた。
■ 強化されたオーディオとネット機能
アナログ映像用のDAコンバータをカットできる「ハイクラリティサウンド」 |
最上位モデルのみのポイントとしては、音質強化が上げられる。その一つが、アナログ映像信号をすべてOFFにする「ハイクラリティサウンド」だ。これは映像用のDAコンバータをOFFにして、HDMIの音声信号に与える影響を排除する。デジタル音声出力にも有効だ。
昨今ではHDMI接続でテレビとAVアンプに繋ぐ以外、他のソースはネットからという可能性も十分あり得る。そうなるとアナログ機器を接続していないことになるわけで、そもそもDAコンバータへの通電は無駄である。今でこそON/OFFできる機能だが、そのうちにアナログ出力がない割り切り機器も登場してくるかもしれない。
もう一つ、真空管風の音質をエミュレートする「真空管サウンド」もリニューアルした。新たに3モードを追加し、合計6モードとなっている。選択肢としては、ナイトサラウンド、リ・マスター標準、リ・マスター強の次に真空管サウンド1~6が選択できる。こちらはアナログオーディオ出力でも効果があり、アナログの音楽用アンプと接続して、いろいろなサウンドが楽しめる。
ネット系の機能としては、以前「DMR-BF200」をレビューしたときに、DIMORAというネットサービスをテストした。当時は自動録画を実現するためにネットのサービスを利用したわけだが、今回はiPhoneでDIGAをコントロールする「ビイトル」というAppを試してみる。
このAppは、DIMORAに登録した機器情報から登録済みのDIGAを見つけ出し、コントロールしようというものである。今年のCESでパナソニックはVIERAタブレットを発表し、手元のタブレットとテレビとを連動させる製品を発表。3月18日には具体的な製品として、録画番組の転送などができる3.5型液晶のメディアプレーヤー「SV-MV100」を発売予定だが、その前哨戦のような感じだ。
まずDIMORAで新たに機器を登録すると、ビイトル上で機器が選択できるようになる。できることは、録画番組リスト、チャンネル切り替え、録画番組の検索、そしてDIMORAを使った自動予約だ。
まずはDIMORAで機器登録 | すると「ビイトル」上で登録機が出てくる |
録画番組リストは、サムネイルこそ表示されないが、番組名、録画日時、録画時間が表示される。番組をタップすると、DIGAの方で番組再生が始まり、iPhone画面のほうでは再生コントロール画面に切り替わる。
録画番組リストから番組を選んで再生 | 再生コントロール中。1.3倍速の早見もできる |
録画番組を検索で探す |
30秒スキップ、10秒バックといったリモコンでもおなじみの機能のほか、自動で番組とCMの間にチャプタが打たれているので、そこまでのスキップ機能が使える。また1.3倍速の早見機能も使える。
検索機能は特に有用だろう。これは単純に番組名を五十音順に並べただけではあるが、慣れたiPhoneの入力で検索機能が使えるので、大量に撮りためた番組から一発で番組が探せる。それだけでなく、あいまいに覚えていた番組名でも探すことができる。
こういった番組名による検索は、特にスポーツ番組で有効だ。例えば先週放送されていたスケート選手権は、正式な番組タイトルは「四大陸フィギュアスケート選手権2011」なので、五十音順でソートされた場合、「よ行」である。まさかスケートの番組が「よ」から始まるというのは、よほどのスケート通でなければ想像付かない。これが「スケート」と検索すれば済むわけで、検索の効果は絶大である。
チャンネル切り替えも普通のリモコンと遜色ないレスポンス |
チャンネル切り替え機能では、地デジ、BS、CS1、CS2、お好みチャンネルの5つにグループわけされており、それぞれをタップするとDIGAのほうもライブ放送に切り替わる。切り替えのレスポンスもリモコンを使った場合とほとんど変わらない。
番組表や現在放送中の番組が表示されないのは残念だが、手元にリモコンないとか、iPhoneで何かしながらのテレビながら見などは手元で全部完結することになる。
■ 総論
製品を見れば会社の勢いがわかるというものだが、今回のBZTシリーズを見ればパナソニックの好調さを感じる。エンコーダは2つだがチューナは3つ積もうとか、普通は考えてもやらない冒険である。
さらに3D機能ラインナップを拡充したほか、2D-3D変換機能も搭載している。あいにく筆者宅には3D対応テレビがないのでテストできなかったが、機会あったら各メーカーの2D-3D機能の比較などもテストしてみたいものだ。
専用カメラ以外は使えないようだ |
またSkypeをVIERAだけでなく、DIGAにも載せてきたというのは、さすがに展開が早い。ただ残念ながら別売の専用カメラ「TY-CC10W」しか認識しないようで、これが15,000円前後する。
まあ家電なのでこのあたりが専用なのは当然と言えば当然ではあるのだが、PC用のWEBカメラなどはそこそこの性能で3,000円ぐらいなので、約5倍である。PC向けの標準的なWEBカメラが繋がると、もっと使ってみようという人も増えるのではないだろうか。
いずれにしても、DIGAは2009年の「DMR-BW970」あたりですでにレコーダとしては完成してしまって、もう次のステップに移行し始めている。それも形を変えて突拍子もないものへと進化してしまうのではなく、レコーダのフリしていろいろできるという、趣味性の高いユーザー層も満足のマシンへと変貌した。
今後課題があるとすれば、GUIの洗練だろう。番組表の「注目番組一覧」では、以前も指摘した「横のタブに移動するのにわざわざ縦組みの表を出して縦移動しないといけない問題」が解決されていない。また予約が完了したあと、「予約が完了しました。」画面を消すのに、手動でボタンを押さないとそのまま15秒も出続けるなど、古いセンスがそのまま残っている。このあたりは、イマドキの「エンタテイメントを自在に操る機器」のスピード感としては、感性のズレを感じる部分だ。
しかしまあ、とりあえずレコーダよくわからんがイマドキのレコーダが欲しいという人には、まず安心して勧められる機器であることは間違いない。