小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第709回:スマホやアクションカムでも撮れる! 今日からはじめよう“タイムラプス”入門

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

第709回:スマホやアクションカムでも撮れる! 今日からはじめよう“タイムラプス”入門

手軽に撮れるタイムラプス

 その昔NHK教育テレビなどで、植物の芽が出るまでとか、太陽が出て沈むまでといった動画を見たことがある人は結構多いんじゃないかと思う。人がじっと見ていても動きがほとんど観測できない植物や天体などをカメラで撮影し、早回しをすればこういう映像になる。

しおれた花に水をやってシャッキリするまで
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※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 だがそれだと膨大な録画時間の動画データができあがってしまうため、作業が無駄だ。昔はフイルム撮影だったことを考えると、莫大な量のフィルムが必要になってしまう。だが撮影時のコマ数を落として撮影し、通常のスピードとして再生すれば、結果としては同じになる。通常の映像ならば1秒間に30枚撮影するが、10秒間に1枚撮影すれば、フィルムもずいぶん節約できるわけだ。このような撮影方法を“タイムラプス”、日本語では“微速度撮影”という。

 撮影する時のフィルムの動きを想像して頂ければ、ゆっくり動くので“微速度撮影”と呼ぶのはお分かりだろうが、再生した動画の状態は“早回し“だ。早回しなのに微速度なのかと混乱する事も多いが、フィルムで撮っていた時のことを想像してみれば、言葉の意味はわかりやすいと思う。

 さてこのタイムラプスだが、時代がフィルムからビデオになった時代は、撮影が難しくなり、一時は技術として停滞した。なぜならば、ビデオがテープ記録だったからである。ビデオテープに1フレームずつ撮影させる、いわゆるコマ撮りをさせるのは、当時のカメラに搭載されていたテープドライブでは至難の業なので、それこそテープ1本丸ごと撮影し、編集で早回しをするしかなかった。

 ところがビデオ撮影がHDDやメモリ記録になったあたりから、コマ撮りが飛躍的に楽になった。またデジタルカメラでも、写真を均等な時間で撮影し、あとで1本のビデオにまとめればタイムラプス映像になる。一つの表現手法として、デジタルカメラにタイムラプスが取り入れられるようになっていった。

 一方でスマートフォンでも、簡単にタイムラプスが撮影できるアプリが登場し、誰でも手持ちの機器でタイムラプス撮影が楽しめるようになっていった。特に2014年9月に公開されたiPhoneのiOS 8で、カメラの標準機能としてタイムラプスが組み込まれたのは大きかった。

 今回は自分でタイムラプス撮影を行なうための入門篇として、いくつかノウハウをご紹介したい。

お手軽撮影篇

 もっとも低コストでタイムラプス撮影ができる機材という点では、スマートフォンに敵うものはない。いやスマートフォン自体はそれなりに値が張るが、すでに持っている機器で撮影できるという意味である。

 現在日本市場では、iPhoneのシェアが6割程度と言われている。すでに書いたとおりだが、iOS 8ではカメラの標準機能として、タイムラプスがサポートされた。カメラを起動し、画面下のモードの一番左が、タイムラプスだ。

iOS 8のカメラはタイムラプスを標準搭載

 難しい設定は何もなく、撮影したいアングルにカメラを向けて、録画ボタンを押すだけである。通常はどれぐらいの間隔で撮影するかを設定するものだが、標準のタイムラプスでは、撮影した時間に応じて、自動で(ある意味勝手に)撮影コマ数が決まる。最終的な動画の仕上がりがだいたい20秒~30秒になるよう、内部で調整しているようだ。

 スマートフォンでの撮影の難しさは、スマートフォンをどうやって固定するかだ。スマートフォンには三脚穴などないので、ここはどうしても何かの道具が必要になる。筆者がいつも使っているのは、スマートフォンをネジで挟み込んで固定する治具で、底部に三脚穴がある。おそらく500円程度で買えるだろう。

スマートフォンの固定には道具が必要

 ただこれだとカメラが真上を向く事になるので、L字型に曲げられるような自由雲台とミニ三脚を組み合わせる必要がある。本格的な三脚を使うぐらいなら、ちゃんとしたデジカメを使った方がいい。スマートフォンのいいところは、撮影道具も小物で済むというところである。

 もっとも、窓に貼り付けるようにして後ろから押さえられるのであれば、道具は何も必要ない。最初に見ていただくタイムラプスは、ラスベガスのマッカラン空港から離陸する際の映像である。最近は飛行機内の電子機器の利用制限が緩和され、機内モードにしていれば離着陸時もカメラやスマートフォンが使えるようになった。このため、ネットには多くの離着陸タイムラプスがアップされるようになった。

iPhoneで撮影した離陸風景
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 この撮影では、iPhoneを飛行機の窓に当て、その上から畳んだブランケットを押しつけ、筆者の肩で寄りかかるようにして固定した。ずっと手で押さえているわけにもいかないし、三脚を出すわけにもいかないので、こういうやり方が一番簡単だろう。またブランケットで囲む事で、機内の明かりの反射を防ぐこともできる。

