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120Hz駆動に対応した「AQUOS」Rシリーズを筆頭に、Gシリーズ、Dシリーズ、低価格/小サイズなEシリーズなど、豊富な液晶テレビラインナップを用意しているシャープ。先日発表されたGfKの調査でも、「薄型テレビで最も満足度の高いメーカー」のトップに選ばれるなど、市場からも高い評価を受けている。
そんなシャープが11月22日に発売する「AQUOS Pシリーズ」は、従来モデルよりも大幅にPCとの親和性を高めた新シリーズ。パーソナルユースを想定しており、サイズも22/26/32型と、“液晶テレビとしては小さく、PC用ディスプレイとしては大型”というラインだ。 全モデルで1,920×1,080ドットのフルHDパネルを採用しており、22型と26型のフルHDテレビは業界初という点も注目される。チューナは地上/BS/110度CSデジタルチューナと地上アナログチューナを各1系統搭載している。
24.1型など、PC用ディスプレイも大型化が進んでいる昨今、この「Pシリーズ」は“テレビ”なのか、それとも“PCディスプレイ”なのだろうか。製品の特徴も踏まえて、AVシステム事業本部 液晶デジタルシステム事業部 第1事業部 商品企画部の佐々木毅係長に話を伺った。
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■ テレビか? ディスプレイか? PCの主流がデスクトップ型からノートに切り替わっていることや、15型以上など、ノートPCに搭載する液晶が大型化していることから、単体のPC用ディスプレイの市場全体は縮小傾向にある。しかし、20型以上の大型製品の割合は増加しており、2008年第3四半期にはディスプレイ全体の約1/3を占めると予想されている。 一方、薄型“テレビ”は、2007年度末(2008年3月)に、世帯保有率が約52%に達する見込み。 リビング以外に設置する「2台目」のテレビもニーズが増えており、シャープでも32型フルHDモデル「LC-32DS1」を含むDシリーズを展開するなど、セカンドテレビ需要に応えるラインナップを拡充させている。
佐々木氏によれば、32/20型液晶テレビのユーザーの1割以上がPCとも接続しているというデータがあり、「ITインフラの整備やWebサービスの拡充が、パーソナルなテレビでPCも楽しみたいというニーズを牽引している」という。つまり“セカンドテレビ需要”と“PCとの親和性向上”は切り離せない市場のニーズであり、そうした声を反映させたのが「Pシリーズ」というわけだ。 “PCとの親和性”の例を挙げると、2系統のHDMIに加え、DVI-D端子とアナログRGB(D-Sub 15pin)端子を個別に用意している。RシリーズなどでもDVI端子を備えているが、アナログRGBと兼用させたDVI-Iが多く、複数台のPCをデジタル接続する場合はPシリーズが便利だ。
また、2画面表示に加え、PC画面にテレビの子画面を重ねる表示も可能。画面サイズは1/3と1/15サイズが選択でき、Windows Vistaのガジェットのように画面右隅に表示可能だ。もちろんドット・バイ・ドット表示もサポートしており、4:3の映像をアスペクト比を保ったまま拡大表示するモードなど、PCゲームなどで活用できる表示モードも備えている。 ほかにも、入力切替の上位にPC入力を持ってきたり、「AQUOS」テレビでは天面に配置されることが多い操作ボタンを正面に用意するのもPCディスプレイらしいポイント。奥に向かって湾曲したスタンド部にはキーボードも収納できる。 電源まわりもテレビのものから設計し直しており、アナログ/デジタルの両信号が無信号の場合に電源をOFF、信号が来るとONにするパワーマネージメント機能(DMPM/DPMS)にも対応。PC用ディスプレイでは必須とも言える機能だが、「AQUOS」のテレビではアナログのみしかサポートしていなかったという。
だが、佐々木氏は「Pシリーズ」はあくまで「テレビに軸足を置いた製品」だと説明する。「販売コーナーとしてはテレビ売り場だけでなく、PC用ディスプレイ売り場も検討している。だが、パネル解像度が1,920×1,200ドット(16:10)ではなく、16:9の1,920×1,080ドットを採用していることからもわかるように、あくまでPCとの親和性が高い“テレビ”として訴求したい」(佐々木氏)。 そこには、24型でも5万円台など、海外メーカーによる価格競争で低価格化が進み、利益率が低いPC用ディスプレイの土俵で戦いたくないという思惑がある。大型製品の割合は増えているが、台数自体は伸びていないPC用ディスプレイ市場を佐々木氏は「レッド・オーシャン(血みどろの戦いが繰り広げられる市場)」と表現。「Pシリーズからチューナを省いたモデルは?」との問いにも「それではPCディスプレイになってしまい、強みが活かせない」と否定した。 Pシリーズの店頭予想価格は、32型が24万円前後、26型が20万円前後、22型が18万円前後の見込で“液晶テレビ”の価格。テレビとしての付加価値を明確にしなければ、価格面でPCディスプレイと勝負するわけにはいかない。 また、「インターネットAQUOS」との住み分けについては、「インターネットAQUOSは“テレビを録画するHDDレコーダ機能を持ち、なおかつインターネットも利用できるテレビ”として開発した。そのため、組み合わせるテレビ部も、PCの周辺機器としての位置付けになっている」と説明する。
■ テレビとしてのクオリティを強化 「AQUOS」ブランドで培った液晶テレビとしての機能/イメージを武器に、PC用大型ディスプレイ市場も視野に入れた製品と表現できる「Pシリーズ」。今後の展開としてはフルHDを維持したまま、さらなる小型化を目指すのだろうか。
佐々木氏によれば「Pシリーズの画素ピッチと精細度は、32型で0.369mm/70ppi、26型で0.3mm/86ppi、22型では0.254mm/102ppiで、TN方式ではもう少しいけるかもしれないが、VA方式のASVパネルでは限界に近い」という。フルHDを維持したまま、22型以下のモデルは難しいようだ。 そのため佐々木氏は、今後の方向性として「テレビとしてのクオリティの強化」を挙げる。今回のP1シリーズには、フルHD液晶テレビのトレンドである120Hzの倍速駆動技術は「コストと回路サイズの問題」(佐々木氏)で入っていない。また、HDMI 1.3に対応し、x.v.Colorをサポートしているが、1080/24pやDeep Colorには非対応で、テレビとしての進化の余地はまだ残されている。
「AQUOS Pシリーズ」は、リビングからパーソナルへと、市場の幅を広げつつある液晶テレビの今後の方向性を示すと同時に、価格競争に汲々としているPC用液晶ディスプレイ市場にも新しい風を送るシリーズと言えそうだ。
□シャープのホームページ
(2007年10月31日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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