小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第637回:ソニーデザイン炸裂! 大胆な新BDレコ「BDZ-ET2100」

“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第637回:ソニーデザイン炸裂! 大胆な新BDレコ「BDZ-ET2100」

録画番組をXperia Z1にフルHDで無線転送

分かれる注力ポイント

 BDレコーダも、全方位的に機能を盛り込みつつ、各メーカーごとに強化ポイントの棲み分けみたいなことが次第に起こってきている。パナソニックはホームネットワーク対応強化へ、東芝は全録へと注力していく中、ソニーは同社スマートフォンの好調さを踏まえて、録画番組の持ち出しに注力しているようだ。

 テレビ番組をリビングのテレビで楽しむという、従来もっとも一般的な楽しみ方から一歩踏み出し、モバイルでも楽しむというあり方は、ウォークマンを生み出したソニーがやらずにどこがやるんだという話である。

 ソニーが秋モデルとして11月16日から発売する「BDZ-ET2100」(以下ET2100)は、新発売となる5機種の中で最上位モデルで、店頭予想価格は11万前後。ハイエンド機としては昨年10月の「BDZ-EX3000」があるが、そのすぐ下に位置するモデルだ。

 デザイン面でも機能面でも、なかなか面白い作りになっているET2100、さっそく試してみよう。

型番HDDチューナ数CREAS 5店頭予想価格
BDZ-ET21002TB311万円前後
BDZ-ET11001TB9万円前後
BDZ-EW11002-75,000円前後
BDZ-EW510500GB65,000円前後
BDZ-E510155,000円前後

大胆なデザイン

 まずボディだが、これまでのような真っ黒の四角い箱路線は継承しつつも、前の角をサクッと薄くナイフで削ったようなデザインとなっており、その断面の三角形部分に電源、ドライブイジェクトボタンを配置するという、なかなか粋なデザインになっている。金属部品やアクリル透過光のような光りものを使わず、手を入れた感のある作りは、好感が持てる。

角を大胆に切り落としたようなデザイン
断面がボタンになっている

 前面パネルはスモーク地のアクリルパネルで、内部はBDドライブほか、B-CASカードスロットがある。番組おでかけボタン、カメラ取り込みボタンは、前面のUSBポートの挙動を決めるものだ。

左側がBDドライブ
従来通り番組おでかけとカメラ取り込みボタンも装備
奥行きはそれなりにある

 高さは46.5mmで、5cmを切る薄型デザイン。ただ奥行きは294mmと、それなりにある。HDDは2TBで、地デジ、衛星ともに3チューナだ。なおHDDが1TBで全く同スペックのET1100は、ET2100より2万円ほど安い店頭予想価格となっている。

 画像処理エンジンは最新のCREAS 5を搭載。昨年のハイエンド機EX3000に搭載されていたCREAS Pro同様、ビデオ用のSuper Bit Mapping技術により、8ibt/10bitの映像を16bitまでアップサンプリングし、なめらかな階調表現を実現した。

 さらにEPGからのジャンル情報を使って、各分野に最適なパラメータを自動的に設定、エンコードする技術も強化された。ただEX3000に搭載されていた4Kアップコンバート機能は搭載されておらず、4Kテレビモードでは最適化された2Kの映像を送り出すに留まる。

階調をなめらかにするSuper Bit Mappingも装備
4Kテレビモードはあるが、4Kアップコン機能はない
比較的シンプルな背面

 背面に回ってみよう。端子類は比較的シンプルで、2系統のアンテナ入力のほかアナログAV入力が1系統ある。HDD接続用のUSBポート、光デジタル音声出力、HDMI出力、Etherポートも各1つずつだ。また外部からアンテナは見えないが、無線LANにも対応している。

 リモコンのデザインもかなり斬新だ。一見するとボタンを減らした“らくらくリモコン”のように見えるが、実は2段になっており、底を押し上げると上半分がスライドし、フルリモコンになるという作りだ。

新デザインとなったリモコン
実は2段になっている
スライドさせるとフルリモコンに

 十字キーや周囲のボタンは、本体のフロントデザインとテイストを合わせ、三角形を意識したデザインとなっている。十字キー両脇のボタンは実は上下が繋がっているところも、意外性があってなかなか面白い。何よりもボタンサイズがそこそこ大きいのに、細身のボディにうまく配置されているところが上手い。

 従来下部にあった4色ボタンを上に配置しているところもユニークだ。映像操作ボタンは正方形で、完全にシンメトリックな配置となっており、美しさを感じさせる。

アルゴリズムを見直した中身

らくらくスタートメニューもカラフルに

 では実際に使ってみよう。リモコンにも大きくフィーチャーされていたのが、「らくらくスタート」メニューだ。以前はモノトーンのアイコンが並んでおり、シンプルではあったが、他のGUIとテイストが大きく違っており、いかにも後から取って付けた感があった。今回のメニューはイラストがカラー化され、背景デザインもソニー製品共通のテイストになっている。

