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【新製品レビュー】
単体NCイヤフォンとしても使える新「ウォークマンS」
-「おまかせチャンネル」など普及モデルならではの強化も


10月11日より順次発売

標準価格:オープンプライス


 ウォークマンの普及モデル「Sシリーズ」の新製品が発売された。メインとなる機能は、2007年10月に発売されたNW-S700シリーズから大きくは変わっていないが、自動プレイリスト作成機能の「おまかせチャンネル」が追加。また、ノイズキャンセル機能に「外部入力」モードが追加され、ウォークマンと付属イヤフォンを合わせて一つのNCイヤフォンのように利用できるというユニークな機能が追加された。なお、メモリ容量は価格が同等のまま倍増されている。

 ラインナップとしては、ノイズキャンセル搭載の「NW-S730F」シリーズと、非搭載の「NW-S630Fシリーズ」、S630Fシリーズと同等で、専用スピーカーも付属した「NW-S630FKシリーズ」を用意する。このうち、上位モデルの「NW-S730F」シリーズと、スピーカー付属の「NW-S630FKシリーズ」を試した。

【新Sシリーズのラインナップ】
型番 ノイズ
キャンセル
メモリ容量 カラー 発売日 店頭予想価格
NW-S730Fシリーズ
NW-S736F 4GB ゴールド
ピンク
レッド
ブラック
10月11日 17,000円前後
NW-S738F 8GB 21,000円前後
NW-S739F 16GB 27,000円前後
NW-S630Fシリーズ
NW-S636F 4GB ホワイト
ピンク
ライムグリーン
ブルー
10月25日 14,000円前後
NW-S638F 8GB 18,000円前後
NW-S639F 16GB 24,000円前後
NW-S630FKシリーズ(スピーカー付属)
NW-S636FK 4GB ホワイト
ピンク
ライムグリーン
ブルー
10月11日 18,000円前後
NW-S638FK 8GB 11月8日 22,000円前後
ソニースタイルモデル
NW-S739F/ST 16GB テクスチャード
シルバー
9月下旬予約開始 30,000円前後

音楽再生画面

 本体は、ウォークマン最薄という7.5mmを実現。外形寸法は約89.5×42.9×7.5mm(縦×横×厚さ)。重量は約46gとなっている。従来のSシリーズに比べると、本体デザインの丸みが若干落とされ、ソリッドな印象。アルミヘアライン仕上げで高級感がある。

 価格帯や形状、メモリ容量で見ると、iPodシリーズで言えばnanoが競合すると見られる。サイズも第4世代nanoの90.7×38.7×6.2mm(横×縦×厚さ)、重量36.8gに近い。


7.5mmまで薄型化。表面と背面はヘアライン仕上げ
第4世代iPod nanoと比較

 再生できる音楽フォーマットは従来と同じATRAC/WMA/MP3/AAC/HE-AAC/リニアPCM。動画はこれまでのMPEG-4やAVCに加え、新たにWMVに対応した。著作権保護されたWMVには非対応なので、現状では大きなメリットではないが、対応が増えたこと自体は歓迎したい。ディスプレイは2型/解像度320×240ドットで、従来モデル(1.8型/240×320ドット)より若干大きくなった。動画は縦/横画面どちらでも再生できる点は従来と同じ。


WMVも再生可能になった 動画は縦/横表示が切り替え可能 静止画表示画面



■ 「おまかせチャンネル」をウォークマンにも搭載

 全モデル共通となる、音楽再生での大きな特徴は、HDDコンポ「ネットジューク」で採用されている自動プレイリスト機能「おまかせチャンネル」のウォークマン向けバージョンが搭載されている点。ネットジュークでは既に多くの機種が採用していることから目新しさはないが、ウォークマンでは初となる。

 iPodシリーズで採用されたGeniusはユーザーがどのような曲を持っているかというデータに沿ったプレイリスト作成機能だが、「おすすめチャンネル」は独自の「12音解析技術」を元に、曲調やリズムなどを判断して自動分類するという、アプローチがまったく異なるもの。波形などで分類する機能は他社にもあるが、「アクティブ」や「リラックス」、「朝のおすすめ」など、曲を聴きたいシーンに応じた11のチャンネルに分類するところが特徴的だ。解析は曲の転送後に手動で行ない、解析中は音楽再生などは行なえない。なお、後述するが楽曲転送ソフトの最新バージョンであるSonicStage Vでも解析は行なえる。


