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JVCケンウッドホールディングスが10月1日設立
-ビクターとケンウッド経営統合。「カタ破りをカタチに」


左からビクター吉田秀俊取締役、ビクター佐藤社長、ケンウッド河原会長、ケンウッド塩畑社長

5月12日発表


 日本ビクター株式会社株式会社ケンウッドは、10月1日をもって経営統合し、JVC・ケンウッド・ホールディングスを設立することで合意した。新会社の会長兼最高経営責任者には、現ケンウッド会長の河原春郎氏、社長には現日本ビクター社長である佐藤国彦氏が就任する。

JVCケンウッドHD会長に就任予定のケンウッド河原春郎会長

 午後5時30分より都内で行なわれた共同会見で、JVCケンウッドHD会長に就任予定のケンウッド河原春郎会長は、「近年の電機業界では、開発負担や設備投資が増加。資金力に勝る大手が優位になっている。さらに、汎用部品による商品化が容易になったことから、参入障壁が低下。韓国、台湾、中国メーカーが台頭し、価格下落している。また、IT分野からの参入により、市場競争がいっそう熾烈になっている」とし、「両社の民生用事業の改革が必要になっている。経営統合により、日本のAV産業の勝ち残りを目指す」と宣言した。

 また、「本格的に経営統合に向かって1年。長い間、電機業界が各社でやってきたが、そのままでは立ち行かなくなっている中、スタートが切れたのはすばらしいこと。イメージとしてはアップルがiPodで大きな変身を遂げたように、“カタ破りをカタチに。”という、今までの歴史の中に無い、新しい時代をクリエイトしたい。そのためにこの会社がある。単に老舗の寄り合い所帯ではない」と今回の経営統合の意義を説明した。

 両社は、デジタル化の進展に伴う設備投資やソフト開発負担の増加や、世界市場におけるシェア競争や価格競争が激化しているという環境下で、企業価値拡大を図るためにAVメーカーの再編を決断。2007年7月に経営統合の方針を発表し、その後技術開発合弁会社J&Kテクノロジーズの設立など、統合に向けた準備を進めてきた。

 統合方針発表後、ビクターは、ディスプレイ事業の構造改革による経営基盤の安定化を果たし、ケンウッドもカーエレクトロニクス事業のOEM分野の改革などを完了。両社の経営リソースの統合により、さらなるシナジー効果を発揮すべく、10月1日をもって経営統合を実施する。

 経営統合においては、事業会社であるビクターとケンウッドの各株式の100%を新会社JVC・ケンウッド・ホールディングスに割当て。ビクターとケンウッドの双方が上場を廃止し、新持株会社が東京証券取引所一部に新規上場する。

経営統合により「勝ち残り」を図る 経営統合のスキーム 経営統合の目的。世界を代表するAV専業メーカーに

統合ビジョンは「カタ破りをカタチに。」

 統合により、カーエレクトロニクス事業の売上げ拡大や新事業の売上創出などで、売上シナジー300億円を見込むほか、共同開発による開発負担の減少や、部材の共同調達によるコスト減などで、100億円のコストシナジーを生み出し、収益の改善を図るという。また、財務面でも税務メリットの増大などで、純利益やROEの拡大が図れるとしている。

 共同持ち株会社の経営目標は、平成23年(2011年)3月期の売上高8,300億円、営業利益390億円、営業利益率4.7%と設定した。なお、2007年度の両社合計売上高は8,237億円、営業利益は96億円。新会社の統合ビジョンは「カタ破りをカタチに。」とし、「行動指針は一人一人が主人公となって絶え間ない変革をやり遂げる。」。


2011年度の収益目標は売上高8,300億円、営業利益率4.7% 経営統合でカーエレクトロニクスを強化 カーエレ、業務用システムの売上げ拡大を目指す


■ カーエレ、ビデオカメラを重点事業に

4つの事業分野に集中して、強化

 経営統合により、従来より共通化を進めてきたカーエレクトロニクスやホームオーディオにおける開発、生産/調達のみならず、現行事業領域や新事業領域、マーケティング/販売などの活動領域に拡大する。

 具体的には、カーエレクトロニクスと、ホーム&モバイルエレクトロニクス、業務用システム、エンタテインメントの4つの事業を中核とし、持ち株会社が技術/リソースの統合によるシナジー効果の最大化を図る。シナジーを生み出しつつも、ビクターとケンウッドの両社が、それぞれのブランドで製品企画などで差別化、事業展開する。

 カーエレクトロニクス事業は、両社の共通事業分野で、売上の19%を占め新会社の最大の事業となる。同事業では、経営リソースの有効活用やスケールメリットの拡大により、売上げと収益の両面からシナジー効果を最大化、成長を推進する。特に市販向けカーオーディオでは共同開発や部材の共同調達によりコスト競争力を強化。「グローバルリーダーを目指す」という。また、J&Kテクノロジーにおける共同開発を生かして、カーナビにおいても年間販売台数を100万台規模に引き上げる。

