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4K「Wアップ」で年末商戦に挑む。シャープAQUOSの戦略

縦方向もサイズアップで満足度を向上

 '14年の年末商戦も佳境。最大のトレンドは「4K」で、この商戦にあわせて、各社がラインナップを拡充。シャープ、ソニー、パナソニック、東芝の4社は3ラインで、それぞれ10製品近い4Kテレビを展開している。

 国内テレビ市場でトップシェアを走るシャープも、4Kを軸に据えることは変わらない。フラッグシップの「AQUOS UD20シリーズ」、ミドルクラスの「AQUOS US20」、エントリーの「AQUOS U20」の3シリーズ7モデルで展開する。ただし、4Kを軸にしながらも、2Kプレミアムモデルの「AQUOS XL20」などを組み合わせ、サイズやクオリティの「Wアップ」を店頭などで積極的に訴求し、年末商戦に臨むという。

デジタル情報家電事業本部 液晶デジタルシステム 第1事業部の戸祭正信事業部長(左)と、デジタル情報家電事業本部 国内営業統轄の居石勘資氏(右)

 その戦略の狙いとはなにか? 液晶テレビ事業を担当するデジタル情報家電事業本部 液晶デジタルシステム 第1事業部の戸祭正信事業部長と、テレビの国内営業を統括するデジタル情報家電事業本部 国内営業統轄の居石勘資氏に聞いた。

3ラインの4K+クアトロンプロXL20を展開

 2014年末のシャープ4Kテレビは、フラッグシップのAQUOS UD20シリーズが70/60/52型の3サイズ、ミドルクラスのUS20は60/52型、エントリーのU20は50/40型で合計3シリーズ7モデル。こうした豊富な製品ラインナップを揃えた理由はなんだろうか? そしてシャープはどのように年末商戦に挑むのだろうか?

シリーズUD20US20U20
サイズ70/60/52型60/52型50/40型
パネル自社自社他社
パネル表面モスアイ低反射低反射
リッチカラー
広色域
-
サウンドバー
スピーカー
--
左からAQUOS U20、US20、UD20シリーズ
AQUOS UD20シリーズ

戸祭氏(以下敬称略):年末商戦のテレビ市場は、4Kが中心になるのは間違いありません。消費者が「選べる」ラインナップが重要と考えています。秋口から週末の台風直撃などの気候要因もあり、現時点のテレビの実売データでは前年に届かず、想定よりも良くない部分もあるのですが、4Kは伸びていますし、大型では50型以上のウェイトが上がっている。全体の2割以上が大型になりそうな勢いで、そうなれば金額では40%を越えそうです。

 この需要の多くは「買い替え」のお客様です。そこに最大限力を入れていきたいと思います。4Kモデルも、上期は最上位の「AQUOS UD20」ラインしかなかったのですが、この秋口から(エントリー4Kの)U20、(ミドルクラスの)US20と揃えました。「パーソナルに使いたい」という方から、「リビングでみんなで使いたい」などの用途から、サイズ、価格など、様々なニーズに応えられるラインナップができました。

 また、今年各社さんがあまり力を入れていない2Kのラインも強化しています。新たにクアトロンプロの「AQUOS XL20」ラインを投入しました。また、50型以上を大型と考えると、20日からは「W20シリーズ(LC-50W20)」という新製品も出しました。これは、数としては一番売れるラインです。“大型”のラインナップを揃えています。

 プロモーションとしては、3年ぶりにテレビCMを行なうほか、量販店様の協力を踏まえた店頭の演出、交通広告など、できることは全てやりました。あとはどこまでシェアを取らせていただけるか。「やれることはやった」という段階です(編注:取材日は11月20日)。

AQUOS XL20(LC-52XL20)

--4Kにかぎらず、大型で単価の高いものをきっちりと訴求していく、これが第一ということだと思いますが、気になるのは4原色のクアトロンプロ技術を使った“4K相当”の「AQUOS XL20」です。4K相当ではありますが、いわゆるフルHDのプレミアムモデル。ここは他社が手を引きつつある市場です。4Kが盛り上がりつつあるいま、ここに新製品を投入する狙いはどこにあるのでしょう?

