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ポータブルオーディオの世界では、iPodシリーズが支配的な立場を構築しているが、今春は「ウォークマン」の攻勢がめざましい。3月21日には、フラッグシップシリーズ「ウォークマンA」の新モデル「NW-A800」を投入し注目を集めたのは記憶に新しいが、矢継ぎ早にベーシックモデルと言える「ウォークマンE」も一新。「NW-E010」シリーズを4月21日より投入する。
前モデルNW-E000シリーズ(2006年6月発売)からUSBコネクタを備えたスティック型のボディを引き継ぎながら、デザインを一新。さらに、上位モデルのNW-A800やNW-S700/600と同様の高音質化技術「クリアオーディオテクノロジー」を導入して音質向上を図った製品となっている。 最近のウォークマンは、「音質」を積極的に訴求して製品展開してきたが、とうとうベーシックモデルも「クリアオーディオ」搭載製品となる。インテリジェント機能などさまざまな試行錯誤を繰り返してきたウォークマンだが、原点回帰ともいえる音質へのこだわりが全ラインナップで徹底されることで、新しいブランドイメージを作っていくことになるのかもしれない。 メモリ容量4GBの「NW-E016」と2GBの「NW-E015」、1GBの「NW-E013」が用意される。店頭予想価格は4GBが20,000円前後、2GBが14,000円前後、1GBが11,000円前後の見込み。今回は1GBモデルのNW-E013を使用した。
■ スティック型のウォークマンベーシックモデル
同梱品はイヤフォンのほか、SonicStage CP(Ver.4.3)や取扱説明書PDFを収録したCD-ROM、イヤーピース(S/M/L)、イヤフォン用の延長ケーブル(65cm)など。 外形寸法は83.1×22.8×14.2mm(縦×横×厚さ)、重量は約29g。細長いスティック状のデザインが特徴で、右端のキャップを外すとUSB端子が現れる。USBメモリ的なデザインながら、従来モデル(NW-E002)から比較するとだいぶイメージが異なっている。デザインは、有名ブランドの口紅をイメージしたらしい。 正面にディスプレイは、3行表示対応のカラー液晶で、ジャケット表示にも対応。ノイズキャンセル機能内蔵の「NW-S700F」はカラー有機EL、従来機「NW-E000」では単色の有機ELディスプレイを採用していたが、NW-E010では液晶に変更されている。ディスプレイには楽曲名の日本語表示が可能だが、メニュー言語は英語表示のみとなる。 ディスプレイ表面は、2層コーティングを施しており、光沢感/色の鮮やかさと、指紋からの保護を両立させたという。 本体上部にはPLAY MODE/SOUNDボタンとボリュームボタン、HOMEボタン、再生/停止ボタン、ストラップホールを装備。ディスプレイ部とUSB端子をカーバーするキャップの境界部にスキップ/バックボタンを備えている。 本体左側面にはヘッドフォン出力を装備。ディスプレイ脇は樹脂製のUSB端子カバーだが、この樹脂素材がディスプレイ側の光沢の質感と若干異なっているのが気になる。また、PC連携などのUSB接続時にキャップを無くさないように注意したい。
■ ややクセのある楽曲検索。多彩なシャッフルモードが魅力
パソコンとの接続は、USB経由で行なう。本体のキャップ部を外すと、USB端子が現れるので、後はPCと接続するだけだ。
対応オーディオ形式はATRAC/MP3/WMA/AACといった非可逆圧縮コーデックとリニアPCMをサポート。ただし、ロスレスのATRAC Advanced Losslessに対応しないほか、DRM付きのWMA、AACの転送/再生には対応しない。上位モデルの「NW-A800」ではATRAC Advance LosslessをサポートするもののPCMには非対応となっていたが、E010シリーズはPCM対応というのが珍しい。 転送ソフトは「SonicStage CP(Ver.4.3)」。ジャケット写真登録/転送に対応しているほか、近いジャンルのアーティストや楽曲をレコメンドしてくれる「アーティストリンク」も搭載している。また、NW-A800シリーズはプレーヤー側でアーティストリンクを利用できなかったが、NW-E010シリーズではアーティストリンク情報を利用したシャッフル機能も備えている。900MB強のライブラリをPentium M 1.3GHz搭載ノートPCから転送したところ、約14分30秒で転送完了した。 対応OSはWindows 2000/XP/Vista。なお、Mac OS Xへの対応については、「現時点では開発コストの関係から予定は無い」としている。
