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パナソニックが考える「日本の4K」。VIERA CX800の狙いとは?

ニーズに応え高輝度IPS+サウンド強化+Firefox OS搭載

 大型化やプレミア化などで、テレビ市場の牽引役となっている「4K」。その国内4Kテレビ市場において、2014年初頭から2015年にかけての大きな変化といえば、パナソニックの躍進だろう。

 2013年までは「TH-L65WT600」1モデルの展開であったが、2014年春モデルのVIERA AX800シリーズでは、プラズマを継承した画質と高機能、リーズナブルな価格などでシェアを拡大。秋には4Kエントリー機のAX700シリーズと、高画質AX900シリーズを投入したことで、年明けにはトップシェアを獲得。2015年度も30%以上のシェアを目指していくという。

 4Kテレビの最後発から、一躍トップグループに入ったパナソニック。2015年度もシェアトップを狙うという中で、5月22日から発売するのが、高輝度IPSパネルやFirefox OSの搭載するなどで一新したCX800シリーズだ。同じくFirefox OS搭載の4Kエントリー機CX700シリーズと、昨冬から継承したAX900シリーズの3シリーズで2015年の4Kテレビ商戦に挑む。パナソニックの4Kテレビ展開について、パナソニック アプライアンス社 テレビ事業部 商品企画部 日本商品企画課 課長の木原麻登氏に聞いた。

テレビ事業部 商品企画部 日本商品企画課 課長 木原麻登氏

CX800のJAPAN PREMIUMとは?

木原氏(以下敬称略):パナソニックとしては、「4Kの時代にテレビ市場をどう変えていくのか」が、大きなテーマとしてありました。'13年に「TH-L65WT600」1モデルを出したものの、4K商品で他社に出遅れていました。'14年春にプラズマの流れを汲み“忠実画質”をキーワードに色に徹底的にこだわったAX800シリーズを投入しました。その点はかなり評価を頂きました。秋には、4Kをより広くの方に楽しんでいただけるようにAX700シリーズ、そして4KのトップエンドであるAX900を揃えたことで、ようやく様々なご要望にお応えするラインアップができたと考えています。

60型の「TH-60CX800N」

 2015年は、4K放送が始まりましたし、ひかりTV 4Kも始まりました。また、Netflixやアクトビラなど、4K映像配信サービスの準備も進んでいます。4Kコンテンツは間違いなく増え、さらに来年2016年にはBSの4K放送も控えています。パナソニックは、オリンピックスポンサーです。2020年の東京オリンピックに向けて、放送機器から民生用のカメラ、テレビまで4K商品陣容として持っている強みを活かし、しっかりと4Kに取り組んでいきます。

フラットデザインのTH-55CX700

 2015年の4Kテレビとして、中核シリーズとなるCX800は、スタンドをテレビ本体と一体化し、画面を3度傾斜させたスラントデザインの「CX800N」と、通常のスタンドを採用するフラットデザインの「CX800」を用意。それぞれに49型、55型、60型の3モデル展開となる。CX700シリーズは、40/50/55型の3モデルを用意する。

 CX800シリーズで、新たにパナソニックが掲げたキーワードが「JAPAN PREMIUM」だ。今回発売のCX800シリーズのほか、最高画質「AX900シリーズ」はJAPAN PREMIUM PROとなる。

 JAPAN PREMIUMといわれると日本製、MADE IN JAPANという意味と思われるだろう。実際にCX800/AX900シリーズとも国内設計/国内製造の日本製であるのは間違いないのだが、それ以上の意味を込めているのだという。

 JAPAN PREMIUM製品では、「住空間の価値を高めるディスプレイ」、「日本の暮らしに寄り添った商品提供」、「感動の高画質と驚きの使いやすさ」の3点を重視。それらの高付加価値を持った製品であることをJAPAN PREMIUMの名称でアピールしていく。

