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デジタルラジオ、本放送での電波割り当て検討状況を発表
-フォーラムが第2期活動総括総会を開催


5月15日開催


 地上デジタルラジオの普及に向け、ビジネス面での環境整備や普及活動を行なう「デジタルラジオ・ニュービジネス・フォーラム」は15日、第2期活動の総括総会を開催。2011年7月のアナログテレビ停波以降の電波割り当ての検討状況など、デジタルラジオの本放送に向けた、より具体的な作業が進められていることを明らかにした。

 同フォーラムはTOKYO FMが呼びかけ人となり、放送局や受信機開発メーカーなどが参加。デジタルラジオの実用化に向けたサービスモデルや技術を各メーカーが提案し、テーマごとにワーキングループ(WG)を構成。興味を持つ放送局やメーカーがそこに参加し、検討を進めているもの。

 第1期ではビジネスモデルに関する机上での予備的な検討が中心だったが、第2期では実際の電波を利用できる環境を準備し、「楽曲ダウンロードWG」や「テレマティクスラジオWG」による車載用デジタルラジオチューナ用技術開発など、様々な実証実験が行なわれた。各WGの活動内容は既報の通り、3月6日に開催された成果報告会で発表されている。

 その上で、TOKYO FMの執行役員でデジタルラジオ事業本部長の藤勝之氏は、第3期の活動について「実験の継続を行なっていくほか、実験結果をビジネスにより一歩近づけるため、世の中に対して発言(提言)を行なっていきたい」とし、提言等を作成するための分科会(仮)をテーマ毎に設置するなど、新しい活動体制の構想を披露。各社に第3期もフォーラムに参加してくれるよう求めた。

TOKYO FMの執行役員でデジタルラジオ事業本部長の藤勝之氏 第3期活動の大まかなスケジュール

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■ 電波割り当ての検討状況

 デジタルラジオの実用化試験放送は、東京では現在VHF帯7chを使って行なわれているが、2011年のアナログテレビ放送停波後、ほかのVHF帯域も利用することを検討している。しかし、デジタルラジオがVHF帯域のどの程度を利用できるかは決定しておらず、総務省の 情報通信審議会 情報通信技術分科会の一部答申として、6月27日に明らかになる見通し。
TOKYO FMのデジタルラジオ事業本部、仁平成彦副本部長

 現在は総務省の電波有効利用方策委員会の中のVHF/UHF帯電波有効利用作業班にて、具体的な電波の割り当てが検討されているという。TOKYO FMのデジタルラジオ事業本部、仁平成彦副本部長は、その検討状況を説明した。

 まず、2011年7月のアナログテレビ停波により、VHFの1~12chの70MHzの内、1~3ch(VHF LOW 18MHz/90~108MHz)と、4~12ch(VHF HIGH 52MHz/170~220MHz)が空く。さらに、UHFの52~62chの60MHz(710~770MHz)も空き、合計130MHzが利用できるようになる(ただし、UHFの53~62chについては2012年7月以降から利用可能)。

利用できる帯域と、大まかな割り当て状況

 この帯域を利用したいと手を挙げたシステムやサービスは149に上ったが、検討の中で4つの類型に整理され、「放送システム」、「自営通信」、「ITS(高度道路情報システム)」、「電気通信(携帯電話)」という大枠の割り当て方針が決まった。放送システムにはデジタルラジオのほか、マルチメディア放送(クアルコムのMediaFLOなど)、アナログFMが含まれている。また、「自営通信」は災害対策や救援用のブロードバンド通信システムに使われる予定だという。

 この中で、UHFの60MHzはITSシステムと電気通信が使用。VHFの70MHzを、放送システムと自営通信システムが分けて利用することになった。仁平氏によれば「ここまでの割り当てはスムーズに話が進んだが、VHF帯(特にHIGHバンド)を具体的にどのように使うかで、放送と自営通信の間で話し合いが難航。先日ようやく合意に至った」という。

 これには、HIGHバンドほど受信がしやすく、アンテナや受信機そのものの小型化が見込めることが起因している。話し合いの結果、1~3ch(VHF LOW 18MHz/90~108MHz)と、4~12ch(VHF HIGH)の内、17MHzを放送が使用(合計35MHz)。残りのVHF HIGHの35MHzを自営通信が利用することになった。周波数の境界は205MHz。混信を避けるため、双方に2.5MHz、合計5MHzのガードバンドを設けることも決定している。

VHFの割り当て状況。HIGHバンドほど、受信機の小型化が見込める 検討結果。170MHz~222MHzまでの間で、205MHzを境界として放送と自営通信で分ける。ガードバンドは双方に2.5MHz設けているが、デジタル放送/通信ではアナログよりも出力が弱くて済むため、技術的に双方に干渉しないのであれば、ガードバンドのギリギリまで利用できるという

 なお、現在利用しているVHFの7chが、将来的に放送用帯域として確保できるかどうかは不明だが、仮に確保できない場合でも、既に7ch受信の対応機器がリリースされていることから、「ある程度の移行期間を限定して、放送用帯域としての利用を要請したい」とした。


■ 机上で話し合う段階は終わった

慶応義塾大学のデジタルメディア・コンテンツ統合研究機構の中村伊知哉教授

 最後に、慶応義塾大学のデジタルメディア・コンテンツ統合研究機構の中村伊知哉教授が登壇。「メディア融合 2.0」と題した講演を行なった。中村教授は、光ファイバーなどのインフラが急速に広がっている日本のブロードバンド環境を評価しながら、米国でYahoo! やGoogle、YouTubeが放送局と連携して行なっている番組のIP配信を紹介。遅々として進まない日本の「放送と通信の融合」に危機感を募らせる。

 その上で、「放送局がコンテンツ伝送経路を電波だけに囚われず、通信と連携することで様々なビジネスチャンスが生み出される可能性がある」と説明。同時に「そうした可能性を机上で話し合う段階は既に終わっている。今はまさに“早い者勝ち”といった状態。デジタルラジオを推進する皆さんにも、まだ誰も作り上げていない、新しいビジネスモデルの構築にチャレンジして欲しい」と語った。

「日本の放送局には、“放送と通信の融合”という言葉に、ある種の拒否反応がある」(中村教授) 中村教授は、電気通信事業法や電波法、放送法など、日本特有の様々な法律が入り組んでいる法体系にも、“放送と通信の融合”を阻む要因があると説明。総務省で法体系に関する研究会が開かれており、見直される可能性もあるという。図は中村教授が「まとめられそう」と考える法体系 コンテンツの伝送経路が多岐に渡る中、コンテンツの取引市場のようなものは日本に存在しない。仲村教授は「様々な問題もあるが、まずこうした取引市場をスタートさせてみるのも良い」と提案


□デジタルラジオ・ニュービジネス・フォーラムのホームページ
http://drforum.jp/
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(2007年5月15日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]


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