ボタン位置などは異なっているものの、本体の基本操作は従来機「NW-E000シリーズ」を踏襲している。上部の再生/停止ボタンとHOMEボタン、液晶右脇のスキップ/バックボタンを組み合わせて操作する。この操作体系にはやや癖があるので、直感的にはなかなか使えない。 初期状態では「全曲リストモード」となっており、各アーティスト/アルバムごとにグループ(フォルダ)化されて楽曲が管理されている。そこでHOMEボタンでスキップの仕方をアルバム/アーティスト=フォルダ単位で移動するか、それとも、曲単位のスキップに切り替えるのかを選択する。 この移動モードの切替はHOMEボタンで行ない、以下の2つのモードが用意されている。
フォルダ操作モードでは、ELディスプレイの左端に音符マークが表示され、アルバム名もしくはアーティスト名が表示される。曲操作モードでは、音符マークが右に移動し、曲名が表示されるため、見分けることができる。
つまりフォルダ操作モードで、スキップ/バックボタンを押すと、次のアルバム/アーティストなどのグループに移動。一方曲移動モードでは、次の曲/前の曲に移動する。 インターフェイス設計のコンセプトを理解できれば、さほど悩まずに操作できるが、ディスプレイに小さく表示されるモードアイコンを確認してから操作しなければいけないので、なかなか手軽に検索しづらい。例えば、曲操作モード時にアルバムを切り替えて、選択したアルバム内の任意の曲を再生する場合は、まずHOMEボタンでフォルダ操作モードに切り替えて、アルバムを選択、その後HOMEボタンを押してから任意の楽曲を選択することとなる。正直、単にアルバムを切り替えて曲を選ぶだけの操作にしては面倒に感じる。
また、HOMEボタンを長押しすると、ホームメニューが表示され、ディスプレイを見ながらアルバムやアーティストごとの検索が可能となる。詳細設定もこのホームメニューから行なう。一般的な他のプレーヤーに慣れている場合は、こちらのほうが使い勝手がいいかもしれない。 メニューにはSearch/Jacket Search/ALL SONGS/PLAYLIST SELECT/Intelligent Shuffle/Settingsの各項目が用意されている。 Searchは一般的な検索メニューで、アルバムやアーティスト、ジャンル名からの絞り込み検索が行なえる。操作はスキップ/バックボタンで上下移動、PLAYボタンで決定、HOMEボタンが階層を戻るという割り当て。Jacket Searchはジャケット写真を見ながらの絞り込み検索となっている。ALL SONGSは、前述の曲操作モード/フォルダ操作モードで利用した全曲リスト表示のモードだ。
レスポンスは非常に良く、ボタン操作後、ほとんど待たされることはない。そのため、HOMEボタンの使い方さえおぼえてしまえば、大きな不満は感じないだろう。ただし、積極的に選曲やプレイリスト移動を行なうのであれば、大型のディスプレイを活かした上位シリーズの「NW-A800」のほうが遙かに使い勝手はいい。E010シリーズは、シャッフル再生やお気に入りの数枚のアルバムを何度も聞くといった使い方に適しているといえる。 そのため、シャッフルモードが充実しているのも特徴。Intelligent shuffleでは「My Favorite」、「Artist Link」、「Time Machine」、「Sports」の4種類のシャッフルが選択可能で、My Favoriteではライブラリの中から良く聞く楽曲を100曲シャッフル再生するなどの、ユニークなシャッフル再生が可能となっている。
■ ウォークマンらしい高音質
付属のイヤフォンは、NW-A800シリーズと同様に13.5mm径ユニットを内蔵したEXイヤフォンとなっている。イヤフォンの仕様は、市販の「MDR-EX85SL(6,195円)」とほぼ共通で、「違いはウォークマンロゴの有/無ぐらい」とのこと。 最近のウォークマンシリーズに共通する「音質」へのこだわりの一環といえるが、品質の良いイヤフォンが付属すると、別途イヤフォンを購入する手間や負担が省ける。こうした姿勢は大いに歓迎したい。 また、NW-S700F/S600やNW-A800で搭載した高音質化技術「クリアオーディオテクノロジー」をEシリーズにも採用。左右チャンネルのクロストークを低減する「クリアステレオ」や、低音再生用の「クリアベース」などにより音質の向上を図っている。 