トピック
徹底的に性能本位。OPPOの究極BDプレーヤーの秘密
もはや量産ではない? JAPAN LIMITEDのこだわり
(2015/8/28 10:00)
OPPO Digital Japanは、日本独自企画のBlu-ray Discプレーヤー「BDP-105D JAPAN LIMITED(BDP-105DJPL)」を8月より発売開始した。DSD 11.2MHz対応のほか、音質に悪影響をおよぼす高周波ノイズ対策などを行ない、特に“音”にこだわった最上位ユニバーサルプレーヤーとして日本限定で展開する。
JAPAN LIMITEDのベースモデルとなったBDP-105DJPをはじめ、OPPOのBD/ユニバーサルプレーヤーは、テレビメーカーやプロジェクタの取材、視聴イベントなどでよく使われている定番的な製品。BD/SACD/CDなどの確かなディスクメディア再生品質に加え、ネットワークオーディオやUSB DAC対応など機能の豊富さ、新機能への対応力などで人気を集めている。
一方で、BDプレーヤー市場が成熟しつつあり、さらに4K対応の「UHD Blu-ray」のライセンスもスタートし、年内には製品も登場しそうな勢い。4Kを目の前になぜ「いまフルHD BDプレーヤーの新製品? 」という疑問も湧く。
そもそも、ベースモデルのBD-105DJPも、日本向けに電源仕様やDTCP-IP対応などを盛り込んだ日本向けモデル。JAPAN LIMITEDとの違いはどこにあるのだろうか? そしてなぜいま日本専用モデルを投入するのか? JAPAN LIMITED開発メンバーである、OPPO Digital Japan技術部 ディレクターの羽賀武紀氏、ITシステム室・開発室・品質評価室 室長の山本晋也氏、ディレクター 広報・マーケティング担当 松浦亮氏に聞いた。
目指したのは、オーディオプレーヤーとしての進化
開発のきっかけは至ってシンプル。OPPO Digital Japanのメンバーが日々BDP-105DJPを使う中で、「もっとポテンシャルは高いはず。最終的な画、音を詰め切りたい」という思いを抱いていたという。
松浦氏(以下敬称略):OPPOのフラッグシップレンジは、BDP-95、105とモデルチェンジを続け、105にDarbeeプロセッサを搭載した105D(日本向け型番105DJP)へと進化を続けてきました。OPPO Digital本社は、この105DをフルHDのBDプレーヤーの最終モデルとし、次期開発はUHD BD対応機というロードマップを描いていました。しかし、UHD BDフォーマットの規格化とライセンス開始が予想以上に遅れたため、OPPOとしてのUHD BDの製品化には当初予定より時間を要することが避けられない状況です。
それでも本社の開発ロードマップに変更はなかったのですが、単なるBDプレーヤーではなく、ユニバーサル・ハイレゾ・オーディオプレーヤーとして位置づけられるOPPOのユニバーサルBDプレーヤーであればこそ、さらに熟成度を高めた製品を出すべきだと日本サイドは考えていました。その理由は、日本市場でのハイレゾ音楽に対する関心は他地域よりはるかに高いということと、我々自身が「105Dのポテンシャルはもっと高いはず」という確信があったからです。
またお客様とコミュニケーションをしていくと、新フォーマットに対して高い期待がある反面、ソフトの供給に対する不安の声もあり、当面主流となる既存BDソフトの再生について、さらなる熟成を求める傾向が強いことが判りました。そこで、まずはアイデアを形にしてみて可能性を探ろうとしたのがプロジェクトのきっかけでした。
従来の105DJPなども、電源仕様やCPRM、DTCP-IP対応など日本向けの仕様を盛り込んだ「日本向けモデル」だった。しかし、今回のJAPAN LIMITEDは、商品企画そのものが日本発で、販路も日本だけという「完全日本限定モデル」となる。