おまかせチャンネルはホームメニューの左上に 本体で曲の解析が行なえる 解析中の画面

おすすめチャンネル再生時の画面

 ウォークマン向けにこの技術を搭載するため、ネットジュークに比べ低い演算能力でも同様の結果が出せるというアルゴリズムが開発された。実際に解析を行なう「チャンネル更新」をかけたところ、解析の時間は15曲で30秒程度、100曲で3分程度だった。更新中は残り時間が表示される。なお、楽曲フォーマットなどにより時間は異なる。

 「おすすめチャンネル」アイコンはトップメニューの左上。これまで「インテリジェントシャッフル」があった場所だ。各チャンネル内の楽曲はシャッフル再生され、曲順に飽きることはない。解析による自動分類も、特に違和感はなく、妥当なカテゴリに収まったように感じた。プレイリストにそれぞれ名称がついているため、iTunesのGeniusのように意外な関連を発見することは少ないかもしれないが、これまでネットジュークで長く使われた技術ということで完成度は高い。

付属イヤフォン

 そのほか、通常の音楽再生は従来モデルの機能をほぼ継承しており、アーティスト/アルバム/曲からのイニシャルサーチや、インテリジェントシャッフル機能も従来通り使用できる。

 音質面では、スペック上では大きな変化はないが、オーディオ回路の改良により、量子化誤差の減少や、小音量レベルでの歪み率が改善されているほか、0.1mW出力時(およそ音量15)時のホワイトノイズレベルを従来モデルに比べ約9dB改善したという。両モデルを聞き比べることはできなかったが、再生中に、小音量時での歪みやホワイトノイズが気になるようなことはなかった。

 そのほかの改善点として、低消費電力型のヘッドフォンアンプの採用で、音楽再生時間は従来に比べ7時間の向上となる40時間(MP3/128kbps時)、ビデオ再生は30分向上の10時間(MPEG-4 384kbps時)を実現している。


ライブラリ画面 イニシャルサーチ インテリジェントシャッフル



■ ノイズキャンセル機能も着実に進化

 もう一つ、音楽機能で注目したいのは「NW-S730F」シリーズに搭載されているアクティブノイズキャンセル(NC)機能。前モデルのNW-S710F/S610FシリーズでハードウェアでのON/OFFスイッチ採用など改良が加えられたが、新モデルではこれを継承しつつ、外部入力/サイレントの2モードが使えるようになった。どちらも、上位機種のAシリーズにも搭載されていない新機能となる。なお、従来モデルと同様に、NCを利用する場合は、モードを問わず付属のマイク内蔵EXイヤフォンを接続することが必要。

NCの外部入力モードに必要な別売録音ケーブル

 外部入力モードは、他のプレーヤーで再生する音声を出力しながら、ウォークマンのNC機能を効かせるというもの。ウォークマンと付属ヘッドフォンを合わせて、一つのNCイヤフォンとして利用できるというわけだ。別売の録音ケーブル「WMC-NWR1」(直販1,280円)を経由して音声入力するため、ステレオミニ接続のプレーヤーとの組み合わせで使える。なお、同モード中にハードウェアのNCスイッチを切ると外部入力の音声も切断される。NC機能利用時のみ使えるモードだ。

 サイレントモードは、音楽を再生せずにNC機能だけを利用するというモード。メニューの「ノイズキャンセル設定」内から「外部入力」を選ぶと使用できる。


iPod touchからの再生音を、ウォークマンのNCを経由して聴いた ケーブルの長さはここまでになる 録音ケーブルをつながないと外部入力モードにはならない

 

 外部入力モード時は、ウォークマンのアンプやイコライザは使用されないほか、DSEEやクリアステレオなどのクリアオーディオ機能も適用外となる。これらの高音質化技術はウォークマン専用に設計されたものという意図からだろうが、たとえば“iPodの再生音にウォークマンの高域補間技術を組み合わせる”ということができても面白いとは思う。なお、外部入力時でもウォークマン本体で音量を調整することは可能。