イヤフォンは、耳穴にしっかりフィットする独自の形状。最初は慣れが必要だが、「これしかない」という向きでしか耳に入らないので、慣れればフィット感は非常に良い。カナル型イヤフォンと比較すると、遮音性は若干低いが、それでも通常のインナーイヤフォンよりは遙かにしっかり外部音を遮断してくれる。ユニットが外部に露出しているのだが、音漏れは少なく、地下鉄内などでも比較的少音量で音楽を楽しめる。 まずは、イコライザをOFFにして、全てノーマル設定で聞いてみた。最近のウォークマンシリーズらしく、大型ユニットの採用による開放感、音場感を活かしながら、中高域の分解能が高く、クリアで力強いサウンド。クリアステレオをONにすると、ボーカルの明瞭度が増し、クリアさと力強さという音のキャラクタがさらに前面に出てくる印象だ。 「クリアステレオ」は、左右チャンネルのクロストークを低減する技術で、ONにするとセンター定位をしっかりさせ、チャンネルセパレーションを向上するもの。基本的には常にONで問題なさそうだ。また、付属の延長ケーブル利用時と非利用時用にそれぞれクリアステレオの設定が用意されている。それだけイヤフォンとケーブル長にあわせたチューニングを行なっているということだろう。なお、別のイヤフォンでもクリアステレオの効果は感じられた。 低域のスピード感も強力で、締まりのある低域が、クリアなサウンドキャラクタを一層強調しているように感じる。近年のウォークマンシリーズに共通した音質で、NW-A800で搭載している高域補完機能「DSEE」こそ備えていないが、十分に高音質なプレーヤーと言える。
「バーチャルホンテクノロジー(VPT)」も搭載し、ClubやArenaなどのサラウンドモード選択もできる。イコライザは、Heavy/Pop/Jazzの3パターンと、5バンド調節が可能なユーザーモードを装備し、そのうち2つの設定をSound 1/2として登録可能。楽曲再生中にSOUND/PLAY MODEボタンを長押しすると、Sound 1/2とNormalの各音質設定を呼び出し可能となっている。 また、音量レベルの異なる楽曲のレベルを揃える「ダイナミックノーマライザ」も内蔵している。 充電はUSB 2.0経由で行ない、約3分の充電で約3時間の再生が可能な高速充電機能を搭載。連続再生時間は約30時間(ATRAC 132kbps再生時)。フル充電時間は約1時間。 ネックストラップ付きのソフトキャリングケース「CKS-NWE010」(オープンプライス/店頭予想価格2,500円前後)やアームバンド&スポーツクリップキット「CKA-NWE010K」(同2,500円前後)、クリップ「CLP-NWE010」(同2,000円前後)、シリコンケース「CKM-NWE010」(同2,000円前後)などの別売オプションも4月21日に発売される。
■ 完成度が向上したウォークマンベーシックモデル
価格はメモリ容量4GBの「NW-E016」が20,000円前後、2GBの「NW-E015」が14,000円前後、1GBの「NW-E013」が11,000円前後。 NW-A800(2GB 21,000円/4GB 27,000円)と比較すると同容量で約7,000円ずつ、iPod nano(2GB 実売17,800円/4GB 23,800円)と比較すると4,000円ほど安い。また両製品には1GBモデルが用意されていないので、1GBで十分という人にとってはかなりコストパフォーマンスの良い製品だ。 ディスプレイ無しのiPod shuffle(1GB 9,800円)と比べると若干高価なものの、ディスプレイを活かした検索や、音質、多彩なシャッフル機能など付加機能では大幅に上回っている。前モデルに引き続き、shuffleとnanoの間を狙いながら、ウォークマンシリーズの足場を固める強力なベーシックモデルとなるだろう。 楽曲の検索性を重視する場合は、同じウォークマンシリーズでも「NW-A800」の優位は動かないが、カジュアルにシャッフル再生を楽しんだり、スポーツ時に利用するのであれば、新Eシリーズは非常に良い選択といえる。使用シーンに併せてプレーヤーを使い分けてもいいだろう。手ごろな価格ながら、高音質と手軽さを兼ね備えた完成度の高い製品だ。
□ソニーのホームページ (2007年4月20日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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