2018年9月4日 07:20
8月28日に発売された「Surface Go」を購入した。なぜか、といわれると回答に困る。「欲しかったから」といってしまえばそれまでなのだが、「自分で使いたいPCの条件に合っていたから」ということは大きいように思う。
ぶっちゃけていうと「荷物を軽くしたかった」のだ。
西田がPCを選ぶ時の条件は、「解像度が高くて表示が見やすい」「パフォーマンスがそれなりにある」「メモリーは8GB以上」「できればペンやタッチに対応している」ということ。もちろん、個別にいろいろありはするのだが、念頭にあるのはこんなところだ。いろいろ軽量なノートPCはあるが、この条件に合っていて安くて、なにより「買いたい欲を刺激された」ものは少ない。そこに、Surface Goの上位モデル(メモリーは8GBでストレージは128GBのSSD)が刺さった、ということなのだが。
もうちょっと説明しよう。
日常的に、西田は「iPad Pro(10.5インチ、セルラーモデル)」と、PCもしくはMacを持ち歩いている。PCの場合にはSurface Book 2、Macの場合にはMacBook Pro(13インチ、2016年モデル)である。以前も書いたことがあるが、PCかMacかは「その日の気分」で使い分けている。仕事柄両方知らないといけないし、実際、どっちでもいい、と思っている。Macの方が表示やUI的に好みではあるが、Windowsの方がいいところも多数ある。また、VR系やゲーム系をチェックする場合、Windowsがないとどうしようもない。
「持ち歩くのは、iPadかPCか、どちらかでいいんじゃない?」と思われるだろうが、結局は両方がいい、という結論になっている。iPadだけで済む日もあれば、そうでない日もある。「自由に道具を選べる方が、今はベスト」という判断をしている。
どこでも通信がすぐにできて表示も美しいiPad Proはとても便利だが、OSの性質上、多数の画像を整理して人に渡すような作業には向かない。また、「PCやMacのブラウザじゃないとできない」作業もいくつかある。本当に腰を落ち着けて書くなら、主にキーボードの問題でPC/Macの方がいいのも事実である。
iPadで大抵のことはできるし、実際いい環境なのだ。特に、セルラーモデルで「どこでも通信を伴った作業が瞬時に始められる」のは本当に快適だ。だが、それだけでは満足できない。かといって、PC/Macだけでも不便だ。長い文書にメモを入れながら読んだり、ゲラをチェックしたり、原稿を書きながら動画を見たり(おい)ということは、iPadの方がずっと便利である。なので、「数百グラムだったら持ち歩け」という結論に至った。
が、まあ、結果として荷物が重くなるのだ。
当たり前だが、今メインで使っているPCがどちらも1.3キロ(MacBook Pro)もしくは1.5kg(Surface Book 2)と重い。それだけの意味はあるのだが、「パフォーマンスのいらない日に、もうちょっと軽くていいものはないか」とは思っていた。
というわけで、Surface Goに話が戻ってくる。自分が選ぶPCの条件に合っていて軽く、「欲しい」と思えたから買った、ということになるだろうか。スペック的には他にも候補があるが、要は気持ちの問題である。
重量は、キーボードと合わせて761g。iPad Pro+スマートキーボードもだいたい同じ重量であり、「PC側の重量が以前の半分になった」計算になる。まあ、常にこの組み合わせではなく、「動画編集などのヘビーな用途が必須」「出張などでフルな仕事環境がいる」ということになれば、いままで通り、MacBook ProかSurface Book 2を持ち出すことになるだろう。ある意味、非常に贅沢な仕事環境だ。
さて、Surface Goの使い勝手についてみていこう。
おそらく多くの人が気になるのはパフォーマンスだろう。ベンチマークはすでに出ているので、あえて官能的な評価でまとめてみたいと思う。
率直に言って「速くはない」。
だが、遅いと強く思ったのは、データのインデックス化が走っているような場面に限られている。あと、Lightroom CCで写真を編集する時の反応は遅いと感じる。意外に思えるかもしれないが、Lightroom CCならiPadでの利用が非常に快適なので、そちらで作業をして書き出しと整理だけSurface Goで……というパターンもある。