 「おまかせ・まる録」は以前からソニーの自動録画機能として鉄板の地位を築いているが、これには“二度録り回避”機能が入っている。NHK連続ドラマが人気になって気づいた方も多いと思うが、番組名で引っ掛けて自動録画で連続ドラマを録ると、再放送分も録画してしまい、録画数が倍になってしまう。

通常の予約も番組名で追跡録画できる

 おまかせ・まる録はこのような問題を回避すべく、二度録りを回避する。例えば第1話を録画し忘れたら、1話の再放送を録画し、それ以降は本放送のみを録画、再放送は無視する。番組名が同一で、タイトルに第何話といった情報がないと適用されないが、殆どのケースで問題なく動作するだろう。

 また通常の番組予約も、毎回録画の設定を「番組名」に指定しておけば、基本的には追跡録画となる。つまり途中で放送時間が変わっても、再放送の二度録りを回避しつつ最終回まで録画できる。おまかせ・まる録のより限定されたバージョンといった機能だ。

 なお、ここまでは従来のモデルと同じだが、秋モデルからはこの“二度撮り回避”が、設定でON/OFFできるようになった。つまり、OFFにして、あえて再放送も録画できるわけだ。例えばアニメやドラマで、本放送に地震などのテロップが入った場合にそっちは消して、テロップの無い再放送分をディスクに残すなど、マニアックな使い方もできそうだ。

 録画番組の中から見たいものだけを探す「タイトル/コーナー検索」では、録画履歴から人名や番組名を抽出するので、いちいち文字入力する必要もなく、単に選ぶだけになった。元々録画されてないキーワードを入力してもどうせ見つからないので、録画履歴からキーワードが抽出されるというのは合理的だ。

 またソニーのレコーダは番組内容のメタデータを追加料金なしで利用できるので、番組内のコーナーやCMも検索できる。検索対象は内蔵HDDだけでなく、外付けHDD内も一緒に検索される。

EPGデータから抽出された人名で検索
コーナー検索も追加料金なしで利用できる

 オーディオ機能も強化された。テレビのスピーカーで7.1chのバーチャルサラウンドを実現するS-Force フロントサラウンドを搭載している。一般的なバラエティ番組では、そもそもサラウンド感を感じるような音が入っていないが、映画や音楽番組で効果が高い。

多彩なオーディオ処理でテレビの音声をより充実したものに

 モード的には、原音に忠実な「AVルーム」、広がりを強調した「シアター」、台詞の明瞭化にフォーカスした「リビング」の3タイプから選ぶ事になる。実際に試してみたところ、フィジカルに7.1chある感じは聴き取ることはできなかったが、いつもの音にちょっと味付けできる機能として、効果的だった。

 ウォークマンなどでお馴染みの、圧縮によって失われた音の余韻を復元する「ハーモニクスイコライザー」も搭載している。なかなかテレビの音で余韻まで大事に聴くようなソースは少ないかもしれないが、クラシック音楽の番組などには向いているだろう。

 さらに、音声の位置を上に上げる、テレビ音声位置補正機能も付いた。テレビ内蔵スピーカーは画面の下に付いていることが多いが、大画面テレビになるほど画面の中心から音の出る位置が離れるので、画面から音が出ている感じがしなくなる傾向がある。これを補正するものだ。技術的には以前米SRSが“Focus”という補正技術を持っていたが、それと同じような効果である。

また一歩進んだ転送機能

 レコーダとスマートフォン/タブレットの組み合わせでは、2010年頃からリモート予約ができるようになった。もっと昔はメールに呪文みたいなコマンドを書いて送ると、レコーダが拾って予約を入れてくれるという機能であり、やはりグラフィカルなインターフェースで、番組表を見ながら予約できるほうがいい。その点では、テレビ王国のCHAN-TORUとnasneの組み合わせは、うちでは鉄板となっている。

 さらに2012年頃からは、DLNAとDTCP-IPを利用して、ホームネットワーク内で録画番組のストリーミング再生ができるようになった。Android版のTwonky Beamがずいぶん話題になったので、ご記憶の方も多いだろう。その後もiOS版の「DiXiM Digital TV」や「Media Link Player」などが登場し、iOSでも環境は整ってきている。