このJAPAN LIMITEDの企画原案に対して、OPPO Digital 本社からは、ある条件が提示されたという。
それは「基本回路設計、システム設計には変更を加えないこと。OPPO Digital本社の規定する性能基準、製品品質基準にすべて合致すること」というもの。新たな回路を起こしたり、デバイスの変更となれば、コストも開発期間/工数も大幅にかかる。基本設計を変更しない、というのは、ある意味当然の要求だ。
しかし、特に映像技術は日進月歩で、新世代のデバイスを搭載すれば、その分の性能向上が見込める。世の中の多くの「新製品」はデバイスの更新タイミングで登場することが多い。だが、JAPAN LIMITEDはそこに手を入れずに製品企画しなければならなかった。そこで「ユニバーサル・ハイレゾ・オーディオプレーヤーとして高音質を追及」を開発の第1プライオリティにしたという。
松浦:最新世代のデバイスは使えない。だから、BDプレーヤーとして画質を劇的に改善しようという方向ではなく、むしろユニバーサルなハイレゾオーディオプレーヤーとして、BDP-105DJPの音質にはまだ伸びしろがあるのではないか? 進化させられるはず、と考えました。
「なぜ4K前夜にフルHDのプレーヤー?」という声もありますが、オーディオプレーヤーとしての進化を突き詰めておけば、UHD BDが出たあとでも価値は損なわれず、ハイレゾプレーヤーとしてそのままお使いいただけます。そこを目指そうと。ただ、高周波ノイズ対策が映像に効くと、確信もありました。結果的に、それによる画質向上は予想をはるかに超えていました。
最近のオーディオ製品では、USB DACやネットワークプレーヤーが人気。JAPAN LIMITEDにも当然それらの機能が入っているが、JAPAN LIMITEDは、まずはBD/SACDユニバーサルプレーヤーであり、それらを包含した“オールインワン”で進化させることにこだわった。
島(OPPO Digital Japan プロジェクト執行・販売推進担当ディレクターの島幸太郎氏):いま最も需要があるデジタルオーディオ機器がUSB DACであり、そこを革新していくのは重要なテーマ。11.2MHz対応はその一環です。USB DACをもう一個用意する必要のないオールインワンメディアプレーヤーを提供するというのがOPPOのフィロソフィー。きちんと、「ユニバーサルプレーヤー最高級機」として提案するのがJAPAN LIMITEDです。
基本設計は最小限の変更で、手練のエンジニアがチューニング
ユニバーサルなハイレゾオーディオプレーヤーを目指した「BDP-105D JAPAN LIMITED」。その強化点は主に3点。「オーディオマスタークロックの高速化/高精度化」、「機器内部と外部振動に対する制振対策」、そして「機器内部の高周波ノイズ対策」だ。これらの対策に日本製のマテリアルを使用したことも特徴といえる。
羽賀:電気的な変更があった部分というのはDACのマスタークロック変更です。ES9018Sはクロック精度に非常にセンシティブなDACチップで、変更による音質向上には初めから確信がありました。さらにクロックを高速化することで11.2MHz対応も見込んでいました。もっとも、その時点では開発スケジュールも限られており、11.2MHz対応に開発リソースをどこまで割くか悩みもありました。しかし、仕様を検討するなかで11.2MHz対応は、最新のハイレゾプレーヤーとして必須の機能と考えるようになりました。実際、評論家の皆さんに伺っても「11.2MHzから体験が変わる」とおっしゃる。であれば、この製品で11.2MHzの世界を何とかして見せたいな、と思いました。
BDP-105DJPは、DACの「ES9018S」の直近に、DA変換回路の動作基準となるマスタークロックデバイスを用意しているのですが、JAPAN LIMITEDでは、そのクロックデバイスを大幅に動作周波数を上げた、日本電波工業(NDK)の低位相雑音のものに変更しています。