 むき出しのiPhone本体では、アクリルの窓に当てると滑ってしまうので、シリコン製のiPhoneケースを使用している。空撮は地上が写った方が楽しいので、窓の下の縁を使ってiPhoneをやや下に向け、撮影した。

 普通は日常的に使っているスマートフォンを、タイムラプス撮影のために1時間も2時間も固定してはいられないだろう。バッテリーも当然減る。だが飛行機の中では有料のWi-Fiサービスでも利用しない限り、スマートフォンには用がない。だからこそできる撮影だとも言える。

 iPhoneには、割とタイムラプスに強いアプリが揃っている。個人的にお勧めなのは、「Hyperlapse from Instagram」である。写真共有型SNSのInstagramが開発したアプリで、強力な手ぶれ補正機能がウリだ。 もちろん電子補正なので、画角は標準のタイムラプス機能よりずいぶん狭くなるが、歩きながら撮ったり、車や自転車に固定するなど、どうしても揺れることが想定される撮影には強い。

Hyperlapse from Instagramの撮影画面
隠しメニューでは解像度なども変更可能

 なお、指4本で素早く4回画面をタップすると、まだ評価レベルの隠しメニューにアクセスできる。現段階では解像度、フレームレート、スピードが選べるようだ。

 もう一つHyperlapseのポイントは、撮影したあとに再生速度が決められることだ。撮影開始時には何の設定も出てこないが、撮影後に等倍から12倍まで速度を変えて、プレビューすることができる。気に入った速度を選んだら保存、という流れだ。

撮影後にスピードが選べるのはユニーク

 タイムラプスは、何秒間隔で撮影するのがいいのかの最適値は、何を撮るかによって変わってくる。いろんな経験を積めば、どれぐらいが妥当かが予測できるようになってくるが、最初のうちはさっぱりわからないだろう。Hyperlapseのようにあとから速度が決められるアプリなら、最初から失敗のない撮影が可能だ。

 ただそれも良し悪しで、こういったアプリばかり使っていると、いつまでも最適値が覚えられないというデメリットもある。もっと高画質にとか、夜間撮影したいといったときにはデジタルカメラを使うしかないが、デジタルカメラのタイムラプス撮影機能は、自分で撮影間隔を設定するものが大半だ。やはりこれはこれとして、色々試行錯誤しながら覚えるしかないだろう。

 他方Androidには、タイムラプスでずば抜けて人気というアプリはないようだ。強いて上げれば、その名のとおり「Time Lapse」と言うアプリが評価が高いようである。このアプリはXperiaでは標準カメラのプラグインとして機能するので、カメラモードのところからでもアクセスできる。設定はデジタルカメラに近く、ホワイトバランス、解像度、撮影時間、撮影間隔といったパラメータを設定する。

「Time Lapse」の設定画面。機種によっては4K撮影も可能

 タイムラプス撮影中はずっとカメラが動作しっぱなしになるので、バッテリの消費が早い。モバイルバッテリなど充電できる機器を携帯しておくといいだろう。

じっくり撮るにはコンパクトデジカメ

 スマートフォンによる撮影のメリットは、なんといっても思いついたらすぐ撮れる手軽さだ。だが本格的に撮影したいとなれば、やはりデジタルカメラの出番である。最近はコンパクトデジカメが多機能化しており、タイムラプス専用モードを持つものも増えた。

 facebookの「タイムラプス部」で人気があるのが、カシオのEXILIMシリーズだ。モードダイヤルにタイムラプスがあるため、通常撮影からすぐに切り換えられるのがポイントである。今回は今年3月下旬に発売されたばかりの新モデル、「EX-ZR1600」をお借りしてみた。

EXILIMシリーズの最新モデル、EX-ZR1600

 タイムラプスモードでは、10種類のシーンプリセットがあり、現場状況に応じた撮影が可能だ。ホワイトバランス、フォーカス、露出補正といった通常のカメラ設定もできる。タイムラプス設定は、撮影間隔とトータルの撮影時間を設定すると、下に完成動画の長さが表示されるというインターフェースだ。

モードダイヤルにタイムラプスがある
タイムラプスにも多数のシーンモードを搭載

 今回は連休中に今シーズン最後の春スキーに出かけたので、まずは「街並み」モードを使ってホテルからの景色を撮影してみた。日が暮れると共に自動的にISO感度を上げていくので、途中からどんどんS/Nが落ちていってしまうが、日が暮れてからの黒の沈み方は綺麗だ。

ホテルの窓から夕暮れの駅舎を撮影
town.mov(51MB)
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 続いてスキー場では、リフト降り場付近を撮影してみた。単純な固定ではなく、ゆっくりカメラをパンさせている。仕掛けは「Camalapse」という装置だ。ネットで4,000円程度で購入できる。これはゼンマイで動くタイマーのようなもので、頭に三脚ネジが付いている。カメラを取り付けてネジをまけば、撮影しながらゆっくり回転する。再生してみると、このような映像になるというわけだ。完全固定でも被写体によっては面白い効果が得られるが、パノラマ的な風景であればこのような撮影方法も面白い。

