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社団法人日本映像ソフト協会(JVA)は17日、私的録音録画補償金に関する問題について、「タイムシフト目的でも製作者へのフィードバックは必要」など、同協会の基本的な考え方を発表した。 私的録音録画補償金制度に関しては、制度の維持と適用機器の拡大を求める著作権権利者と機器メーカーが対立。「ダビング10」の開始日時が確定できない要因にもなっている。既報の通り、17日には文部科学省と経済産業省が補償金制度の対象にBlu-ray Discを加えることで合意。ダビング10の実施に向け、省庁による働きかけが活発化している。 JVAが17日に発表したものは、こうした最新の動きに対してのコメントではなく、あくまで同協会の補償金に関する基本的な考え方を示したものになっている。
■ タイムシフト目的でもフィードバックは必要 テレビなどで放送される映画について同協会は、「タイムシフト目的での録画など、一定限度でコピーされることが避けられない」とする一方、「そのコピーが映画製作者に何らのフィードバックの無いまま行なわれることは正当ではない」とする。 つまり、タイムシフト目的であれ、それが映画の著作物そのものをまるごと観賞する目的で行なわれる私的録画は、製作者が資本を投下して制作した映画の経済的価値を享受する事に変わりは無く、「そのような私的録画からは、製作者にフィードバックがあってしかるべき」という主張だ。 また、「直接的な売り上げ減が生じていない場合、フィードバックは不要」という意見に対しては、放送だけでは製作資金を回収できず、DVDなどのパッケージの売り上げが重要になるアニメのビジネスモデルを例に挙げ、「大量に私的録画されると、その後のパッケージ販売に耐え難い悪影響が生じ、逸失利益が発生する」と説明。 アニメとは逆に、パッケージ商品が販売された後でテレビ放送される事が多い映画についても「パッケージ販売やレンタル、有料配信は一定の時期に終了するものではなく、テレビ放送後も継続して行なわれるため、放送からの私的録画による何らかの逸失利益は生じている」と分析する。 そのため「必ずしも直接的な売り上げ減が生じているかどうかが重要ではなく、私的録画から製作者へのフィードバックが必要」と主張。現状においてそのフィードバックの適切な方法は「私的録画補償金しかない」と結論づけている。
■ 補償金が不要になるのは条件が整備されてから JEITA(社団法人電子情報技術産業協会)では、技術の進展に伴い、コンテンツの利用コントロールが可能になることから、補償金制度の今後の方向性は、縮小/廃止を原則としている。しかし、JVAでは補償金の廃止には2つの条件が必要になるとしている。 1つは「映画製作者がどのような範囲で私的複製を許諾するかを個別に選択できるようになり、その範囲に私的録画が技術的に制限されること」。つまり、映画を放送する際、製作者が「この作品は○回、○世代までコピーできるようにしよう。コピーできないようにしよう」と指定できる技術を意味しており、「ダビング10」に同種の機能は含まれていない。 よって、JVAでは「(ダビング10が採用されることで)ダビング10の範囲内での私的録画については権利者が許諾したものと同視できるとする意見があるが、これは正しくない」とし、あくまで「ダビング10は妥協の産物であり、その妥協は権利者が私的録画補償金を別途得られることを前提としたものだからだ」と説明。「将来ダビング10がダビング5になったとしても事情は同じ」としており、製作者がコピー回数を指定できる技術の採用を要望。それが存在しない現状では、あくまでダビング10と補償金は不可分なものであるとしている。 補償金廃止への条件2つ目は、「技術的制限を回避して行なわれた私的複製を違法とする」こと。「そうしなければ制限技術そのものが“ざる”になってしまう」と指摘し、それを防ぐためには、著作権法30条1項2号、およびそれに関連する「技術保護手段」に関する定義規定(同法2条1項20号)を見直す必要があるという。 現行法では技術的保護手段が文言上、狭く定義されているため、「明らかに複製をコントロールすることを目的とした技術的手段でありながら、技術的保護手段の定義に当てはまらないのではないかとの疑義が生じる場合がある」という。
また、同法では技術的保護手段を回避したことを“知りながら”行なう複製を、許された“私的複製”から除外しているが、「一般人にとって技術的保護手段の回避に該当するかどうかの判断基準は明確ではなく、“知りながら”と言えるかどうかに疑義が生じる場合があり得る」と、問題点を指摘。法改正が必要だとしている。
□JVAのホームページ
(2008年6月18日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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