ただ、電気回路的な変更が行なわれたのは、その1カ所だけです。2chの基板と7.1chの基板は(ベースモデル105DJPの前世代となる)105JPの時代から全く変わっていません。回路部品も全く同一です。
山本:USB基板も105DJPと同じですが、ファームウェアは変わっています。11.2MHz対応用に日本から出したアイデアを本国のソフトウェアエンジニアが作りこんで実装しています。
そのため、105DJPとJAPAN LIMITEDのUSB基板のファームウェアは別となり、例えば、ユーザーが自己責任でクロックを交換しても、11.2MHz対応にはならないという。
羽賀:105DではDSDはDoPのみの対応でしたが、今回はASIOネイティブに対応させた上で、11.2MHzまで対応を広げた形になります。
加えて、高周波ノイズ対策や振動対策を徹底し、音質への悪影響を排除した点もJAPAN LIMITEDのもう一つの特徴だ。概要は以下のとおり。
- 非磁性体金属による、強化パーツ追加で、内部不要振動を抑え重心をセット中心に極力近づけた「オプティマル・バイブレーション・コントロール・アラインメント」
- BDドライブは、ローダーメカ部の天板を非磁性体3mm厚ステンレス金属加工部品に変更し、ディスクローディングメカの剛性アップ、ディスク由来の振動を抑制、読み取り安定性の向上と重量バランスの適正化
- 電源部の鋼板カバーの上に非磁性体3mm厚ステンレス金属加工部品を追加。重量バランスの適正化とスイッチング電源部から発生する高周波ノイズの遮断
- 高周波ノイズ対策を、電源部と高速動作をする基幹プロセッサ群、アナログオーディオ基盤に実施。旭化成せんい製のノイズ抑制素材「PULSHUT(パルシャット)」を採用し、可聴帯域からMHz帯~GHz帯までの広い周波数帯域のノイズ対策
つまりJAPAN LIMITEDは、BDP-105DJPをベースに、クロックを変更し、振動/ノイズ対策を徹底したチューニングモデル的な製品といえる。ただし、松浦氏は「OPPO Digital本社の性能基準、品質管理基準に基づきチューニングされている」点を強調する。
そのため、チューニングは単に聴感上のテストだけで行なわれているわけではない。本国で各種性能試験を実施し、データでもOPPO基準をすべてクリアしていることを確認している。「ノイズ量の削減などの信号レベル、空間ノイズなど全部測定し、保証しています。それが、OPPOがブランドで製品を提供する責任」という。
JAPAN LIMITEDの測定データにおいては、上記の対策などにより、BDP-105DJPとの比較で、100Hz帯で約10dB、それ以上の可聴帯域でも平均約3dBのS/N比改善が図られたという。
ノイズ&振動対策の実際
JAPAN LIMITEDの鍵となるのが、上記のようなノイズや音質対策のノウハウを豊富に持つエンジニアが、チューニングから製造まで担当・監修していること。いずれも長いキャリアを持ち、羽賀氏は、デノンでAVアンプの開発や商品企画を手がけ、前職のDolbyでは、Dolby Atmos製品のライセンシー向け開発支援や製品評価を担当。松浦氏もパイオニアのLD、DVDの開発や商品企画を担当し、HDL-X0、DV-S9など製品を手がけた後、Dolbyにてホームシアター向けライセンス技術やシネマ用Dolby Atmosなどを担当した。山本氏は、OPPO Digital Japanのオリジナルメンバーで、BDプレーヤーBDP-10xJPシリーズのファームウェアにおける、DTCP-IP対応やAV分離HDMI出力などは同氏が担当した。
手練のエンジニアが、「まだポテンシャルを残している」と感じていたBDP-105DJPに手を加えたJAPAN LIMITED。では、これまでの105DJPにどのような課題を感じていたのだろうか? そしてJAPAN LIMITEDでは、どのように改善していったのだろうか?