スキー場のリフト降り場で撮影
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ゼンマイ式のパン装置、Camalapseを併用

 あいにくこの製品は、回転速度は固定で、しかも左回りでしか撮影できないという制限がある。速度や回転方向も自由に設定するためには、モーター駆動の製品が必要だ。これは1万数千円から、上は天体撮影用の数十万円まで幅がある。

モーター駆動の回転台Black BoltBA200。実売1万5千円程度

 ソニーのハイエンドコンパクトデジカメ「DSC-RX100 Mark III」では、RXシリーズとしては初めて「PlayMemories Camera Apps」に対応した。これはカメラ内にアプリをインストールすることで機能拡張ができるプラットフォームである。

 この中の「スタートレイル」は、一種のタイムラプスではあるが、星空専用の撮影ができる。以前大分県の山間部で撮影したスタートレイルは、周囲に明かりがないため、高コントラストで撮影できた。

星がよく見える場所ではぜひ挑戦したい「スタートレイル」
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 この時は三脚など使わず、積み上げられた薪の上に、液晶のチルト機能を足代わりに使ってカメラを上向きに立てかけて、撮影したものである。タイムラプスは、小一時間ほっとくだけでできあがるのがメリットだ。撮影当時は冬だったが、人間は暖かいところに居ればいい。ちょっと遠出をしたら、食事の間にでも仕込んで撮影すると、いい思い出になるだろう。もちろんカメラから目を離す時は、盗難などに遭わないよう十分に状況を確認する。

意外に使えるアクションカム

 今となってはかなり定着した感のあるアクションカムだが、これにもタイムラプス撮影機能が付いているものが多い。シンプルなカメラなので細かい設定はできないが、デジタルカメラにはないメリットがいくつかあるので、シーンに応じて使い分けるといいだろう。

 ポイントとしては、

  • 1.デジタルカメラより広角
     アクションカムは画角が120~170度ぐらいあるので、広い風景を一度に撮影できる。これぐらい広い画角を一眼カメラで撮ろうとすると、フィッシュアイレンズが必要になるが、これはそうそう日常的に使うものでもないので、購入するのも勿体ない。
  • 2.軽量なので扱いが気楽
     コンパクトデジカメと比べても大幅に軽量なアクションカムは、吸盤などを使って窓に貼り付けるような撮影で威力を発揮する。高級カメラを吸盤でくっつけて放置するのは心配だという人には、もし落下しても被害は少ないので、お勧めだ。
吸盤で貼り付けるにはちょうどいい軽さ
  • 3.過酷な撮影に耐えられる
     天気のいい昼間の撮影では、カメラ自体にも長時間日が当たる事になるため、本体温度が上がりすぎると安全のため、自動的に電源が切れるケースもある。また雨雲を撮影していると、急に雨に降られたりもする。こういうとき、普通のコンパクトデジカメでの撮影はなかなかキビシイが、アクションカムは動作条件が広いので、多くのケースで耐えられる。防水ケースや本体そのものが防水設計されているものもあるので、雨に濡れても大丈夫だ。

 今回はソニー「HDR-AS100V」を使って、スキー場に向かうロープウェイの中から撮影してみた。後ろのアクリル窓に吸盤で貼り付けて撮影している。

スキー場に向かうロープウェイの後部座席から撮影
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 ただソニー機のタイムラプス撮影は、大量の静止画を撮影する「インターバル静止画記録」という機能を利用するため、あとでPCに取り込んで、動画に加工しなければならない。撮影が終わった時点ですぐ動画として確認できるわけでもないので、その点が多少面倒だ。

 一方JVCの「GC-XA2」では、動画でタイムラプス撮影をやるモードもあり、撮影結果をその場で本体のみで確認できる。このあたりは、アクションカムの設計思想による。

総論

 タイムラプスは、時間を圧縮して見せてくれる手法なわけだが、普段我々人間が意識できる時間軸とは違う軸で世の中を見ることができる。天体や雲の動き、植物の成長などは、人間の目ではどれぐらい動きがあるものか観測できないが、カメラを据えることで見えるようになる。

 もちろん、人間の動きそのものを時間圧縮しても面白い。2時間の作業を20秒で見せるとなると、通常ならかなり高度な編集の腕が必要になるところだが、時間を圧縮するだけで収まってしまう。これは一種の編集手法として捉えることもできるだろう。

 今ネットには多くのタイムラプス動画が掲載されているが、個人的に気になるのは、タイムラプスを撮影している間、撮影者がどうしているのかという事である。おそらくその場を離れるわけにも行かないので、その辺に座ったり本を読んだりネットを見たりして時間を潰しているのだろうと思うが、そういう状況もセットでタイムラプスしてもまた面白いのではないだろうか。

 これから梅雨入りまでの間、外に出かけるにはいい気候が続く。1時間も撮る必要はなく、15分でも結構面白い動画が撮影できるはずだ。出かけた先で少し立ち止まってカメラを構えるのも、悪くない人生だと思う。

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小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチボックス」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。