 ホーム&モバイルエレクトロニクス事業では、ビクターのディスプレイ事業に両社のホームオーディオ、ビクターの収益の柱であるビデオカメラ事業、AVアクセサリ事業をあわせ、総合的なAVエンタテインメントとして経営リソースの最適化や、技術共有、スケールメリット拡大などを図っていく。特に両社売上の17%を占めるビデオカメラ事業の成長に取り組むほか、ディスプレイとホームオーディオ収益の改善を目指す。

4事業の収益改善、売上げ拡大方針 カーエレを最大の売上げ分野に設定 ホームエレはビデオカメラを強化

 業務システム事業では、ケンウッドの収益の柱である無線端末/システム事業と、ビクターの今後の成長分野である業務システム事業を中心に、収益の拡大を図り、「2011年には最大の収益分野にする」という。エンタテインメント事業では、コンテンツ開発からディストリビューションまでの強化により、競争力を高める。

 河原会長は、「カーエレクトロニクス、ビデオカメラ、業務、エンターテインメントの4分野で、収益性のしっかりした会社になりうる」と訴えた。

 さらに、映像、音響、無線通信技術の融合や、マーケティング力などを生かし、「カタ破り」な新事業開発に取り組むという。河原会長は「第5の事業セグメントを育成したい。具体的な試作品は、まだお目にかけるわけにはいかないが、皆さんにすぐに届けたい。世の中に全く新しい商品、サービスを生み出す」と新事業への意気込みを語った。

業務システムを最大の収益分野に カタ破りな新製品の創出を目指す

ビクター佐藤社長

 統合会社の社長に就任予定のビクター佐藤社長も、「世界のAV産業をリードすべく、新しいスキームの元、経営を統合する。ビクターは先進のオンリーワン技術で、新しいライフスタイルを提案すべくやってきたが、新しい経営スキームでもこの哲学は生かしていく。一方で、デジタル化の進展により、ここ数年は大変厳しい経営を強いられてきた。抜本的な構造改革に取り組んできたが、これらの改革のスピードをさらに上げ、特にディスプレイ、オーディオの構造改革を速やかに完遂し、本日契約を締結したことで、本格的な成長戦略、健全なる攻めの経営を図っていく」とし、「統合会社では、4事業を基幹事業としていくが、さらに両社の最高水準のリソースをつかい、第5番目の基幹事業を早期に育成する。また、特に両社の共通事業、業務用システムについては、システム販売のスケールメリットを生かして商品力を徹底的に強化。更なる強固な収益事業として育成していく」と収益改善と、新事業の創出についてアピールした。


■ 各ブランドを生かして事業展開。日本のAV専業メーカー復活の象徴に

 統合によるビクターのメリットについて河原氏は、「カーエレクトロニクスに継ぐ、第2のエンジンとしてビデオカメラ事業をさらに強化していける」と説明。ケンウッドのメリットについては、「オーディオには強いが、市場はデジタル化、マルチメディア化に向かっている。ビクターの映像技術でマルチメディアを強化して、民生機器事業の黒字化を図れる」と説明。いずれも、民生機器の収益改善に両社のリソースの共有が重要であるとの認識を示した。

統合によるビクターのメリット 統合によるケンウッドのメリット

 また、設計や開発部門を共通化しながら、2つのブランドを展開することになるが、そのすみわけについて、ビクター佐藤社長は、「両社長い間培ったブランドがある。これを大事に市場に出していく」と説明。

ビクター吉田取締役 ケンウッドの塩畑社長

 10月に事業会社となるビクターの社長に就任予定のビクター吉田秀俊取締役は、「40以上の海外法人があり、販売網が大きい。オーディオ、ビデオの製品を始め、サッカー、ジャズフェスティバルの協力など現地に根付いて活動している。ホームシネマを中心に、商品リンクを大事にして特徴を出していきたい」と語った。

 また、ケンウッドの塩畑一男社長は、「無線の実績があり、収益の柱になっている。オーディオと無線のユニークな専業メーカー。ビジュアル化が進む市場の中で、無線とオーディオの中に、JVCの映像技術をいれて、ケンウッドらしさを保持しながら、新しい製品にチャレンジする」とした。

 2社の経営統合以降のさらなる業界再編について、ケンウッド河原会長は、「この2つの統合により、日本のAV専業メーカーがよみがえるという成功モデルを生み出したい。その上で第3、第4の会社と一緒にやれるという形になればいいと思っている」と語った。

□ビクターのホームページ
http://www.victor.co.jp/
□ニュースリリース(PDF)
http://www.victor.co.jp/company/ir/pdf/info-080512a.pdf
□説明会資料(PDF)
http://www.victor.co.jp/company/ir/pdf/presen-080512.pdf
□ケンウッドのホームページ
http://www.kenwood.co.jp/
□ニュースリリース(PDF)
http://www.kenwood.co.jp/newsrelease/2008/pdf/20080512.pdf
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070724/vicken.htm

( 2008年5月12日 )

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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