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【11月30日】 【11月29日】 【11月28日】 |
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日本放送協会(NHK)は、東京・世田谷区のNHK放送技術研究所を22日から25日まで一般公開している。入場料は無料で22日、23日は専門家向け、24日、25日は一般向けとなっている。 22日のレポートでは、走査線4,000本の高解像度カメラや、ハイビジョン光ディスクシステムをレポートした。今回は、地上デジタル放送に関する告知活動の模様や、地上デジタルラジオ、そのほかの展示についてレポートする。
■ 注目度が高い地上デジタル放送
今回の一般公開で最も目を引いたのは、12月1日から開始される地上デジタルテレビ放送に関する展示だ。会場でも入り口付近に大きなスペースがさかれており、来場者は熱心に説明を聞いていた。 展示は地上デジタルテレビ放送のスケジュール、放送エリア、受信方法などの項目に分かれており、模型やイラストを見ながら実際に地上デジタル放送を受信するまでの行程が説明されている。
また、これらの基本的な情報から一歩踏み込み、地上デジタル放送を安定して受信するための技術や、自動車などの移動体、アンテナが設置できない特殊な状況下などでも受信を可能にする機器など、細かい研究成果も発表されている。
「長遅延マルチパス等化技術」は、希望波と妨害波(マルチパス)の到達時間差が許容範囲を超えると受信不能になる地上デジタル放送の欠点を補うもの。受信装置にこの機能を内蔵することで、反射波やSFN(Single Frequency Networks:単一周波数ネットワーク)局から到来する複数の妨害波を等化し、正常な受信を実現するという。 「移動受信用ダイバーシティ受信装置」は、自動車など、移動体の中でもハイビジョンや大容量のデータサービスを受信するための機能。車に複数のアンテナを搭載し、それぞれが受信した信号を合成することで、正常な信号を取り出すという。
自動車での受信と関連し、地上デジタル放送はITS(Intelligent Transport Systems:高速道路交通システム)の情報メディアとしての利用も提案されている。こうした新しいサービスに柔軟に対応するため、デジタル放送のソフトウェア受信装置も研究されている。無線端末としての機能をソフトウェアで記述することで、受信機に新しい機能を追加したり、新しい放送サービスが導入された場合でも、内蔵ソフトウェアの更新だけで対応できるという。
また、地上デジタル放送だけでなく、既存の衛星放送をより柔軟に受信する技術も開発されている。これは、一部の集合住宅など、衛星方向にアンテナを設置できない環境において、共同アンテナで受信した放送を60GHz帯の電波を使って再伝送するシステム。無線免許を必要とせず、手軽に設置できるのが特徴で、BSデジタル、110度CSに加え、地上デジタル放送も一度に再送できるキャパシティを持つという。
■ 地上デジタルラジオ
地上デジタルテレビに先駆け、10月から東京・大阪で実用化試験放送が開始されるデジタルラジオ。この放送ではNHKをはじめ、エフエムジャパンやエフエム東京、ラジオ関西など、32の事業者がサービスを提供していく。ただし、現在アナログテレビが使用しているVHF帯の周波数を利用するため、全国展開はアナログテレビの放送が終了する2011年以降となる。 CD並みの高音質音声に加え、データ放送や静止画、簡易動画なども配信可能。会場では、実際に音声とデータ放送が受信できる試作端末が展示されていた。だが、試作機はPDAと無線LANカードを組み合わせたもので、あくまで会場でデジタルラジオの機能を体験するためのもの。実際に発売される端末は、画面の無い従来のポータブルラジオタイプや、携帯電話内蔵型など、様々なタイプが登場する見込み。
放送をデジタルで出力したり、録音できる端末なども登場すると思われる。著作権問題が気になるところだが、デジタルラジオ放送の詳しい仕様はまだ確定していない。NHKとしては、システムとしてコピーガード信号を付加した放送を行なう予定だが、デジタル出力のないポータブル機など、様々なタイプの製品が予想されるため、コスト面なども考慮し“受信機に必ずコピーガード検知機能を搭載しなければならない”といった強制はないという。あくまで各放送局や、受信機を作るメーカーの考え方に任されているようだ。 なお、受信性能は従来のアナログラジオよりも高くなり、移動しながらでも高音質の放送が楽しめるという。たが、放送局から遠のくと徐々に受信が困難になるアナログ放送とは異なり、受信可能地域を外れると急激に受信不能になるといった欠点もある。
■ テレビを中心とした、様々なサービスを提案
高画質、高音質の追求だけでなく、テレビを中心とした新しいサービスの研究も行なわれている。例えば、インターネット通じて過去の放送から見たい番組をリクエストし、ネットワーク経由で番組を放送するサービス。 試作システムでは過去1週間にNHKが放送した全チャンネルの番組がMPEG-2形式で保存されており、ハイビジョン番組でもリクエストすると実際の放送と同じように視聴できる。だが、100Mbpsクラスの高速ネットワークが必要となるほか、著作権の問題もあり、課題は多いという。 また、受信機の新しい機能として、視聴者を認識する「対話型テレビ受信システム」の研究も進められている。これは、テレビの操作や、番組に関する情報の検索、周辺機器の操作などを視聴者の代わりにテレビエージェント「たまちゃん」が行なうというもの。
エージェントは音声認識機能を装備しており、対話することでチャンネルの変更や音量調節などを行なってくれる。また、インターネットとも接続可能で、出演者のプロフィールや今後の番組予定などの情報収集も可能。さらに、内蔵したカメラで対話相手認識し、過去の視聴記録を参考に、見ている人の趣向に合った番組を提案する機能も持つという。 視聴者に合った内容を表示するという機能をさらに追求したのが「TV4U」。 アナウンサーや解説者の言葉、映像の種類、切り替えタイミング、カメラの撮影方向、動きなど、番組に関するあらゆる情報を記録したメタデータを自動作成し、番組と一緒に放送する。すると、家庭の受信機がメタデータを基に、自動的に視聴者に合った番組を制作するという。 作成された番組には、進行役のCGキャラクターが登場するほか、映像素材の編集、番組全体のカメラアングルなども自動で作成される。また、番組そのものがクライアント側で自動作成されるため、「○○選手の活躍したシーンが見たい」などの要望が、リアルタイムに反映された番組が作れるという。
■ テレビの歴史や最新撮影技術も展示
□NHK放送技術研究所のホームページ
(2003年5月23日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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