 サイレントモードは、外部入力モードとの切り替え式で、一時停止ボタン押すことで、どちらかを選択できる。従来モデルでも音楽を一時停止することで、無音でのNC機能が利用できたが、一時停止後では約3分ほどでスリープ状態となり、NCも切れてしまう。これまでのモデルでは、最小音量でリピート再生することで、ノイズ低減用イヤフォンとしても利用できるという裏技的な使い方があったが、NCだけを使える新たなモードとして「サイレントモード」が設けられた。なお、外部入力/サイレントいずれのモードでも、「ノイズキャンセル調整」で効き具合を調整できる。


外部入力時の画面 サイレントモード画面 NCのレベル調整も可能

 今回は、外部入力モードでiPod touchを再生しながら、ウォークマンを経由してNCを利用した。地下鉄車内や、エアコン利用の室内で聴いてみたが、ウォークマン本体で再生しながらNCをONにした時と同様にNC機能が発揮された。当然、一般的なNCイヤフォンよりケーブル類が邪魔になるが、機能としては問題なく使える。

 気になったのは、外部入力/サイレントモードともに、使用中はディスプレイ表示をOFFにできないこと。通常再生時では一定時間で画面OFFまたはスクリーンセーバーに切り替わるが、これらのモードでは、一度設定すると、バックライトは一定時間で消えるものの、表示はそのままになっている。気になるほど明るい画面ではないが、このモードを使用中に画面を見ることはほとんどない。本体電源の切り忘れを防ぐ意図かもしれないが、バッテリを無駄に消費する点は改善してほしいところだ。同社にこの点を問い合わせたところ「今後の検討課題としている」との回答が得られた。

 ウォークマン本体で再生しているときは、NCはONにした方が音像がはっきりする印象になるが、OFFにしても大きくぼやけるということはない。個人的には、ウォークマンに限らずNC機能を長く使うと圧迫感を受けるほうなので、リラックスしたいときはOFFにしていたが、クリアステレオなどを併用して違和感なく聴くことができた。


■ SonicStageもバージョンアップ

SonicStage V

 ソフトウェア関連では、本体の発売後に楽曲管理/転送ソフトが「SonicStage CP」から「SonicStage V」(Ver.5.0)へアップデートされた。主な変更点は、「12音解析」が追加されたこと。解析を行なったライブラリ内の楽曲を、新ウォークマン「NW-S730F/S630F/S630FK」に転送することで、ウォークマン本体で解析することなく「おまかせチャンネル」をすぐに利用可能となる。

 また、au携帯電話向けビデオ配信サービス「LISMOビデオクリップ」のビデオ管理や対応機器への転送機能も追加。曲情報の読み仮名編集も行なえ、曲名やアーティスト名、アルバムタイトルなどの読み仮名を編集できるようになった。

 従来バージョンのSonicStage CP(Ver.4.4)からは「アーティストリンク情報」の編集機能と、ATRAC CD/MP3 CDの作成機能の2点が省かれている。なお、SonicStage CPをインストールしたパソコンにSonicStage Vをインストールすると、上書きさるのではなく、別ソフトとして並存するが、同時に起動することはできない。

 表示は一新され、ジャケットがこれまでより大きく表示できるなど、表示パターンが多様化された。アーティスト検索やジャンル検索では、曲数が多いアーティスト/ジャンルはより大きなフォントで目に付きやすい点など、ユーザーの特性に合わせた表示がユニークだ。表示方法を切り替える際も凝ったアニメーションが使用されている。ただし、高機能になった分、起動時に使用するメモリはSonicStage CPよりもやや増えている。今回の使用中に、極端に動作が重くなるようなことはなかったが、従来バージョンのユーザーは注意したいところだ。

 動画管理/転送ソフト「Media Manager for WALKMAN Version 1.2」では、新たにフォルダを指定して転送できるようになったほか、静止画の転送速度を向上させたという。また、従来の動画対応ウォークマンでは、ポッドキャストは動画がMedia Manager、音声がSonicStageと分かれていたが、ポッドキャストは動画/音声ともMedia Managerに一本化された。動画と音声で転送ソフトが異なるのは、これまでと変わらないが、SonicStageの転送ファイルが「音楽と着うた、ミュージッククリップ動画」に絞られ、若干ではあるが役割分担がわかりやすくなった。

