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ウォークマンの最上位シリーズとして登場した「NW-A910」。3月に発売されたA800シリーズも完成度の高いオーディオ/ビデオプレーヤーだったが、その後継モデルと位置付けられる。 10月20日に発売されるシリーズ中位モデルのS710Fシリーズが、ノイズキャンセルに加え、大型液晶搭載、ビデオ対応となった。そのため、A800シリーズの最上位モデルとしての位置づけがわかりにくくなったと思っていたが、新モデルのA910では、大型液晶/ビデオ対応というA800シリーズの特徴をそのままに、ノイズキャンセルを追加。さらに、ワンセグ機能も新搭載するなど、「全部入り」構成の強力なプレーヤーとして登場した。 メモリ16GBの「NW-A919」と8GBの「NW-A918」、4GBの「NW-A916」の3モデルが用意され、店頭予想価格は16GBが45,000円前後、8GBが35,000円前後、4GBが30,000円前後の見込み。ウォークマン初となるワンセグ対応機の実力を検証した。
■ 上位モデルらしい高級感
付属品はCD-ROMや、イヤフォン、S/M/Lのイヤーピース、イヤフォン延長ケーブル(65cm長)、USBケーブルなど。 外形寸法は86.8×48×12.3mm(縦×横×厚さ)、重量は74g。NW-S710Fシリーズ(79.5×42.0×13.0mm)より縦と横が若干大きいが、比較しない限りさほど違いは感じない。外装に細かな凹凸加工を施されており、触感でもフラッグシップモデルらしい高級感が感じられる。iPod nanoやiPod touchと比較すると、若干厚みはあるものの、その分スリムなので、胸ポケットにも十分納まるサイズだ。 液晶ディスプレイは2.4型/240×320ドットで、2型のiPod nanoより大きい。液晶下部にはBACK/HOMEボタンと、5方向ボタン、OPTION/PWR OFFボタンを備えており、基本操作はこれらのボタンを利用する。上部にはNC ON/OFFスイッチとHOLDスイッチ、下部にPCなどと連携する「WM-PORT」とヘッドフォンジャックを装備する。 また、左側面にボリュームボタンを装備するほか、ロッドアンテナも内蔵。アンテナは伸縮可能となっている。背面にはストラップホールやスタンド用の切り欠きも備えている。
基本操作については、Sシリーズと大きく変わるところはないので、詳細については「NW-S715F」のレビューを参照してほしい。基本的には液晶下部の5方向ボタンと、BACK/HOMEボタン、OPTIONボタンを利用して操作を行なう。5方向ボタンを利用してライブラリで任意のコンテンツを選択して、再生開始する。 操作モードはホームメニューから選択する。同メニューは携帯電話風の9つのアイコンから機能を選択するもので、[インテリジェントシャッフル]、[ワンセグ]、[イニシャルサーチ]、[フォトライブラリ]、[ミュージックライブラリ]、[ビデオライブラリ]、[各種設定]、[録音]、[再生画面へ]の9つのモードが用意される。NW-S715FのFMラジオがワンセグになったと考えればいい。 「ワンセグ」を選択すると、ワンセグ視聴と録画したワンセグ番組の視聴が可能となる。ビデオ再生時は、「ビデオライブラリ」から、音楽再生時は[ミュージックライブラリ]から操作を行なう。
■ 充実のワンセグ機能。映像視聴時のNC効果に驚き
まずはワンセグ機能をテストしてみよう。ホームメニューで[ワンセグ]を選択すると、[テレビ]、[チャンネルリスト]、[番組表]、[日時指定予約]、[予約リスト]、[ワンセグビデオ]、「録画できなかった番組」の各項目が用意される。 テレビを選択するとワンセグ番組の視聴が可能だ。なお、NW-A910には伸縮式のロッドアンテナを内蔵しており、特に移動時の感度向上に高い効果を発揮するので、基本的にワンセグ視聴時にはアンテナも伸ばしておきたい。 ワンセグの起動時間は約4~7秒。受信環境にもよるが、起動にストレスを感じるようなことはあまりない。画面表示は横位置と縦位置が切り替えられ、横位置は右利き/左利き用を選択できる。横位置でワイド画面でワンセグを視聴するのが基本スタイルとなるだろう。 チャンネルは5方向ボタンで切り替えるほか、[チャンネルリスト]から任意のチャンネルを選曲できる。チャンネルリストは、3つまでのユーザー設定が可能なため、東京、大阪など、異なる場所のチャンネル情報を登録可能だ。 チャンネル切り替え時間は約3~6秒。切り替えると2秒ほどで次のチャンネルの番組情報が表示されるので、実際の切り替えよりも短く感じ、ストレスは感じない。番組表は、各チャンネルごとの表示で、チャンネルをまたいだ表示はできない。 番組表画面で左右を押すと、チャンネルを切り替えで可能で、[チャンネルを見る]を選択すると2~5秒程度で数時間分の番組情報が取得できる。配信されている番組表はチャンネルによって異なっており、たとえばテレビ東京や日本テレビは3~5番組だが、NHKやフジテレビは最大10番組分が表示できた。 気になる感度だが、調布市の自宅から京王線に乗り、笹塚まではほとんど問題なく番組視聴ができた。停車時に一瞬音声、画像が途切れたりすることもあったが、番組視聴にさほど不都合は感じなかった。受信できなくなる頻度は、座っている場合のほうが多く、また、電車内のどのポジションで視聴するかでも左右された。 市ヶ谷から五反田まで電車で移動した際も、トンネル以外はほぼ問題なく受信できた。都内で利用する分には十分な受信性能は有していると感じた。ディスプレイの輝度が高く、比較的明るい車内でも、さほど気にならずに視聴できたのも特徴といえる。5段階の輝度設定も可能だ。