戸祭:確かに発表会でも記者の方からもそういう質問は多かったです。なぜ新製品を投入するかというと、ひとつはシャープ独自の4色の技術。これは特徴としてしっかり出していきたいという技術的な側面。そして、もう一つはテレビ市場の大半はまだ2Kで、そこには選べる製品が必要です。

 たしかに、テレビ市場では4Kが増えています。出荷台数はこれまで5%程度だったものが、この年末には全テレビの1割に届くかもしれない。ただ、伸びているといってもまだ1割です。その他の9割は2Kですね。その市場をきっちりやりたい。今度のXL20では、N-Blackという新しいパネルを採用し、色域も向上し、音にもこだわり、そしてクアトロンプロにより4K相当の画質が得られる。実際に非常に市場の反響はいいですし、販売実績でも想定から少し良い結果が出ています。まだ4Kとの価格差もありますので、十分に戦える。特に現場での黒の艶やかさなどの画質評価など、スタートとしてはかなり好感触を得ています。

AQUOS U20シリーズ

-- 4Kテレビの中での売れ筋はU20シリーズですか?

居石:やはり(50/40型の)U20シリーズが一番多いですね。US20シリーズはまだ発売したばかりですが、9月のU20シリーズの投入以来、4Kでも54型以下の52/50/49/40型というサイズが増えています。年末にかけて5割を超えそうです。4Kは高単価、高付加価値な製品、という環境は今年は変わりつつあります。

--4KエントリーのU20はかなり価格も安くなっていますが、シェア獲得を優先している?

居石:いえ。すでに、昨年よりも価格は大幅に下がっていますからね。そこを加速すると、我々も販売店にもあまりメリットは無い。3シリーズを揃えているので、4Kの売り分けを提案していきたい。

戸祭:我々としては、4Kを安くするのではなく、それであれば「XL20はいかがですか? 」と提案したい。画質も4K相当で明るいですよと、というふうに、お客様に選択肢を提案できる。それが今年のラインナップの強みだと思っています。

居石:XL20の前モデルの「XL10」の時も、4Kが発売された後でも、きっちりと売れているんですね。4Kか2Kか、ではなくて、4Kでも2Kでもしっかり選べる。

戸祭:店頭でXL20をご支持いただいているのは、明るいこと、そして鮮やかさ。この支持が実売につながっている。そして、それでも消費電力が少ない、という部分もXL20の特徴ですね。

シャープが狙う「Wアップ戦略」。縦方向もサイズアップ

 実際の販売店での展示のキーワードは「Wアップ」。4Kラインナップから“選べる“という「量の拡大」と、比較展示によりさらに上位機を訴求する「質の向上」。この2つのランクアップを訴えるために、店頭展示も工夫を凝らしているという。

居石:例えば、壁面展示では、売れ筋の2Kの52型「52G9」、60型「60G9」などを起点にします。これらはクアトロンプロではないので、その左右にクアトロンプロのXL20や、4KのUS20、UD20シリーズなどを並べて、実際に見ながら良さを体感していただく。それがベースです。2Kと4Kの比較、通常の2Kと2Kのクアトロンプロの比較などで、ランクアップを検討していただきたい。

サイズとクオリティの両面でアップグレードを訴求

 もちろん、これまで通りに「サイズアップ」も訴求していきます。7~8年前に37型をお求めになった方であれば、いまは52型も設置できますので。

--先日の国内営業の説明会では、「サイズアップ」の提案で高さの違いも訴求していました。従来のサイズアップ提案は横幅が〇〇cmだから、そのスペースに1-2サイズアップした新製品が置けるという訴求でしたが、「画面の高さ」が違うと迫力が違う、という提案をしていたのが新鮮でした。