スマホ/タブレットに対してワイヤレスおでかけ転送を実現

 一方番組そのものをスマートフォンなどのモバイル機器にコピーして持ち出す機能は、永らくモバイル機器をUSB接続して書き出すというルールに縛られてきたが、ワイヤレスで書き出せる機能が2012年後半ぐらいから可能になってきた。

 iPhone/iPadでは、「Media Link Player」がワイヤレスでの録画番組ムーブに対応。ソニー製レコーダとの連携アプリとしては、前出のTwonky BeamのiOS版もワイヤレスおでかけ転送に対応している。

 従来VGAやQVGAサイズでしか「おでかけ転送」できなかったが、この秋のラインナップからは、フルHD解像度(DRモード録画)の番組でも転送できるようになった。ただし、現時点でフルHDで転送できる端末はXperia Z1のみだ。XPERIA Z/A/ULでは、DRモード以外の全録画モードに対応している。

 端末側で使用するアプリは、ソニー製スマートフォン/タブレットには標準でインストールされている「ムービー」だ。今回はXperia Z1を連携相手として用意した。アプリの設定画面に「フルHD優先」という項目があるので、これをチェックするとフルHD対応となる。

組み合わせたXperia Z1
「ムービー」側でフルHD優先に設定変更
ET2100で録画された番組にアクセス

 確かにXPERIA Z1は、ディスプレイ解像度が1,920×1,080ドットなので、フルHDでの転送は画質的にもベストだ。ただ転送速度の事を考えると、DRモードで録画した1時間番組の転送に48分かかる。ワイヤレスではなく、USBで高速に流し込めないのかとも思うが、スマホ/タブレット相手ではワイヤレス転送しか対応しないようだ。

録画モード1時間番組の
転送時間
DR48分
XR32分
XSR22分
SR16分
LSR8分
LR6分
ER4分

 そんなに待ってられない、という人のために、指定時間で自動転送してくれる「自動おでかけタイマー」というアプリもある。手動ではなく、寝ている間に転送完了というところまでキチンとお膳立てができているとあれば、ワイヤレスおでかけ転送を使わない手はない。

寝ている間に転送できる、「自動おでかけタイマー」
内蔵メモリの残量もわかる

 実際にDRモードの番組を転送して視聴してみたが、もちろん画質的にはまったく申し分ない。テレビよりも近くで見るために、逆にテロップのジャギーなどが気になるぐらいの解像感がある。

DRモードだと30分番組でも4.4GBになる

 ただ、ずっとDRモードにこだわるべきかは、悩ましいところだ。そもそもDRモードの1時間番組は、ファイルサイズが10GB近くになるので、Z1の内蔵メモリ(32GB)の空き容量を考えても、2番組入れられるかどうかだ。外部メモリとしてmicroSDHCカードも使えるが、例え32GBのカードを入れても3番組程度である。

 相当にリッチな番組視聴だと言えるが、おそらくDRモード転送の威力が発揮できるのは、画面サイズからしてもタブレットだろう。現在はDRモードが転送できるタブレットはないが、今後に期待したい。

総論

 本体デザインもなかなかユニークだが、徹底的に考えられた新しいリモコンが良くできている。ボタンのポジションは以前とそれほど変わっていないのだが、機能が整理されたように見える。ただでさえ機能多すぎと言われるレコーダにおいて、“簡単そうに見える“という感覚は重要だ。

 テレビを見る現場というのも、実は少しずつ変化が訪れているのではないかと思う。テレビをモバイルで見るというのは、どうしてもライブ中継のスポーツを見るといったことに注目しがちだが、家では見る暇がない忙しいサラリーマンでも、通勤時間内でバラエティや映画、音楽番組を楽しみたいというニーズはあるはずだ。

 従来の番組転送は、どうしてもVGAサイズ止まりだったため、スマホ側の解像度がいくら上がろうと、「テレビは別」だった。しかしHD解像度が転送できるようになったことで、モバイル視聴の意味合いは大きく変わっていく。

 それは、スマホ側に高解像度ディスプレイを搭載する意義という点にも関係している。なぜスマホ画面が16:9で、1,920×1,080なのか。どう考えても、フルHD解像度合わせになっている。

 もちろん、レコーダにとってはテレビに繋ぐユーザーがメインのお客さんなわけで、そちらの機能も手抜かりがあってはならない。DVDレコーダ時代は機能が硬直化したとたん、価格のたたき合いになってしまった。そういう苦い経験の中で、BDレコーダは各メーカーとも何を武器に頭一つ抜け出すか、知恵を絞っている。

 他のデバイスとの連携機能を積むほどセキュアな実装が求められ、操作がややこしく、かつ条件が厳しくなっていくが、そこをいかに自動化していくか、これもまた見どころだろう。そんなことを考えさせてくれるレコーダである。

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ソニー
BDZ-ET2100

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチボックス」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。