CX800シリーズでは「JAPAN PREMIUM」を訴求

 木原氏は、CX800におけるJAPAN PREMIUMを、画質、音質、デザイン、操作性の4点で説明する。それはそのままCX800で強化した部分となる。

木原:4Kはもちろん絶対条件ですが、それだけではありません。日本のお客様に向けに、視野角の広さであったり、ヘキサクロマドライブ搭載による色の表現、インテリアに馴染むデザイン。さらに、今回かなり力を入れたのが音質です。これらの“プレミアム”を取り入れた製品が、まさにCX800であり、JAPAN PREMIUMとなります。

IPSの広い視野角にこだわり。実は直下型LED採用でHDR対応

 CX800シリーズで取り組んだ画質面での強化ポイントは、4K高輝度IPS液晶パネルの採用による、“明るく見やすい”映像と、独自の「ヘキサクロマドライブ」による色表現の拡張、そして、4K対応BDであるUltra HD Blu-rayでも採用が決まったHDRへの対応など。また、LEDバックライトの部分制御(ローカルディミング)に対応し、LEDの明滅を制御し、黒の締りの向上や明るいものをより明るく復元するなど高コントラスト化が図られた。

木原:(最上位の)AX900シリーズの画質については、高い支持/評価を頂きました。その中でも、日本では特に「IPS」による“視野角の広さ”が支持を頂いています。家族が横に並んで見ていても、見る位置によって色の変化が少ないという点ですね。スマホなどで家電がどんどんプライベート向けになる中で、家族が皆で楽しめるテレビという家電製品を、より多くの人に楽しんでいただくために広い視野角が重要です。ですので、まずそこを強化したのが、今年のCX800シリーズです。

高輝度IPSパネルがCX800シリーズ最大の画質進化点

 色という点では、AX800シリーズでも評価を頂いていましたが、「ヘキサクロマドライブ」も、新しいパネルやバックライトにあわせて強化しました。色域や色の階調性など、色表現力はAX800シリーズの1.6倍に広げています。その色をどの場所から見ても忠実に楽しめるという点でIPSが効いてきます。

 なお、CX800シリーズのバックライトは60/55型が直下型LED、49型がエッジ型LEDとなっている。一般的に直下型LEDのほうが画質的には有利で、積極的にその点を訴求するメーカーもあるが、木原氏は、「特段、直下型をアピールするつもりはない」と語る。

木原:お客様にとっての価値を考えると、CX800シリーズでは直下やエッジという方式の違いで、画質に大きな差はないと考えてます。一方、AX900シリーズの直下型LEDバックライトは、エリア分割数も多く、より積極的にローカルディミングを活用しています。それによる画質の違いは、画質を再優先するお客様に訴えたい部分です。

ヘキサクロマドライブを搭載
AX800シリーズ比で約1.6倍の色表現力に

 また、明るさの向上も特徴。AX800シリーズでは、色やプラズマ画質を継承した画作りで評価を得た一方、“おとなしい”という声もあったという。その後のAX900では、明るさを大幅に向上し、液晶の良さ+プラズマという点で高い評価を得たこともあり、CX800においては明るさを確保した。

 つまり、最上位のAX900シリーズで評価された、IPSや明るさといった部分を中核機となる800シリーズにも導入したものがCX800シリーズといえる。

 一方、AX900にないCX800ならではの特徴が、アップデートでの対応となるが、HDR(ハイダイナミックレンジ)信号への対応。簡単にいえば、現在はテレビでの表示に合わせて圧縮されてしまっている明暗のダイナミックレンジを、カメラが捉える広いダイナミックレンジのままそのまま映像信号に載せてしまおうというものだ。Ultra HD Blu-rayのほか、NetflixやAmazon Instant Videoなどでの導入が見込まれている。

 CX800シリーズのHDR対応については、「HDR信号が送られてきた場合に、認識して対応できるか」、「パネルの表現力の部分(階調表現力)の確保」、「映像処理回路における、HDR信号対応」などにより、HDRの規格化以前に対応を準備。規格が固まり、実際に製品やコンテンツが投入される際、ソフトウェア・アップデートで対応予定としている。画質にこだわり、さらに長く使うという点でも、期待したいポイントだ。