表示方法が多様化し、検索などが視覚的に分かりやすい Media Manager for WALKMAN Version 1.2



■ スピーカー付きモデルも

NW-S630FKシリーズの4GBモデル

 今回のSシリーズでは、NCのない下位モデル限定ながら、WM-PORTに接続するスピーカーとセットになった「NW-S630FKシリーズ」も発売された。本体に合わせたカラーと丸みのあるデザインが特徴のステレオスピーカーで、スタンド兼用のアクティブスピーカーとしてだけでなく、ウォークマンのバッテリで動くポータブルスピーカーとしても利用可能だ。なお、スピーカーは単体でもオプション「SRS-NWGT10」(5,980円)として発売。新Sシリーズのみ装着できる。

 セットで販売される珍しいパターンということもあり、早速試用してみた。音質面では、奥行き約2cmというサイズで豊かな低音を求めるのはさすがに厳しく、価格相応といったところ。置き方は背面のスタンドで立たせる方法と、上向きに寝かせる方法があるが、どちらかというと、寝かせて複数人でも広い指向性で聴けるという使い方がこの製品には合っているように思える。スピーカー本体にも音量ボタンを備えており、小さな部屋で聴く分には音量として不足はない。


側面にボリュームスイッチ 寝かせて再生することも可能 背面。音声入力などはない

 ウォークマンが4GBでスピーカー付きの「NW-S636FK」は直販17,800円、8GB「NW-S638FK」が21,800円。スピーカー無しの4GBモデル「NW-S636F」が同13,800円、8GBモデル「NW-S638F」17,800円と、それぞれ4,000円の差額となっているが、単品アクセサリのACアダプタが直販3,480円ということを考えるとAC充電ができてスピーカーにもなることは便利ではある。

 セットモデルに付属するACアダプタはマルチボルテージ対応で、イギリスやオーストラリアなど一部の国を除いて海外でも利用可能。さらに、欧州方式のプラグ変換アダプタも付属するのはユニークだ。


ウォークマンを装着しない状態 スピーカー単体モデルはホワイトのみ マルチボルテージ対応ACアダプタと欧州方式プラグアダプタを同梱


■ ウォークマン独自機能への価値観が分かれ目か

 製品の発表時から気になっていたのはNCの外部入力モードだった。機能強化としては大きなものではないが、ウォークマンを他のプレーヤーと連携できるというのは大胆な試みではある。NCを使うだけならソニーや他のメーカーから出ている専用イヤフォン/ヘッドフォンを使うほうがケーブル類もかさばらないため無難だ。

 しかし、EXモニターイヤフォンの音質とウォークマンのNCによる効果は、低価格のNCイヤフォンでは得られないもの。ケーブルが長くなってしまうため通勤/通学に毎日持ち歩くには抵抗があるが、例えば出張での航空機内など、長い時間使用するケースであれば、テーブルにプレーヤーとウォークマンを並べ、使いたい方を再生するという楽しみ方もできる。

 また、ウォークマンならではの連携として、同社Blu-ray Discレコーダからの「おでかけ転送」や、au携帯電話の「LISMO Music Store」で購入したビデオクリップの再生なども、引き続き使える。同社レコーダなどのユーザーにとっても魅力的な要素となるだろう。

 今回のSシリーズは、Bluetoothやワンセグなど上位機種のような目立った新機能はないが、上位モデルの改良を受けたブラッシュアップが大きな魅力。一方で独自の「おまかせチャンネル」採用で、ライトユーザーにも利用シーンがわかりやすいことも選択のポイントといえる。さらに、これまでも評価が高かった再生時間がさらに延長されたのは、普及モデルとして押さえるべきところをカバーしている印象だ。NC機能についてはまだ改良してほしい点はあるものの、クリアオーディオ技術などで完成度が高まったウォークマンシリーズへの、こういった新たな試みは歓迎したい。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/200809/08-0908/ 
□ウォークマンのホームページ
http://www.sony.co.jp/walkman/
□関連記事
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【新製品レビューバックナンバー】
http://av.watch.impress.co.jp/docs/backno/npback.htm

( 2008年10月30日 )

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