羽賀:OPPO Digital Japan入社前から気になっていたのは、シールドですね。大きなメインのデジタル回路と、DA変換を含めた、2chとマルチチャンネルのオーディオ回路、それらの間に全くシールド(遮蔽)がありません。日本のメーカーの感覚だと、分かれているのが当たり前で、まずシールドから始まる。
シールドを入れれば、筐体も重く、硬くなる。一般的なオーディオの発想だと思います。ただ、OPPOはそういう発想で設計していないようなのです。ですから、音質的に改良の余地がある基板と基板とが直接している部分にシールド素材を加えてはどうか? という着想は最初からありました。
そこで今回、旭化成せんいのパルシャットというノイズ抑制素材を使って、基板の裏を全部シールドし、電磁波を抑制・吸収するようにしました。また、大きなLSI、特にビデオ系の高いクロックで回っているものは、高周波ノイズが出ますので、そこにもパルシャットを使っています。メイン基板でも、HDMI出力は高周波信号を扱いますし、Ethernetも何が流れるかわからない。これらにもパルシャットを使っています。あとは、電源部ですね。
松浦:BDP-105DJPは、メインボードを動かすスイッチング電源と、オーディオ用リニア電源の2つを持っています。まずメインは、スイッチング電源ということで、凄い高周波がでているんですね。板金のシールドは一応ありますが、それだけですので、「ここの電源ノイズを対策すると、確実に良くなるだろうね」という話は、事前にしていました。
ただ、JAPAN LIMITEDには、「メインシステムをいじらない」という制約がありますので、電源をそのまま交換する訳にはいかない。だから「この電源のノイズをどこまで抑えられるかが勝負」と、当初から考えていました。ここを抑えないと、ほかをどれだけ良くしても、画質や音質の伸びしろ、オーディオ的に言うと「ヘッドルーム」と言っても良いと思いますが、この伸びしろが確保できない。「とにかく電源ノイズを下げて、信号のダイナミックレンジを稼ごう」というのが、スタートでした。
ですから、最初のプロトタイプは、電源ノイズ対策“だけ”をやったんです。それだけで効果があれば、次のステップに行く、ダメだったらプロジェクトを中止しようと考えていました。結果が良かったので、製品化できたわけですが。
ノイズ対策素材についてもいろいろ試しました。一般的な銅箔シールドや、アルミ箔シールドなども試しましたが、パルシャットの効果は圧倒的でした。非常に高価な部材ですので採用については社内でも議論がありましたが、最終的には音質への改善効果を踏まえ採用することになりました。
もう一つ。振動対策は絶対にやろう、と考えていました。特に光学ドライブ部、ディスクローダーの天板ですね。ローダー自体は変えていないのですが、天板を3mm厚の非磁性体ステンレス金属に変更しています。
山本:この天板に変えてCD再生した音は、明らかに違います。低域の音質向上が顕著でした。個人的にはオーディオ的な品位の向上に一番効いたのはこれかな、と思っています。
振動対策については、OPPOの製品情報ページでも強調されており、「不要振動を抑えたオプティマル・バイブレーション・コントロール・アラインメント」を採用したという。この説明だけではよくわからなかったが、松浦氏によれば、筐体が「揺れない」のではなく、「揺れ方を制御する」という取り組みだという。
松浦:最初は、アセンブリ(光学ドライブ部)に制振ゴム系の張物で、ドライブ自体の制振を試しました。しかし音を聞いてみると、SNだけはいいのだけど、音楽にエネルギー感が無くなってしまって……。そこで、振動を“吸収”してはダメなのかもしれないと発想を改めました。ディスクプレーヤーの場合、元々強固で、はじめから「揺れない」構造が理想ではありますが、BDP-105DJPの場合、組み上げた時の強度はあるのですが、そもそも軽量で「揺れない」構造とはいえません。ですので、「揺らさない」という方向ではなく、重心調整や配分で、「揺れ方を制御する」というアプローチを取りました。ある程度揺れても、特定の部分だけ振幅が大きくならないような重量バランスをXY軸方向(平面)、Z軸方向(垂直)で実現しました。
シャーシ下の3mm厚アルミボトムプレートの追加や、TAOC製の鋳鉄インシュレータの採用も、この考えに基づくものだという。これらの対策に伴い、本体重量はBDP-105DJPの7.9㎏から10.7kgに増加している。
松浦:単純に製品重量を重くしたいのであれば、ボトムプレートはアルミじゃなくて鋼板でも鋳物でもいいわけですが、この製品のアプローチとは異なります。また、底面には風穴があり、放熱性にも配慮しないといけないので、アルミにし、ボトムプレート自体が放熱するようにしました。
こうした対策の結果、松浦氏が予想以上だったというのが「画質への影響」だ。音質強化に注力した製品コンセプトのJAPAN LIMITEDだが、画質面でも明確な効果があったという。
松浦:スイッチング電源、メインボードなどのノイズ対策で、画質改善があることは確信していましたが,ここまで向上するとは思っていませんでした。
米国の開発力と日本のノウハウが詰まったJAPAN LIMITED
JAPAN LIMITEDの開発期間は約9カ月。かなり短期間と感じるが、それは基本設計を大きく変えていないためだろう。ただし、最終的に製品として仕上げるまではやはり紆余曲折あったようだ。特に米国OPPO Digitalとしても初の“海外”企画モデルだ。米OPPOと日本の関係はどうなっているのだろうか?
