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4K HDR、ハイレゾ拡大、IoT。年末に向けたAVトレンドは? IFA 2015まとめ
(2015/9/11 08:45)
ドイツ・ベルリンで9月4日~9月9日(現地時間)に開催された国際コンシューマ・エレクトロニクス展「IFA 2015」。来場者数は9日発表で24万5,000人(前年比約5,000人増)、出展数は1,645(前年は1,538)と増加し、盛り上がりを見せた。会場での会見やブース取材を通じて、現地で注目されたAV製品やトピックなどを、これまでの記事を振り返りつつまとめる。
テレビは有機ELとHDRに注目。4K配信など4Kコンテンツ増加も
例年に比べて大きな発表が少なかったテレビ関連だが、開幕前のプレスカンファレンスで注目されたのは、パナソニックが披露した有機ELテレビ「CZ950シリーズ」。黒の再現に優れた有機ELパネルと、4K Studio Master Processorによる高精度な3Dルックアップテーブル(LUT)、ハリウッドのカラーリストによるチューニングなどで「4K Pro」画質を訴求。従来の有機ELテレビと比べても、暗部のディテール表現に優れるという点などをアピールしている。
'13年に同社とソニーのテレビ向け有機ELパネル共同開発終了が発表された後、Samsungも液晶に一本化。現在はほぼLG Electronicsのみとなっていた有機ELテレビだが、パナソニックが欧州で10月に発売するという具体的な発表がなされたことは大きい。なお、今回の使用パネルのメーカーは非公開だが、LG Display製と見られる。
各社のブース展示では、液晶、有機ELともに画質の訴求ポイントとして「HDR(ハイダイナミックレンジ)」を打ち出したものが目立つ。街の夜景や花火など、暗部と光の差が際立つ映像ではHDRと従来のSDR(スタンダードダイナミックレンジ)の違いが分かりやすく、一般来場者も注目していた。
4K/UHDコンテンツも徐々に増えつつある。4K解像度のUHD Blu-rayでは、ついにパッケージ作品として「Kingsman:The Secret Service」がFOXから発売されることが発表された。4K映像配信サービスでは、日本でも開始されたNetflixや、米Amazonが発表した「Prime Instant Video」の4K配信に加え、欧州で4K映画などの配信を行なっている「Wuaki.tv」や、IFAに合わせて衛星での24時間4K放送を発表した独HD PLUSの「UHD1」などがあり、テレビメーカーとしても、増え続けるこれらのサービスへ対応していくことが重要なポイントとなっているようだ。
なお、欧州のテレビ自社開発を終息し、台湾コンパルへブランド供与することを発表した東芝は、今回のIFAではパソコン/タブレットを中心とした展示だった。同じく、欧州でのテレビ事業をブランド供与に転換するシャープは、AQUOSの展示は行なっているが規模は小さく、商談スペースを中心としたブース内容となっていた。
オーディオはハイレゾ/ヘッドフォン新モデルなど続々。マルチルームも
オーディオ関連は、ヘッドフォンやポータブルオーディオ関連の新製品が充実。ソニーの開幕前プレスカンファレンスで初披露され、日本でも発表されたウォークマン「NW-ZX100」や「NW-A20HN」をはじめ、パナソニックもハイレゾ対応ヘッドフォンのラインナップを拡充した。
注目は、DSD対応ポータブルオーディオプレーヤーのパイオニア「XDP-100R」とオンキヨー「DP-X1」。DACやヘッドフォンアンプなど共通の部分は多いが、グループによる共同開発部分でコストを抑えつつ、それ以外の最終的な音質や、UIなどの使い勝手の部分にリソースを集中することで、両ブランドのカラーを打ち出している。いずれも欧州での発売は11月だが、日本でも発売されることは確実と見られるため、今後の国内での発表に期待できそうだ。
独beyerdynamicは、世界初となるテスラ技術搭載のイヤフォン「AK T8iE」をIFAで初披露。ハイレゾプレーヤーのAKシリーズにテスラテクノロジーを最適化したコラボレーションモデルとなっている。開幕前に行なわれたプレスイベント「ShowStoppers」でも、新たなフラッグシップヘッドフォン「T1 2nd Generation」や、モニターヘッドフォン「DT 1770 PRO」とともに注目されていた。
1月のInternational CESでも見られた傾向だが、複数の部屋で音楽を聴く「マルチルーム」対応機器も充実。
ソニーのSong PAl LinkやパナソニックのAllPlayのように、スマホからの操作で各部屋に置かれたWi-Fiスピーカーやコンポなどを操作することが可能。スマホの音楽を転送して聴くだけでなく、スピーカー/コンポ側で直接インターネットからSpotifyなどの音楽サービスに接続して聴けるのが特徴。複数の機器をグループ化して、同じ曲を同時に聴くといったこともできる。
今回のIFAでは、ヤマハもネットワーク対応機器のMusicCastをアピールしており、対応するコンポやスピーカーなどの新製品をブース前面に展示している。ヤマハでは、ネットワークに対応する機器においては、MusicCastをサポートする事を基本路線としていく方針だという。
360度方向に音を放出する無指向性スピーカーが増えているのも目立つ。従来の一般的なスピーカーの置き場所の制限から解放された、リスニングの自由なスタイルを提案する一つの傾向といえる。
IoTやウェアラブルに引き続き注目。日本のスタートアップも
AV機器以外を含め、IFA全体のキーワードとして盛り上がっていたのは、様々なものがインターネットにつながるIoTの分野。家庭内のネットワークやスマートフォンにつながることで、センサーで測定したデータなどを離れた場所からでも管理できるようにすることで、生活を便利にするといった提案がなされている。
パナソニックやSamsung、LGといったAV家電と白物家電の両事業を手掛けるメーカーは、家全体をネットワークに接続するスマートホームを提案。朝起きてから外出、寝るまで一日“Connected”(ネットにつながった)ている生活の利便性などを紹介している。
また、JBLやAKGといったホームオーディオやカーオーディオで知られるハーマンインターナショナルは、基調講演において、今後も「Connected Car」などの分野に注力していく方針を示している。
電子マネーのFeliCaや活動量計などを搭載したソニーの腕時計型端末「wena wrist」は、バンド部にチップが入っている点などで一般的な“スマートウォッチ”を思わせない質の高いデザインが注目されていた。クラウドファンディングの「First Flight」で製品化が決まっている。
ペンタブレットで知られるワコムは、より幅広いユーザーを想定したIoT製品として、紙のメモ帳などの書き込みをスマホ/タブレットに画像データとして転送できるBluetooth搭載パッド「Bamboo Spark」を発表。思いついたアイディアを手書きしてスマホ経由でクラウドに保存し、EvernoteやDropboxなどで共有するといった使い方ができる。
日本のスタートアップ企業であるCerevoは、Bluetooth通信対応スノーボード・バインディング「SNOW-1」と連携し、荷重などの測定データを重ねて表示可能にするアクションカメラ「REC-1」を発表。同社ブースでは、Cerevoの岩佐琢磨社長が自らSNOW-1を装着してデモを行なっていた。