320×240ドットというディスプレイの解像度は、ワンセグ放送の表示にちょうど良く、細か字幕や時間表示、番組ロゴなどもきっちりと確認できる。しっかりとした解像感があり、発色も悪くないが、全体的に白っぽく浮いて見える印象が残る。特に屋内でじっくり見る時には気になった。また、視野角もあまり広くない。
ワンセグ番組の録画にも対応。この録画機能が充実しており、ホームメニューから番組表を使ったEPG録画予約と、時間指定録画予約が可能となっている。予約時には、毎日同時間予約や、毎週同時間の予約などの設定も可能なため、帯番組などの録画に重宝する。 また、番組視聴時にOPTIONボタンを押すと、[この番組を録画]という項目が表示され、ここを選択すると視聴中の番組が録画できる。ただしオプションボタンで呼び出すメニューは、横画面表示時でも縦位置になってしまう。さほど利用頻度は高くないし、実際の利用にはさほど問題ないのだが、操作体系としては少々違和感がある。 また、番組視聴中にOPTIONボタンを押すと、録画だけでなく、アスペクトモードの切り替え、画面表示方向選択、字幕表示、輝度設定などの項目が表示される。ワンセグ関連の基本設定はここで行なえる。
録画した番組は、[ワンセグビデオ]から再生できる。録画した順にリスト表示され、番組を選択すると再生開始する。再生時には早送り/戻しが可能で、2段階の速度調整が行なえる。一時停止中は、6秒程度のスキップ/バックも可能。また、1.25/1.5倍速の音声付早見再生にも対応する。 録画済みの番組の字幕を表示して、後で確認する[字幕一覧]機能も装備。データ放送には対応していないものの、機能は非常に充実している。なお、録画したワンセグ番組のPCへのバックアップなどには対応していない。 録画時に注意したいのは、PC接続中にはワンセグ視聴/録画が行なえいこと。充電しながら利用したい場合は別売のUSB接続ACアダプタ「AC-U50AD(実売2,480円)」が必要となる。 また、ワンセグの場合、移動時などで受信できず、録画が実行できないこともある。その際には、ワンセグのメインメニューに[録画できなかった番組]としてログを表示して、ユーザーに通知する。
auのワンセグケータイ「W51CA」と比較しても受信感度は良いようで、総じて受信性能は満足できた。さらに、ワンセグ機能のレスポンスが良く、録画機能の作り込みもしっかりしているのでかなり使えるワンセグ環境と感じる。公称値でワンセグ視聴時のバッテリ駆動時間は6時間となっているが、通勤、通学用途であれば、十分だろう。また、携帯電話と比べると、バッテリが減ってもさほど気にならないという点もポータブルプレーヤーのメリットだろう。 ウォークマンならではの特徴としては、なんといってもノイズキャンセル(NC)機能だ。オーディオプレーヤーとしてのウォークマンの進化型のため、付属のイヤフォンの音質がいいというのも一つの利点だが、さらに、NCによる外部音の低減により大幅に音声が聞きやすくなるのだ。
NCをONにすると、センター定位がしっかりするため、セリフやトークがしっかり耳に入ってくる。音楽の場合はある程度の音量が常に出ている場合が多いが、ドラマやトーク番組の場合は、所々で無音部や静かなシーンがある。電車内でこうしたシーンを見る場合には、ノイズキャンセルの効果が非常に大きい。NCをONにして、電車内で国会中継を見てみたが、あまり滑舌の良くない議員の答弁でも、音像が前に出るので聞きやすくなる。さらに、外部音をカットするため、野次や合いの手も聞き取れるようになるなど臨場感が向上する。 正直、使う前は、このサイズのウォークマンにワンセグは不要では? と感じていたが、大型化をおさえながら、オーディオプレーヤーとしての使い勝手を崩さずに、「ウォークマンならではのワンセグ」が実現できている。微妙なさじ加減で、バランスの良い、オーディオプレーヤー兼ワンセグテレビに仕上がっている。 例えば音楽再生中に、ワンセグの録画予約時間になると自動的にワンセグに切り替わるのだが、その際も楽曲の再生位置を記憶しており、録画終了時にはそのままレジューム再生ができるようになっている。こうした細かな配慮はさすがにソニーと感じさせてくれる。
■ 使い勝手と音質に優れた「ウォークマン」
