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NECエレクトロニクス株式会社は27日、HD DVDプレーヤーとレコーダの両方に対応できるシステムLSI「EMMA3」を発表。同日より第1弾モデルのサンプル出荷を開始した。サンプル価格は2万円。2007年4月に月産30万個を予定している。 同LSIは2005年から東芝とともに開発を行なっており、東芝が日本向けにリリースする第2世代HD DVDプレーヤー「HD-XA2」と「HD-XF2」に搭載。北米、欧州、豪州向けモデルにも採用されている。
「EMMA(エマ:Enhanced Multi Media Architecture)」は、デジタルレコーダや薄型テレビ、STBなどへの搭載を想定した、同社のデジタルAV専用アーキテクチャを採用したLSIシリーズ。'96年より開発が開始され、第2世代のレコーダ向けモデル「EMMA2RH/HD」は、東芝が7月に発売した世界初のHD DVD搭載HDDレコーダ「RD-A1」に採用されている。
EMMA2RH/HDは、デジタルハイビジョン放送の受信機能とレコーダの機能、HD DVDディスクやHDDへの録画機能などを1チップに集積したものだったが、ハードウェアデコーダはMPEG-2のみサポートで、LSIとしては市販のHD DVDソフトの再生には対応していなかった。
「EMMA3」では、MPEG-2(MP@HL/MP@ML)に加え、HD解像度のMPEG-4 AVC/H.264とVC-1のデコーダも搭載。さらに、ドルビーデジタルプラス、DTS-HDの新オーディオフォーマットのデコーダも装備し、HD DVDプレーヤーに必要な機能を搭載した。なお、能力としてはHD映像2ストリームを同時デコードできる。 さらに、デジタル放送用のストリーム処理プロセッサや、マルチチャンネルストリーム入出力も備えており、デジタル/アナログチューナやMPEG-2エンコーダ、HDDなどを追加するだけで手軽に市販HD DVDソフト再生に対応したHD DVDレコーダが開発できる。
アプリケーション・プロセッサとしては64bitのCPU「V5500」(654DMIPS)と、米MIPSテクノロジーの32bit CPU(457DMIPS)を搭載。デジタル放送やHD DVDのインタラクティブ機能で利用するブラウザ、データ放送に対応する高度なアプリケーションも処理できるという。 そのほかにも、ビデオスケーラ、映像出力用のビデオエンコーダ、HD映像対応の画像処理回路も備えており、「HD DVDプレーヤーに必要な主要7機能を1チップ化した」という。
ソフトウェア開発の面では、同社が提唱する「platformOViA」に準拠。ドライバやファームウェアはNECエレクトロニクスが提供。セットメーカーはテレビやレコーダ、STBなど分野ごとのミドルウェアや共通アプリを乗せ、機器のアプリケーションソフトを開発するだけで製品化が可能。Linuxのソフトウェア資産も流用でき、ソフトウェア開発効率の向上に貢献できるほか、ソフトウェアのみの開発メーカーも参入しやすい環境だという。
■ 2010年に売上高1,000億円を目指す
月産30万個という生産規模について、デジタルAVシステム事業部の平沢政夫事業部長は「30万個の体制を整えてはいるが、実際にどのくらいの注文が来るかはわからない。現時点の供給先は東芝のみだが、ヒアリングしている限りでは何社かからHD DVD製品を作りたいというオファーが来ている。EMMA3を供給していくことで、HD DVDの市場拡大に繋がると期待している」と説明。
さらに、「国内ではまだBlu-rayもHD DVDも、ハード/ソフトの数があまり出ていないようだが、米国ではHD DVDの方がソフトのラインナップや売上げは好調だと聞いている。ハードウェアも今後増加していくのではないか」と期待を寄せる。
EMMA3プラットフォームの今後の展開については「ハードウェアのコアは共通のものを使用しながら、よりプレーヤーやレコーダに特化したモデルや、デジタルテレビ向けのモデル、STB向けのモデルなど、採用メーカーと市場のニーズに合わせて分野別に最適なLSIを開発していきたい」という。 また、今回はHD DVDをサポートしたモデルだが、Blu-ray用モデルの可能性についても言及。「LSIのレベルで見ると、両規格の処理にそれほど違いは無く、BD用に機能の流用も可能。我々はHD DVDとBlu-rayの両規格に対応したDVDドライブ駆動用LSIも持っているので、信号処理的には両規格に対応できると考えている」とした。ただし、HD DVD/BDのコンボ製品については「ピックアップ部も異なるので、セットメーカーの考え方によるだろう」と語った。 さらに、パソコン向けの展開としては「先月発表したドライブ用LSIが利用されていくと思う。EMMA3については、パソコンのHD DVDソフト再生のデコード処理をソフトウェアでやるか、ハードウェアでアシストするかによって変わってくるが、まずはドライブ用LSIで足固めをしながら、ハードウェアエンコーダが必要という流れになれば、積極的にアシストしていきたい」と、パソコン分野への投入にも意欲を見せた。
最後に、第二システム事業本部長の新津茂夫氏はEMMAシリーズのビジネス目標として、「2006年度の売上げは300億円規模で、シェアは全世界で4位~5位くらいだが、EMMAシリーズの開発を進め、一層のコストダウンも実施。2010年にはEMMAシリーズで市場シェア3割を目指し、売上高は1,000億円。世界シェアNo1メーカーを目指したい」と意気込みを語った。
□NECエレクトロニクスのホームページ
(2006年12月27日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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