HDRに対応予定

省スペース大画面でも「音」にこだわる

 また、画質とともに「今回かなり力を入れた」と語るのが音質。総合出力40Wの高出力アンプの「ダイナミックサウンドシステムPRO」を搭載。テレビの4K化に伴い、音質の向上を求める声も多くなってきていることから、重点的に強化したという。

サウンドは、「ダイナミックサウンドシステムPRO」で強化

 CX800シリーズは、10W×2ch+10W×2chの総合40Wに強化(AX800シリーズは4W×2ch+10Wの総合18W)。また、フルレンジ×2+ウーファ×2に加えて、前面と背面に追加したクアッド・パッシブラジエータにより、不要な振動を相互に打ち消し、歪みの少ない重低音再生を実現。スリムなスピーカーユニットも、ネオジウムマグネットの採用により大音量の効率的な再生を可能とした。

木原:欧州ではデザイン重視で狭額縁化が優先されてきましたが、最近日本市場では、テレビの音についての満足度が下がってきていることが調査でも明らかになっています。声やセリフが「聞こえにくくなった」という意見が増えており、音に対する満足度が年々下降してきている。これまでは薄型化と大型化で割り切ってきた部分ですが、今回はかなり力を入れて強化しました。

 しかし、ただ音を強化しただけでなく、デザインや設置性を損なわないというのは大前提です。例えば、テレビの買替えが増える2007〜8年頃の37型の設置スペースに、今回の49型も設置できるよう配慮しています。大画面に置き換えても音は良く、それでいて狭額縁のメリットを引き継ぎたい。それがCX800で取り組んだことです。

スラントデザインを訴求

 目を引くのがデザインだ。今回のCX800シリーズでは、スタンドをテレビ本体と一体化し、画面を3度に傾斜させた「スラントデザイン(CX800N)」と、通常のスタンドを採用する「フラットデザイン(CX800)」。実売価格でスラントデザインのほうが1万円ほど高価になるが、機能や画質/音質での違いはない。サイズも、それぞれのデザインで、49型、55型、60型が用意されている。

2種類のデザインを用意
スラントデザインのスタンド部

木原:日本においても、『フローリングとイスの文化』が定着しています。こだわったインテリア空間のなかでの見栄えの良さを提案をする。それでいながら、映像の見やすさにつながる狭額縁という特徴は継承していますので、結局映像の没入感につながる。映像に集中できるものにしました。一方で、いままでのテレビ台を使いたい。あるいは畳の部屋で使いたい。そういったお客様に応えられるように、フラットデザインも用意してます

 パナソニックではスラントデザインを新たな提案として強調しているが、重要なのは「ユーザーが選べること」と木原氏は語る。

木原:昨年のAX800シリーズでも、スラントデザインを提案しましたが、お客様やお店の方には新しい提案として、伝えきれていなかった部分があります。たとえば店頭での演出、そしてサイズ展開ですね。(AX800シリーズでは、スラントが50/58型、フラットが50/58/65型だったが)今回はスラントとフラットの両デザインとも3サイズ用意しましたので、純粋に好みと環境で選んでいただけるようにしました。

シンプルながらサクサク動作のFirefox OS採用理由とは?

 また、注目されるのはFirefox OSの搭載だ。ホーム画面「かんたんホーム」に、[テレビ]、[アプリ一覧]、[接続機器一覧]という大きなアイコンが並び、アプリや機能を50個まで追加できるというかなりユニークなUIになっている。

Firefox OSを採用した「かんたんホーム」
インフォメーションバー

 かんたんホームには、よく使うアプリや、接続機器、録画番組、Webサイトなどを登録することで、次回利用時に素早く呼び出しできる。YouTubeやHulu、アクトビラなどの映像配信サービスのアプリも用意されている。

 実際に使ってみると、操作レスポンスは非常によく、テレビからネットサービスの立ち上げもスムーズ。テレビ系とネット系が自然に融合したユニークなUIになっている。

接続機器一覧

 一方で、Firefox OSをテレビ向けに使うのは、パナソニックだけ。Android TVなど他の選択肢が多くある中で、なぜFirefox OSを採用したのだろうか?