音楽再生機能としては、基本的にはNW-S715Fなどと共通。NW-A800シリーズから導入された操作体系で、本体下部の5方向ボタンで選択と階層や上下移動、BACKボタンで前の画面に戻るなどの操作が可能となっている。 転送/オーディオ管理ソフトは、「SonicStage CP(Ver.4.3)」を採用する。対応音楽形式は、MP3(32~320kbps)、WMA(32~192kbps)、ATARAC(48~352kbps)、ATRAC Advanced Lossless(64~352kbps)、リニアPCM、AAC(16~320kbps)、HE-AAC(32~128kbps)。WM DRMやDRM付きAACには対応しない。 楽曲検索は[ミュージックライブラリ]から行ない、アルバムやアーティスト、ジャンルごとにソートされた楽曲を選択できる。レスポンスは非常によく、単純なリスト表示だけでなく、横方向のキー操作によるショートカット操作も行なえるため、目的の曲を探すのが非常に簡単だ。個人的には、このウォークマンの楽曲検索システムが、各社のプレーヤーの中でも一番好みだ。 また、NW-S715Fでは、5方向キーが一枚のパネルになっていたため、ボタンを確認しながらでないと操作しにくかったが、NW-A910では上下左右キー部が段差がついている。そのため、指にかかりやすく操作しやすい。細かい違いではあるのだが、かなり使いやすくなっている。
再生画面でもジャケット表示が可能。また、検索中や楽曲再生中にOPTIONボタンを押すと、シャッフル/リピートなどのプレイモード設定や、音質設定、ブックマーク登録などが可能となっている。[良く聞くシャッフル]、[タイムマシンシャッフル]などのインテリジェントシャッフルも搭載する。
イヤフォンはNW-S710Fシリーズ付属のものと同じ「MDR-NC022A」。ノイズキャンセル用のマイクを左右ハウジングに内蔵しながら、カナル型のイヤーピースと13.5mmの大口径ドライバユニットを備えている。 単体でもそれなりの遮音性があるが、NCをONにすると地下鉄などではぐっと外部音が低減される。NCの切り替えは、本体上部のスイッチで行なうが、ON/OFFで音質変化も小さく常にONでも問題ないだろう。NC効果の調整も可能となっている。音質、低中域の力強さと、全体のバランス、高域の情報量などが優れており、高音質なプレーヤーと言ってよいだろう。
動画再生は、[ビデオライブラリ]から行なう。対応動画形式は、動画がMPEG-4 AVC/H.264(最大320×240ドット/768kbps/Baseline Profile)とMPEG-4(最大320×240ドット/2,500kbps/Simple Profile)で、付属ソフト「Media Manager for WALAKMAN」でウォークマンに転送できる。Media Manager for WALKMANの対応OSは、Windows XP/Vista。写真もMedia Managerから転送可能で、[フォトライブラリ]から転送した写真の再生が可能。 また、別売の録音ケーブル「WMC-NWR1(実売1,280円)」を利用し、CDやMDからのダイレクト録音にも対応する。録音形式はリニアPCMと、ATRAC3 plus(64/128/256kbps)。 ワンセグの連続視聴時間は約6時間、ワンセグ録画は約8.5時間(画面OFF時)。動画/音楽の連続再生時間は約10時間/36時間。
■ 上位モデルの風格漂うウォークマン ワンセグケータイが人気を集めたこともあり、さまざまな機器でワンセグ対応が進む昨今、手持ちの携帯電話やパソコンなど複数台のワンセグ機器を持っているという人も少なくないだろう。 しかし、NW-A910は、ノイズキャンセル機能を搭載したことでより快適なワンセグ体験を提供し、それでいて、機能面でもウォークマンの「オマケ機能」にとどまらずに充実している。使う前は、正直「ワンセグ付けただけだろ?」などと思っていたが、「ウォークマンならではのワンセグ」が楽しめた。 もちろん、「ウォークマン」の名を冠する以上、オーディオプレーヤーとしてもしっかりと作られており、確かな音質や、大型液晶の搭載による楽曲検索性能の高さなども魅力的だ。 価格は、メモリ16GBの「NW-A919」が45,000円前後、8GBの「NW-A918」が35,000円前後、4GBの「NW-A916」が30,000円前後。小型のワンセグプレーヤーとしては、東芝「gigabeat V41(4GB/29,800円)」や、「COWON D2TV(2GB 25,800円/4GB 29,800円/8GB 36,800円)」などが競合となるだろう。ノイズキャンセルという付加価値はウォークマンならでは。ただし、gigabeat V41やCOWON D2 TVではメモリ拡張が可能だったり、WMV対応などの特徴もある。こうした付加価値をどう判断するか、という点が購入時の課題となるだろう。 また、8GBで27,000円前後、4GBで21,000円前後のNW-S710Fシリーズと比較すると、同容量で8,000~9,000円の差。ワンセグ機能にいくら払えるのか、という点も購入時のポイントになるだろう。個人的には、ボディの質感やボタンのつくりなど、随所にソニーの「フラッグシップモデル」を感じさせてくれるNW-A916が魅力的と感じた。 □ソニーのホームページ
(2007年10月19日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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