島:JAPAN LIMITEDの開発に入る前に、実験レベルでES9018Sのクロックを載せ替えたことがあります。興味深いことにすごく良くなった部分と、むしろ悪くなった部分とがありました。ただ、クロックを変えることでのポテンシャルは十分に感じられましたので、きちんと音を仕上げたい。ただチューニングは相当追い込まないといけないなと覚悟しました。
やはりクロックを載せ替えるだけでは、OPPOの目指す音から逸脱してしまうんです。OPPOをお求めいただけるユーザーさんは、OPPOの音作りや画作りを納得し、支持していただける方。ですから、我々のJAPAN LIMITEDもその路線から逸脱するものではなく、OPPO Digitalが求めている音や映像品質をどれだけ拡張、突き詰めていくかが重要です。
つまり、現在のOPPOのBDプレーヤーのコンセプトを尊重しつつ,その上に経験豊富なエンジニアによる日本的な視点やノウハウを投入して熟成したものが、JAPAN LIMITEDとなる。
また、日本側のそのニーズに応える基盤があるのがOPPO Digitalというメーカーの底力といえそうだ。
島:最近改めてOPPO Digitalが凄いと思わされるのは、やはりソフトウェアの開発スピードですね。とにかく対応が速くて、優先順位が高い課題は1週間かからずに仕上げてくる。おそらく、これだけの開発スピードを持ったメーカーはほとんど無いと思います。その協力もあって、今回DSD 11.2MHzに対応できました。
山本:(本社とのやりとりで)一番大変なのは「なぜそれが必要か」を説明することですね。「なんでその機能が必要なのか?」とはよく言われます(笑)。DSD 11.2MHz対応も最初は懐疑的でした。音源はないし、数字/スペックだけじゃないかと。ただ、懐疑的に思っていても、実際にやってみようか、と言ってくれる。その文化というか企業風土は素晴らしいですね。そしてエンジニア自身が確認し、納得した結果が得られれば、今回の11.2MHzのように素直に取りれてくれる柔軟性もあります。
ただし、こうした日本と米国OPPOの関係が、一朝一夕に実現したものではない。これまでの日本側の取り組みと実績があってのことのようだ。OPPO Digital Japan創設のオリジナルメンバーで、日本モデル(BDP-10xJP)のファームウェア開発に関わる山本氏は、これまでの取り組みを振り返る。
山本:やはり、OSDメニュー等の文字の扱いは、必要性を認識してもらうのに時間はかかりました。あとは暗号化方式ですか。そこを説得するためには「数」や「声」ですね。OPPOのBDプレーヤーは、年配の方、エアチェック世代の方にも多くお使いいただいているのですが、そうしたユーザーさんは昔のDVD-Rなど、録画ディスクを沢山お持ちです。BDの暗号化技術はAACSで、海外と同じなのでいいのですが、DVDのCPRMは日本でしか使われていないので、その必要性を説明するには、「昔からこういう文化があって、沢山のディスクをお持ちの方がいる」という数、ユーザーさんの声を伝えることが重要です。OPPOはユーザーさんの声を大事にする会社ですので。
また、OPPOは製品づくりにおいて規格に則った作り方を重視します。具体的には、BDやHDMIの規格に即した動作などについて、「こうあるべきだ」というポリシーをかなり強く持っています。それにそぐわない話は、「それは良くない」となりますね。
山本氏が例に上げたのは、BDP-105DJPで3月に対応した「A/V Split」の新設定だ。2つのHDMI端子から、映像と音声を分離して出力するものだが、従来のファームウェアでは音声出力側(HDMI2)に映像信号と音声信号が出力されていたが、以降の新仕様ではHDMI2から黒画面信号と音声信号が出力されるようになった。これは音質の向上を狙ってのものだ。
