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【11月30日】 【11月29日】 【11月28日】 |
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マイクロソフト株式会社は29日、マルチメディアソフトウェア「Windows Media 9 シリーズ」日本語版の提供を開始した。プレーヤーソフトWindows Media 9のプログラムサイズはWindows XP版が9.12MB、Windows 98 SE/Me/2000版が12.85MB。
日本語版の提供開始に伴い、赤阪ACTシアターでラウンチイベントを開催し、米Microsoftの古川亨副社長が基調講演を行なった。今まで提供されてきた情報から、技術的には大きなアップデートはなかったが、パートナーとの協力関係を強調し、次世代デジタルメディアプラットフォームとしてのWindows Media 9をアピールした。また、リリース後9週間に渡って「Super 9 Weeks」キャンペーンを実施し、無料コンテンツの提供を行なうことも明らかにした。 古川副社長は、テレビやビデオの歴史を振り返り、「ハイビジョン前のテレビの解像度は50年間全く変わっていない。カラー化などの発展はあったが、進歩のスピードは遅かったといえる。しかし、現在、コンテンツもデジタル化などでもっと豊かな表現が行なえるようになった。その進化のスピードはさらに速くなっていく」と切り出した。
その後、PlayerやEncoderなど7つのWindows Mediaシリーズの概要や、バッファ待ち時間を低減するInstantOn(即時配信)の比較デモ、デジタル著作権管理(DRM)機能、プレーヤーのグループ再生機能などについて解説した。また、サーバーと連携して、ユーザープロファイル毎に同番組で違った広告を配信するデモも行なわれた。 古川氏は、「いままで、クオリティや著作権保護機能の不備などにより、プロの方に選択していただけなかった。しかし、Windows Media 9ではプロユーザーにも高い評価を頂いている。米国でのラウンチイベントでは、ビルゲイツの基調講演で、タイタニックなどの監督であるジェームズ・キャメロン氏がゲスト出演してコメントしてくれた。ようやく支持されたと感激を抱いた」と述べ、映像や音楽のプロフェッショナルに支持を得ていえる旨を解説し、ゲストの久石譲氏を紹介した。 「千と千尋の神隠し」などのジブリ作品や、北野武監督の最新作「DOLLS」、CM作品など久石氏が音楽を担当した作品を紹介した後、久石氏が登壇し、古川氏と対談した。
古川氏が、ステレオ2chなど従来の音楽再生技術では、何が足りなかったか? より高音質でマルチチャンネル化したWindows Media 9との違いは? と質問すると、久石氏は「欠落していたのは空気感。そこにいるような感覚」と述べ、「遠くで聞けば包み込むような弦の音も、音それ自体は、弦がすれる音で必ずしも綺麗なものキレイでない。しかしそうした音が聞こえるようになることで、(音に)リアリティが出る」と説明した。 また、「千と千尋の神隠し」の曲からマルチチャンネルの「竜の少年」を再生したが、PAの都合もあって、音割れが目立った。音についてコメントを求められた久石氏は「まあまあ。ここ(壇上)で聞くとベースが強すぎるけれど、先ほど客席で聞いたときはよかった」と述べるにとどまった。古川氏は、「(千と千尋の)テレビ放送は40何%と凄い視聴率だったんですが、あれはステレオ放送だった。ブロードバンドで5.1chで聞けるようになるなど、変化が起こっていくと良いと思う」と述べた。 また、久石氏が音楽に取り組む姿勢について、「音楽は観客のために作っているけれど、お客さんにおもねるためじゃない。だから、“こんなの作ったけれど、どう?” って言う提案は常に持っていないといけない」と述べると、古川氏は、「それはWM9でも同じことを言えます。プロの方から、Windows Mediaをまだ使えないという意見や、突き放すような話が出てくる、そうした中でお互いの緊張感を高めながらいいものを作っていただきたい」と今後の抱負を語った。 その後、「HighM.A.T.」のデモなどを実施したあと、MicrosoftによるCCCD、「Windows Media Data Session」について解説した。既に発表済みの技術だが、1stセッションに、家電用の再生領域、2ndセッションにPC用再生領域をもうけ、PC用コンテンツについては、コンテンツフォルダがコピー回数を「2回」、「4回」などと決めたり、「1カ月間は何度でも利用可能」などと利用期限の設定などが行なえるという。Windows Media Data Sessionについては、エイベックスなどと話を進めているほか、JASRACや日本レコード協会などとも話し合いを持っているという。
次いで、Windows Media Player 9の新機能「プレミアムサービス」について解説した。プレミアムサービスは、Media Player左のタスクバー上から特定のコンテンツに直接アクセス可能にする会員制の有料コンテンツサービス。日本では株式会社WOWOWの「WOWOW Genetics」と、株式会社エイベックスの「PRISMIX TV」、株式会社ショウタイムの「ShowTime9」、株式会社スカイパーフェクトコミュニケーションズの「スカパー! BB」の提供が予定されている。
古川氏に代わって登壇した、WOWOWの吉岡義朗副会長は、「(同社では)ブロードバンド配信を、衛星放送技術と関連の高い市場と考えている。従来より、NTTとともにFTTHによる配信実験などを行なったり、ボクシングやサウスパークなどのコンテンツを配信している」と同社の配信事業への取り組みを説明。「ブロードバンド配信は、著作権問題や事業性、同時アクセスへの対応などの課題も抱えているが、着実かつ急速に発展していくと考えている。電波による放送とは相互補完、相乗効果が期待できる。Windows Media 9では一段と品質が高まっており、機能も充実していると伺っている。BSデジタルのハイビジョンでしか見えなかったものが、ネット上で実現でき、ブロードバンドの活用を一段と促進してくれるものと期待している」と意気込みを語った。 続いて、ゲストとして登壇した、スカイパーフェクト・コミュニケーションズ代表取締役社長の細田泰氏は、「スカパーというブランドは、CSデジタル放送を皆様にお届けするというプラットホーム事業がメインとなっている」としながらも、「その特徴は専門性やパーソナルなエンターテインメントをお届けするというもので、スカパー!BBの強みとしては、放送という柱があること。リリースイベント“Super 9 Week”では9週間にわたるイベントを盛り上げていきたい。特に最後の1週間は、Windows Media 9の機能をフル活用してコンサート上映や、宝塚のプロモーションムービーなどを提供していく」と語った。 最後に古川氏が、「コンテンツに限らずデジタル化がどんどん進んでいる。今回のWindows Media 9が、プロの目から見て、事業の道筋がたつとご賛同いただけたことを心強く思っている。これを始まりにして、Windows Mediaを育てていただければと思っている」とし、最後に「特別にチューンした」という17.6MbpsのHD映像のデモを行なった。確かに高精細ではあったが、「マシンパワー不足」とのことで、フレーム落ちが目立つものとなっていた。 また、会場では、Windows Media 9のデコードに対応したEQUATORのHD DVDプレーヤーの実働デモが行なわれていた。同社のBSP 15プラットフォームを利用することで、DVD上のWindows Media再生が可能で、1,280×720ドット(720p)までの解像度に対応するという。OEM向けにBSP15プラットフォームの提供をまもなく開始する予定で、300ドル程度でHD対応DVDプレーヤーが実現できるという。
(2003年1月29日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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