木原:アプリ開発の自由度が高く、また、お客様が使うときの自由度が高い。制約が少ないという考えで採用しました。画面づくりや構成の自由度が高く、アプリもHTML 5ベースで汎用的なWebの技術が使え、自由度が高い。それによりハードウェアへの制約も少ない。CX800でYouTubeを見ていただければわかりますが、選んでから再生までの処理が早く、“サクサク感”が出せます。この点は実際にお使いになった方はかなり驚いていただけています。利用者の使い勝手も一番いいだろうと判断しました。

様々なアプリが用意される

 また、Android TVの場合、アプリのダウンロードに、Googleアカウントの登録などが必要となる。一方、VIERAにおけるFifefox OSでは、パナソニックが審査/承認したアプリがマーケットに提供され、それをダウンロードする形となるため、外部サービスのIDやパスワードが不要で、よりシンプルな使い勝手が実現できる。もちろん、アプリの数などはAndroid TVのほうが多くなるだろうが、“わかりやすさ”を重視しての判断のようだ。

 操作レスポンスは良いが、一部の回路や半導体の改良は加えているものの、Firefox OSの採用にあたりプラットフォームを一新したわけではないとのこと。細かなチューニングを重ねレスポンスの向上を果たしているという。

かんたんホームにYouTubeアプリを追加
新タッチパッドリモコン

 アプリも、YouTubeやHuluなど、従来のスマートVIERAの中でも利用頻度の高かったものはほとんど揃っているとのこと。ネット機能の利用には当然インターネット接続が必要だが、特に4Kの上位モデルについてはかなり接続率がかなり上がっているという。ニーズが高いのは「圧倒的にYouTube」とのことだ。

 ネット接続の魅力として訴求していくポイントが「音声操作/検索」。CX800シリーズでは、タッチパッドリモコンを使った音声検索のほか、本体に話しかけて操作できる「ダイレクト音声操作」にも対応。リモコンを持たずに音声だけで、テレビのチャンネル変更や、ボリューム操作、ネット動画検索などが行なえる。特にYouTubeのコンテンツ検索など検索操作の使いやすさをアピールし、ネット接続率向上につなげていきたいという。

ニーズに向き合い正常進化したVIERA CX800

 気になるのは4K放送対応について。東芝、ソニーと124/128度CSの4K放送チューナを内蔵し、スカパー! 4KやChannel 4Kなどの放送をテレビだけで視聴可能になった。

 VIERAでの4K放送対応について、木原氏に尋ねると、「4Kコンテンツを見る環境は出来る限り提供したい。ただ、まずはVODなどネットワークの配信環境に対応していく。公共波の4K放送が始まれば、そこは当然外せない」とのことで、2016年のスタートが予定されているBSによる4K放送対応を念頭においているようだ。

 木原氏は、パナソニックのテレビの狙いを「住空間の価値を高めるディスプレイ」と表現。「テレビを放送波を見るだけのもの、と捉えるにはもったいない。お客様の生活を豊かにするものであって欲しいし、そこに進化させていきたい」と語り、ネットワークと一体となったテレビの価値向上をアピールする。

 画質や音質、デザインに大きく手を入れ、OSや操作系も一新。かなり挑戦的なモデルチェンジに見えるVIERA CX800シリーズ。このCX800で2015年の市場をどう戦うのか? 木原氏に尋ねると意外な答えが帰ってきた。

木原:チャレンジという意識はあまりなかったですね。打てる手を真っ当に打ったと考えていますので。ニーズに向き合って、昨年の製品で指摘されたポイントについて、出来る限り対応してきたつもりです。それが視野角や明るさといった「画質」の部分、それから「音質」、「デザイン」。サイズラインナップもそうですね。VIERAが目指す「感動を伝える絵と音、更に驚きの使いやすさ」という柱は変わらない。そこを正常進化させて、盤石なものにしていきたい。

(協力:パナソニック)

(臼田勤哉)