8年前の46型「LC-46GX1」は、最新の52型「LC-52UD20」よりも画面高が低いので、満足出来ないケースも? そのため60型へのサイズアップを訴求する。なお、「LC-46GX1」は居石氏の私物

居石:そうなんです。今回気づいたので、まだお店ではあまり訴求できていないのですが……。

 最近のテレビでは、(スピーカーなどが小型化されたため)画面は大きくなっている一方で、画面の位置は低くなっています。スタンドの数cm上がもう画面ですね。なので、「46型から52型に変えたのにあまり迫力がない」とか、「画面が小さく感じてしまう」といったケースもありえる。それでは「満足を得られないのではないか?」という疑問を感じました。

 なんとか年末商戦でそこをアピールしたいと、7年前の37型の実寸大パネルを作りました。接客時などのサイズアップ提案時に、横だけでなく高さにも注目して欲しいんです。昔からテレビ台のサイズは幅120cmが多いので、買い替え時にはテレビ台はそのまま使えます。それでしたら、縦方向の「迫力」も重要ですと。

中央が7~8年前の37型との比較用パネル。37型から52型に差し替え設置可能な点をアピール
大型への買い替えを訴求

ひかりTV 4Kにも対応。4Kネイティブコンテンツのいま

4Kチューナ/レコーダ「TU-UD1000」

--4K試験放送のChannel 4Kがスタートし、シャープも4Kチューナ/レコーダ「TU-UD1000」を発売しています。さらに、10月からはNTTぷららの「ひかりTV 4K」もスタートし、AQUOS UD20/US20はその対応第1弾製品となっている。4Kのネイティブコンテンツについての、店頭や消費者の反応は変わりつつあるのでしょうか?

居石:まず、量販店の店頭では4Kテレビについての説明ノウハウが溜まっています。店頭でBDでどういうシーンを見せれば、4KとフルHDの違いを体験いただけるのか、奥行き感が違うのはこういうシーンとか、星のきらめきが違う、とか販売員さんなどが、ノウハウを貯められています。ですので、今、コンテンツをコンテンツを一番キレイに見れるテレビ。として4Kテレビが認知されてきました。ですので、「4Kのコンテンツって少ないんでしょう? 」といった意見は、少なくなりましたね。

 一方で、4Kの試験放送が始まり、また、ひかりTV 4Kの放送も始まったので、「実際にみられます」といえるようになりました。特にひかりTV 4Kは、NTTフレッツの回線に入っていれば、(Ethernetの)ケーブルを繋げばいいだけです。これは非常にわかりやすいと思います。今度「アラビアのロレンス」を4Kで配信しますが、個人的にとても期待しています。DVDからBDになった時にも発見がありましたが、4Kではどうなるのだろう、と。やはり最新の機器ですので、そういった楽しみ方をするお客様に応えていきたい。

もとめるのは「4K」よりも「いいテレビ?」

居石:実は4Kの販売構成比は、大型店より地域店のほうがかはり高い。非常にうまくやってらっしゃいます。大型店では、5~10%という4Kの構成比ですが、地域店では半数近くが4Kという店もあります。

 なぜかというと、今が買い替えのタイミングだからなんですね。7~8年前に「一番いいテレビ」をお求めになった方ですと、前はブラウン管から薄型テレビに買い替えた、そして今回は薄型テレビから4Kに買い替える。4Kというよりは、「一番いいテレビ」が、4Kということですね。そこで、4Kならではの楽しみ方を、メーカーでもお店でもサポートしていく。

--しかし、去年もすでに「一番いいテレビ」は4Kでしたよね。今年と去年の違いはどこなのでしょう?

居石:やはり、40型から70型までラインナップが広がったことです。60型の超大型だけではなくなった。普通のテレビ。その中で良いテレビを自由に選んでいただけます。

戸祭:大きく潮目が変わった、と感じています。お店でもすでに4Kテレビが当たり前になっており、“買えそう”な良いテレビと認識してもらえています。その中で選べるラインナップができました。

臼田勤哉