仕事のメインである「文書の作成」なら、問題は感じることもない。ウェブ閲覧も同様だ。先ほど挙げたLightroom CCでの作業にしたって、まあ、我慢できないほどではない。RAW現像からの書き出しを100枚、とかすればまた話は別。私の場合、そこまでヘビーな使い方をするわけではないので、特に問題はない、と判断している。
メモリーが4GBのモデルを選ぶとどうか、少々気になる部分がある。ストレージも、128GBモデルはSSDであるのに対し、4GBモデルはeMMCで、パフォーマンスには差が出るはずだ。とはいえ少なくとも、筆者が選んだ8GBのモデルであれば、十分に満足できる使い勝手である。AtomベースのWindows PCでは、メモリー量の問題もあってか「どうにももたつく」と感じることはあったが、Pentium Goldを使ったSurface GOの場合、CPU負荷が100%に張り付くこともなく、発熱も気にならない。印象論でいえば、Core mシリーズよりも負荷があがりやすく思えるが、使い勝手で極端な差は感じない。なかなかいいバランスだと思う。
ただ、「同じタブレット同士」で比較すると、スクロールのなめらかさなどで
iPadに劣る。というか、そうした「手触り」では、iPadが突出して快適な製品なのだ。画面もiPad Proに比べ若干小さく、画質も劣る。だから「iPadと同じ使い方」には向かない。iPadを持ち歩かずこちらだけ……とはいかないのだ。一方で、キーボードの出来はSurface Goの方がずっといいし、「フル機能」のアプリとATOKが使えるメリットは大きい。若干スクロールにひっかかりはあるが、タッチパッドと画面タッチの両方が使えるのはわりと快適で、操作面での不満はない。ただ、キーボードのファンクションキーは小さいので、変換にファンクションキーを使う人には向かないだろう。筆者はショートカットキー派なので問題ないが。
インターフェースはUSB Type-Cが1つしかない。これは不満といえば不満だが、MacBookと同じ、と思えばそんなものだ。ハブもケーブルも今はあるし、特に大きな不都合はない。なにより、充電に使えるのが大きい。この点はMacBook Pro・Surface Book 2ともに共通。純正の充電器は自宅で使い、持ち運び用には共通のUSB Type-Cが使える充電器を流用している。(そのため、荷物の入れ替えはPCだけでいい。これが便利なところだ)
仕様的に不満だったのはストレージの少なさだが、これは、microSDを併用することで解決している。microSDをNTFSでフォーマットし、文書保存用のフォルダなどをmicroSD側に設定すれば、メインストレージの消費は抑えられる。一通りのセットアップが終わり、データのクラウドとの同期が終わった段階で、メインストレージの空き容量が約60GB。microSDは128GBのものを使っているが、こちらもまだ90GB空きがある。当面、これで問題は出ないだろう。(この辺の設定方法については、ご要望があればそのうち解説することにしたい)
まだ使い始めて2日も経過していないので、ファーストインプレッションレベルではあるが、Surface Goの満足度はきわめて高い。日本ではOfficeバンドルでの価格問題でミソをつけた感もあるが、日本でヒットする可能性は十分高いと思う。気になるのは、年末登場予定の「LTE版」の存在だが、その辺はまた改めてテストし、考えてみたいと思う。同時発売なら、なにも考えずそちらを選んだのだが……。
小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ」
本稿はメールマガジン「小寺・西田の『金曜ランチビュッフェ』」からの転載です。
コラムニスト小寺信良と、ジャーナリスト西田宗千佳がお送りする、業界俯瞰型メールマガジン。
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2018年8月31日 Vol.186 <ぐいぐい来る世界号>
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01 論壇【小寺】
中国の電子決済ライフを体験
02 余談【西田】
「Surface Go」を自腹で買ってみた
03 対談【西田】
藤津亮太さんに聞く「配信はアニメのストーリーを変えるのか」(4)
04 過去記事【小寺】
ソニー電池事業売却に見る、バッテリービジネスの難しさ
05 ニュースクリップ
06 今週のおたより
07 今週のおしごと