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真夏のスキー場でドローンレース! 「DJI EXPO」レポート

 8月1日、オフシーズンのスキー場である舞子スノーリゾート(新潟県)でドローン愛好者のファンミーティング「DJI EXPO」が開催された。業界最大手のDJIが主催する同イベントでは、初心者向けのフライト講習や、自由にドローンを飛ばせる飛行エリア、臨場感あふれるドローンレースなどのプログラムを用意。本記事では、約300名の来場者でにぎわった会場の様子をレポートしていく。

ドローンのエキスパートがレクチャーする「New Pilot Experience」

 今回、「DJI EXPO」の会場として使われた舞子スノーリゾートは、オフシーズンの期間だけ敷地をドローン飛行場として解放している数少ないスキー場だ。普段は9時から16時までの営業時間であれば、3時間2,000円、1日3,000円で敷地内でのフライトを楽しめる。そんな会場に入ると、まず初めに驚かされたのが、来場者の年齢層の幅だ。てっきり趣味に情熱を燃やす成年男性が多いものと思っていたが、若いカップルや家族連れ、ひいては杖をついたお年寄りまで、その年齢層は意外と広い。もちろん、ここにいる全員が機体を所有しているわけではないだろうが、世代を問わないドローンの広がりを垣間見た気がする。

スタッフと受講者のマンツーマンで行われたフライト講習の様子

 当日は全3回の初心者向け講習「New Pilot Experience」が開催され、DJIが提供するプログラムに沿ったレクチャーが行なわれた。受講者は室内で講習を受けたのち、スタッフのサポートのもと屋外でのフライトを体験する。中には購入後に初めてドローンを飛ばすという受講者もいたようで、ホバリングの安定性に驚きの声が上がっていた。

会場では、Phantom3をはじめとするDJI製のドローンや初心者向けの解説本も販売された

広大な敷地で思う存分フライトを楽しめる「Free Fly Zone」

 舞子スノーリゾートの広大な敷地を利用した「Free Fly Zone」では、中上級者のドローンユーザーがDJIスタッフのサポートを受けながら自由にフライトを楽しんでいた。

「Free Fly Zone」。当日は天候にも恵まれ、遮るものがない広大な敷地でのフライトを存分に楽しめた

 筆者も愛用機のPhantom3を持参して15分間のフライト体験に臨んだが、なんと現地で不具合が発生。「ここまで来てまさかの故障か……!?」と焦っていたところ、DJIスタッフの方に助けられた。やはりドローンのエキスパートにアドバイスをもらいながら飛ばせるメリットは大きい。フライト歴が多少はある筆者でも、普段得られない学びや気づきがあった。

「Free Fly Zone」で空撮したムービー。DJI Phantom3 Professionalを使い、4K(3,840×2,160/29.97fps)で撮影した。ホワイトバランスはオート

本格的なレースマシンも参戦したドローンレース

 「DJI EXPO」で最大の盛り上がりを見せたのは、腕利きのドローンユーザーが集結したドローンレースだった。午前と午後の2回開催されたレースでは、Phantom 3やBebop Droneといったおなじみの機体に加えて、スペック上で最高時速100km以上を誇る本格的なレース用ドローンも参戦。高速で飛び回るドローンの迫力と華麗なコーナリングが観客を沸かせた。

会場に特設されたレースコースの様子。ゲートをくぐり、2本のフラッグを折り返して先に3周したドローンが勝利となる
Phantom同士で行われた午後の部の3位決定戦はデッドヒートに……! その後の決勝では、レース用ドローンQAV250がPhantom 3を圧倒。見事な勝利を飾った
(撮影機材は富士フィルム「X-M1」)
写真左から、岡聖章さん(2位、使用機体Phantom 3)、高橋亨さん(1位、使用機体QAV250とRC EYE ONE XTREME)、番場彬さん(3位、使用機体Phantom 2 Vision+)。午後の部の表彰台に輝いた3名には、魚沼産コシヒカリ「天空」や、DJI社の協力の基、筆者が制作した書籍「ドローン空撮入門」(インプレス刊)が贈呈された

 午後の部で見事優勝に輝いた高橋亨さんは、3DX-Japan協議会の代表理事も務めるラジコンヘリ業界の実力者。「実は僕、ハイテックのサポートフライヤーを務めているので……」と語るその手には、愛用のRC EYE ONE XTREMEを携える。決勝では本格的なレースマシンであるQAV250に機体をチェンジし、午前の部チャンピオンの岡聖章さんと白熱のレースを見せてくれた。

 一方、抜群のコーナリング技術で見事3位入賞を果たした番場彬さんは、全日本ラリー選手権でクラス優勝の経歴を持つトップドライバーだ。これまでは空撮の用途でドローンを活用してきたという同氏だが、レースへの参戦は今回が初となる。レース終了後に感想を聞くと、「ドローンには3Dの駆け引きがある分、平面を走る車とは違った面白さがありました」と笑顔で語ってくれた。

見事3位に入賞した番場彬さんが手にした賞品は、偶然にも自身が出演する書籍「ドローン空撮入門」。見本誌も含めるとこれで3冊目になるのだとか(笑)

 今回のドローンレースを取り仕切ったのは、日本ドローンレース協会で代表理事を務める黒田潤一氏だ。国内ではまだ前例の少ないドローンレースだが、今後は子どもが楽しめるホビードローンをメインにしたイベントなども積極的に行っていきたいと語っていた。

日本ドローンレース協会代表理事の黒田潤一氏

DJI Japan担当者が語る今後の展望

 多くのドローンユーザーが訪れ、盛況のうちに幕を閉じた「DJI EXPO」。イベントの最後に、企画を取り仕切ったDJI Japanの丸川英也氏に今後の展望をお聞きした。

DJI Japanの丸川英也氏

─これだけの規模のファンミーティングを開催するのは、御社では初の試みになると思います。「DJI EXPO」は、どのような経緯で開催することになったのでしょうか?

丸川英也氏(以下敬称略):規制やルールが少しずつ定まっていく中で「ドローンはどこで飛ばしたらいいの?」という声は日に日に大きくなっています。そんな声を受けて、我々としても皆様に心置きなくドローンを飛ばせる場所を提案していきたいと考えました。

─今回、特に盛り上がりを見せていたのがドローンレースでした。DJIではすでに海外で「DJI Games」というレースイベントも開催されているようですが、いずれは国内での開催も視野に入れているのでしょうか?

丸川:「DJI Games」はぜひ国内でも実現したいと思っています! 現在は開催に適した場所のリサーチなどを進めている段階ですので、今回の経験を活かしつつ実現に向けて動いていきたいですね。

 トップシェアを誇るDJI社は、プロダクトの発信だけに終始しない貪欲な姿勢で業界を牽引し続ける。同社が踏み出す新たな試みに今後も注目していきたい。

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中筋 義人

編集者/株式会社エディトル代表。出版社で雑誌編集部に勤務。その後、ソフトウェア開発会社勤務を経て独立後、編集プロダクション、エディトルを設立。雑誌や書籍、Web、アプリなど、さまざまな企画に関わる。最近はウェアラブルデバイス、アクションカメラ、ドローンを中心に制作活動を展開している。主な著書に「ドローン空撮入門」「Apple Watchのすべてがわかる本」など。