山本:HDMI 2出力の仕様も最近のファームウェアでようやく変わりました。いちユーザーとしては「やれば良くなる」とわかっていましたが、米OPPOに言わせると、「HDMIの動作としては正しくない」と。本来HDMIは画像情報と音声情報を同時に伝送する規格で、元々の信号を2系統に分岐して、その1系統の画像情報を黒信号に差し替えるのは規格上想定されていないと。そういう価値観の違いはありますね。「なぜ?」と聞かれるのですが、実際に実装してもらうためには、その文化、感覚をしっかり説明することが重要です。
どうなるバージョンアップ。「性能本位で全部」の“無茶”な生産と性能
前述のとおり、JAPAN LIMITEDのチューニングは、日本で行なわれている。というより、米OPPOからOPPO Digital JapanにBDP-105DJPが送られてきて、それを分解し、日本で用意したパーツの追加やクロック変更などを行なって、ユーザーに出荷される。
そして、分解やチューニングを実施・監修しているのは、この3人を中心とした同社のエンジニアだ。話を聞くだけでも大変そうだが、実際のところ「ほぼ分解といえる」というほど、手間と工数がかかるという。
松浦:ただ、今回のチューニングで、音だけでなく、予想を遥かに超えて画質も良くなって……。本当は工数を削減する方向に行きたかったのですが、ここまで変わるならやってしまおう、と(笑)
私も羽賀もAV機器メーカーにいましたが、音質が良くなるからといっても、工数を要する特殊な作業を生産ラインで実施するのには限界があります。一日に何台生産できるかという効率が重要で、それはOPPOもそうです。
ただ、JAPAN LIMITEDは、OPPO Digital Japanが作業をするのでそういう制限が無い。「性能本位でやれることを全部やる」という考えです。マスプロダクションとは言えないかもしれないけど、だから出せる性能があるし、JAPAN LIMITEDではそれをやりたかった。
島:イメージとしては「AMG」(メルセデス・ベンツのチューニング部門)モデルのようなものですね。本国が気に入れば、本国がAMGを吸収して(笑)……。ただし、JAPAN LIMITEDそのものは、日本での流通を前提にした製品で、このまま輸出というのは考えていません。
羽賀:「どこに手を入れてどう変わるか」が、予見できるのが、経験。メカや足をどう変える、ノイズ対策をどうする? など、短い期間で実現するのは経験が必要です。今回の企画は、運よく人材がいたので実現出来たというのが正直なところです。
現在注文が殺到しているJAPAN LIMITED。これまでのBDP-105DJPの出荷ペースを踏まえた生産体制を敷いているが,7月31日(金)の公式発表の翌週早々には月産可能台数を突破していたという。製造ラインの強化など増産体制を9月中旬から敷くが、カスタム部品の納期短縮にも限界があるため、当面のところ納期は受注後1.5カ月程度かかるとのこと。
また、気になるのは既存ユーザー向けのバージョンアップだ。製品発表時には、BDP-105DJPユーザーに向け、JAPAN LIMITED相当にアップグレードするサービスを予告していた。しかし、現時点では注文をさばくのに手一杯で、具体的な日時はまだ言えない段階という。
話を聞いてみると、JAPAN LIMITEDは、「ポテンシャルを潜めた秀逸なベースモデル」と「手練のエンジニア」、それに、米国のある種合理的なオーディオ/ビジュアルの文化や風土と、日本のこだわり、ノウハウ、素材が、絶妙なタイミングで交わって生まれた製品と感じる。
開発陣もその仕上がりに、「新しいリファレンス機」と自信を見せる。そして、やはり体験して欲しいポイントは「音」だという。
羽賀:ユニバーサルプレーヤーですが、是非2chのバランス出力の音を聞いて欲しいですね。
松浦:できればバランスですが、ピンアウト(RCA)でもいいので、アナログの音を是非聞いてください。ユニバーサルプレーヤーなので、AVアンプにHDMI接続していると思いますが、BDはHDMIで、CDなどはアナログで入れてもらえると、最大限メリットを享受していただけます。本音を言えば、BDもアナログマルチch接続をしてほしいのですが(笑)。あと、エージングは通電後96時間を目安にしていただき、それまでは優しい目で見ていただきたいです。
(協力:OPPO Digital Japan)